ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F02B |
---|---|
管理番号 | 1020176 |
異議申立番号 | 異議1998-72477 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-02-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-05-18 |
確定日 | 2000-04-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2678943号「二サイクルエンジンの掃気装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2678943号の特許を取り消す。 |
理由 |
【1】手続きの経緯 本件特許第2678943号の発明についての出願は、平成1年7月7日に特許出願されたものであって、平成9年8月1日にその特許権の設定登録がなされ、その後、本件の請求項1に係る特許に対して、株式会社共立より特許異議の申立てがなされ、そして、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年10月19日に訂正請求がなされ、さらに訂正拒絶理由通知がなされたものである。 【2】訂正の適否についての判断 ア.訂正明細書の請求項1に係る発明 訂正明細書の請求項1に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「シリンダーの前面に排気孔を開口すると共にシリンダーの左右に掃気孔を開口し、ピストンの往復運動によって開閉するものに於て、掃気孔のシリンダー開口端に近い上縁部分に、シリンダー壁面からシリンダー内径の1/10〜1/5の間隔に頂点を有する脹みを設けて前記掃気孔の開口部の吹上げ角度を大きくするようにしたことを特徴とする二サイクルエンジンの掃気装置。」 イ.引用刊行物に記載された発明 訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)に対して、当審が通知した訂正拒絶理由通知で引用した特公昭40-2285号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「2サイクルエンジンを提供するものである。図について説明すれば、1はシリンダー壁を表わし、2は掃気孔、3は排気孔である。該掃、排気孔2,3に孔口正面より見て、その上縁の一部に凸形の段孔4,5をそれぞれ付設する。‥‥‥さらにピストンの下降によって掃気孔2が開く前に段孔4が開いてクランクケース内で圧縮された混合気がここより噴射され、この噴流によってシリンダー内の燃焼ガスを強く押出し、続いてベースの掃気孔2が開いて混合気を送り込むのである。初めの噴射気流によって掃気効果が極めて良好となるのである。」(第1頁左欄第32行〜右欄第1行)、「なお、段孔は‥‥‥三角形に形成することも同じである。」(第2頁左欄第3〜4行)との記載があり、これらの記載、及び、第1〜3図に示された図面の記載からみて、刊行物1には、 シリンダーの前面に排気孔を開口すると共にシリンダーの左右に掃気孔を開口し、ピストンの往復運動によって開閉するものに於いて、掃気孔のシリンダー開口端に近い上縁部分に、シリンダー壁面からの適当な間隔に頂点を有する凸形の段孔4を設けて前記掃気孔の開口部の吹上げ角度を大きくするようにした二サイクルエンジンの掃気装置、 が記載されているものと認める。 ウ.対比・判断 そこで、本件訂正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「凸形の段孔4」は、本件訂正発明の「脹み」に対応するから、両者は、シリンダーの前面に排気孔を開口すると共にシリンダーの左右に掃気孔を開口し、ピストンの往復運動によって開閉するものに於て、掃気孔のシリンダー開口端に近い上縁部分に、シリンダー壁面からの適当な間隔に頂点を有する脹みを設けて前記掃気孔の開口部の吹上げ角度を大きくするようにした二サイクルエンジンの掃気装置 、の点で一致するが、以下の点で相違するものと認められる。 相違点; 本件訂正発明の脹みは、シリンダー壁面からシリンダー内径の1/10〜1/5の間隔に頂点を有する脹みであるのに対し、刊行物1に記載された発明の脹みは、そのような数値限定がない点。 そこで、上記相違点について検討する。 上記脹みをシリンダー壁面からシリンダー内径の1/10〜1/5の間隔に頂点を有するとする数値限定に臨界的意義があるものとも認められず、しかも、掃気孔の開口部の吹上げ角度を大きくするとしながら該吹上げ角度を限定するものでもないことから、脹みをシリンダー壁面からシリンダー内径の1/10〜1/5の間隔に頂点を有する脹みとすることは、当業者が必要に応じて容易に選択しうる程度の事項にすぎないものというべきである。 そして、本件訂正発明の構成によってもたらされる効果も、刊行物1に記載された発明から、当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本件訂正発明は、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ.結論 以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 【3】特許異議の申立てについての判断 ア.本件特許の請求項1係る発明 前記【2】エ.で述べたように、訂正請求の訂正が認められないので、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「シリンダーの前面に排気孔を開口すると共にシリンダーの左右に掃気孔を開口し、ピストンの往復運動によって開閉するものに於て、掃気孔のシリンダー開口端に近い上縁部分に、シリンダー壁面からシリンダー内径の1/10〜1/5の間隔に頂点を有する脹みを設けて吹上げ角度を大きくするようにしたことを特徴とする二サイクルエンジンの掃気装置。」 イ.取消理由に引用した発明 当審が通知した取消理由で引用した特公昭40-2285号公報(上記「刊行物1」と同じ)には、すでに上記【2】イ.で示したような技術的事項が記載されているものと認められる。 ウ.対比・判断 そこで、本件発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「凸形の段孔4」は、本件発明の「脹み」に相当するから、両者は、 シリンダーの前面に排気孔を開口すると共にシリンダーの左右に掃気孔を開口し、ピストンの往復運動によって開閉するものに於て、掃気孔のシリンダー開口端に近い上縁部分に、シリンダー壁面からの適当な間隔に頂点を有する脹みを設けて吹上げ角度を大きくするようにした二サイクルエンジンの掃気装置 、の点で一致するが、以下の点で相違するものと認められる。 相違点; 本件訂正発明の脹みは、シリンダー壁面からシリンダー内径の1/10〜1/5の間隔に頂点を有する脹みであるのに対し、刊行物1に記載されたものの脹みは、そのような数値限定がない点。 そこで、上記相違点について検討すると、前記【2】ウ.の、「相違点についての検討」の箇所で述べたように、該相違点は、当業者が必要に応じて容易に選択しうる程度の事項にすぎない。 そして、本件発明の構成によってもたらされる効果も、刊行物1に記載された発明から、当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 【4】むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して特許がされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-03-07 |
出願番号 | 特願平1-174108 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(F02B)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 山本 穂積 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
飯塚 直樹 清田 栄章 |
登録日 | 1997-08-01 |
登録番号 | 特許第2678943号(P2678943) |
権利者 | スズキ株式会社 |
発明の名称 | 二サイクルエンジンの掃気装置 |
代理人 | 波多野 久 |
代理人 | 関口 俊三 |