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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E02D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E02D
管理番号 1020322
異議申立番号 異議1998-74548  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-17 
確定日 1999-08-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2728846号「流動化処理工法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2728846号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2728846号の請求項1〜5に係る発明は、平成5年6月29日に特許出願され、平成9年12月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、中村昭一より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年4月16日に訂正請求がなされ、さらに、平成11年7月8日にその補正がなされたものである。
II.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否
特許権者が求める訂正明細書の補正は、次の補正からなる。
イ)特許請求の範囲の、【請求項1】、【請求項3】、【請求項4】及び【請求項5】にそれぞれ記載のある、「前記泥水の比重の増大」の記載を「前記泥水の比重の変化」に補正する。
ロ)明細書段落【0008】【課題を解決するための手段】に記載のある、「前記泥水の比重の増大」の記載を「前記泥水の比重の変化」に補正する。
ハ)明細書段落【0032】【発明の効果】に記載のある、「前記泥水の比重の増大」の記載を「前記泥水の比重の変化」に補正する。
そこで、上記補正について検討すると、図1には、調整泥水比重の増大或いは減少によって、即ち、調整泥水比重の変化によって、一軸圧縮強度が変化し、又、フロー値或いはブリージング率を一定とするとき、調整泥水比重の変化によって、泥水混合比が変化することが開示されている。そして、本件特許の請求項1〜5に係る発明を実施するには、上記図1のグラフを基に、フロー値及びブリージング率を考慮しながら調整泥水比重及び泥水混合比を決定する必要があることは明細書段落【0018】の記載等からも明らかである。そうしてみると、特許請求の範囲に記載の「前記泥水の比重の増大」の意味する事項は、「前記泥水の比重の変化」がより正確な記載であることは明らかである。
したがって、上記イ)の補正は明りようでない記載の釈明に相当するものであり、又、上記ロ)及びハ)の各補正も、上記イ)の特許請求の範囲の補正と整合させるための補正にすぎないから、いずれの補正も明りようでない記載の釈明に相当するものであると認める。
以上、上記訂正請求の補正は、その要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に適合するので、採用する。
(2)訂正請求の適否
1)訂正請求の内容
上記訂正請求の補正により、特許権者が求める特許明細書の訂正は、次の訂正からなる。
訂正事項▲1▼
特許請求の範囲の請求項1〜5の記載を、次のように訂正する。。
「【請求項1】建設残土などの被処理土に、粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土に水を添加した泥水を混合して当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して比重を調整した調整泥水を上記被処理土に混合してその粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることを特徴とする流動化処理工法。
【請求項2】被処理土に対する前記調整泥水の混合の際に、所要の固化材を添加して、所要の流動化処理土とすることを特徴とする請求項1に記載の流動化処理工法。
【請求項3】前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、流動化処理土を、所要の一軸圧縮強度を有し、かつフロー値を100mm以上、ブリージング率を3%以下とすると共に、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)を0.1〜1.0とすることを特徴とする請求項1または2に記載の流動化処理工法。
【請求項4】前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、前記固化材の添加量を、所要の一軸圧縮強度に応じて、前記被処理土と前記調整泥水との混合物1m3当たり50〜200kg、好ましくは約100kgとすることを特徴とする請求項2または3に記載の流動化処理工法。
【請求項5】前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、前記調整泥水の比重を1.02〜1.20とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流動化処理工法。」
訂正事項▲2▼
明細書段落【0003】の「細流分を多く含み、かつ、比重を調整した泥水を」を、「適量の固化材を」に訂正する。
訂正事項▲3▼
明細書段落【0008】、【課題を解決するための手段】の記載を、「このため、本発明では、建設残土などの被処理土に粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土に水を添加した泥水を混合し、当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して調整した調整泥水を上記被処理土に混合して、その粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることを特徴とする。」に訂正する。
訂正事項▲4▼
明細書段落【0009】第5行及び同段落【0010】第2行の「配合試験を行い、」を、「配合試験を行って泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化を求め、」にそれぞれ訂正する。
訂正事項▲5▼
明細書段落【0009】第1行及び第2行、同段落【0010】第2行、同段落【0014】第1〜2行、同段落【0015】第1行及び第3行、同段落【0017】第3行、同段落【0018】第6行及び第13行、同段落【0024】第2行及び第3行、同段落【0025】第1行、明細書の【図面の簡単な説明】項の【図1】及び【図2】の「調整泥水」を、それぞれ「流動化処理土」に訂正する。
訂正事項▲6▼
明細書段落【0018】の「調整泥水の比重とフロー値、調整泥水の比重と一軸圧縮強度、および調整泥水の比重とブリージング率との関係をそれぞれ求める。」を、「調整泥水の比重と流動化処理土のフロー値、調整泥水の比重と流動化処理土の一軸圧縮強度、および調整泥水の比重と流動化処理土のブリージング率との関係をそれぞれ求める。」に、同「配合比(泥水混合比)を決定する。」を、「配合比(泥水混合比)を図1のグラフを基に決定する。」に、それぞれ訂正する。
訂正事項▲7▼
明細書段落【0032】【発明の効果】の「建設残土などの被処理土を、その流動性を高めた状態で、埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する際、上記被処理土の流動化を行なう流動化処理工法において、上記被処理土の組成に対応して、選択・調整された、粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土を含む泥水を上記被処理土に混合して、上記被処理土の粗粒分の間に分散し、所要の調整泥水とすることで、」を、「建設残土などの被処理土に、粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土を含む泥水を混合し、当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と、流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して比重を調整した調整泥水を上記被処理土に混合してその粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることで、」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項▲1▼は、本件特許明細書の特許請求の範囲に記載されていた「調整泥水」の用語に含まれていた「流動化処理土」の技術事項を分離することでその内容を明瞭にすると共に、該調整泥水と被処理土との混合によって作成される流動化処理土の作成手順を具体的にして減縮する訂正であると認めるから、特許請求の範囲の明りようでない記載を釈明しかつ減縮するものに該当し、
上記訂正事項▲2▼は、明細書段落【0004】の【発明が解決しようとする課題】の「しかしながら、水の消費コストも然ることながら、セメント系や石灰系の固化材を使用することによるコストは、その埋め戻し量、裏込め量、充填量に比例して膨大な額となり、経済性の上で、大きな障害となる。」等の記載内容と、従来技術の記載を整合させるものであり、明りようでない記載の釈明に該当し、
上記訂正事項▲3▼及び▲4▼は、上記特許請求の範囲の訂正に対応して明細書の【課題を解決するための手段】の記載を整合させる訂正であり、明りようでない記載の釈明に該当し、
上記訂正事項▲5▼は、調整泥水の技術事項を明瞭にするものであって、明りようでない記載の釈明に該当し、
上記訂正事項▲6▼は、上記特許請求の範囲の訂正に対応して明細書の記載を調整する訂正であり、明りようでない記載の釈明に該当し、
上記訂正事項▲7▼は、上記特許請求の範囲の訂正に対応して明細書の【発明の効果】の記載を調整する訂正であり、明りようでない記載の釈明に相当するものである。
そして、上記▲1▼〜▲7▼の訂正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。
(3)独立特許要件の判断
当審の取消理由で引用した刊行物1(第28回土質工学研究発表会、平成5年度発表講演集(2分冊の2)、社団法人土質工学会、平成5年5月25日発行、第2601〜2602頁)、刊行物2(第27回土質工学研究発表会、平成4年度発表講演集(2分冊の2)、社団法人土質工学会、平成4年5月8日発行、第2337〜2338頁)、刊行物3(改訂、シールド工事の施工と積算、平成元年12月10日改訂版発行、財団法人経済調査会発行、226〜228頁の(1)泥水管理の項参照。)には、下記の事項が記載されている。
刊行物1
「近年、建設工事に際しての発生土(残土)問題が深刻度を高めつつある。その発生抑制技術を高めることもさることながら、発生土の有効な再利用技術の開発が急がれている。東京の営団地下鉄では円形断面のシールドトンネルのコンクリート道床を支持するための充填部材(図-1参照、以下、インバート部材と略称)に、従来使用していた貧配合コンクリートに替えてシールド(泥水加圧式)掘削時の発生土並びに余剰泥水の再利用の可能性を検討中である。これはかなり高強度な、粗粒分を含んだ、新しい流動化処理技術の開発を意味しており、営団地下鉄7号線(南北線)工事で遭遇する実際の土質を対象に基礎的な実験を行ってきた結果の中間報告である。」(2601頁2〜7行)、
「(1)試料: 代表的な余剰泥水を想定し都内の洪積粘土(自然含水比88.4%土粒子密度2.655g/cm3)に加水し、目標比重を1.2として作製した。シールド掘削発生土としては実際の現場から得られた東京層の砂質土並びに礫質土(これらは掘削時に泥水にまみれて細粒分を含んでいる)、並びに別途採取された江戸川層の砂を用いた。・・・固化材としては高炉セメントB種を主に使用し、比較のためにセメント系固化材も併用した。」(2601頁23〜29行)、
「(2)配合及び混合: 固化材添加量Cは泥水、発生土混合物1m3当たりの固化材量Kg(外割り)で表し、発生土の混合率aは「発生土、泥水」混合物の湿潤重量に対する、「発生土」の湿潤重量の比で表した。また、余剰泥水が得られない場合を想定し、泥水の代わりに清水(水道水)も使用した。混合は泥水(あるいは清水)、発生土、固化材を同時にホバート型ミキサーで10分間混合して処理土を得た。Cは200kg/m3を標準とした。」(2601頁12〜21行)、
「(1)処理土の流動性並びに材料分離性: 東京層の砂質土についての結果を一軸圧縮強さの結果も対比して、図-3〜5に示した。発生土の混合率の変化に対し、泥水の混和が清水の添加に比べて、ブリージングを顕著に減らし、フロー値の変動も緩和する望ましい効果を示した。これは細粒分量の差と想像されるが、余剰泥水が無く清水を用いる場合は、流動性、材料分離の両面を満足するためには固化材量を増す必要があると予想される。」(2602頁2〜5行)、
「(2)一軸圧縮強さ: 図-5に示すように東京層の砂質土において発生土混合率0.95程度で泥水添加の場合、流動性、材料分離抵抗を満足した上で約70kgf/cm3の圧縮強度を発揮し得ることが分かった。・・・処理土の含水量から水セメント比(w/c)を求め一軸圧縮強さとの関係を描くと図-6の通りである。その値はコンクリートの常識より著しく大きく、更に、土質別、細粒分量別の異なった傾向を示していることが特徴である。」(2602頁6〜13行)。
そして、上記の「都内の洪積粘土(自然含水比88.4%土粒子密度2.655g/cm3)に加水し(た)」泥水が粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土を含むものであることは明らかであるから、上記によると、刊行物1には、「シールド掘削時の発生土などの被処理土に、粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土に水を添加した泥水を混合して当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土をシールドトンネルの道床を支持するための充填部材として充填に供する流動化処理工法において、目標比重に調整した調整泥水を上記被処理土に混合して、その粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とする流動化処理工法。」の発明が記載されている。
刊行物2
「関東ロ-ムなどの細粒土に加水し、固化材との混合を容易にするとともに、処理土の固結前の高い流動性を活用して締固めの困難な狭い隙間を充填しうる流動化処理工法を拡張して、近年必要性が唱えられている残土処理に寄与すべく、細粒土により高い流動性を有する均質な泥状の「母材」を作り、それに粒度の粗い掘削残土に当たる「粗粒土」を骨材として加え、更に適切なセメント系固化材等を添加混合した処理土を得て、埋め戻し材料などの、締固めを伴わない土質安定処理材として活用する可能性を確かめるために行っている実験的研究である。」(2337頁2〜6行)、
「本研究の結果、プラントにおいて集中的に粘性土により流動性の高い「母材」を生産しておき、要望に応じて埋め戻し現場に輸送し、埋め戻し現場で「粗粒土」と見なす現地発生材と固化材を簡単な混合機で適切な配合にもとづいて攪拌混合し、現場で締め固めを伴わずに打設する流動化処理工法の可能性が期待できた。」(2338頁24〜31行)。
また、図-2〜7には、固化材C=100kg/m3における、処理土の流動性、減衰剤による処理士の流動性の変化、処理土の材料分離等の各種配合試験の結果が開示されている。
刊行物3
泥水式シールド工事施工上の泥水管理について、「a.比重 ▲1▼泥水式シールド工法において特に管理が必要な項目である。▲2▼壁面安定に必要な泥水比重を理論的に求める方法は確定されていないが、送泥水は通常1.1〜1.3で管理される。▲3▼比重が大きくなると、ポンプ能力が不足したりして、作業性の低下を招くことになるのでこれらの関係を考慮して、地質に応じた上限値を設けることが必要である。▲4▼比重を上げるるために粘土(粉末粘土、現地発生粘土)を使用することがある。b.粘性 ・・・▲2▼崩壊性地山では高粘土を必要とするが、あまり粘性を高くすると処理中の目づまり等作業性の低下を招くことになる。なお、粘性土質では低粘土でも可能である。▲3▼地山条件によって異なるが、ファンネル粘土で25〜35sec程度で管理するのが望ましい。粘性が高い時(35sec以上)にはP1ポンプ停止時に切羽まで泥水が流れなくなり、したがって切羽水圧の保持ができなくなる場合がある。」(226頁25〜227頁15行)、の記載がある。
(対比・判断)
先ず、本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載の発明とを比較すると、刊行物1に記載の発明の「シールド掘削時の発生土」、「シールドトンネルのコンクリート道床を支持するための充填部材として充填に供する」は、それぞれ請求項1に係る発明の「建設残土」、「埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する」に相当するから、両者は、
「建設残土などの被処理土に、粘土、シルト、べントナイト程度の細粒土に水を添加した泥水を混合して当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、比重を調整した調整泥水を上記被処理土に混合して、その粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とする流動化処理工法。」で一致し、次の点で相違する。
相違点:比重を調整した調整泥水が、本件請求項1に係る発明は、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して比重を調整したものであるのに対し、刊行物1に記載の発明は、目標比重に比重を調整したものである点。
上記相違点について検討すると、刊行物1には、泥水を一定の目標比重に調整することの記載はあるが、これは、本件請求項1に係る発明のように、泥水比重の変化による、泥水混合比と一軸圧縮強度の関係から、被処理土の組成に対応して比重を調整すること、即ち、建設残土の変化によって、予め求めた上記関係から適正比重を選択調整するものではない。刊行物2には、泥水の比重についての記載がない。また、刊行物3には、泥水式シールド工事施工上の泥水管理において、泥水比重を通常1.1〜1.3に管理することが記載されているが、これは、ポンプ能力、作業性等を考慮して所定の目標比重に管理するものであって、上記本件請求項1に係る発明のように、泥水混合比と一軸圧縮強度を考慮して比重を調整するものとは異質のものである。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記の刊行物1〜3に記載のない上記相違点の構成を、流動化処理工法の主要な構成要件とすることにより、品質の安定した流動化処理土が得られる、という格別の効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明及び請求項1を引用する本件請求項2〜5に係る発明は、上記刊行物1〜3に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件請求項1〜5に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(4)むすび
以上、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項、同条第3項において準用する平成6年改正前同法第126条第1-3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人、中村昭一は、訂正請求前の特許請求の範囲の請求項1〜5に係る発明は、上記刊行物2の甲第1号証又は上記刊行物1の甲第2号証に記載された発明であるか、或いは甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定によるか、或いは同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。
(2)判断
上記訂正後の本件請求項1〜5に係る発明は、上記II.(3)で示したように、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明と同一であるとも、或いは甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本件請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
流動化処理工法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 建設残土などの被処理土に、粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土に水を添加した泥水を混合して当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して比重を調整した調整泥水を上記被処理土に混合してその粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることを特徴とする流動化処理工法。
【請求項2】 被処理土に対する前記調整泥水の混合の際に、所要の固化材を添加して、所要の流動化処理土とすることを特徴とする請求項1に記載の流動化処理工法。
【請求項3】 前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、流動化処理土を、所要の一軸圧縮強度を有し、かつフロー値を100mm以上、ブリージング率を3%以下とすると共に、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)を0.1〜1.0とすることを特徴とする請求項1または2に記載の流動化処理工法。
【請求項4】 前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、前記固化材の添加量を、所要の一軸圧縮強度に応じて、前記被処理土と前記調整泥水との混合物1m3当たり50〜200kg、好ましくは約100kgとすることを特徴とする請求項2または3に記載の流動化処理工法。
【請求項5】 前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、前記調整泥水の比重を1.02〜1.20とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流動化処理工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、主として、土木建設現場において発生した残土を、施工後の埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する際、被処理土(残土)の流動化を行うための流動化処理工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の流動化処理工法としては、既に、水とセメント系あるいは石灰系の固化材とを、被処理土(建設残土)に混合して、流動化し、埋め戻し、裏込め、充填の際の作業効率を向上し、しかも、転圧などの機械的手段によらず、必要な強度を確保できるように工夫した工法(例えば、特開昭63-233115号公報などの土砂埋戻し充填工法など)が、既に提唱されている。
【0003】
ここでは、掘削工事などで発生した建設残土(発生土)を、埋め戻し、裏込め、充填の際の被処理土として採用する場合、地山と同じような強度と流動性とを確保するために、被処理土に水を(必要に応じて固化材も)加えて、調整する必要があるが、発生土の種類が異なると、品質が安定しない。そこで、被処理土の成分によっては、例えば、地山強度並の圧縮強度1〜5kg/cm2を実現するために、水を多く添加することになり、混合状態が悪化し、ブリージング(材料分離性)が大きくなる欠点がある。そこで、上述のように、適量の固化材を被処理土に加えて、安定した品質を確保し、また、ブリージング率を小さくすることが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水の消費コストも然ることながら、セメント系や石灰系の固化材を使用することによるコストは、その埋め戻し量、裏込め量、充填量に比例して膨大な額となり、経済性の上で、大きな障害となる。
【0005】
本発明者は、連続地中壁、連続土留め壁などの建設基礎工事で発生する泥土や泥水シールド、土圧シールド工事などで発生する泥土、または、湖底や海底に沈殿するヘドロなどが、かなりの粘土、シルト程度の細粒分を含んでいる点に着目し、これらが、上記固化材の役目を担うことができるか否かを研究した。
【0006】
その結果、多くの場合、産業廃棄物として多量に発生する上記泥土は、その発生時の、80%程度の水を含む泥水の状態のまま、被処理土に混合、分散することで、被処理土の埋め戻し、裏込め、充填に際して、その流動化を実現し、必要な強度を確保し、また、ブリージングを小さくできることを見出した。勿論、現実には、被処理土の成分の割合によっては、これを流動化するための泥水の成分を或る程度、調整する必要が生じるが、これは程度の問題であり、経済性の点から、また、廃棄物再利用の点からは、明らかに、従来の処理工法に比べ、格段に有利である。
【0007】
【発明の目的】
本発明は上記事情に基いてなされたもので、主として、建設基礎工事などで発生する泥水を、被処理土の埋め戻し、裏込め、充填に際して、これに混合、分散して、適正な成分での流動化を実現した流動化処理工法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明では、建設残土などの被処理土に粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土に水を添加した泥水を混合し、当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して調整した調整泥水を上記被処理土に混合してその粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることを特徴とする。
【0009】
本発明は、被処理土と泥水とを混合して流動化処理土を作製する際に、所要の固化材を添加することを特徴とする。これにより、得られる流動化処理土に所定の強度を確保することができる。この固化材の添加においては、被処理土と泥水との混合に際して配合試験を行って泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化を求め、得られた結果より、固化材の添加量を、所要の一軸圧縮強度に応じて、被処理土と泥水の混合物1m3当たり50〜200kg/m3、好ましくは約100kg/m3とする。
【0010】
また、本発明においては、被処理土と泥水との混合に際して配合試験を行って泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化を求め、得られた結果より、流動化処理土を、所要の一軸圧縮強度を有し、かつフロー値を100mm以上、ブリージング率を3%以下とすると共に、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)を0.2〜1.0としても良い。さらに、本発明においては、好ましくは調整泥水の比重を1.02〜1.20とする。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の流動化処理工法について具体的に説明する。先ず、建設基礎工
事などで発生する泥水についての一般的な成分量を以下に示す。
水分 :70〜95%
礫 (2mm以上) :0%
砂 (2〜0.074mmの範囲) :0〜5%
シルト (0.074〜0.005mmの範囲) :0〜10%
粘土 (0.005mm以下) :5〜30%
但し、粘土には、0.001mm以下のコロイド分を含んでおり、本発明に有効なのは、水分(Ww)と粘土(Ws)であって、W=Ww+Ws(Wは泥水量)、また、Ww/Ws=50〜1000(%)が好適する。
【0012】
このような組成は、以下の表1に示すように、日本の各地(東京/横浜/大阪)で行なわれている工事現場から実際に採取した泥水の成分割合からも、明らかである。
【0013】
【表1】

【0014】
このような泥水を、建設残土(建設発生土)である被処理土に混合して流動化処理土を生成する場合、本発明で有効な範囲を、図1のグラフで示す。なお、縦軸には、地盤に必要な強度を、また、横軸には、泥水混合比(混合した泥水の重量/被処理土としての建設発生土の湿潤重量)を示している。即ち、泥水混合比が0.2とは、泥水2kgに対して、建設発生土10kgの場合を示す。また、データは、4通りの比重(パラメータとして)の調整泥水について、プロットしている。ここでは、施工条件で要求される高い強度を確保するために、セメント系あるいは石灰系の固化材を補填することがなされており、上記データの場合は、セメントを100kg/m3の割合で、泥水混合の際に添加する。なお、この混合には、市販の往復回転式攪拌機を使用するとよい。
【0015】
上記グラフで、フロー値、ブリージング率が、本発明に係る流動化処理土による埋め戻し、裏込め、充填などの成果を決定する主要な因子である。即ち、フロー値は、泥水を建設発生土に混合して、流動化処理土を生成する際の土の流動性を示す指標である。グラフには、フロー値=100mm(これは日本道路公団の基準であり、JIS基準では180mm)の場合を点線で示してあるが、この線を下限として、グラフの右側に向けて、流動性が増す。なお、これは参考値であるが、この値をとれば、実際の施工で、必要な流動性を十分確保できる。
【0016】
また、ブリージング率は、泥水と固化材を建設発生土に混ぜ、攪拌した後に、処理土から滲み出てくる水の量を示す指標であり、グラフには、ブリージング率=1%(上限)の場合を、1点鎖線で示してある。本発明のように、泥水を用いることで、上記ブリージング率は大幅(従来の10%台から3%、好ましくは1%以下)に低下する。これは、工学的には大変に有利な性能であり、固定化の際の体積収縮率を大幅に低減する効果がある。
【0017】
上記泥水混合比は、建設発生土をできるだけ元に埋め戻すなどの要求を満たすことを勘案すると、実際上、0.1〜1.0程度が好ましい値である。このような条件を考慮すると、本発明で有効な流動化処理土の範囲は、図1に示すように施工条件で要求される一軸圧縮強度、フロー値100mm以上、ブリージング率3%以下、泥水混合比0.1〜1.0程度に決められる。なお、混合に際して、現場での具体的な指標としては、調整泥水の比重を用いるのが便利である(調整泥水の組成を考慮することは、勿論、大切である。)
【0018】
即ち、本発明の流動化処理工法では、調整泥水比重が1.02〜1.20(グラフに使用したデータは、1.05、1.10、1.15、1.20の4種類)の範囲を対象として、上記条件で、泥水の組成(シルト、ベントナイトの混入を含む粘土分を15%〜40%程度、確保するように)および水分の調整を行なうのである。なお、建設現場の発生土の土性により、その有効な比重を選択する必要があるので、どの比重が有効かを、流動化処理土の作製に先立ち、簡単な配合試験で確認する必要がある。この配合試験においては、発生土(被処理土)と、固化材と、泥水との複数の異なる配合比に対して、調整泥水の比重と流動化処理土のフロー値、調整泥水の比重と流動化処理土の一軸圧縮強度、および調整泥水の比重と流動化処理土のブリージング率との関係をそれぞれ求める。これらの結果を基に調整泥水の比重を決定し、さらに所望の性質(一軸圧縮強度、ブリージング率、フロー値など)が得られるような配合比(泥水混合比)を図1のグラフを基に決定する。なお、この流動化処理土を用いて、建設現場での埋め戻し、裏込め、充填を行なう場合、ポンプ圧送などが採用される。
【0019】
従来の、水とセメント系あるいは石灰系固化材とを、被処理土に混合する場合に比較して、本発明の泥水を用いる流動化処理工法の場合の優位性を証拠立てる事例は、本発明に係る技術が開発途上にある関係で、多くはないが、以下に述べる1つの事例が、十分に、このことを数値的に示している。
【0020】
この事例は、本発明の流動化処理工法を、建設基礎工事で発生する泥水を適用して、通常の対象である、建設現場で発生する土の埋め戻し、裏込め、充填に際しての発生土の流動化に実施する場合ではなく、埋め戻し用の土砂として、火山灰土を利用する立場から検討したものである。
【0021】
即ち、鳥取、島根地方には、特有な火山灰土が広く分布しており、通称「水マサ土」と言われており、黄褐色で、一見、砂礫的な外観を呈するが、シルト分以下の粘土質などの成分を30〜40%程度、含み、かなり粘土化が進んでいて、礫状、砂状のものでも、指で容易にすり潰すことができる程度である。このために、通常は、土木工事に際してこの地山を乱してしまうと、機械化施工が困難になるので、捨土として処理されているが、産業廃棄物の再利用として、活用する要求がある。そこで、本発明の流動化処理工法を用い、その「水マサ土」の再利用について研究したのである。
【0022】
実験には、米子市周辺の4地点で、目視の結果、性状が異なるであろうと思われる「水マサ土」を試料として採取した。なお、表2において、試料(A、B、C、D)の土性を明らかにしている。
【0023】
【表2】

【0024】
この実験には、自然状態の「水マサ土」に泥水、および、固化材を混合攪拌した本発明に係る流動化処理土と、これに対比するために、自然状態の「水マサ土」に清水、および、固化材を混合攪拌した従来に係る流動化処理土とをそれぞれ、用意し、粗粒土混合率の0.6〜0.9の範囲について調べた。なお、攪拌にはホーバート型ミキサーを用い、その攪拌時間を5分間とした。また、固化材に一般軟弱地盤改良用固化材を用い、ぞの添加量を外割で100kg/m3とした。本発明に係る泥水には、洪積粘土(東京都産)に加水、攪拌し、密度1.05および1.10(gf/cm3)の2種類を用意した。
【0025】
このようにして用意した混合物(流動化処理土)の物性試験の結果は、図2ないし図5に示されている。この実験では、混合直後の混合物の含水比、密度を測定して、フロー試験(JIS R 5201)、ブリージング試験(JSCE-1986)を行ない、その後、直径35mm、高さ90mm程度の供試体を製作し、20℃、湿度80%の恆温室で、湿空養生した。1つの条件の強度特性は、1種につき、4本の供試体で一軸圧縮試験(JIS A 1216)を行ない、7日、28日の経過後の強度特性を調べた。
【0026】
その結果、材料分離抵抗性については、被処理土の流動化に清水を採用した場合、そのブリージング率を1%程度に押えようとすると、粗粒土混合率0.5〜0.7以上が要求されるが、本発明のように、泥水を採用した場合には、それが広い範囲に適応できる傾向が認められる。従って、材料分離を嫌う用途には、泥水による混合が、流動化処理について期待できる(図2参照)。
【0027】
流動性については、その泥水の混合率とフロー値との関係(図3参照)から、泥水の場合が、清水の場合に比べ、フロー値を下げている。これは、混合率の増加に伴い、相対的に含有水分量が減少するためである。試料の特徴からすると、細粒分が相対的に多い試料Dが、その傾向を顕著に示すことが解る。また、大きい礫を多く混入した試料Cが特異な性状を呈している。
【0028】
強度特性については、養生7日、28日の場合の一軸圧縮強さで、図4および図5に示されている。本発明のように、泥水の混合率が大きくなると、混合物中の水分が相対的に少なくなるので、水セメント比的な考えからすると、混合率が大きくなる程、強度が増すと想像できる。
【0029】
このように、本発明の流動化処理工法では、埋め戻しなどに用いる泥土の品質の安定化は勿論、従来の、単に水と固化材とを被処理土に混合する場合よりも、ブリージングを減少し、強度を確保できることになる。しかも、セメントなどの固化材を、相当程度、節減できる効果もある。即ち、埋め戻し部分の強度は、固化材の量を増加することで増すが、加える泥水の濃度(粘土分)を上げることでも増すことができる。セメントなどの固化材は高価なので、その要求強度が1〜5kg/cm3であれば、固化材を一定量として、泥水の濃度を調節するのが、経済性の上で好ましいのである。
【0030】
なお、上述のように、本発明に流動化処理工法では、泥水を被処理土に混合する際、必要に応じて、セメント系あるいは石灰系などの固化材を添加し、強度の補強を行なうようにしてもよい。この場合、従来のように、単に、水を用いて、土と固化材とを混合するよりも、泥水を用いて、土と固化材とを混合する方が、泥土に対する固化材の分散が均等になるという効果も加わる。また、流動性、固化時間の短縮などの目的で、別に適当な添加剤、混和剤などを用いてもよい。また、泥水の成分に粘土分が多い場合には、比重が増すので、流動性を確保するため、空気などを気泡の状態で混入することも有効である。
【0031】
更に、本発明では、原則として、建設基礎工事などで発生する泥水を、被流動化の発生土の組成に対応して、調整し、混合するが、必要ならば、天然の粘土を水で解泥し、使用しても良いことは勿論である。
【0032】
【発明の効果】
本発明は以上詳述したように、建設残土などの被処理土に粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土を含む泥水を混合し、当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と、流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して比重を調整した調整泥水を上記被処理土に混合してその粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることで、従来の、単に水と固化材とを被処理土に混合する場合よりも、ブリージングを減少し、強度を確保できることになる。しかも、セメントなどの固化材を、相当程度、節減でき、また、産業廃棄物である泥水を活用して、被処理土の流動化に供するため、この点でも、産業上の大きな利益を生む効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の流動化処理工法による流動化処理土の性能を示すグラフである。
【図2】 本発明を適用した流動化処理土の一例を、従来の流動化処理土と比較して示す、ブリージング率〜混合率のグラフである。
【図3】 同じく、混合率とフロー値との関係を示すグラフである。
【図4】 同じく、7日養生した後の一軸圧縮強さを示すグラフである。
【図5】 同じく、28日養生した後の一軸圧縮強さを示すグラフである。
 
訂正の要旨 本件訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の記載を下記訂正事項▲1▼〜▲7▼のように訂正するものである。
訂正事項▲1▼
特許請求の範囲の請求項1〜5の記載を、次のように訂正する。。
「【請求項1】建設残土などの被処理土に、粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土に水を添加した泥水を混合して当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して比重を調整した調整泥水を上記被処理土に混合してその粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることを特徴とする流動化処理工法。
【請求項2】被処理土に対する前記調整泥水の混合の際に、所要の固化材を添加して、所要の流動化処理土とすることを特徴とする請求項1に記載の流動化処理工法。
【請求項3】前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、流動化処理土を、所要の一軸圧縮強度を有し、かつフロー値を100mm以上、ブリージング率を3%以下とすると共に、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)を0.1〜1.0とすることを特徴とする請求項1または2に記載の流動化処理工法。
【請求項4】前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、前記固化材の添加量を、所要の一軸圧縮強度に応じて、前記被処理土と前記調整泥水との混合物1m3当たり50〜200kg、好ましくは約100kgとすることを特徴とする請求項2または3に記載の流動化処理工法。
【請求項5】前記被処理土と前記調整泥水との混合に際して配合試験を行って前記泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、前記調整泥水の比重を1.02〜1.20とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流動化処理工法。」
訂正事項▲2▼
明細書段落【0003】の「細流分を多く含み、かつ、比重を調整した泥水を」を、「適量の固化材を」に訂正する。
訂正事項▲3▼
明細書段落【0008】、【課題を解決するための手段】の記載を、「このため、本発明では、建設残土などの被処理土に、(粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土に水を添加した泥水を混合し、当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して調整した調整泥水を上記被処理土に混合して、その粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることを特徴とする。」に訂正する。
訂正事項▲4▼
明細書段落【0009】第5行及び明細書段落【0010】第2行の「配合試験を行い、」を、「配合試験を行って泥水比重の変化による泥水混合比と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化を求め、」にそれぞれ訂正する。
訂正事項▲5▼
明細書段落【0009】第1行及び第2行、同段落【0010】第2行、同段落【0014】第1〜2行、同段落【0015】第1行及び第3行、同段落【0017】第3行、同段落【0018】第6行及び第13行、同段落【0024】第2行及び第3行、同段落【0025】第1行、明細書の【図面の簡単な説明】項の【図1】及び【図2】の「調整泥水」を、それぞれ「流動化処理土」に訂正する。
訂正事項▲6▼
明細書段落【0018】の「調整泥水の比重とフロー値、調整泥水の比重と一軸圧縮強度、および調整泥水の比重とブリージング率との関係をそれぞれ求める。」を、「調整泥水の比重と流動化処理土のフロー値、調整泥水の比重と流動化処理土の一軸圧縮強度、および調整泥水の比重と流動化処理土のブリージング率との関係をそれぞれ求める。」に、同「配合比(泥水混合比)を決定する。」を、「配合比(泥水混合比)を図1のグラフを基に決定する。」に、それぞれ訂正する。
訂正事項▲7▼
明細書段落【0032】【発明の効果】の「建設残土などの被処理土を、その流動性を高めた状態で、埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する際、上記被処理土の流動化を行なう流動化処理工法において、上記被処理土の組成に対応して、選択・調整された、粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土を含む泥水を混合して、上記被処理土の粗粒分の間に分散し、所要の調整泥水とすることで、」を、「建設残土などの被処理土に、粘土、シルト、ベントナイト程度の細粒土を含む泥水を混合し、当該被処理土の流動性を高めた流動化処理土を埋め戻し、構造物への裏込め、空洞部への充填に供する流動化処理工法において、前記泥水の比重の変化による、泥水混合比(泥水の重量/被処理土の湿潤重量)と流動化処理土の一軸圧縮強度の変化に基づき、上記被処理土の組成に対応して比重を調整した調整泥水を上記被処理土に混合してその粗粒分の間に分散し、所要の流動化処理土とすることで、」に訂正する。
異議決定日 1999-08-05 
出願番号 特願平5-182108
審決分類 P 1 651・ 113- YA (E02D)
P 1 651・ 121- YA (E02D)
最終処分 維持  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 櫻井 義宏
青山 待子
登録日 1997-12-12 
登録番号 特許第2728846号(P2728846)
権利者 久野 悟郎
発明の名称 流動化処理工法  
代理人 高見 和明  
代理人 杉村 純子  
代理人 杉村 興作  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 杉村 暁秀  
代理人 中谷 光夫  
代理人 杉村 興作  
代理人 杉村 暁秀  
代理人 杉村 純子  
代理人 徳永 博  
代理人 青木 純雄  
代理人 梅本 政夫  

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