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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B62D
審判 全部無効 出願日、優先日、請求日 無効としない B62D
管理番号 1019407
審判番号 審判1999-35317  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-06-22 
確定日 2000-07-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第2829443号(発明の名称「脱輪防止ゴムクローラ」)の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第 2829443号(請求項の数2、以下「本件特許」という)は、平成3年1月23日の出願に係り、平成10年9月25日にその設定登録がなされたが、これに対して、オーツタイヤ株式会社より請求項1及び2に関して特許無効の審判が請求されたものである。
2.本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される下記のとおりのものと認める。
【請求項1】帯状のゴム弾性体中に一定ピッチで
芯金をその幅方向に横並べし、当該芯金を外囲いしたスチールコード列を共に埋設し、帯状のゴム弾性体の幅方向中央において前記芯金間にスプロケット係合孔を備えてなるゴムクローラにおいて、前記芯金よりスプロケット係合孔に臨んでゴムクローラの内面より突出する一対の転輪走行路体を形成すると共に、隣り合う芯金の一方の芯金から他方の芯金に向けて突起を形成し、これら隣り合う芯金の当該突起同士をゴムクローラの幅方向において前記ゴム弾性体内の略スチールコード列の打ち込み面に合わせてオーバーラップさせると共に、ゴムクローラの内面において前記突起を囲んだ凹溝部をゴム弾性体に形成したことを特徴とする脱輪防止ゴムクローラ。
【請求項2】前記凹溝部を突起のゴムクローラ内
周面側の表面位置より深く形成した請求項第1項記載の脱輪防止ゴムクローラ。
2.当事者が提出した証拠
(1)請求人の提出した証拠
請求人が提出し、成立に争いのない証拠は、次のとおりである。
甲第1号証:特開平4-243673号公報
甲第2号証:特開平2-267084号公報
(2)被請求人の提出した証拠
被請求人が提出した、成立に争いのない証拠は、次のとおりである。
乙第1号証:本件特許の願書に最初に添付した図4
3.当事者の主張の概要
(1)請求人の主張
本件特許明細書の特許請求の範囲において、請求項1に記載の「ゴムクローラの内面において前記突起を囲んだ凹溝部をゴム弾性体に形成した」点の構成要件(以下、「補正事項1」という)と、請求項2における「前記凹溝部を突起のゴムクローラの内周面側の表面位置より深く形成した」点の構成要件(以下、「補正事項2」という)は、平成9年5月19日付け手続補正書による補正(第3次補正)で初めて特許請求の範囲に記載されたもので、願書に最初に添付した明細書又は図面に全く記載のない技術的構成を新たに記載したものであり、明細書の要旨を変更したものであるから、本件特許の出願日を第3次補正の日である平成9年5月19日とみなすべきものである。
そして、上記甲第1号証及び甲第2号証は、いずれも第3次補正の日よりも前に頒布された刊行物であって、本件特許に係る請求項1及び請求項2の何れの発明も、上記甲第1号証及び第2号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に推考し得たものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反して受けたもので、無効とされるべきものである。
(2)被請求人の主張
これに対して、被請求人は、第3次補正は適法なものであって、明細書及び図面の要旨を変更するものではなく、従って、本件特許の出願日である平成3年1月23日より後に頒布された甲第1号証をもって進歩性を否定する証拠とはできず、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない旨主張している。
4.当審の判断
そこで、請求人が前記第3次補正で新たに記載されたという補正事項1及び補正事項2が、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「原明細書」という)に記載された事項の範囲内であるかどうかについて検討する。
4-1.補正事項1について
請求人は、「凹溝部」については、唯一、原明細書の段落【0011】の中で、「更に又、図示はしないが、突起7,7及び8,8を囲んで、ゴム弾性体1の加硫成型時に、凹溝をつけておくことも考えられる。」と記載されているに過ぎず、明細書の他の箇所及び図1から図10に至る全図を参照するも「ゴムクローラの内面において前記突起を囲んだ凹溝部」に相当するものは記載も図示もないと主張するものである。
そこで請求人の主張の当否について検討すると、先ず、原明細書の段落【0009】中の、「このためスプロケット係合孔4よりゴムクローラの幅方向に延長して空域9としたものであり、この突起7,7及び8,8を空域9内にてオーバーラップさせたものである。」の記載と図1及び図2より、原明細書には、ゴム弾性体がない空域9内にて突起7,7及び8,8をオーバーラップさせたものが記載されていたとことは明らかである。
又原明細書の段落【0010】には「なお、この空域9は必ずしもスプロケット孔4と連なって形成されることはなく、図3はかかる場合の本発明のゴムクローラの第2実施例を示す図2と同様の断面図を示す。
図例のように、芯金2の縁部5、6からのびる突起7、7及び8、8のオーバーラップ位置によっては、空域9をスプロケット孔4と独立して形成されるものであってもよい。
また図示はしないが、場合によってはこの突起7、7及び8、8をゴム弾性体1中に埋入させたままであってもよく、前記した空域9を形成しない場合も考えられる。即ち突起7、7及び8、8をオーバーラップさせた状態でゴム弾性体1中に埋設することもよい。」との記載があり、原明細書には、図3の如く、空域9がスプロケット孔4から離れている例や、空域を形成せずにゴム弾性体中に埋設したものが記載されていたといえる。
そして、原明細書の段落【0011】中の前段で、「更に、かかる場合にあっても突起7,7及び8,8のオーバーラップ部のみをゴム弾性体1を肉薄としてもよい。図4は本発明のゴムクローラの第3実施例を示す図2と同様の断面図であるが、オーバーラップ部のゴム弾性体1を肉薄としている例を示すものである。」との記載があり、段落【0011】中の後段に「更に又、図示はしないが、突起7,7及び8,8を囲んで、ゴム弾性体1の加硫成型時に、凹溝をつけておくことも考えられる。」と記載されている。
してみると、原明細書で云う「凹溝」とは、「突起7,7及び8,8を囲んで」ゴム弾性体に凹溝が形成されたものであり、しかも、突起7,7及び8,8を設ける部分について、ゴム弾性体に埋設したものや、薄肉にしたもの、そして空域にしたものまでも含むことを例示した上での凹溝であるから、当該凹溝はゴムクローラの内面において形成したものも包含すると解するのが相当である。
よって、補正事項1の「ゴムクローラの内面において前記突起を囲んだ凹溝部をゴム弾性体に形成した」という構成要件は、原明細書に記載された事項の範囲内のものであると認められる。
4-2.補正事項2について
補正事項1についての項で既に述べたように、原明細書で云う「凹溝」とは、「突起7,7及び8,8を囲んで」形成された凹溝であり、突起7,7及び8,8の周囲を囲んでいるゴム弾性体にゴムクローラの内面より凹溝を形成すれば、凹溝は突起のゴムクローラ内周面側の表面位置より深く形成されることは当然のことであり、補正事項2の「前記凹溝部を突起のゴムクローラの内周面側の表面位置より深く形成した」という構成要件も、原明細書に記載された事項の範囲内のものであると認められる。
5,むすび
以上のとおりであるから、請求人が原明細書には記載がないとする補正事項1及び2に係る構成要件は、いずれも原明細書に記載された事項の範囲内のものといえるから、第3次補正は、平成5年法律26号による改正前の特許法第41条の「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を変更する補正」に該当し、明細書の要旨を変更するものではない。したがって、本件特許の出願日を第3次補正日とみなすべき理由はなく、本件特許の出願後に頒布された甲第1号証は、特許法第29条第2項の容易性を判断する証拠とはなり得ず、請求人が主張する理由及びその提出した証拠によっては、本件特許を無効とすることができないし、また、他に無効とすべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-05-31 
出願番号 特願平3-22993
審決分類 P 1 112・ 121- Y (B62D)
P 1 112・ 03- Y (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 幸雄川向 和実  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
清水 英雄
登録日 1998-09-25 
登録番号 特許第2829443号(P2829443)
発明の名称 脱輪防止ゴムクローラ  
代理人 中野 収二  
代理人 鈴木 悦郎  

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