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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C07D
審判 一部申し立て 2項進歩性  C07D
管理番号 1018414
異議申立番号 異議1999-72721  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-21 
確定日 2000-05-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第2847693号「カルボキシル基保護基の除去方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2847693号の請求項1ないし3、5ないし7に係る特許を取り消す。 同請求項8ないし13に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2847693号発明は、平成5年6月10日に特許出願され、平成10年11月6日にその特許の設定登録がなされた後、その特許について日本曹達株式会社より特許異議の申立てがなされ、その後当審による取消理由通知がなされ、これに対して平成11年12月17日付で特許異議意見書が提出されたものである。
2.本件発明
本件特許第2847693号の請求項1〜3及び5〜13に係る発明は、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】置換もしくは非置換アリル基で保護されたカルボキシル基を有するβ-ラクタム化合物を、含水有機溶媒中、アリル基捕捉剤の存在下、2価パラジウム化合物とホスフィン類で処理して、置換もしくは非置換アリル基を除去することを特徴とするカルボキシル基保護基の除去方法。
【請求項2】置換もしくは非置換アリル基で保護されたカルボキシル基を有するβ-ラクタム化合物が、式
【化1】





(式中、Rは置換もしくは非置換アリル基を表す。)で示される部分構造を有する化合物である請求項1記載の方法。
【請求項3】置換もしくは非置換アリル基で保護されたカルボキシル基を有するβ-ラクタム化合物が、一般式[1]
【化2】


(式中、Rは置換もしくは非置換アリル基、R1及びR2はそれぞれ独立して有機基を表し、Xは式:-CH2CH2-、-S-CH2-、-O-CH2-,-CH2-、-CH(R3)-、-S-または-O-で表される基を表し、R3は低級アルキル基、Yは硫黄原子、酸素原子又は単結合手を表す。)で示される化合物である請求項1記載の方法。
【請求項5】置換もしくは非置換アリル基が、式:-CH2-CH=CHR0(式中、R0は水素原子、低級アルキル基又はアリール基を表す。)で示される基である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】含水有機溶媒が極性有機溶媒と水との混合溶媒である請求項5記載の方法。
【請求項7】2価パラジウム化合物がパラジウムジ低級アルカナートまたはパラジウムジハライド、ホスフィン類がトリ低級アルキルホスファイトまたはトリフェニルホスフィンである請求項6記載の方法。
【請求項8】2価パラジウム化合物がパラジウムジ低級アルカナート、ホスフィン類がトリ低級アルキルホスファイトである請求項7記載の方法。
【請求項9】含水有機溶媒中の含水比率が5〜50%である請求項8記載の方法。
【請求項10】アリル基捕捉剤が脂環式もしくは脂肪族β-ジカルボニル化合物又は芳香族アミンである請求項9記載の方法。
【請求項11】2価パラジウム化合物がパラジウムジアセタート、ホスフィン類がトリエチルホスファイトであり、アリル基捕捉剤がジメドンである請求項9記載の方法。
【請求項12】含水有機溶媒がエタノールと水との混合溶媒、テトラヒドロフランと水との混合溶媒又はジオキサンと水との混合溶媒である請求項11記載の方法。
【請求項13】反応を塩基の存在下に行う請求項12記載の方法。」
3.取消理由通知の概要
3-1.これに対して当審が通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
本件請求項1〜3及び5〜7に係る発明は、その出願前に頒布された下記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開平4-41489号公報
(甲第1号証)
刊行物2:特開平3-130293号公報
(甲第2号証)
3-2.刊行物1及び2に記載の発明
刊行物1には、一般式[1]

で表されるペネム化合物のアリル基の脱離方法に係る発明が記載され、その特許請求の範囲の請求項1には、一般式[1]で表されるペネム化合物のアリルエステルを(1)パラジウム錯体及び(2)水の存在下、(3)炭素数1〜4のカルボン酸のアルカリ金属塩または炭素数1〜4のカルボン酸及びアルカリ金属塩と反応させるアリル基の脱離方法が記載され、さらに、パラジウム錯体を得る方法として「ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド・・・二酢酸パラジウムと数等量のトリフェニルホスフィンの併用」(公報第3頁右上欄第8行〜第11行)が記載され、反応を実施するにあたり「反応は、まずアリル基受容体と化合物[1]を有機溶媒中で混合し、水を添加する。」(公報第3頁左上欄第8行〜第11行)と記載され、その有機溶媒に関して「有機溶媒として・・・テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のようなエーテル類;メタノール、エタノール等のアルコール類」(公報第3頁左下欄第4行〜第12行)が記載され、そして実施例1に「テトラヒドロフラン25mlを加え溶解した後水2.25g・・・を加え」ること、実施例2には「水6.64g・・・のテトラヒドロフラン74mlの溶液」を用いること、実施例3には「水3.6g・・・アセトン20mlの溶液」を用いることが記載されている。
刊行物2には、刊行物1に記載された一般式[1]で表されるペネム化合物と同一の化合物のアリル基の脱離方法に係る発明が記載され、アリル基受容体として「1,3-ジケトン化合物[IIb]またはそのアルカリ金属エノレート[IIa]がアリル基受容体として作用し、化合物[IIb]は炭素数2〜4の環を形成する環式脂肪族1,3-ジケトンであればよく、環上の水素原子は低級アルキル基もしくは低級アルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子またはアリール基で置換されていてもよい。その例としては、1,3-シクロヘキサンジオン、ジメドン、5,5-ジメチル-4-メトキシカルボニル-1,3-シクロヘキサンジオンなどが挙げられ、アルカリ金属エノレートとしては、ナトリウム、カリウムなどのエノレートが挙げられる。」(公報第4頁右上欄第6行〜第17行)ことが記載されている。
3-3.対比・判断
本件請求項1に係る発明(以下、「前者」ともいう。)と刊行物1に記載された発明(以下、「後者」ともいう。)とを対比すると、両者は置換もしくは非置換アリル基で保護されたカルボキシル基を有するβ-ラクタム化合物(刊行物1においては「ペネム化合物」と記載されている。)を、含水溶媒中、アリル基捕捉剤(刊行物1においては「アリル基受容体」と記載されている。)の存在下、パラジウム触媒で処理して、置換もしくは非置換アリル基を除去する点で一致し、一方、前者は該パラジウム触媒として「2価パラジウム化合物とホスフィン類」とを併用しているのに対し、後者においては、「パラジウム錯体」を用いている点で相違する。
そこでこの相違点について検討すると、前者においては、パラジウム触媒として「0価パラジウム錯体であれば、いずれも用いることができ、例えば、・・・、とりわけテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が好ましい。」(公報【0009】欄)こと、「また、反応系中で2価パラジウム化合物とホスフィン類とから0価パラジウム錯体を生成させて、本反応に用いることもできる。2価パラジウム化合物としては、例えば、パラジウムジアセタートの如きパラジウムジ低級アルカナート・・・があげられ、ホスフィン類としては、例えば、・・・トリフェニルホスフィンがあげられ」る(公報【0010】)ことが記載されていることから、前者において「2価パラジウム化合物とホスフィン類」とを併用するのは、パラジウム錯体として、0価パラジウム錯体と同等なものとして用いているものであるところ、後者においても「最も好ましい錯体はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)であるが、・・・・二酢酸パラジウムと数当量のトリフェニルホスフィンの併用・・・を用いてもよい」(公報第3頁右上欄第6行〜第14行)と記載されており、該β-ラクタム化合物から置換もしくは非置換アリル基を除去するにあたり、パラジウム触媒として後者において最も好ましい錯体と同様に用いることができるとされている二酢酸パラジウム(2価パラジウム化合物)とトリフェニルホスフィン(ホスフィン類)との併用を想到することには何の困難性もないものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は刊行物1に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 本件請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明における「置換もしくは非置換アリル基で保護されたカルボキシル基を有するβ-ラクタム化合物」の部分構造を限定するものであるが、この限定は両者の間にあらたな相違点をもたらすものではないので、請求項1に係る発明に対するのと同じ理由で、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるから、本件請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件請求項3及び5に係る発明は、請求項1に係る発明における「置換もしくは非置換アリル基で保護されたカルボキシル基を有するβ-ラクタム化合物」をさらに限定するものであるが、この限定は両者の間にあらたな相違点をもたらすものではないので、請求項1に係る発明に対するのと同じ理由で、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるから、本件請求項3及び5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件請求項6に係る発明は、請求項5において「含水有機溶媒」を「極性有機溶媒と水との混合物」に限定するものであるが、極性溶媒として本件明細書にとりわけ好ましいものとして例示され、実施例においても使用されているテトラヒドロフランが刊行物1においても例示され、実施例においても用いられているので、上記限定を加えたところで、両者の間にあらたな相違点をもたらすものではないので、請求項5に対するのと同様の理由により、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるから、本件請求項6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件請求項7に係る発明は、請求項6において「2価パラジウム化合物」を「パラジウムジ低級アルカナートまたはパラジウムジハライド」に、「ホスフィン類」を「トリ低級アルキルホスファイトまたはトリフェニルフォスフィン」に限定するものであるが、刊行物1にはパラジウムジ低級アルカナートに含まれる二酢酸パラジウムが記載され、またトリフェニルホスフィンも記載されているのであるから、上記限定を加えたところで、両者の間にあらたな相違点をもたらすものではないので、請求項6に対するのと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるから、本件請求項7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

4.残りの請求項に対する申立ての理由の概要
4-1.特許異議申立人日本曹達株式会社は、甲第1号証(特開平4-41489号公報、以下「刊行物1」という。)及び甲第2号証(特開平3-130293号公報、以下「刊行物2」という。)を提出し、本件特許の請求項9、12及び13に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないものであり(理由1)、また本件特許の請求項8〜13に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである(理由2)から、これら請求項に係る発明の特許は特許法113条第1項第2号の規定に該当するので取り消されるべきであると主張する。
4-2.甲第1及び2号証に記載の発明
刊行物1及び刊行物2の記載内容は、上記3-2に記載とおりである。
4-3.対比・判断
(理由1について)
本件請求項9に係る発明は「ホスフィン類」として「トリ低級アルキルホスファイト」を用いるものであるところ、刊行物1には、トリフェニルホスフィンについては記載されているものの、トリ低級アルキルホスフィンについては記載も示唆もないので、請求項9に係る発明が刊行物1に記載された発明であるとはいえず、特許異議申立人の主張は妥当でない。
本件請求項12及び13に係る発明は、置換もしくは非置換アリル基を除去するにあたり、アリル基捕捉剤としてジメドンを用いるものであるところ、刊行物1にはアリル基捕捉剤として炭素数1〜4のカルボン酸のアルカリ金属塩については記載されているものの、ジメドンを用いることについては記載も示唆もないので、請求項12及び13に係る発明が刊行物1に記載された発明であるとはいえず、特許異議申立人の理由1は妥当でない。
(理由2について)
本件請求項8に係る発明は、請求項7において「2価パラジウム化合物」を「パラジウムジ低級アルカナート」に、「ホスフィン類」を「トリ低級アルキルホスファイト」に限定するものであるところ、刊行物1には、トリフェニルホスフィンについては記載があるものの、トリ低級アルキルフォスファイトについては記載も示唆もなく、刊行物2の記載を併せてもトリフェニルホスフィンに代えて、トリ低級アルキルフォスファイトを用いることを当業者が容易に想到し得たものとは認められず、特許異議申立人の主張は妥当でない。
本件請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明をさらに技術的に限定するものであるから、請求項8に係る発明に対するのと同じ理由で、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではなく、特許異議申立人の主張は妥当でない。
本件請求項10に係る発明は、請求項9に係る発明をさらに技術的に限定するものであるから、請求項9に係る発明に対するのと同じ理由で、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではなく、特許異議申立人の主張は妥当でない。
本件請求項11に係る発明は、請求項10に係る発明をさらに技術的に限定するものであるから、請求項10に係る発明に対するのと同じ理由で、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではなく、特許異議申立人の主張は妥当でない。
本件請求項12に係る発明は、請求項11に係る発明をさらに技術的に限定するものであるから、請求項11に係る発明に対するのと同じ理由で、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではなく、特許異議申立人の主張は妥当でない。
本件請求項13に係る発明は、請求項12に係る発明をさらに技術的に限定するものであるから、請求項12に係る発明に対するのと同じ理由で、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではなく、特許異議申立人の主張は妥当でない。
したがって、本件請求項8〜13に係る発明が刊行物1及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものではないので、特許異議申立人の理由2も妥当でない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-03-27 
出願番号 特願平5-138722
審決分類 P 1 652・ 113- ZC (C07D)
P 1 652・ 121- ZC (C07D)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 塚中 直子高原 慎太郎  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 宮本 和子
深津 弘
登録日 1998-11-06 
登録番号 特許第2847693号(P2847693)
権利者 田辺製薬株式会社
発明の名称 カルボキシル基保護基の除去方法  
代理人 箕浦 繁夫  
代理人 東海 裕作  
代理人 松橋 泰典  
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