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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F02M
審判 全部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  F02M
管理番号 1020189
異議申立番号 異議1999-71586  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-12-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-26 
確定日 2000-06-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第2816334号「電磁式燃料噴射弁」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2816334号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続きの経緯
本件特許第2816334号の発明についての出願は、昭和63年1月23日に出願された特願昭63-3737号[昭和62年9月25日優先権主張、日本国]の一部を特許法第44条第1項の規定により平成7年8月28日に分割して新たな特許出願(特願平7-218445号)としたものの一部を、さらに特許法第44条第1項の規定により平成9年2月17日に分割して新たな特許出願(特願平9-31719号)としたものであって、その請求項1〜5に係る発明は、平成10年8月14日にその特許権の設定登録がなされたものであるが、その後、本件の請求項1〜5に係る特許に対して、桜井幸太郎より特許異議の申立てがなされ、そして、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月15日に訂正請求がなされ、さらに、訂正拒絶理由の通知がなされ、その指定期間内である平成12年2月21日に手続補正書が提出されたものである。

【2】補正の適否についての判断
ア.補正の内容
(特許請求の範囲の補正の内容)
特許権者が求めている特許請求の範囲の補正の内容は、次のとおりである。
全文訂正明細書中の特許請求の範囲の、
「【請求項1】弁座と燃料噴射孔とを有するノズル体と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記ノズル体の内側で前記弁座の上流側に前記ノズル体と別部材として挿入されて軸心に沿う方向に前記弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と、前記弁座の上流側に燃料に旋回力を与える燃料通路とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記ガイド素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげたことを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項2】前記径方向の縮小通路が、前記ガイド素子の下端面に形成された溝によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項3】弁座と燃料噴射孔とを有するノズル体と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記ノズル体の内側で前記弁座の上流側に前記ノズル体と別部材として挿入され、前記弁体が貫通する貫通孔を有し、供給された燃料に旋回力を与える燃料通路を形成するための燃料旋回素子とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記燃料旋回素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげたことを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項4】前記径方向の縮小通路が、前記燃料旋回素子の下端面に形成された溝によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項5】前記径方向の縮小通路が、軸心に対してオフセットした燃料通路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁式燃料噴射弁。」を、
「【請求項1】弁座と燃料噴射孔とを有するノズル体と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記ノズル体の内側で前記弁座の上流側に前記ノズル体と別部材として挿入されて軸心に沿う方向に前記弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と、前記弁座の上流側に燃料に旋回力を与える燃料通路とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記ノズル体は、一方の端部にある前記燃料噴射孔と他方の端部にある開口部を除く閉じられた外周面を有し、前記ガイド素子は、外周面に周方向に間隔を置いて、前記ノズル体の内周面と接触する複数の接触面を有し、前記燃料通路は、前記ノズル体の内周面と前記ガイド素子の外周面に有する複数の接触面の間の外周面との間に形成された軸心に沿う方向の燃料通路と、該軸心に沿う方向の燃料通路に連通する径方向の縮小通路とからなり、前記ガイド素子と前記ノズル体とは一つの組立体として構成され、該一つの組立体の前記ノズル体の外周面と前記電磁石の内周面とを嵌合して一体に組み付けられていることを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項2】前記径方向の縮小通路が、前記ガイド素子の下端面に形成された溝によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項3】弁座と燃料噴射孔とを有するノズル体と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記ノズル体の内側で前記弁座の上流側に前記ノズル体と別部材として挿入され、前記弁体が貫通する貫通孔を有し、供給された燃料に旋回力を与える燃料通路を形成するための燃料旋回素子とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記ノズル体は、一方の端部にある前記燃料噴射孔と他方の端部にある開口部を除く閉じられた外周面を有し、前記燃料旋回素子は、外周面に周方向に間隔を置いて、前記ノズル体の内周面と接触する複数の接触面を有し、前記燃料通路は、前記ノズル体の内周面と前記燃料旋回素子の外周面に有する複数の接触面の間の外周面との間に形成された軸心に沿う方向の燃料通路と、該軸心に沿う方向の燃料通路に連通する径方向の縮小通路とからなり、前記燃料旋回素子と前記ノズル体とは一つの組立体として構成され、該一つの組立体の前記ノズル体の外周面と前記電磁石の内周面とを嵌合して一体に組み付けられ、該縮小通路の断面積は、前記弁体が前記弁座から離れ燃料通路が開いたとき、これら弁体と弁座の間に形成される環状隙間の断面積より大きくなるように構成されていることを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項4】前記径方向の縮小通路が、前記燃料旋回素子の下端面に形成された溝によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項5】前記径方向の縮小通路が、軸心に対してオフセットした燃料通路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁式燃料噴射弁。」、
と補正する。
イ.補正の適否
上記訂正請求に対する補正により、請求項1及び3に係る発明の径方向の縮小通路については、「燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路」が、単なる「径方向の縮小通路」に補正された。
即ち、当該補正により、径方向の燃料通路が「燃料に旋回力を与える」構成を削除されたが、このような発明の構成に欠くことができない事項を一部削除する補正事項は、特許請求の範囲の減縮に該当しない。
さらに、上記訂正請求に対する補正により、請求項1及び3に係る発明のノズル体について、「ノズル体は、一方の端部にある前記燃料噴射孔と他方の端部にある開口部を除く閉じられた外周面を有し」という構成を加えるようにしているが、この補正された事項である「他方の端部にある開口部」と「閉じられた外周面」は、訂正明細書に何ら記載されておらず、また、願書に添付された図面の記載から直接的かつ一義的に導かれる事項ともいえないので、この「ノズル体は、一方の端部にある前記燃料噴射孔と他方の端部にある開口部を除く閉じられた外周面を有し」という補正事項は、訂正明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものに該当せず、新規事項の追加に該当するものと認められる。
なお、特許権者は、平成12年2月21日付け意見書の第4頁第14〜20行、第6頁第1〜7行において、「ノズル体は、一方の端部にある前記燃料噴射孔と他方の端部にある開口部を除く閉じられた外周面を有し」は、訂正明細書の段落番号0009、0010、0011に記載の事項に基づいたものであると主張しているが、そのような記載は該段落番号の箇所になんら存在しない。
したがって、訂正請求に対する当該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであり、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に適合しないので、上記補正を採用することはできない。

【3】訂正の適否についての判断
ア.訂正明細書の請求項1〜5に係る発明
本件訂正明細書の請求項1〜5に係る発明は、願書に添付した訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】弁座と燃料噴射孔とを有するノズル体と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記ノズル体の内側で前記弁座の上流側に前記ノズル体と別部材として挿入されて軸心に沿う方向に前記弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と、前記弁座の上流側に燃料に旋回力を与える燃料通路とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記ガイド素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげたことを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項2】前記径方向の縮小通路が、前記ガイド素子の下端面に形成された溝によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項3】弁座と燃料噴射孔とを有するノズル体と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記ノズル体の内側で前記弁座の上流側に前記ノズル体と別部材として挿入され、前記弁体が貫通する貫通孔を有し、供給された燃料に旋回力を与える燃料通路を形成するための燃料旋回素子とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記燃料旋回素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげたことを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項4】前記径方向の縮小通路が、前記燃料旋回素子の下端面に形成された溝によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項5】前記径方向の縮小通路が、軸心に対してオフセットした燃料通路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁式燃料噴射弁。」
イ.引用刊行物に記載された発明
訂正明細書の請求項1〜5に係る発明(以下、「本件訂正発明1」〜「本件訂正発明5」という。)に対して、当審が通知した訂正拒絶理由通知で引用した特開昭57-47078号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び特開昭56-75955号公報(以下、「刊行物2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されているものと認める。
(1)刊行物1;
刊行物1には、「中空円筒状のコイル、コイル中心の中空部に設置されたコア、コイル外周を囲み一端がコアに接続するヨーク、ヨーク内をコイル軸方向に摺動可能に支持され、一端がコアの一端にむかいあい、他端に球状の弁体を取りつけたプランジャ、ヨークの一端に取りつけられ、かつプランジャを支持するとともに球状の弁体の弁座を構成するノズルよりなる電磁弁において、ノズルの構造を内筒、外筒よりなる2重構造とし、ヨークと接触する外筒を非磁性材料で構成し、かつ内筒、外筒間に流体通路を設け、該流体通路を通った流体が弁座と弁体が摺動するガイドの中間に弁体の外周接線方向に流入するよう流入孔を構成し、さらに弁座の下流に流量制限用オリフィスを設けたことを特徴とする電磁弁。」(第1頁下左欄第4〜18行)、「本発明の特徴はノズルを二重構造とし燃料を2重構造の間に設けられた溝を通して弁座近くまで導き、さらに弁座の直ぐ上流に渦巻流をつくるように流入させることにより、プランジャの重量を軽くし応答性を向上させながら燃料流量を増大させるとともに噴出する燃料を旋回させて燃料の微粒化を向上させたところにある。以下本発明の電磁弁を内燃機関用噴射弁に応用した場合の実施例について第3図により説明する。ノズル7は外筒16、内筒17の2部分からなり内筒は外筒内に圧入される。内筒17の内側にはプランジャ18が軸方向に摺動可能に保持される。プランジヤ18は軟磁性体のアーマチュア4、コンロッド19、球状の弁体20からなり、コンロッド19の中部に設けられた大径部と弁体20側面の2個所が内筒内面を摺動する。内筒内面底部には弁座21が設けられ、弁座と弁体摺動部中間の内筒内側には円周溝22が設けられる。内筒17の外面には溝23が設けられ、さらに溝23と円周溝22を連通し弁体20外面の接線方向に向いた流入口24が設けられる。外筒16の底部には流量制限用オリフィス25が設けられ、オリフィス25上流と円周溝22は弁座21、弁体20の接触部を介して連通する。」(第2頁下左欄第6行〜同頁下右欄第9行)との記載があり、また、第5図において、溝23の断面積と流入口24の断面積を較べれば、径方向の燃料通路(流入口24)は軸心に沿う方向の燃料通路(溝23)に対して縮小通路であるといえるから、これらの記載、図面の簡単な説明及び図面等の記載からみて、引用例1には、
オリフィス25を有する(ノズル7の)外筒16と、電磁石によって駆動され、弁座21との間で燃料通路の開閉を行う弁体20と、前記外筒16の内側で前記オリフィス25の上流側に前記外筒16と別部材として挿入されて軸心に沿う方向に前記弁体20を案内する内側貫通孔と前記弁座21とを有する内筒17と、前記弁座21の上流側に燃料に旋回力を与える燃料通路とを備えた内燃機関用電磁燃料噴射弁において、前記内筒17の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記外筒16内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記内筒17の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路を軸心に対してオフセツトしてつなげた内燃機関用電磁燃料噴射弁、が記載されているものと認められる。
(2)刊行物2;
上記刊行物2には、「ハウジング内に固定された固定コアと、この固定コアの周囲に設けられ、通電されると固定コアを磁化する電磁コイルと、燃料噴射孔が形成され、前記ハウジングの先端部に設けられたシート部材と、ばね部材により前記燃料噴射孔を閉じるよう付勢され、前記コアが磁化されると吸引されて前記燃料噴射孔を開くボールとを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記ボールを収納する案内孔が形成され、かつこの案内孔にほぼその接線方向に燃料を導入するスワール通路が形成されたスワールプレートを前記ハウジング内に設けたことを特徴とする電磁式燃料噴射弁。」(第1真下左欄第5〜17行)、「次に第2図から第4図により弁構成部分について詳細に説明する。シート部材12は、Oリング1を間に挟んだ状態でハウジング1内に設置されており、このシート部材12と隣接して順にスワールプレート20、ストッパ21が配置されている。スワールプレート20は磁性体からなり、中央にはボール16を収納し、このボール16の移動を案内する案内孔22が形成されている。また、このスワールプレート20には軸方向に4個の燃料通路23が開孔されており、この燃料通路23から案内孔22にほぼその接線方向から燃料を導入するスワール通路24が形成されている。」(第2頁上右欄第17行〜下左欄第8行)との記載があり、これらの記載、図面の簡単な説明及び図面等の記載からみて、引用例2には、
弁座と燃料噴射孔13とを有するシート部材12と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行うボール16と、前記弁座の上流側に軸心に沿う方向に前記ボール16を案内する案内孔22を有するスワールプレート20と、前記弁座の上流側に燃料に旋回力を与える燃料通路とを備えた電磁式燃料噴射弁において、燃料に旋回力を与える径方向の燃料通路を前記スワールプレート20の下端面に形成された溝24により構成し、前記軸心に沿う方向の燃料通路23につなげたこと、が記載されているものと認められる。
ウ.対比・判断
そこで、本件訂正発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「オリフィス25」、「弁座21」、「弁体20」、「内燃機関用電磁燃料噴射弁」、「軸心に沿う方向の燃料通路」、「径方向の縮小通路(流入口24)」、「(内筒17の)内側貫通孔」が、それぞれ、本件訂正発明1の「燃料噴射孔」、「弁座」、「弁体」、「電磁式燃料噴射弁」、「軸心に沿う方向の燃料通路」、「径方向の縮小通路」、「ガイド孔」に対応し、また、刊行物1に記載された発明の「外筒16」は、本件訂正発明1の「燃料噴射孔」に対応するオリフィス25を有することから本件訂正発明1の「ノズル体」に対応し、刊行物1に記載された発明の「内筒17」は、軸心に沿う方向の燃料通路及び径方向の縮小通路を構成して燃料流に旋回力を与えると共に軸心に沿う方向に貫通孔(ガイド孔)を構成して弁体を案内する機能を有するから、本件訂正発明1の「ガイド素子」に対応すると認められるので、両者は、
燃料噴射孔を有するノズル体と、電磁石によって駆動され、弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記ノズル体の内側で前記ノズル体と別部材として挿入されて軸心に沿う方向に前記弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と、前記弁座の上流側に燃料に旋回力を与える燃料通路とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記ガイド素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげた電磁式燃料噴射弁、
の点で一致するが、以下の点で相違するものと認められる。
相違点;
本件訂正発明1では、ノズル体が弁座を有し、ガイド素子が弁座の上流側に配設されるのに対し、刊行物1に記載された発明では、ノズル体に対応する「外筒16」が弁座を有せず、ガイド素子に対応する「内筒17」が弁座を有する点。
そこで、上記相違点について検討する。
・相違点についての検討;
刊行物2に記載される「ボール16」、「案内孔22」、「スワールプレート20」は、それぞれ、本件訂正発明1の「弁体」、「ガイド孔」、「ガイド素子」に対応し、刊行物2に記載される「シート部材12」は燃料噴射孔及び弁座を有することから、本件訂正発明1の「ノズル体」に対応すると認められるので、刊行物2には、
ノズル体が燃料噴射孔及び弁座を有し、弁座の上流側に弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と燃料通路が配設されることが記載されているものと認められる。
そして、刊行物1及び刊行物2に記載された発明は、共に、(ガイド素子を有する)電磁式燃料噴射弁という同一の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用し、もって、刊行物1に記載された発明のノズル体に弁座を設け、しかも、弁座の上流側に弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子を配設することは、当業者が容易になし得るものであるというべきである。
そして、本件訂正発明1の構成によってもたらされる効果も、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から、当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件訂正発明1は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ.結論
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、訂正明細書の請求項2〜5に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかを検討するまでもなく、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

【4】特許異議の申立てについての判断
ア.本件特許の請求項1〜5に係る発明
前記【3】エ.で述べたように、訂正請求の訂正が認められないので、本件特許の請求項1〜5に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】弁座と燃料噴射孔とを有するノズル体と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁座の上流側に軸心に沿う方向に前記弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と、前記弁座の上流側に燃料に旋回力を与える燃料通路とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記ガイド素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげたことを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項2】前記径方向の縮小通路が、前記ガイド素子の下端面に形成された溝によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項3】弁座と燃料噴射孔とを有するノズル体と、電磁石によって駆動され、前記弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁座の上流側に前記弁体が貫通する貫通孔を有して配設され、供給された燃料に旋回力を与える燃料通路を形成するための燃料旋回素子とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記燃料旋回素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげたことを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項4】前記径方向の縮小通路が、前記燃料旋回素子の下端面に形成された溝によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項5】前記径方向の縮小通路が、軸心に対してオフセットした燃料通路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁式燃料噴射弁。」
イ.取消理由に引用した発明
当審が通知した取消理由で引用した特開昭57-47078号公報(上記「刊行物1」と同じ)、及び特開昭56-75955号公報(上記「刊行物2」と同じ)には、すでに上記【3】イ.で示したような技術的事項が記載されているものと認められる。
ウ.対比・判断
そこで、本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「オリフィス25」、「弁座21」、「弁体20」、「内燃機関用電磁燃料噴射弁」、「軸心に沿う方向の燃料通路」、「径方向の縮小通路(流入口24)」、「(内筒17の)内側貫通孔」が、それぞれ、本件発明1の「燃料噴射孔」、「弁座」、「弁体」、「電磁式燃料噴射弁」、「軸心に沿う方向の燃料通路」、「径方向の縮小通路」、「ガイド孔」に対応し、また、刊行物1に記載された発明の「外筒16」は、本件発明1の「燃料噴射孔」に対応するオリフィス25を有することから本件発明1の「ノズル体」に対応し、刊行物1に記載された発明の「内筒17」は、軸心に沿う方向の燃料通路及び径方向の縮小通路を構成して燃料流に旋回力を与えると共に軸心に沿う方向に貫通孔を構成して弁体を案内する機能を有するから、本件発明1の「ガイド素子」に対応すると認められるので、両者は、
燃料噴射孔を有するノズル体と、電磁石によって駆動され、弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、軸心に沿う方向に前記弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と、前記弁座の上流側に燃料に旋回力を与える燃料通路とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記ガイド素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげた電磁式燃料噴射弁、
の点で一致するが、以下の点で相違するものと認められる。
相違点;
本件発明1では、ノズル体が弁座を有し、ガイド素子が弁座の上流側に配設されるのに対し、刊行物1に記載された発明では、ノズル体に対応する「外筒16」が弁座を有せず、ガイド素子に対応する「内筒17」が弁座を有する点。
そこで、上記相違点について検討する。
・相違点についての検討;
上記【3】ウ.で述べたように、刊行物2には、ノズル体が燃料噴射孔及び弁座を有し、弁座の上流側に弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と燃料通路が配設されることが記載されているものと認められる。
そして、刊行物1及び刊行物2に記載された発明は、共に、(ガイド素子を有する)電磁式燃料噴射弁という同一の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用し、もって、刊行物1に記載された発明のノズル体に弁座を設け、しかも、該弁座の上流側に弁体を案内するガイド孔を有するガイド素子と燃料通路を備えることは、当業者が容易になし得るものであるというべきである。
そして、本件発明1の構成によってもたらされる効果も、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から、当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
次に、本件発明2と刊行物1に記載された発明とを対比すると、本件発明2は本件発明1を引用したものであり、本件発明1の構成に「前記径方向の縮小通路が、前記ガイド素子の下端面に形成された溝によって構成されている」ことを付け加えたものであるが、径方向の縮小通路がガイド素子の下端面に形成された溝によって構成されることは上記刊行物2に記載されており、しかも、径方向の縮小通路は径方向の燃料通路でもあるから、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用し、もって、刊行物1に記載された発明の径方向の縮小通路をガイド素子の下端面に形成された溝によって構成することは、当業者が容易になし得たものというべきである。
したがって、本件発明2は、本件発明1と同様、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
さらに、本件発明3と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「オリフィス25」、「弁座21」、「弁体20」、「内燃機関用電磁燃料噴射弁」、「軸心に沿う方向の燃料通路」、「径方向の縮小通路(流入口24)」、「(内筒17の)内側貫通孔」が、それぞれ、本件発明3の「燃料噴射孔」、「弁座」、「弁体」、「電磁式燃料噴射弁」、「軸心に沿う方向の燃料通路」、「径方向の縮小通路」、「貫通孔」に対応し、また、刊行物1に記載された発明の「外筒16」は、本件発明3の「燃料噴射孔」に対応するオリフィス25を有することから本件発明4の「ノズル体」に対応し、刊行物1に記載された発明の「内筒17」は、軸心に沿う方向の燃料通路及び径方向の縮小通路を構成して燃料流に旋回力を与えると共に軸心に沿う方向に貫通孔を構成して弁体を案内する機能を有するから、本件発明3の「燃料旋回素子」に対応すると認められるので、両者は、
燃料噴射孔を有するノズル体と、電磁石によって駆動され、弁座との間で燃料通路の開閉を行う弁体と、前記弁座の上流側に配設され、供給された燃料に旋回力を与える燃料通路を形成するための燃料旋回素子とを備えた電磁式燃料噴射弁において、前記燃料旋回素子の外周面に、その周方向に間隔を置いて、前記ノズル体内壁面と接触する接触面を複数形成し、前記接触面間の外周面と前記ノズル体の内壁面との間に軸心に沿う方向の燃料通路を構成し、該燃料通路に燃料に旋回力を与える径方向の縮小通路をつなげた電磁式燃料噴射弁、
の点で一致するが、以下の点で相違するものと認められる。
相違点;
本件発明3では、ノズル体が弁座を有し、燃料旋回素子が弁座の上流側に配設されるのに対し、刊行物1に記載された発明では、ノズル体に対応する「外筒16」が弁座を有せず、燃料旋回素子に対応する「内筒17」が弁座を有する点。
そこで、上記相違点について検討する。
・相違点についての検討;
刊行物2に記載される「ボール16」、「案内孔22」、「スワールプレート20」は、それぞれ、本件発明3の「弁体」、「貫通孔」、「燃料旋回素子」に対応し、刊行物2に記載される「シート部材12」は燃料噴射孔及び弁座を有することから、本件発明3の「ノズル体」に対応すると認められるので、刊行物2には、
ノズル体が燃料噴射孔及び弁座を有し、弁座の上流側に弁体が貫通する貫通孔を有する燃料旋回素子が配設されることが記載されているものと認められる。
そして、刊行物1及び刊行物2に記載された発明は、共に、(燃料旋回素子を有する)電磁式燃料噴射弁という同一の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用し、もって、刊行物1に記載された発明のノズル体に弁座を設け、しかも、該弁座の上流側に弁体が貫通する貫通孔を有する燃料旋回素子を配設することは、当業者が容易になし得るものであるというべきである。
そして、本件発明3の構成によってもたらされる効果も、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から、当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件発明3は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
次に、本件発明4と刊行物1に記載された発明とを対比すると、本件発明4は本件発明3を引用したものであり、本件発明3の構成に「前記径方向の縮小通路が、前記燃料旋回素子の下端面に形成された溝によって構成されている」ことを付け加えたものであるが、径方向の縮小通路が燃料旋回素子の下端面に形成された溝によって構成されることは上記刊行物2に記載されており、しかも、径方向の縮小通路は径方向の燃料通路でもあるから、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用し、もって、刊行物1に記載された発明の径方向の縮小通路を、燃料旋回素子の下端面に形成された溝によって構成することは、当業者が容易になし得たものというべきである。
したがって、本件発明4は、本件発明3と同様、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明5と刊行物1に記載された発明とを対比すると、本件発明5は、本件発明1〜4のいずれか一つの発明に「前記径方向の縮小通路が、軸心に対してオフセットした燃料通路である」構成を付け加えたものであるが、この付加された事項は上記刊行物1に記載されているものである以上、本件発明5と刊行物1に記載された発明との相違点は、本件発明1〜4と刊行物1に記載された発明との各相違点と全く同じであるものと認められる。
したがって、本件発明5は、本件発明1〜4と同様、刊行物1及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

【5】むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1〜5に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件請求項1〜5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の請求項1〜5に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-04-27 
出願番号 特願平9-31719
審決分類 P 1 651・ 856- ZB (F02M)
P 1 651・ 121- ZB (F02M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 金澤 俊郎森藤 淳志  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 清田 栄章
清水 信行
登録日 1998-08-14 
登録番号 特許第2816334号(P2816334)
権利者 株式会社日立製作所 株式会社日立カーエンジニアリング
発明の名称 電磁式燃料噴射弁  
代理人 作田 康夫  
復代理人 橘 昭成  
代理人 作田 康夫  
復代理人 丸山 清  
復代理人 武 顕次郎  
復代理人 武 顕次郎  
復代理人 丸山 清  
復代理人 橘 昭成  

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