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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S |
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管理番号 | 1019696 |
審判番号 | 審判1998-6574 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-08-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-04-23 |
確定日 | 1999-08-25 |
事件の表示 | 平成4年 特 許 願 第7879号「ソーナー信号検出処理方式」拒絶査定に対する審判事件(平成5年8月6日出願公開、特開平5-196717)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年1月20日に出願されたものであって、その請求項に係る発明は、平成9年11月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。 「複数の受波器からなる受波器群によって音源からの音響信号を受信し、この受信信号から1次元の線形予測法を用いて時間周波数スペクトルを算出し、該時間周波数スペクトルの強度を画像表示して前記音響信号の特徴を推定することを特徴とするソーナー信号検出処理方式。」 (以下、「本願発明」という。) 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-280074号公報(以下、「引用例」という)には、次のことが図面とともに記載されている。 「ソーナは、水中音響を用いて3次元空間内(水中)を移動する目標の探索、位置計測、類別を行うものである。ソーナは動作様式により、パッシブソーナとアクティブソーナに分けられる。パッシブソーナは目標が放射する音波を用い、またアクティブソーナは目標に向かって音波を当て、その反射波(エコー)を用いて目標の探索、位置計測、類別を行う。ソーナで用いられる信号処理、つまり時間空間信号のスペクトル推定方法は、次のように、信号の時間的特徴(波形、スペクトル等)を抽出するために用いる時間的処理と、信号の空間的特徴(・・・)を抽出するために用いる空間的処理に分けられる。」(1頁右下欄16行〜2頁左上欄9行)、 「しかしながら、上記いずれのスペクトル推定法法であっても、受信アレー数が少ない時には、入力データ数が少ないため、ビームフォーミングの空間的分解能が劣下し、正しく波数スペクトル(方位)が推定できない。その上、FFT(高速フーリエ変換、・・・)を用いて周波数スペクトルを推定するので、短時間では、サンプリングデータ数が少ないため、FFTの特性から、周波数分解能が劣下するという問題があり、それらを解決することが困難であった。 本発明は前記従来技術が持っていた課題として、周波数分解能と空間的分解能の劣下という点について解決した時間空間信号のスペクトル推定方法を提供するものである。」 (2頁右上欄18行〜同頁左下欄11行)、 「第1の発明は、任意の周波数及び空間位置の音響信号を複数の受信アレーで受信し、そのアレー受信信号から、周波数スペクトル及び波数スペクトルを推定するパッシブ受波方式における時間空間信号のスペクトル推定方法において、前記各アレー受信信号をそれぞれ独立な多変量データとみなし、その各多変量データ間の相関度を考慮した線形予測を行う多変量線形予測分析方法を用いて前記周波数スペクトルを推定する。」(2頁左下欄13行〜同頁右下欄2行)、 「第1図は、本発明の実施例を示すもので、多変量線形予測分析方位(波数スペクトル)推定の機能ブロック図である。 この機能ブロックでは、パッシブ受波あるいはアクティブ受波を行う受信アレー部10を備え、その出力側にはディジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)等で構成される時間的処理帯域制限フィルタ部20、時間的処理スペクトル分析部30及び空間的処理方位決定部40が接続されている。 受信アレー部10は、任意の周波数及び空間位置の音響信号、あるいは空間位置が既知である音響信号を受信してそれを電気信号に変換する複数の受信アレー10-1〜10-4と、各受信アレー出力をディジタル信号に変換する複数のアナログ/ディジタル変換器(以下、A/D変換器という)11-1〜11-4とを備えている。時間的処理帯域制限フィルタ部20は、A/D変換器11-1〜11-4の出力側に接続された複数の帯域制限フィルタ(以下、BPFという)21-1〜21-4で構成されている。・・・時間的処理スペクトル分析部30はBPF21-1〜21-4の出力を入力して多変量線形予測分析を行う機能を有し、さらに、空間的処理方位決定部40は、多変量線形予測分析結果を入力して位相差分析を行い、推定方位kを出力する機能を有している。」 (3頁左上欄3行〜同頁右上欄10行)、「音源からの音響信号、例えば時間空間信号s 受信アレー部10の出力信号は、BPF21-1〜21-4において各々帯域制限された後、時間的処理スペクトル分析部30へ入力される。 時間的処理スペクトル分析部30では、以下に述べる多変量線形予測分析を行う。・・・ 多変量線形予測分析を行う場合、まずM個の受信アレー出力を離散的多変量時系列とみなし、受信アレー出力行列・・・を・・・とする。・・・各受信アレー10-1〜10-4で近似スペクトルS(ω0)は共通であるから、時間的処理スペクトル分析部30の出力として、受信アレー10-1〜10-4ごとに、(13)式の周波数スペク 3行)、 「以上のように、本実施例では、時間的スペクトル分析部30により、多変量線形予測分析で周波数スペクトルを推定するので、少ない受信アレー数(・・・)で、しかも短時間推定が可能となる。さらに、空間的処理方位決定部40により、位相差分析で波数スペクトル(方位)kを推定するので、・・・装置の小型化が図れる。」(7頁左上欄5行〜最下行) 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用例に記載された発明とを比較すると、引用例の「受信アレー10-1〜10-4」「周波数スペクトルS」がそれぞれ本願発明の「複数の受波器」「時間周波数スペクトル」に相当することは明らかである。また、引用例の「周波数スペクトル推定方法」は、「水中における位置計測(音響計測)等を行う」ものであるが、これはいわゆるソーナー装置と呼ばれるものであって本願発明のものと同一の技術分野に属するものであるから、引用例の「周波数スペクトル推定方法」は本願発明の「ソーナー信号検出処理方式」に相当する。したがって、両者は、「複数の受波器からなる受波器群によって音源からの音響信号を受信し、この受信信号から線形予測法を用いて時間周波数スペクトルを算出するソーナー信号検出処理方式」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: (1)本願発明は、「1次元の」線形予測法を用いて時間周波数スペクトルを算出するのに対し、引用例のものは、多変量線形予測分析により時間空間信号スペクトル推定を行うものであって、1次元即ち時間のみの線形予測を行うものではない点。 (2)本願発明は、時間周波数スペクトルの強度を画像表示して音響信号の特徴を推定するのに対し、引用例のものは、「周波数スペクトルS」を得た後空間的処理を行うものであって、画像表示を行うものではない点。 上記相違点について検討する。 相違点(1)について: 引用例のものは、多変量線形予測分析により時間空間信号スペクトル推定を行うものであって、1次元の即ち時間のみの線形予測を行うものではないが、該引用例には、「ソーナで用いられる信号処理、つまり時間空間信号のスペクトル推定方法は、次のように、信号の時間的特徴(波形、スペクトル等)を抽出するために用いる時間的処理と、信号の空間的特徴(・・・)を抽出するために用いる空間的処理に分けられる。」 「本実施例では、時間的スペクトル分析部30により、多変量線形予測分析で周波数スペクトルを推定するので、少ない受信アレー数(・・・)で、しかも短時間推定が可能となる。さらに、空間的処理方位決定部40により、・・・(方位)kを推定する」とも記載されている。してみれば、引用例のものが、多変量線形予測分析で周波数スペクトルを推定した後に空間的処理方位決定をするものであるとしても、周波数スペクトル推定と空間的処理方位決定とはそれぞれ独立した処理として捉えられることも記載されているのであるから、多変量線形予測分析の前段階としての処理結果である周波数スペクトルが個別に利用し得ることは格別困難なく想到し得ることと認められるから、上記相違点の構成とすることは引用例の上記記載を勘案して当業者が容易になし得る程度のことである。 相違点(2)について: パッシブ型のソーナーにおいて、時間周波数スベクトルの強度を画像表示して音響信号の特徴を推定することは周知(必要であれば特開平3-205578号公報参照)のことにすぎないので、上記相違点の構成とすることは当業者が任意に設計し得る程度のことである。 そして、本願発明が奏する作用効果は引用例に記載された発明及び周知技術から当然に予測しうる程度のものである。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-05-21 |
結審通知日 | 1999-06-04 |
審決日 | 1999-06-11 |
出願番号 | 特願平4-7879 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮川 哲伸 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
森 雅之 渡邊 聡 |
発明の名称 | ソーナー信号検出処理方式 |
代理人 | 柿本 恭成 |