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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B01F
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01F
管理番号 1020418
異議申立番号 異議1998-76122  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-02-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-24 
確定日 1999-09-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2768205号「乳化油脂組成物の製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2768205号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1、手続の経緯
特許第2768205号の請求項1〜4に係る発明は、平成5年3月3日(優先日、平成4年3月4日、日本)に特許出願され、平成10年4月10日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、清本鐵工株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内平成11年5月11日付けで訂正請求がなされたものである。
2、訂正の適否
2-1、訂正の内容
上記訂正請求における訂正の内容は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的として、
▲1▼訂正事項a
請求項1の「均一な孔径を有する多孔質膜の孔径に対して、1〜20倍の平均粒子径を有する乳化油脂組成物を予め作成し、該乳化油脂組成物を前記均一な孔径を有する多孔質膜に通過させることで平均粒子径が前記多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化することを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。」を、「均一な孔径を有する多孔質膜の孔径に対して、1〜20倍の平均粒子径を有する予備乳化油脂組成物を、油相部と水相部とから乳化剤を用いて予め作成し、該予備乳化油脂組成物を前記均一な孔径を有する多孔質膜に通過させることで細分化して平均粒子径が前記多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化することを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。」と訂正する。
さらに、明りようでない記載の釈明を目的として、
▲2▼訂正事項b
請求項2の「内相を水、外相を油とした油中水型乳化油脂組成物」を「内相を水、外相を油とした予備乳化油中水型乳化油脂組成物」と訂正し、請求項3の「内相を油、外相を水とした水中油型乳化油脂組成物」を「内相を油、外相を水とした予備乳化水中油型乳化油脂組成物」と訂正し、
請求項4の「予め作成される乳化油脂組成物」を「予め作成される予備乳化油脂組成物」と訂正する。
2-2、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、「乳化油脂組成物」を「予備乳化油脂組成物」に限定し、多孔質膜に通過させることで「細分化」することを限定するものであり、かつこれらの事項は、本件明細書0009、0011、0012、0013段落に記載されているから、特許請求の範囲の減縮に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではなく、新規事項の追加にも該当しない。
また、上記訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記訂正事項aの訂正に伴うものであり、減縮された請求項1の記載と請求項2〜4の記載を整合させるために明りょうでない記載の釈明を行うことを目的とする訂正に該当する。
2-3、独立特許要件
2-3-1、特許法第29条第1項第3号、第2項について
2-3-1-1、本件発明
本件の請求項1〜4に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、それぞれその特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものである。
「【請求項1】均一な孔径を有する多孔質膜の孔径に対して、1〜20倍の平均粒子径を有する予備乳化油脂組成物を、油相部と水相部とから乳化剤を用いて予め作成し、該予備乳化油脂組成物を前記均一な孔径を有する多孔質膜に通過させることで細分化して平均粒子径が前記多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化することを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項2】内相を水、外相を油とした予備乳化油中水型油脂組成物を予め作成し、多孔質膜に通過させることにより再乳化する請求項1記載の油中水型乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項3】内相を油、外相を水とした予備乳化水中油型油脂組成物を予め作成し、多孔質膜に通過させることにより再乳化する請求項1記載の水中油型乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項4】請求項2または請求項3の乳化油脂組成物の製造方法において、予め作成される予備乳化油脂組成物の水相部に添加される乳化剤のHLBが10.0以上であることを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。」
2-3-1-2、引用刊行物の記載内容
当審が先に通知した取消理由通知に引用された刊行物1(特開平3-266921号公報)には、乳製品の除菌及び均質化方法が記載されており、特に次のことが記載されている。
(a)「乳及び/又は乳製品を膜を用いて濾過することにより乳及び/又は乳製品の雑菌類、夾雑物以外の全成分を選択透過させ、もって除菌とともに均質化された濾液を得ることを特徴とする乳製品の製造方法。」(請求項1)、
(b)「膜として平均細孔径が0.6μm以下で、0.7μmより大きな孔を有さない無機多孔質膜を使用すること」(請求項2)、
(c)「ここで云う乳及び乳製品とは、乳等省令で示されている乳及び乳製品は勿論、これらの合成または類似物も含めたものである。」(第1頁右欄最終行〜第2頁左上欄第2行)、
(d)「従って、膜濾過の前に予しめ乳及び乳製品を均質化して平均脂肪球径を小さくしておくことによって、最低透過圧力を下げることもできる。」(第2頁右下欄第15〜17行)
(e)試験例2では「膜の細孔径と除菌の度合及び透過後の脂肪球の平均粒子径との関係をまとめた表2の結果から明らかなように、細孔径0.6μm程度までは除菌の効果が高いことがわかる。」(第4頁左下欄)とさ、表2には、平均細孔径(μm)0.3のときに平均粒子径(μm、透過後)が1.4で除菌状態がA、平均細孔径(μm)0.4のときに平均粒子径(μm、透過後)が1.8、1.8、2.2で除菌状態がそれぞれA、A、A、平均細孔径(μm)0.5のときに平均粒子径(μm、透過後)が2.2、2.4、2.6で除菌状態がそれぞれA、A、A、平均細孔径(μm)0.6のときに平均粒子径(μm、透過後)が2.4、2.6、3.0で除菌状態がそれぞれA、A、B、平均細孔径(μm)0.7のときに平均粒子径(μm、透過後)が2.6、3.0、3.4で除菌状態がそれぞれB、C、C、平均細孔径(μm)1.0のときに平均粒子径(μm、透過後)が3.0、3.5、4.7で除菌状態がそれぞれC、C、Cの場合が示されている。
(f)試験例3では「乳、乳製品の乳脂肪が膜を透過する際の最低の透過圧力と、透過前の脂肪球の粒子径の関係を試験し、表3の結果を得た。」(第5頁左上欄)とされ、表3には、平均細孔径(μm)0. 2のとき、平均粒子径(μm、透過前)が0.5、1.0、3.0の場合の最低透過圧力、平均細孔径(μm)0.3のとき、平均粒子径(μm、透過前)が0.5、1.0、3.0、5.0の場合の最低透過圧力、平均細孔径(μm)0.5のとき、平均粒子径(μm、透過前)が0.5、1.0、3.0、5.0の場合の最低透過圧力、が示されている。
同じく刊行物2(杉田他編「新編日本食品事典」医歯薬出版株式会社 第317頁(昭和58年4月10日)には、クリームとは牛乳を遠沈して得られた水中油滴型の乳脂肪エマルジョンを云うと記載されている。
同じく刊行物3(特開平2-95433号公報)には、エマルションの製造方法が記載されており、特に次のことが記載されている。
(g)「先ず、0/W型エマルションを製造する場合には、油相よりも水相に濡れやすい円筒型のミクロ多孔膜体をモジュールに装着しておく。油相は、タンク(11)からポンプ(17)および圧力計を備えたライン(21)、モジュール内の円筒型のミクロ多孔膜体の外側およびライン(23)を経て、循環されている。一方、水相は、タンク(13)からポンプ(25)および圧力計を備えたライン(29)、モジュール内の円筒型のミクロ多孔膜体の内側、およびポンプ(31)および流量計を備えたライン(35)を経て、循環されている。この状態で、前記定義した最小圧力を若干上回る圧力を油相に加え、ミクロ多孔膜体を通過させて、水相内に圧入させると、油相粒子(エマルション粒子)が水相中に分散したエマルションが形成され始め、タンク(13)に入る。当初のエマルションの濃度は低いが、これは、水相とともに前記の循環経路を繰り返し循環する間に、次第に濃度を高め、やがては所望の濃度に到達する。W/O型エマルションを製造する場合には、第3図に示す装置において、水相よりも油相に濡れやすい円筒型のミクロ多孔膜体をモジュールに装着するとともに、タンク(11)内に水相を収容し、タンク(13)内に油相を収容して、前記と同様の操作を行えば良い。」(第4頁右欄第1行〜第5頁左上欄第8行)、
(h)「多相系エマルションの製造も容易に行い得る。例えば、W/0/W型エマルションを製造する場合には、先ず、水相よりも油相に濡れやすいミクロ多孔膜体を使用し、上述の方法により油相中に水相を圧入して、W/O型エマ ルションを調製した後、水相により濡れやすいミクロ多孔膜体を通過させて水相中に圧入し、所望のW/0/W型エマルションを得ることが出来る。或いはO/W/O型エマルションを得ることができる。」(第5頁左上欄第17行〜右上欄13行)
同じく刊行物4(堀口博著「新界面活性剤」三共出版株式会社第67、89、90頁(昭和56年6月1日))には、乳化剤に関して「乳化剤としては一般にHLBが8〜18のものはO/W型エマルジョンに、4〜7はW/O型エマルジョンに適するなどといわれるが、基礎的には親水基が水和性、イオン性が強いものは一般的にO/W型エマルジョンを作るのに適し、これとは逆に親油傾向の強いものはW/O型エマルジョンに適し、高分子乳化剤は分離相微粒子表面に被膜を作ると共に液の粘度を上昇せしめるのに役立つことが多い。」(第89頁)と記載されている。
同じく刊行物5(鈴木洋著「界面と界面活性剤」産業図書株式会社 第37、72、73頁(平成2年1月23日))には、図3・4「HLBと溶解性および用途の関係」として、HLB8〜18のとき、用途がO/W型乳化剤であることが示されている。また、表4・3「各種油類の要求HLB」として、油がシリコーンのとき、HLB値(O/W)が10.5であること、同じく流動パラフィンのとき12〜14、ケロシンのとき12.5、セチルアルコールのとき13、ベンゼン,キシロールのとき14〜16、フタル酸ジメチルのとき15、オレイルアルコールのとき16〜18、ステアリン酸のとき17であることが示されている。
2-3-1-3、請求項1に係る発明について
訂正後の請求項1に係る発明(以下、訂正第1発明という。)は、「 多孔質膜の孔径に対して1〜20倍の平均粒子径を有する、油相部と水相部とから乳化剤を用いて予め作成した予備乳化油脂組成物を多孔質膜に通過させることで細分化して平均粒子径が多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化している」点を構成要件としており、これにより「 急激な粘度上昇等を伴うことなく、粒子径が均一化され粒子径分布が狭く粒子径の分布に起因する水相および油相の分離、衛生上の問題を解消することが出来、従来にない物性、食感、風味を有した乳化油脂組成物が得られる」という効果を奏するものである。
これに対して、刊行物1に記載された発明は、刊行物1の試験例3の平均細孔径と透過前の脂肪球の平均粒子径の関係を計算すると、透過前の脂肪球の平均粒子径は平均細孔径の1〜16.6倍であり、また、試験例2の除菌状態Aの場合の平均細孔径と透過後の平均粒子径の関係を計算すると、透過後の平均粒子径は平均細孔径の4〜5.5倍であると云えるから、「予め均質化して平均脂肪球径を膜の平均細孔径の1〜16.6倍と小さくした乳及び乳製品を膜を用いて濾過し、平均粒子径が膜の4〜5.5倍となるよう均質化している」点を構成要件とするものであると云うのが相当である。
そこで、訂正第1発明の「予備乳化油脂組成物」と刊行物1に記載された発明の「乳及び乳製品」を対比すると、刊行物1に記載された発明は、「予め均質化して平均脂肪球径を小さくした乳及び乳製品」を使用するものであるが、この乳製品は油相部と水相部とから乳化剤を用いて作成するものではないから、訂正第1発明の「油相部と水相部とから乳化剤を用いて予め作成した予備乳化油脂組成物」というものではない。
また、多孔質膜通過後の平均粒子径についても、刊行物1に記載された発明は4〜5.5倍であり、訂正第1発明の1〜3倍と相違している。
したがって、訂正第1発明は、刊行物1に記載された発明であるとすることはできない。
次に、刊行物2〜5について検討するに、これら刊行物にも、訂正第1発明の「多孔質膜の孔径に対して1〜20倍の平均粒子径を有する、油相部と水相部とから乳化剤を用いて予め作成した予備乳化油脂組成物を多孔質膜に通過させることで細分化して平均粒子径が多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化している」点については、記載も示唆もされていない。
すなわち、刊行物2には、クリームについて記載されているだけであり、刊行物3にも、循環経路にミクロ多孔膜体を配設し、繰り返し循環することにより所望の濃度のエマルションを得ることについて記載されているだけである。また、刊行物4には、各種エマルションに適する乳化剤のHLB値について記載されているだけであり、刊行物5にも、各種油類をエマルション化する際の乳化剤の要求されるHLB値について記載されているだけである。
したがって、訂正第1発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
なお、特許異議申立人は、当審の審尋に対する回答書で甲第7〜10号証を提出して、刊行物1に記載された「乳及び乳製品」について、この乳製品も還元牛乳等を含むから、訂正第1発明における「油相部と水相部とから乳化剤を用いて予め作成した予備乳化油脂組成物」に相当する旨主張しているが、甲第7号証に記載された生乳は自然物であるから予め作成した予備乳化油脂組成物とは云えず、甲第8〜10号証に記載された還元牛乳、イミテーションミルクも、使用されている脱脂乳が乳化剤とは云えないから、乳化剤を用いて予め作成した予備乳化油脂組成物とは云えない。
また、特許異議申立人は、刊行物1の試験例2の平均細孔径が1.0μmのとき透過後の平均粒子径が3.0μmである場合をもって、刊行物1に記載された発明でも平均粒子径が多孔質膜の孔径の3倍となるように再乳化している旨主張している。
しかしながら、刊行物1に記載された発明は、上記2-3-1-2(b)の記載で明らかなように、膜の平均細孔径は0.6μm以下とするものであり、したがって、試験例2における平均細孔径が1.0μmの例は除菌状態がCという単なる比較例であることは明らかであるから、特許異議申立人の上記主張は、比較例の値を都合良く組合わせただけのものであり、当を得たものではない。
2-3-1-4、請求項2〜4に係る発明について
訂正後の請求項2〜4に係る発明は、訂正後の請求項1を引用してなるものであるから、訂正後の請求項1に係る発明と同様の理由により、刊行物1〜5に記載された発明とすることはできないし、また、刊行物1〜5記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとすることもできない。
2-3-2、特許法第36条第4、5項について
明細書の記載不備については、訂正明細書の実施例6、7に、多孔質膜の外径、厚さ、平均孔径、膜の材質、通過圧力、平均通過速度の記載があるから、訂正明細書は当業者が容易に実施し得る程度に記載されているものと云える。
2-3-4、まとめ
以上のとおり、訂正後の請求項1〜4に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、上記訂正請求は、特許法第1120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3、特許異議申立てについて
3-1、本件発明
本件請求項1〜4に係る発明は、上記2-3-1-1において摘記したとおりのものである。
3-2、申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1〜6号証(甲第1号証は本件特許公報、甲第2〜6号証は上記2-3で引用した刊行物1〜5とそれぞれ同じ。)を提出し、請求項1〜4に係る発明の特許は下記の理由▲1▼乃至▲3▼により取り消されるべきものである旨主張している。
理由▲1▼
請求項1〜3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、請求項1〜3に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
理由▲2▼
請求項2、4に係る発明は、甲第2、4、5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、4に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
理由▲3▼
請求項1〜4に係る発明の特許は特許法第36条第4、5項の規定に違反してなされたものである。
3-3判断
これら理由▲1▼乃至▲3▼については上記2-3で述べたとおりである。
4、むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1〜4に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
乳化油脂組成物の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 均一な孔径を有する多孔質膜の孔径に対して、1〜20倍の平均粒子径を有する予備乳化油脂組成物を、油相部と水相部とから乳化剤を用いて予め作成し、該予備乳化油脂組成物を前記均一な孔径を有する多孔質膜に通過させることで細分化して平均粒子径が前記多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化することを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項2】 内相を水、外相を油とした予備乳化油中水型油脂組成物を予め作成し、多孔質膜に通過させることにより再乳化する請求項1記載の油中水型乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項3】 内相を油、外相を水とした予備乳化水中油型油脂組成物を予め作成し、多孔質膜に通過させることにより再乳化する請求項1記載の水中油型乳化油脂組成物の製造方法。
【請求項4】 請求項2または請求項3の乳化油脂組成物の製造方法において、予め作成される予備乳化油脂組成物の水相部に添加される乳化剤のHLBが10.0以上であることを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、油中水型乳化油脂組成物(以下、「W/O型エマルション」という。)または水中油型乳化油脂組成物(以下、「O/W型エマルション」という。)等の乳化油脂組成物の新規な製造方法に関し、更に詳しくは、粒子径分布幅が狭く非常に均一な粒子径を有するエマルションを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エマルションは、その構造上、油中水型(以下、「W/O型」という。)、および水中油型(以下、「O/W型」という。)に大別される。前者は、食感、風味の面で良好なことからホイップクリーム等に利用されるとともに、製菓、製パン用改良剤としても利用されている。また、後者は、マーガリンに代表されるように、製菓、製パン用、調理用、スプレッド用等として多方面で幅広く利用されている。
【0003】
今日、上記のようなエマルションを作成する場合、油相あるいは水相に界面活性剤(以下、「乳化剤」という。)を添加するとともに、攪拌機、ホモゲナイザー等により剪断応力を加えている。更には、目的に応じた粒子径を有するエマルション製品を得るべく水相や油相に添加する乳化剤の種類や添加量の組み合わせ、剪断応力の強弱によりエマルションの粒子径をコントロールしている。
【0004】
このエマルションの粒子径が、ホイップクリームやマーガリン等の食感、風味、物性に大きく影響を及ぼすことはよく知られており、目的とする機能を得るために敢てエマルション粒子径をコントロールする場合もある。しかしながら、食感、風味と乳化安定性との間には互いに相反する関係があり、例えば、ある一定の呈味物質を水相に添加したW/O型エマルションの場合、粒子径の大きいエマルションは粒子径の小さいエマルションに比べて格段においしく、ライト(軽い)な食感が得られるものの、乳化性の面で見ると粒子径の小さいエマルションに較べて水相部分の分離等安定性に欠け、カビの発生など衛生的欠点が生じることとなる。また逆に、粒子径の小さいエマルションは粒子径の大きなエマルションに較べて安定的であるが、味が出にくく、油っぽい食感となってしまう。
【0005】
一方、上記のような食感あるいは安定性とは異なった観点から粒子径を非常に小さくすることも今日数多くなされている。例えば、W/O型エマルションにおいては、最近の食生活の健康食品への傾斜から低カロリー化(低油分化)のために内相の水分量を多くする必要があり、この場合には、多量の水分を閉じ込めるべく高圧ホモゲナイザー等により微細粒子のエマルションを作成している。しかしながら、高圧ホモゲナイザー等により微細化されたエマルションは、その粒子分布幅は非常に狭いものの一方的に粒子を小さくするだけで均一な粒子径にコントロールすることは難しく、また、内相の体積分率の増加に伴って急激な粘性の上昇等が見られ、製造過程における作業性の困難さが発生する。本発明者らは、エマルションの製造に通常使用される攪拌機やホモゲナイザー等を解析し、かかる剪断応力の供与ではエマルション粒子の分布幅が広く安定性に欠けることを確認した。また、強力な乳化安定性を有するように設計された乳化剤であるポリグリセリン脂肪酸エステルを使用した場合、乳化安定性は向上し、エマルション粒子の分布幅もやや均一になるものの、内相の体積分率の増加に伴う急激なエマルション粘度の上昇および乳化剤臭の発生が確認された。
【0006】
このように、W/O型エマルションであれ、O/W型エマルションであれ、エマルションの粒子径をコントロールすることは種々の機能を持たせる上で重要であるが、従来の乳化剤の添加や剪断応力の供与による方法では必ずその粒子径分布に幅が出来、任意の粒子径を安定的にしかも均一にコントロールすることは困難である。しかしながら、エマルションの粒子径を任意にコントロールすることの意義、要求は非常に大である。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
このような問題点を克服するため、近年、エマルションの乳化技術への応用として膜の利用が考えられている。この膜の利用は分離、濃縮、濾過等の分野での研究、開発、応用が盛んに行なわれていたが、食品への応用は最近のことであり、多孔質ガラス膜を用いてなるエマルションの製造方法(特開平2-95433号)もその一例である。この多孔質ガラス膜はホモゲナイザーのような高圧を必要とせず、簡単にしかも非常に均一なエマルションを作成することが出来、従来にない画期的な乳化方法と言える。
【0008】
しかしながら、マーガリン(O/W型)やホイップクリーム(W/O型)等に代表される食用加工用の乳化油脂組成物への応用では、使用される乳化剤の種類や油の種類、あるいは添加物の種類によって膜のぬれ具合、膜抵抗、粘性等が全く異なり、分散相(内相)を連続相(外相)中にうまく圧人出来なかったりして、乳化安定が悪いエマルションとなってしまう。例えば、レシチンのような非常に粘り気のある乳化剤は、乳化剤自身が多孔質膜の壁面に付着し、そのため目づまりを起こし液が全く通過しない。このため、乳化剤の種類が限定される。また、O/W型エマルションのような外相が水である系では、多孔質膜そのものの電気的性質から水側にイオン性の乳化剤あるいは添加物を添加する必要がある。従って、今日一般的に多々使用されている乳化油脂組成物用の主副原料を用いては、非常に限られた範囲での利用しか出来ず、上記のような食品加工用の乳化油脂組成物にはあまり応用出来ない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、かかる実情に鑑み、上記多孔質膜の長所、利点を食品加工用エマルションに応用出来ないかと考え、W/O型エマルションおよびO/W型エマルションの乳化方法とエマルション粒子との関係について物理化学的、化学工学的に鋭意研究した結果、エマルションの作成方法として、予め予備乳化されたエマルションに対して更に多孔質膜を応用することにより、安定で、かつ非常に均一な分布を有するエマルションを任意の粒子径にコントロール出来ることを知見し本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明者らは、エマルションの乳化安定性、物性、食感、風味、および乳化剤の種類、添加量等について種々研究を進めた結果、エマルション粒子の大きさ、分布幅、数、粘度および内相、外相の粘度、表面張力が大きな要因であることを知見した。本発明はかかる知見に基づいて為されたものである。
【0011】
そして本発明は、W/O型エマルションまたはO/W型エマルションを、その平均粒子径が多孔質膜の孔径より1〜20倍の大きさになるように、一般的によく用いられる攪拌型の乳化機、例えばケミスターラーあるいはホモミキサー等を使用して予備乳化したのち、これを多孔質膜に通過させることで平均粒子径が前記多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化してなるものであり、これによって、均一な粒子径を有し、物性、食感、風味が任意にコントロールされ、かつ、乳化安定性に優れたエマルションを製造しうるのである。
【0012】
ここで、前記エマルションの平均粒子径とは、顕微鏡にてエマルションの粒子を撮影し、撮影された写真により、粒子径を計測して求めた平均粒径の値をいう。本発明において、多孔質膜を利用して再乳化するとは、多孔質膜の孔径より大きなエマルションが、該多孔質膜内で細分化されることであり、従って、多孔質膜の孔径より若干大きめの乳化エマルションの作成がポイントとなる。本発明では、ケミスターラー等の乳化機で乳化され、上記の測定方法で得られた平均粒子径が多孔質膜の孔径に対して1〜20倍であるエマルションを該多孔質膜に通過させることで、分布幅の均一なエマルションを得ることができる。
【0013】
前記の場合、多孔質膜を通過する段階でのエマルション粒子の状態は、多孔質膜の孔径より大きなエマルションはその形状が球形から楕円形あるいは細長い形に変形する。従って、この変形状態からエマルションのスムースな細分化、界面の形成が必要である。これらはエマルションの外相と多孔質膜との界面張力、通過する時点でエマルションが受ける剪断力と流動特性の関係等によって決定される。ここで、界面張力の調整については、乳化剤の機能について検討することにより最適なものが選択できる。一方、流動特性については、エマルションの平均粒子径が大きくなるにつれてその粒径分布幅も広くなり、流動特性は非ニュートン性が大きくなる。従って、剪断応力に対する流動特性の変化率も大きく、剪断応力による影響が大きくなる。このようなことから、多孔質膜を通過する際のエマルション粒子の安定性については、多孔質膜の孔径と剪断応力、流動特性の関係について考慮する必要がある。このような観点から、多孔質膜の孔径の20倍以上の粒子径を有するエマルションは、剪断応力に対する流動特性の変化率が大きく、従って、微妙な剪断応力の変化に対して定常的に多孔質膜内を通過することができない。そして、20倍以上の平均粒子径を有するエマルションについては、受けた剪断応力下で多孔質膜内を通過する際、粒子の移動がはやくより複雑で、そのため粒子の変形が余りにも激しくなって、界面膜の形成よりエマルションの破壊が主となり、均一なエマルションが得られないばかりか、油相と水相が分離した状態のエマルションになってしまう。この点、本発明における多孔質膜の孔径の1〜20倍の平均粒子径を有するエマルションについては、微妙な剪断応力の変化に対して定常的に多孔質膜内を通過することができ、したがってエマルションのスムースな細分化が起こり、エマルションを多孔質膜に通過させることも簡単で、また、得られるエマルションも均一な分布を有するのである。
【0014】
本発明に用いられる油脂は、特に制限されず、従来からエマルション製造用に用いられている動植物油、動食物硬化油、分別油、ウムエス油等が適宜用いられる。更にエマルションの稠度によっては、これらの油脂を硬化、あるいは分別したり、更には各種配合したりする。
【0015】
油相に添加する乳化剤についても特に制限はなく、一般的に使用されるグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン等が単独で、または2種以上を混合して用いられる。この乳化剤の添加量は、0.1%以上であれば特に制限はないが、乳化剤の濃度が余りにも少なすぎるとエマルションの分離が早くなり、安定性に問題がある。
【0016】
また、水相に添加する乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等であって、かつ、そのHLB(Hydrophlic Lipophilic Balancc)が8.0以上、好ましくは10.0以上のものを単独で、または2種以上混合して用いる。この場合にも添加量については特に制限はなく0.1%以上であればよいが、乳化剤濃度が余りにも低すぎるとやはりエマルションの分離が早くなり、安定性に問題がある。
【0017】
W/O型エマルションにおける水分/油分の比率、あるいはO/W型エマルションにおける油分/水分の比率は特に制限されるものではないが、良好なエマルション状態を得るためには、W/O型エマルション、O/W型エマルションともに水分/油分、油分/水分の比率が5/5以上、好ましくは4/6以上がよい。
【0018】
次に、本発明による乳化油脂組成物の具体的な製造方法であるが、まず、W/O型エマルションの場合であれば、乳化剤、香料等を添加した油相を容器に入れ、これを例えばホモミキサーのような攪拌機にセットし、攪拌しながら60〜70℃で加熱溶解する。次に所定量の水相部分を徐々に添加し、60〜70℃で一定になるように温調しながら10分以上攪拌して予備乳化する。この予備乳化に際しての攪拌の程度は、得られるエマルションの粒子径が再乳化の際に用いる多孔質膜の孔径に対して1〜20倍の大きさになるようにする。
【0019】
次いで、前記予備乳化の際にエマルションに取り込まれた空気を除去するために脱気を行なう。この場合の脱気操作は静置または真空のいずれでもよく、また、脱気時間は10分あれば十分である。
【0020】
かかる操作の後、予備乳化されたエマルションを目的とする温度に温調する。温調する温度は、最終的に得ようとするエマルションの製品温度であり、目的に応じて任意に選択する。
【0021】
次に上記のようにして予備乳化および脱気されたエマルションを、外相が油相(W/O型)の場合は油で、また、外相が水相(O/W型)の場合は水で予めぬらされた多孔質膜にN2ガス等の気体またはポンプ等、あるいは両者を併用して定量的に通過させる。ここでいう多孔質膜としては、エマルションの安定性あるいは操作性等を考えると管状あるいは板状のものが望ましいが、同等の効果を得られる多孔質膜であればこれに限らない。また、多孔質膜内のエマルションの通過速度を詳細に把握することは至難であるが、本発明では、(処理量/時間)を平均通過速度とする。この平均通過速度が10cc/分〜5000cc/分で目的とする粒子径を有したエマルションが得られる。この場合、エマルションの安定性を高めるためには平均通過速度を速くして通過圧力を高くすることが望ましい。一方、得られるエマルションの粒子径は、多孔質膜の孔径に関係し、該孔径の1〜3倍の平均粒子径にコントロールされる。よって、小さな平均粒子径を有したエマルションを得るには、孔径の小さな多孔質膜を選択し平均通過速度を遅くする方が望ましい。因みに、先願発明(特開平2-95433号に記載の発明)では、多孔質膜と外相との関係から、多孔質膜の孔径に対して、作成されるエマルションの粒子径は、理論上、3.25倍程度になるとされている。つまり、この先願方法では、平均粒径1μmのエマルションを得ようとすると、孔径が0.3μm以下の多孔質膜を選択しなければならない。ところが、実際には孔径0.3μm以下の多孔質膜を作成することは非常に困難であり(先願発明に用いられる多孔質ガラス膜では0.3μmが限度といわれている)この方法では1μm以下の粒子径のエマルションは作成できないこととなる。これに対し、本発明の再乳化の方法では、得られるエマルジョンの粒子径は、多孔質膜の孔径の2〜2.5倍にしかならず、目的とするエマルションの粒子径に対して、選択する多孔質膜の孔径に幅を持たせることができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は、これらにより制限されるものではない。尚、実施例、比較例に示される「部」および「%」は、いずれも重量基準である。
【0023】
尚、評価項目および方法は下記のとおりである。
粒子径分布:エマルションをスライドグラス上の試料台(5.0×5.0×0.15mm)に数滴取り、OLYMPUS BH-2型微分干渉顕微鏡にて、200〜400倍の倍率で粒子を撮影した。撮影された写真により、DIGITIZER(KW4300:GRAPHTEC.CORP)を用いて粒子径を測定し、粒径分布および平均粒径(Dav)を求めた。
乳化安定性:エマルションを200ccのメスシリンダーに取り、20℃あるいは35℃の環境に放置して油、または、水の分離量(cc)を測定した。
【0024】
実施例1(O/W型エマルション)
(油相の調整)
とうもろこし油50部を60℃に加熱し、ケミスターラー(TOKYO RIKAKIKAI CO.,LTD製;B-100型)で攪拌(620rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-500:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水50部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しなからHLB-10のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,TS-750:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(予備乳化O/W型エマルションの調整)
前記のようにして調整された水相部に、油相部を徐々に添加し、ケミスターラーで20分間攪拌(620rpm)する。攪拌終了後、10分間静置して脱気を行なう。
(O/W型エマルションの作成)
予備乳化されたO/W型エマルションを内径9.0mm、外径10.0mm、長さ100.0mm、平均孔径dp=2.70μm、の多孔質膜に3500c/10分の平均通過速度で通過させて再乳化し、O/W型エマルションを得た。
得られたエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒径分布を図2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
比較例1(O/W型エマルション)
(油相の調整)
とうもろこし油50部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-500:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水50部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=10のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,TS-750:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(O/W型エマルションの作成)
前記のように調整された水相部に、油相部を徐々に添加し、ケミスターラーで20分間攪拌(620rpm)する。攪拌終了後、10分間静置して脱気を行ない、O/W型エマルションを得た。
得られたエマルションの粒子径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒子径分布を図2に示す。
【0027】
実施例2(W/O型エマルション)
(油相の調整)
大豆油80部を60℃に加熱し、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製:TKオートホモミクサー)で攪拌(3000rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-500:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水20部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=15のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,ML-750:坂本薬品工業(株)製)を1.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(予備乳化W/O型エマルションの調整)
前記のように調整された油相部に、水相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(3000rpm)する。攪拌終了後、10分間静置して脱気を行なう。
(W/O型エマルションの作成)
上記のようにして予備乳化されたW/O型エマルションを内径9.0mm、外径10.0mm、長さ100.0mm、平均孔径dp=5.30μm、の多孔質膜に350cc/10分の平均通過速度で通過させて再乳化し、W/O型エマルションを得た。
このエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒径分布を図3に示す。
【0028】
比較例2(W/O型エマルション)
(油相の調整)
大豆油80部を60℃に加熱し、ホモミキサーで攪拌(3000rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-500:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水20部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しなからHLB=15のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,ML-750:坂本薬品工業(株)製)を1.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(W/O型エマルションの作成)
前記のように調整された油相部に、水相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(3000rpm)する。攪拌終了後、10分間静置して脱気を行ない、W/O型エマルションを得た。
このエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒径分布を図3に示す。
【0029】
実施例3(W/O型エマルション)
(油相の調整)
パーム油(M.P.=34.7℃)60部を70℃に加熱し、ホモミキサーで攪拌(5000rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-310:坂本薬品工業(株)製)を3.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を60℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水40部を70℃に加熱し、ホモミキサーで攪拌(3000rpm)しながらHLB=16のショ糖脂肪酸エステル(品名:DKエステル,F-160:第一工業製薬(株)製)を0.5%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を60℃にすべく温調した。
(予備乳化W/O型エマルションの調整)
前記のようにして調整された油相部に、水相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(5000rpm)する。攪拌終了後、60℃に調温しながら10分間静置して脱気を行なう。
(W/O型エマルションの作成)
上記のようにして予備乳化されたW/O型エマルションを、予めジャケットで60℃に温調された内径9.0mm、外径10.0mm、長さ100.0mm、平均孔径dp=0.53μmの多孔質膜に350cc/30分の平均通過速度で通過させて再乳化し、W/O型エマルションを得た。
このエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒径分布を図4に示す。
【0030】
比較例3(W/O型エマルション)
(油相の調整)
パーム油(M.P.=34.7℃)60部を70℃に加熱し、ホモミキサーで攪拌(5000rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-310:坂本薬品工業(株)製)を3.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を60℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水40部を70℃に加熱し、ホモミキサーで攪拌(3000rpm)しながらHLB=16のショ糖脂肪酸エステル(品名:DKエステル,F-160:第一工業製薬(株)製)を0.5%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を60℃にすべく温調した。
(W/O型エマルションの作成)
前記のようにして調整された油相部に、水相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(5000rpm)する。攪拌終了後、60℃に調温しながら10分間静置して脱気を行ない、W/O型エマルションを得た。
このエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒径分布を図4に示す。
【0031】
実施例4(O/W型エマルション)
(油相の調整)
なたね油30部を60℃に加熱し、ホモミキサーで攪拌(3000rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-310:坂本薬品工業(株)製)を1.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水70部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=11のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,MO-500:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(予備乳化O/W型エマルションの調整)
前記のようにして調整された水相部に、油相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(3000rpm)する。攪拌終了後、10分間真空にて脱気を行なう。
(O/W型エマルションの作成)
予備乳化されたW/O型エマルションを、内径9.0mm、外径10.0mm、長さ100.0mm、平均孔径dp=1.08μmの多孔質膜に300cc/20分の平均通過速度で通過させて再乳化し、O/W型エマルションを得た。
このエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒径分布を図5に示す。
【0032】
比較例4(O/W型エマルション)
(油相の調整)
なたね油30部を60℃に加熱し、ホモミキサーで攪拌(3000rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-310:坂本薬品工業(株)製)を1.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水70部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=11のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,MO-500:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(O/W型エマルションの調整)
前記のようにして調整された水相部に、油相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(3000rpm)する。攪拌終了後、10分間真空にて脱気を行ない、O/W型エマルションを得た。
このエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒径分布を図5に示す。
【0033】
実施例5(W/O型エマルション)
(油相の調整)
パーム分別U油70部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながら、これにレシチン(味の素(株)製)を1.0%、グリセリン脂肪酸エステル(品名:エマルジ-MS:理研ビタミン(株)製)を0.5%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水30部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=11のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,TS-750:坂本薬品工業(株)製)を1.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(予備乳化W/O型エマルションの調整)
前記のようにして調整された油相部に、水相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(3000rpm)する。攪拌終了後、10分間真空にて脱気を行なう。
(W/O型エマルションの作成)
予備乳化されたW/O型エマルションを、内径9.0mm、外径10.0mm、長さ100.0mm、平均孔径dp=4.20μmの多孔質膜に300cc/30分の平均通過速度で通過させて再乳化し、O/W型エマルションを得た。
このエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、粒径分布を図6に示す。
【0034】
比較例5(W/O型エマルション)
(油相の調整)
パーム分別U油70部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながら、これにレシチン(味の素(株)製)を1.0%、グリセリン脂肪酸エステル(品名:エマルジ-MS:理研ビタミン(株)製)を0.5%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水30部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=11のポリグリセリ脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,TS-750:坂本薬品工業(株)製)を1.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(W/O型エマルションの調整)
前記のようにして調整された油相部に、水相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(3000rpm)する。攪拌終了後、10分間真空にて脱気を行ない、W/O型エマルションを得た。
このエマルションの粒径測定結果を表1に、乳化安定性を図1に、また粒子径分布を図6に示す。
【0035】
実施例6
(油相の調整)
とうもろこし油30部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-500:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水70部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=15のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,ML-750:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(予備乳化O/W型エマルションの調整)
調整された水相部に、調整された油相部を徐々に添加し、ホモミキサーで5分間攪拌(3000rpm)する。攪拌終了後、10分間静置して脱気を行なう。
(O/W型エマルションの作成)
予備乳化されたO/W型エマルションを外径47.0mm、厚さ35.0μm、平均孔径dp=0.5μmの多孔質膜(親水性PTFE(ポリテトラフルオ口エチレン)タイプメンブランフィルター:東洋濾紙(株)製)に圧力1.0kg/cm2、500cc/3hrの平均通過速度で通過させO/W型エマルションを得た。
粒径測定結果を表2、乳化安定性を図7、粒径分布を図8に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
比較例6
(油相の調整)
とうもろこし油30部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながら、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(品名:SYグリスター,CR-500:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水70部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=15のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,ML-750:坂本薬工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(O/W型エマルションの作成)
調整された水相部に、調整された油相部を徐々に添加し、ホモミキサーで5分間攪拌(3000rpm)する。攪拌終了後、10分間静置して脱気を行ない、O/W型エマルションを得た。
粒径測定結果を表2、乳化安定性を図7、粒径分布を図8に示す。
【0038】
実施例7
(油相の調整)
とうもろこし油30部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながら、レシチン(味の素(株)製)を1.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水70部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=15のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,ML-750:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(予備乳化O/W型エマルションの調整)
調整された水相部に、調整された油相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(5000rpm)する。攪拌終了後、10分間静置して脱気を行なう。
(O/W型エマルションの作成)
予備乳化されたW/O型エマルションを外径47.0mm、厚さ35.0μm、平均孔径dp=1.0μmの多孔質膜(親水性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)タイプメンブランフィルター:東洋濾紙(株)製)に圧力1.5kg/cm2、500cc/2hrの平均通過速度で通過させO/W型エマルションを得た。
粒径測定結果を表2、乳化安定性を図7、粒径分布を図9に示す。
【0039】
比較例7
(油相の調整)
とうもろこし油30部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながら、これにレシチ(味の素(株)製)を1.0%添加溶解した。溶解終了後、油相の温度を20℃にすべく温調した。
(水相の調整)
水70部を60℃に加熱し、ケミスターラーで攪拌(620rpm)しながらHLB=15のポリグリセリン脂肪酸エステル(品名:SYグリスター,ML-750:坂本薬品工業(株)製)を2.0%添加溶解した。溶解終了後、水相の温度を20℃にすべく温調した。
(O/W型エマルションの作成)
調整された水相部に、調整された油相部を徐々に添加し、ホモミキサーで10分間攪拌(5000rpm)する。攪拌終了後、10分間静置して脱気を行ない、O/W型エマルションを得た。
粒径測定結果を表2、乳化安定性を図7、粒径分布を図9に示す。
【0040】
以上の実施例1〜7および比較例1〜7で得られたエマルションに関する乳化安定性および平均粒径の測定結果から明らかなように、本発明方法により予め予備乳化したエマルションを多孔質膜に通過させることで再乳化して得られた実施例1〜7のエマルションは、多孔質膜を用いた再乳化を行わない比較例1〜7のエマルションに較べて、その乳化安定性が格段に改善されるとともに、エマルションの粒子径が小さく、かつその分布幅が狭くて均一な粒子径のエマルションとなっている。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、均一な孔径を有する多孔質膜の孔径に対して、1〜20倍の平均粒子径を有する乳化油脂組成物を予め作成し、該乳化油脂組成物を前記均一な孔径を有する多孔質膜に通過させるに際し、用いる多孔質膜の孔径等を適宜選択することで、平均粒子径が前記多孔質膜の孔径の1〜3倍となるようにコントロールして再乳化することにより、急激な粘度上昇等を伴うことなく、粒子径が均一化され、粒子径分布が狭く、粒子径の分布に起因する水相および油相の分離、衛生上の問題を解消することが出来、従来にない物性、食感、風味を有した乳化油脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 エマルションの乳化安定性測定結果を示すグラフ
【図2】 エマルションの粒径分布測定結果を示すグラフ
【図3】 エマルションの粒径分布測定結果を示すグラフ
【図4】 エマルションの粒径分布測定結果を示すグラフ
【図5】 エマルションの粒径分布測定結果を示すグラフ
【図6】 エマルションの粒径分布測定結果を示すグラフ
【図7】 エマルションの乳化安定性測定結果を示すグラフ
【図8】 エマルションの粒径分布測定結果を示すグラフ
【図9】 エマルションの粒径分布測定結果を示すグラフ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2768205号発明の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的として、
▲1▼訂正事項a
請求項1の「均一な孔径を有する多孔質膜の孔径に対して、1〜20倍の平均粒子径を有する乳化油脂組成物を予め作成し、該乳化油脂組成物を前記均一な孔径を有する多孔質膜に通過させることで平均粒子径が前記多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化することを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。」を、「均一な孔径を有する多孔質膜の孔径に対して、1〜20倍の平均粒子径を有する予備乳化油脂組成物を、油相部と水相とから乳化剤を用いて予め作成し、該予備乳化油脂組成物を前記均一な孔径を有する多孔質膜に通過させることで細分化して平均粒子径が前記多孔質膜の孔径の1〜3倍となるように再乳化することを特徴とする乳化油脂組成物の製造方法。」
と訂正する。
さらに、明りょうでない記載の釈明を目的として、
▲2▼訂正事項b
請求項2の「内相を水、外相を油とした油中水型乳化油脂組成物」を「内相を水、外相を油とした予備乳化油中水型乳化油脂組成物」と訂正し、
請求項3の「内相を油、外相を水とした水中油型乳化油脂組成物」を「内相を油、外相を水とした予備乳化水中油型乳化油脂組成物」と訂正し、
請求項4の「予め作成される乳化油脂組成物」を「予め作成される予備乳化油脂組成物」と訂正する。
異議決定日 1999-09-08 
出願番号 特願平5-69325
審決分類 P 1 651・ 113- YA (B01F)
P 1 651・ 531- YA (B01F)
P 1 651・ 121- YA (B01F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉江 渉  
特許庁審判長 沼澤 幸雄
特許庁審判官 山田 充
野田 直人
登録日 1998-04-10 
登録番号 特許第2768205号(P2768205)
権利者 鐘淵化学工業株式会社
発明の名称 乳化油脂組成物の製造方法  
代理人 滝口 昌司  
代理人 武田 正彦  
代理人 柳野 隆生  
代理人 中里 浩一  
代理人 柳野 隆生  
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