ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
審判199935229 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない B01D |
---|---|
管理番号 | 1019408 |
審判番号 | 審判1999-35376 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1990-06-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-07-22 |
確定日 | 2000-07-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2684735号発明「炭酸塩濃度制御方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
I.手続の経緯・本件発明 本件特許第2684735号の請求項1に係る発明(昭和63年12月21日出願、平成9年8月15日設定登録、以下「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(文節記号を付与。) 「イ)吸収塔に入る排ガスの流量と排ガス中のSO2濃度からSO2の流量を求めて、該SO2の流量に比率設定器からの比率設定値を乗じた値により吸収塔への吸収剤の供給量を調節するようにすると共に、 ロ)上記吸収塔内の吸収剤を含む吸収剤スラリーが中和チャンバに導かれる流量と該中和チャンバに導かれる硫酸流量とから反応に用いられる硫酸の量を求めることにより炭酸塩の量を知り、吸収液中の炭酸塩濃度を求めるようにしてなる炭酸塩濃度計により、上記吸収塔内の吸収液中の炭酸塩濃度を検出し、 ハ)該炭酸塩濃度計によって検出した吸収液中の炭酸塩濃度と炭酸塩濃度設定値との偏差を求めて、該偏差をもとに関数発生器からの制御偏差により上記比率設定値を変更させ、該変更させた比率設定値を上記SO2の流量に乗じて吸収塔への吸収剤の供給量を調節させるようにすることを特徴とする炭酸塩濃度制御方法。」 II.請求人の主張 これに対して、請求人は、本件発明は、本件出願前に頒布させた刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたと主張し、証拠方法として、甲第1号証(特開昭59-102425号公報)及び甲第2号証(特開昭60-222132号公報)を提出している。 III.甲第1、2号証 そして、甲第1,2号証には、次の発明が記載されている。 甲第1号証; 湿式排煙脱硫装置の吸収剤供給方法に関するもので、 第3頁左上欄第7行目〜同欄第13行目には、「吸収剤供給方法を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、排ガス流量と入口SO2濃度とを検出し、この両検出値より吸収剤必要量を算出しフィードファード制御することにより、ボイラ負荷変動にかかわらず常に脱硫率が保証脱硫率を満足するように制御できることを見出し、」と記載され、 第3頁左上欄第15行〜同頁右上欄第5行には、 「本発明は吸収剤を吸収塔に供給し循環させて排ガス中のSO2を吸収させる湿式排煙脱硫装置において、吸収塔を通過する排ガス流量の検出値と、吸収塔に流入する排ガス中のSO2濃度の検出値との乗算結果に、予め設定した定数を乗じた信号と、吸収塔循環液のPH検出値を制御量とする調節計の出力信号とを加算し、該加算信号により吸収塔への吸収剤供給量を操作することを特徴とする湿式排煙脱硫装置の吸収剤供給方法を提案するものである。」と記載されている。 また、第3頁右上欄第13行目〜同頁左下欄第3行目には、 「本発明方法は吸収塔を通過する排ガス流量を流量計(12)で検出し、さらに吸収塔入口ガス中のSO2濃度をSO2濃度検出器(19)で検出し、この両検出器を乗算器(20)に入力し、乗算器(20)の出力信号に予め設定させた定数を乗ずる増巾器(16)の出力信号と、循環ライン(9)の液PHを検出し、この検出値を制御量とするPH検出調整計(18)の出力信号とを、加算器(15)で加算し、この加算信号によって吸収剤供給量を操作する方法である。」と記載されている。 甲第2号証; (1)特許請求の範囲には、「炭酸塩を含有する液又は懸濁液の炭酸塩濃度を管理する方法に於いて、該液又は懸濁液の炭酸塩濃度を検出した信号と炭酸塩濃度設定値との偏差信号により、該液又は懸濁液に加える炭酸塩の供給量を調整することを特徴とする、炭酸塩濃度調整方法。」と記載されている。 (2)第4頁左下欄第15行目〜同頁右下欄第5行目には、 「ここで、吸収塔循環ポンプ105によって塔頂へ送られる吸収液中の炭酸塩CaCO3の濃度は、炭酸塩検出器124で検知される。炭酸塩検出器124は前述の構成からなるものが適用でき、その濃度信号は炭酸塩調節計125に送られ、炭酸塩濃度設定値との偏差信号を流量調節計126に送る。また、流量調節計126は流量計127の信号を受け、その偏差信号でもってバルブ128の開閉調整を行うことによって、SO2吸収剤であるCaCO3を懸濁した液をライン108からタンク103へ供給する。」と記載されている。 IV.対比・判断 本件発明と甲第1、2号証に記載された発明とを比較検討する。 本件発明は、特許請求の範囲の請求項1の構成を採ることにより、排ガス流量計、SO2濃度計等の誤差による吸収剤供給量の誤差を補正して吸収液中の炭酸塩濃度を最適に制御することができるという効果を奏するものである。 本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には、排ガスの流量とSO2濃度の検出値の乗算結果に、更に定数を乗じた信号と、吸収塔循環液のPH信号とを加算して吸収剤供給量を制御する方法が開示されているから、甲第1号証には、本件発明のイ)の構成、即ち、「吸収塔に入る排ガスの流量と排ガス中のSO2濃度からSO2の流量を求めて、該SO2の流量に比率設定器からの比率設定値を乗じた値により吸収塔への吸収剤の供給量を調節するようにする」という構成が記載されているといえる。 しかしながら、甲第1号証は、本件発明のロ)、ハ)の構成、即ち、「ロ)上記吸収塔内の吸収剤を含む吸収剤スラリーが中和チャンバに導かれる流量と該中和チャンバに導かれる硫酸流量とから反応に用いられる硫酸の量を求めることにより炭酸塩の量を知り、吸収液中の炭酸塩濃度を求めるようにしてなる炭酸塩濃度計により、上記吸収塔内の吸収液中の炭酸塩濃度を検出し、ハ)該炭酸塩濃度計によって検出した吸収液中の炭酸塩濃度と炭酸塩濃度設定値との偏差を求めて、該偏差をもとに関数発生器からの制御偏差により上記比率設定値を変更させ、該変更させた比率設定値を上記SO2の流量に乗じて吸収塔への吸収剤の供給量を調節させるようにする」構成を具備するものではない。 上記相違点について、甲第2号証に記載された発明を検討する。 甲第2号証には、「炭酸塩を含有する液又は懸濁液の炭酸塩濃度を管理する方法に於いて、該液又は懸濁液の炭酸塩濃度を検出した信号と炭酸塩濃度設定値との偏差信号により、該液又は懸濁液に加える炭酸塩の供給量を調整することを特徴とする、炭酸塩濃度調整方法」の発明が記載されているが、甲第2号証の発明は、本件発明のハ)の構成、即ち、「ハ)炭酸塩濃度計によって検出した吸収液中の炭酸塩濃度と炭酸塩濃度設定値との偏差を求めて、該偏差をもとに関数発生器からの制御偏差により上記比率設定値を変更させ、該変更させた比率設定値を上記SO2の流量に乗じて吸収塔への吸収剤の供給量を調節させるようにする」構成を具備するものではない。 したがって、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 V.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-04-20 |
結審通知日 | 2000-05-12 |
審決日 | 2000-05-24 |
出願番号 | 特願昭63-320428 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
Y
(B01D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野田 直人 |
特許庁審判長 |
石井 勝徳 |
特許庁審判官 |
新居田 知生 山田 充 |
登録日 | 1997-08-15 |
登録番号 | 特許第2684735号(P2684735) |
発明の名称 | 炭酸塩濃度制御方法 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 坂本 光雄 |
代理人 | 奥山 尚男 |