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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B41J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1020260
異議申立番号 異議1999-71659  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-28 
確定日 2000-07-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第2817224号「カラープリンタ」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2817224号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2817244号の請求項1乃至3に係る発明は、平成1年7月13日に出願され、平成10年8月21日にその特許権の設定の登録がなされ、キヤノン株式会社より特許異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月22日に特許請求の範囲及び発明の詳細な説明について訂正請求がなされた後、平成12年1月21日付で訂正拒絶理由を通知し、その指定期間内に意見書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正明細書の請求項1に記載されている事項
訂正明細書の請求項1に記載されている事項は、次のとおりである。
「【請求項1】記録体上で往復移動可能で往時・復時ともにインクの吐出動作をする吐出ヘッドを備えるとともに前記記録体を往復方向と交差する方向に移動させる記録体送り手段を備え前記吐出ヘッドが記録体へのプリントラインピッチの2倍のピッチに対応して配置された複数の吐出ノズルを有し、前記記録体送り手段が、前記吐出ヘッドの往復方向の反転に際し、プリントラインピッチのM倍(但し、Mは3以上の奇数)または(2N-M)倍(但し、Nは吐出ノズル数、1<M<2N-1)に相当する送り量を往路と復路で切り替えて前記記録体を移動させるカラープリンタであって、
往路・復路ともにプリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が奇数nのカラープリンタか、プリントラインピッチの(n’+1)倍または(n’-1)倍に相当する送り量を往路と復路で切り替えて記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が偶数n’のカラープリンタか、
を前記吐出ヘッドに設ける吐出ノズルの数が奇数nか偶数n’かにより定めるようにしたことを特徴とするカラープリンタ。
(2)引用刊行物
訂正明細書の請求項1に係る発明に対し、当審が訂正拒絶理由に通知において引用した刊行物(特開昭61-23463号公報)には、「搬送方向にnビット行、これと直角の方向にmビット列のドット記録を、記録ヘッドの列方向への主走査往復動と行方向への副走査移動の組合せで行う画像記録方式において、記録ヘッドの主走査往動により行方向に1ないし数ドットおきに複数ドット行を記録し、次で上記1ないし数ドットの飛び越し間隙を記録する位置に副走査移動した後、主走査復動によりnビット行を記録するように繰返して記録紙面全域に記録を行うことを特徴とする記録方式。」(特許請求の範囲)、「ロール状に巻かれた記録材1は、搬送ガイドロール9・10を介し搬送ローラ対11により矢印方向へ搬送(副走査)される。キャリッジ12は4色の記録ヘッドイエロー13Y・マゼンタ13M・シアン13C・ブラック13Bより成る記録ヘッド群13を搭載し、ガイドレール14上を往復運動(主走査)する。」(第2頁右下欄第19行〜第3頁左上欄第5行)、「記録ヘッドとしては100〜200ノズル程度のオンデマンド型インクジェット方式等が有力である」(第3頁右上欄第10〜11行)及び「第3図は本発明の他の実施例で、第1・第2の副走査距離f・gを約均等距離とするものである。第1回目の主走査往動aは、nビット行の内上部n/4ビットeの記録を行う。すなわちn/2ビットの記録部を有する記録ヘッド6をEの位置とし、その下側の半分の記録部によりn/4ビットeで、黒丸5のように1ドットおきにn/4(図例12/4=3個)ドット記録する。次に第1の副走査fとしてn/2+1ビット分の距離だけF位置に移動させ、ヘッド6を主走査復動cさせると、nビット行fの領域にn/2ドット(6個)の記録が行われる。このとき前記のn/4ビットe領域の白丸ドットも記録される。次で第2の副走査gとしてn/2-1ビット分の距離だけG位置に移動させ、主走査往動a2させると、nビット行gの領域にn/2ドットの記録が行われる。」(第3頁右下欄第13行〜第4頁左上欄第10行)と記載され、第1図に、記録装置の斜視図が、第2図に、画像記録手順の説明図が、第3図に、記録ヘッドが記録紙へのプリントラインピッチの2倍のピッチに対応して配置された6個のノズルを有し、プリントピッチの7倍または5倍に相当する送り量往路と復路で切り替えて記録紙を移動させる、画像記録手順の説明図が記載されている。
(3)対比・判断
訂正明細書の請求項1に記載された事項と上記引用刊行物に記載された発明とを対比すると、上記引用刊行物に記載された「記録ヘッド」、「ノズル」、「記録紙」及び「記録装置」は、それぞれ、訂正発明の「吐出ヘッド」、「吐出ノズル」、「記録体」及び「カラープリンタ」に相当し、6は偶数で、7は3以上の奇数で、7=6+1、5=6-1であるから、両者は、
「記録体上で往復移動可能で往時・復時ともにインクの吐出動作をする吐出へツドを備えるとともに前記記録体を往復方向と交差する方向に移動させる記録体送り手段を備え前記吐出ヘッドが記録体へのプリントラインピッチの2倍のピッチに対応して配置された複数の吐出ノズルを有し、前記記録体送り手段が、前記吐出ヘッドの往復方向の反転に際し、プリントラインピッチのM倍(但し、Mは3以上の奇数)または(2N-M)倍(但し、Nは吐出ノズル数、1<M<2N-1)に相当する送り量を往路と復路で切り替えて前記記録体を移動させるカラープリンタであって、
往路・復路ともにプリントラインピッチの(n’+1)倍または(n’-1)倍に相当する送り量を往路と復路で切り替えて記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が偶数n’のカラープリンタ」である点でカラープリンタの構成において、一致し、相違点が見いだせない。
したがって、訂正明細書の請求項1に記載された事項により構成される発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。
なお、特許請求の範囲の請求項1の記載中に、
「往路・復路ともにプリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が奇数nのカラープリンタか、プリントラインピッチの(n’+1)倍または(n’-1)倍に相当する送り量を往路と復路で切り替えて記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が偶数n’のカラープリンタか、を前記吐出へツドに設ける吐出ノズルの数が奇数nか偶数n’かにより定めるようにしたことを特徴とするカラープリンタ」という記載がある。
そして、上記記載をもとに、請求人は、訂正請求書と特許異議意見書において、「本件発明の主眼は、・・・吐出ノズル数が偶数であるか奇数であるかにより記録紙の移動量を異ならしめることにより、同一の吐出ノズルによる往路と復路とのプリントラインが隣接する状態を回避しつつも、副走査制御の簡易化を優先するか、画像記録品質向上を優先するか、を考慮してカラープリンタを製造することができるようにする点にあります。」と主張している。
そこで、上記記載について検討する。
まず、上記記載は、後記するように、実質上特許請求の範囲を変更するものであると共に、発明の構成に欠くことができない事項のみを明りょうに記載したものでないものであるが、上記記載は、カラープリンタの構成を表現する記載としては、「往路・復路ともにプリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が奇数nのカラープリンタ」と「往路・復路ともにプリントラインピッチの(n’+1)倍または(n’-1)倍に相当する送り量を往路と復路で切り替えて記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が偶数n’のカラープリンタ」のいずれか一方を択一的に指示したものと認められる。
そこで、「往路・復路ともにプリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が奇数nのカラープリンタ」についての発明が、上記引用刊行物の記載から当業者が容易に発明をすることができるか否かについて検討する。
上記引用刊行物には、上記したように、「記録ヘッドとしては100〜200ノズル程度のオンデマンド型インクジェット方式等が有力である」および、「第1・第2の副走査距離f・gを約均等距離とするものである」と記載されているから、吐出ノズル数を奇数nとすると共に、第1・第2の副走査距離を同一、すなわち、往路・復路ともにプリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させることは、当業者が適宜想到し得ることと認められる。
したがって、「往路・復路ともにプリントラインピッチの(n’+1)倍または(n’-1)倍に相当する送り量を往路と復路で切り替えて記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が偶数n’のカラープリンタ」についての発明は、上記刊行物に記載された発明と同一で特許法第29条第1項第3号に該当し、また、「往路・復路ともにプリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が奇数nのカラープリンタ」についての発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、いずれの発明も特許出願の際独立して特許を受けることができない。
さらに、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載における、「往路・復路ともにプリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が奇数nのカラープリンタか、プリントラインピッチの(n’+1)倍または(n’-1)倍に相当する送り量を往路と復路で切り替えて記録体を移動させる、前記吐出ノズルの数が偶数n’のカラープリンタか、を前記吐出ヘッドに設ける吐出ノズルの数が奇数nか偶数n’かにより定めるようにしたことを特徴とするカラープリンタ」という記載は、「カラープリンタ」の構成のみならず、いかなるプリンタを選択して製造するかの方法についての技術的思想の構成をも包含しているから、特許請求の範囲を実質上変更するものであると共に、「カラープリンタ」という物の発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものとは認められなく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第2項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正法による改正前の特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであり、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、この訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項で準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
なお、特許権者は、平成12年4月14日付け意見書において、特許請求の範囲の請求項1を次のように訂正する用意がある旨記載している。
「【請求項1】記録体上で往復移動可能で往時・復時ともにインクの吐出動作をする複数の吐出ヘッドを備えるとともに前記記録体を往復方向と交差する方向に移動させる記録体送り手段を備え前記吐出ヘッドが記録体へのプリントラインピッチの2倍のピッチに対応して配置された複数の吐出ノズルを有し、前記記録体送り手段が、前記吐出ヘッドの往復方向の反転に際し、プリントラインピッチのM倍(但し、Mは3以上の奇数)または(2N-M)倍(但し、Nは吐出ノズル数、1<M<2N-1)に相当する送り量を往路と復路で切り替えて前記記録体を移動させるカラープリンタであって、
前記複数の吐出ヘッドは、前記往復方向に移動可能に構成された一つのキャリッジ上に、前記往復移動方向に離間して設けられ、且つ、各々偶数n′の吐出ノズルを有し、
プリントラインピッチの(n′+1)倍または(n′-1)倍に相当する送り量を往路と復路で切り替えて記録体を移動させる、
ことを特徴とするカラープリンター。」
そこで、これについても検討すると、この請求項1は、吐出ノズル数を偶数n′とすると共に複数の吐出ヘッドが往復移動方向に移動可能に構成された一つのキャリッジ上に前記往復移動方向に離間して設けられていることを限定したものに相当すると認められる。
ところで、吐出ノズル数を偶数とすることは上記引用刊行物に明示されている。
また、上記引用刊行物の第3図には、複数の吐出ヘッドが往復移動方向に移動可能に構成された一つのキャリッジ上に前記往復移動方向に並んで設けられていることが明示されていないが、第1図には、複数の吐出ヘッドが往復移動方向に移動可能に構成された一つのキャリッジ上に前記往復移動方向に並んで設けられていることが明示され、第2図及び第3図に示されたそれぞれの実施例がこれを前提にして、説明されているものであること及び、一つのヘッドについて説明すれば、4つのヘッドについても容易に類推できることを考慮すれば、第3図は、一つのヘッドについてしか記載されていないが、他の3つのヘッドについては省略されているとみるのが自然である。
さらに、キャリッジにその往復移動方向に並んで設けられる複数のヘッドが離間されているか密着しているかには、技術的意味が認められない。
しみると、上記引用刊行物には、複数の吐出ヘッドが往復移動方向に移動可能に構成された一つのキャリッジ上に前記往復移動方向に離間して設けることが実質的に開示されている。
ゆえに、特許請求の範囲を上記のように訂正しても、上記引用刊行物に記載された発明と同一と認められるから、再度取消理由を通知する必要を認めない。
3.特許異議申し立てについての判断
(本件発明)
本件第2817224号の請求項1乃至3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】記録体上で往復移動可能で往時・復時ともにインクの吐出動作をする吐出ヘッドを備えるとともに、前記記録体を往復方向と交差する方向に移動させる記録体送り手段を備え、前記吐出ヘッドが記録体へのプリントラインピッチの2倍のピッチに対応して配置された複数の吐出ノズルを有し、前記記録体送り手段が、前記吐出ヘッドの往復方向の反転に際し、プリントラインピッチのM倍(但し、Mは3以上の奇数)または(2N-M)倍(但し、Nは吐出ノズル数、1<M<2N-1)に相当する送り量を往路と復路で切り替えて前記記録体を移動させるカラープリンタ。
【請求項2】吐出ノズルの数が奇数nの場合に、プリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させる請求項1記載のカラープリンタ。
【請求項3】吐出ノズルの数が偶数n′の場合、プリントラインピッチの(n′+1)倍または(n′-1)倍に相当する送り量を往路と復路で切り替えて記録体を移動させる請求項1記載のカラープリンタ。」
(2)引用刊行物
当審が通知した取消理由に引用した刊行物(特開昭61-23463号公報)は、上記訂正拒絶理由で引用した刊行物と同じである。
(3)対比・判断
本件の請求項1乃至3に係る発明と引用刊行物に記載された発明とを対比する。
イ.請求項1及び3に係る発明について
上記2.(3)に記載した相当関係等により、請求項1及び3に係る発明は、いずれも、上記引用刊行物に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
ロ.請求項2に係る発明について
上記引用刊行物には、上記したように、「記録ヘッドとしては100〜200ノズル程度のオンデマンド型インクジェット方式等が有力である」および、「第1・第2の副走査距離f・gを約均等距離とするものである」と記載されているから、吐出ノズル数を奇数nをすると共に、第1・第2の副走査距離を同一、すなわち、往路・復路ともにプリントラインピッチのn倍に相当する送り量だけ記録体を移動させることは、当業者が適宜想到し得ることと認められる。
したがって、本件請求項2に係る発明は、上記刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1乃至3に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-05-25 
出願番号 特願平1-181042
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (B41J)
P 1 651・ 121- ZB (B41J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 清水 康司桐畑 幸▲廣▼  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 番場 得造
田村 爾
登録日 1998-08-21 
登録番号 特許第2817224号(P2817224)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 カラープリンタ  
代理人 谷 義一  
代理人 鷲田 公一  

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