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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  G01C
管理番号 1020429
異議申立番号 異議1998-72353  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-12-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-05-12 
確定日 1999-09-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2675979号「距離検出装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2675979号の特許を維持する。 
理由 [I.手続の経緯]
本件特許第2675979号発明は、昭和58年6月24日に出願された特願昭58ー114820号の一部を特許法第44条第1項の規定により平成6年5月9日に特許出願されたものである。本件発明は、平成9年7月18日にその特許の設定登録がなされた。その後、本件特許について細野篤良から特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月12日に訂正請求がなされると共に、意見書が提出された。そして、再度、本件特許について取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月26日に改めて訂正請求がなされると共に、平成11年7月12日付けの訂正請求が取り下げられた。
[II.訂正の適否についての判断]
〔1.訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明〕
平成11年7月12日付けの訂正請求が取り下げられ、平成11年8月26日に改めて訂正請求がなされたので、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明は、平成11年8月26日付け訂正請求書の特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものである。
「測距光を投射し、その反射光を受光することにより測距物体までの距離に相応して相対関係の変化する第1の信号と第2の信号を出力する受光回路と、該受光回路から前記第1、第2の信号を時系列で発生させるための時系列化手段と、該時系列化手段により時系列で発生される前記第1、第2の信号をそれぞれ同一の積分器により積分し、積分された前記第1の信号と第2の信号とを演算して距離情報を検出する距離情報検出回路とを有することを特徴とする距離検出装置。」
〔2.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否〕
前記訂正のうち、特許請求の範囲の訂正は、「前記第1、第2の信号をそれぞれ積分し、」を「前記第1、第2の信号をそれぞれ同一の積分器により積分し、」と訂正するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、この訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、前記訂正のうち、発明の詳細な説明の訂正は、前記特許請求の範囲の訂正に整合させるためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、この訂正は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
〔3.独立特許要件の判断〕
(ア.最後の取消理由の概要)
本件特許請求の範囲に記載された発明についての特許は、特許明細書の特許請求の範囲の記載における積分についての限定が不十分なため、先行技術との区別ができないから、特許法第36条の規定に違反してなされたもので、取り消すべきものである、ということである。
(イ.最後の取消理由についての当審の判断)
特許明細書の特許請求の範囲の記載における積分に関して、「前記第1、第2の信号をそれぞれ積分し、」から「前記第1、第2の信号をそれぞれ同一の積分器により積分し、」へと訂正されて、先行技術との区別ができるようになったから、前記最後の取消理由により、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を取り消すことはできない。
(ウ.最初の取消理由)
最初の取消理由は次のとおりである。
「1.本件特許請求の範囲第1項に記載された発明は、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭54ー151829号公報(以下、刊行物1という)に記載された発明と同一であるから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであって、取り消されるべきものである。
2.本件特許請求の範囲第1項に記載された発明は、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭58ー35410号公報(以下、刊行物2という)、特開昭58ー17312号公報(以下、刊行物3という)及び特開昭54ー113335号公報(以下、刊行物4という)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、取り消されるべきものである。
なお、前記刊行物1、2、3、4は、それぞれ、本件特許異議申立人である細野篤良が提出した甲第1、2、3、4号証に相当する。また、前記刊行物1、2、3、4の記載内容及び本件特許発明との対比判断は、その異議申立書の第5頁第3行〜第9頁下より2行に記載されたとおりであるので、その記載を省略する。」
(エ.前記刊行物1〜4に記載された事項)
前記刊行物1には、次のことが記載されている。
『3.発明の詳細な説明
本発明はカメラの焦点調節装置、さらに詳細にはレンズを距離に応じて調節し、あるいは焦点調節の指示を行なうかあるいはその両方を行なう写真カメラあるいはシネカメラに用いて好適なカメラの焦点調節装置に関する。
信号源が測光束を送出し、その測光束が撮影すべき被写体によって反射され、受信装置によって受信検出されるような能動的な焦点調節装置の場合、距離値が大きかったり、あるいは被写体での反射が悪いような場合には受信信号が少なくて検出できないというような欠点がある。このような欠点は送信出力をそれに対応して大きくすれば解決できるが、それにはコストがかかり、また電源消費が大きくなる。受信信号が小さいような場合の検出は更に受信装置ならびに検出回路のノイズによっても限界が発生する。
従って、本発明の課題は冒頭に述べたような種類の焦点調節装置で簡単な手段を用いてノイズを極端に減少させ、受信信号がわずかでも検出することができるようなカメラの焦点調節装置を提供することである。
本発明によれば、この課題は次のようにすることによって、すなわち検出回路において得られる所定の周波数とデューテイサイクルを有する検出信号がノイズ交流電圧と共に積分回路に印加され、その積分回路は少なくとも各検出信号のパルス期間内において検出回路と接続され、積分回路によって検出信号の振幅とパルス期間に応じた数の検出パルスが積分された後、所定のしきい値を有する限界スイツチが導通制御され、一方ノイズ交流電圧は積分によってほぼなくなり、所定数の検出パルスの後、制御サイクルが終了した時積分回路はその積分値が消去され、再び動作準備状態にされるようにすることによって解決される。
本発明によれば積分回路にはノイズ信号だけではなく、検出信号の交流電圧分が印加される。高周波のノイズ交流電圧の積分はノイズ信号の波長よりも大きい時間にわたって行なわれるので、ノイズ電圧の交流成分はかなりの程度除去されるので、極くわずかのノイズ直流成分だけが残る。検出信号に関する積分は少なくとも各検出信号のパルス期間内に行なわれる。通常積分は各検出信号のパルス期間に等しい。それによって検出信号の交流電圧成分がなくならないという利点が得られる。限界スイツチのしきい値を越えた場合に初めて信号が検出回路ないし焦点指示回路ないし焦点制御回路に送られる。検出信号が弱い場合にはしきい値に達するまでにかなりの検出信号パルスが必要であるのに対し、検出信号が大きい場合にはそれよりも少ない検出信号パルスだけですむ。このような簡単な手段によって受信回路の感度が減少することが避けられ、分解能が高くなるという利点が得られる。従って、送信および受信回路を構成するのに対して特別な手段は必要でない。このようにして積分された有効信号はノイズ信号から明瞭に分離される。
さらに本発明の好ましい実施例によれば、両受信回路の積分回路はそれぞれ積分段を有し、その積分段は各検出パルスのパルス期間の開始および終了時の間にスイツチオンされ、その場合そのスイツチ信号はパルス発生回路から導き出される。
さらに本発明の実施例によれば、積分回路は両受信回路に関連して設けられた2つの等しい積分段、好ましくは演算増幅器から構成され、その演算増幅器はフイードバツク回路にそれぞれ積分コンデンサを有し、各積分段の後には電圧比較器として形成された限界スイツチが接続される。』
(第3頁左上欄第13行〜右下欄末行)
『さらに好ましい実施例によれば、それぞれ制御可能なスイツチ回路を有する第1と第2のマルチプレクサが設けられ、そのスイツチ回路は少なくともそれぞれのパルス期間の間交互にかつ連続してパルス発生回路の周波数と同期してオン・オフ制御される。両マルチプレクサ間に両受信回路に共通な回路が設けられる。またマルチプレクサのスイツチ回路はそれぞれのパルス期間の間順次オン・オフ制御される。それぞれの遮断期間においては信号の伝達は行なわれない。これによってノイズ信号が検出されたり伝達されたりする危険が極度に減少する。さらにそれによって積分はこのパルス発生期間の間だけ行なわれ、従っていずれの場合にも最適の信号積分が行なわれ、それぞれの信号周波数成分がなくなることが防止できるという利点が得られる。・・・・・・・・・・・』
(第4頁右下欄第6行〜第5頁左上欄第1行)
『受信装置、すなわち赤外線受光装置は2つの赤外線受光ダイオード9、10から構成される。赤外線受光ダイオード9は演算増幅器11の反転入力と接続され、その非反転入力はアース電位に接続される。赤外線受光ダイオード10は演算増幅器12の反転入力と接続され、その非反転入力はアース電位に接続される。』
(第5頁右上欄第3〜10行)
『2つの受信回路は2つのスイツチ回路28、29を有するマルチプレクサ27に接続される。このマルチプレクサ27は2つの出力を有し、その出力は演算増幅器30、抵抗31、32およびコンデンサ33、34から構成される高域フイルタとして機能するフイルタと接続される。この高域フイルタは、電源電圧の周波数領域におけるノイズ電圧ならびに白熱電球および螢光灯から発生する電源周波数の2倍の周波数を持ったノイズ電圧を通過させないように構成される。
この高域フイルタ30〜34は結合コンデンサ35を介して演算増幅器36およびフイードバツク抵抗37、38から構成される交流電圧増幅器と接続される。
第2のマルチプレクサ39は2つのスイツチ回路40、41を有し、スイツチ回路40は端子Bと、またスイツチ回路41は端子Cと接続される。
パルス発生器42はカウンタ43のクロック入力と接続される。パルス発生器42ならびにカウンタ43の出力Q4はアンドゲート44に接続され、そのアンドゲートの出力はカウンタ43のリセット入力Rと接続される。カウンタ43の第3の出力Q3はDフリツプフロツプ45のクロツク入力と接続され、そのDフリツプフロツプ45の出力Dは出力Qと接続される。
Dフリツプフロツプの出力Qはマルチプレクサ27のスイツチ回路28ならびにアンドゲート46の一方の入力に接続される。
Dフリツプフロツプ45の入力Qはマルチプレクサ27のスイツチ回路29ならびにアンドゲート47の一方の入力に接続される。』
(第5頁右下欄第1行〜第6頁左上欄第11行)
『マルチプレクサ39のスイッチ回路40、41の切替えに同期して積分回路66〜68および86〜88の出力に現われるノイズ電圧の少ない信号電圧は階段状に積分される。』
(第7頁右下欄第2〜5行)
『・・・・・・この送信ダイオード57からでる赤外線はレンズ121によって測光束として形成される。』
(第8頁右下欄第11〜13行)
『なお、トランジスタ103、109に流れる電流によってリングに結合されたモーターをいずれかの方向に制御しそれによってリング126を回転させ、自動的にレンズ122を被写体の距離に応じてピント合わせするようにしてもよい。』
(第9頁左上欄第13〜17行)
前記刊行物2には、次のことが記載されている。
『1.発明の名称
距離検出装置
2.特許請求の範囲
2個の独立した受光要素から形成されると共に、該2個の受光要素上の像位置に対応した出力を発生可能な受光装置を備え、投光装置からの投射光束の反射光を上記受光装置上に形成することにより、物体迄の距離を測定可能な距離検出装置に於て、上記投光装置の投光状態と非投光状態に於ける、上記各受光要素出力の差を検出すると共に、各受光要素の上記差出力の比を検知することを特徴とする距離検出装置。』
(第1頁左下欄第2〜13行)
前記刊行物3には、次のことが記載されている。
『1.発明の名称
距離測定装置
2.特許請求の範囲
測距対象物に向って変調赤外光を投光する投光手段と、前記投光手段に対して一定の基線長を介して配される受光レンズの略々焦点面に複数個配され、赤外光の変化に対して微分出力を行う受光手段と、前記受光手段の各出力の時系列処理により測距対象物までの距離を算出する演算手段とから成る距離測定装置。』
(第1頁左下欄第2〜11行)
『一方、CPU150は第6図(8)の信号をアナログゲート132のゲート入力とし、第6図(9)の信号をアナログゲート134の入力とし、以降同様の信号を順次アナログゲート136、138のゲート入力として出力する。
その結果、バツフアアンプ140からは、受光素子100、102、104、106の微分出力が一定時間毎に順次出力される。バツフアアンプ140の出力側には、CPU150から第6図(6)に示す如きゲート信号を入力されるアナログゲート142が直列に介挿されており、アナログゲート142が導通している間のバツフアアンプ140の出力レベルをコンデンサ144に記憶ホールドさせる。その結果、バツフアアンプ140からは第4図(7)に示す如きサンプルホールド信号が出力されるが、この信号は各サンプルホールド毎にA/D変換器148でデイジタル信号に変換され、CPU150内の図示しないメモリに格納される。
CPU150に於いては、IRED2のオン時のA/D変換データからオフ時のA/D変換データを減算したデータを当該受光素子に入射した赤外光の強度に対応したデータとして記憶する。但し、1回だけの量子化では、外乱ノイズ等の影響を無視出来ないので、1つの受光素子に関して、複数回、サンプルホールドとA/D変換によるデータ取込みを行ない、その結果を平均化することにより、当該受光素子の受光赤外強度に関するデータとする。かかる演算操作はアナログスイツチ132〜138を切換えながら、各受光素子100〜106毎に行ない、その結果、CPU150には、各受光素子100〜106の入射変調赤外光の強度(変化)に関するデータが残る。
従って、これらのデータの中から極大値を選択し、これに対応する受光素子を知ることによって、対象物6までの距離ゾーンを判定可能であるが、これらはCPU150の演算操作によって行なわれる。』
(第4頁左上欄第15行〜左下欄第13行)
前記刊行物4には、次のことが記載されている。
『マルチプレツクサ回路を設けることによって増幅回路が少なくなり、また受光装置からの信号のフイルターリングが同一のフイルター回路及び増幅器を用いて行われるという利点が得られる。コンデンサーなどのような電気素子を少なくしたとしても受信信号は同一に処理され増幅されかつ検出されることが保証される。他の利点はマルチプレツクサ回路を用いればSN比が本質的に向上されることである。・・・・・・・・・・・・・』
(第3頁左下欄欄第12〜20行)
『この2つの回路が2つのスイツチ37、38を有するマルチプレクサ回路36に接続される。マルチプレクサ回路36は2つの出力を有し、その出力は抵抗40、41を有する演算増幅器39並びにコンデンサー42、43から構成される高域フイルターとしての機能を持つフイルタに接続される。この高域フイルターは次のように、すなわち電源電圧の周波数領域におけるノイズ電圧並びに白熱電球及び2倍の周波数を持つ螢光灯のノイズ電圧を遮断するように構成される。』
(第6頁左下欄欄第10〜19行)
(オ.本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明と前記刊行物1〜4に記載された発明との対比・判断)
本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明(前者)と前記刊行物1〜4に記載された発明(後者)とを対比すると、前者の「時系列化手段により時系列で発生される前記第1、第2の信号をそれぞれ同一の積分器により積分」する点(以下、相違点という)を、後者は有していない。
以下、詳細に検討する。
第1に、前記刊行物1に記載された発明は、演算増幅器30、抵抗31、32およびコンデンサ33、34から構成される高域フイルタのみを、両受信回路に共通な回路として接続するものであって、積分回路66〜68および86〜88を各受信回路に個別に接続するものであるから、前記相違点に係る構成を有しないものである。さらに、前記刊行物1に記載された発明は、パルスの発生と同期して2つの受信回路の信号を交互に積分するものであるから、高域通過フィルタのような信号を遅延させる作用が比較的小さい回路は共通化できても、積分回路のような信号を遅延させる作用が比較的大きい回路は共通化した場合には、2つの受信回路の信号を正確に分離して積分することが困難であると予測される。故に、前記刊行物1に記載された発明の積分回路を各受信回路に共通のものとすることは、当業者が普通は考慮しないことである。結局、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明は、前記刊行物1に記載された発明と同一であるとも、前記刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるとも言えないものである。
第2に、前記刊行物2に記載された発明は、異議申立人も認めているように、前記相違点に係る構成を有しないものである。また、前記刊行物3に記載された発明は、サンプルホールド回路を各受光素子に共通に接続しているものであるが、1つの受光素子に関して、複数回、サンプルホールドとA/D変換によるデータ取込みを行ない、IRED2のオン時のA/D変換データからオフ時のA/D変換データを減算した結果を平均化することにより、当該受光素子の受光赤外強度に関するデータとするものであるから、この処理は単に受光信号を積分することとは相違するので、前記相違点に係る構成を有するものとは言えないし、サンプルホールド回路を積分回路に置換することを示唆するものでもない。さらに、前記刊行物4に記載された発明は、増幅回路や高域通過フィルターを共通化しているものであるが、積分回路を共通化することを示唆するものではない。結局、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明は、前記刊行物2〜4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるとは言えないものである。
しかも、前記相違点に起因して、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明が、格別の効果を奏することは、本件訂正明細書の発明の効果の欄に記載されているとおり明らかである。
以上のことから、前記最初の取消理由により、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を取り消すことはできない。
(カ.まとめ)
本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明についての特許は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。
〔4.むすび〕
以上のとおりであるから、前記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2、3、4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[III.特許異議の申立てについての判断]
特許異議の申立てに関しては、前記[II]〔3〕(ウ)(エ)(オ)の欄に記載したとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を取り消すことはできない。
[IV.結言]
他に本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
距離検出装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】測距光を投射し、その反射光を受光することにより測距物体までの距離に相応して相対関係の変化する第1の信号と第2の信号を出力する受光回路と、該受光回路から前記第1、第2の信号を時系列で発生させるための時系列化手段と、該時系列化手段により時系列で発生される前記第1、第2の信号をそれぞれ同一の積分器により積分し、積分された前記第1の信号と第2の信号とを演算して距離情報を検出する距離情報検出回路とを有することを特徴とする距離検出装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は距離検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、可動部を廃止すべく複数の検知素子を設ける方式は、投光部より測距対象に向けて光を照射し、その反射光を投光部から所定の基線長だけ離れて配置された受光部により受光して測距を行なう光照射型の所謂光アクティブ型三角測距方式に於ても、又所謂能動型の三角測距方式に於ても数多く提案され、また実用化もされている。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】
この方式は撮影操作以前に距離情報が判るという利点を有する反面、例えば特開昭56-29110号公報に見られる様に受光素子の数と同数の増幅器を含むアナログ入力回路を用いて各受光素子出力の比較演算等を行なう様構成されている為に各入力回路間の整合を取るのに手間取るばかりでなく、完全に整合させることが困難であった為に検出精度が低い欠点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的はかかる欠点を除去した、系の整合に手間取ることがなくかつ検出精度の良い距離検出装置を提供せんとするものである。上記目的を達成する為に本発明は、測距光を投射し、その反射光を受光することにより測距物体までの距離に相応して相対関係の変化する第1の信号と第2の信号を出力する受光回路と、該受光回路から前記第1、第2の信号を時系列で発生させるための時系列化手段と、該時系列化手段により時系列で発生される前記第1、第2の信号をそれぞれ同一の積分器により積分し、積分された前記第1の信号と第2の信号とを演算して距離情報を検出する距離情報検出回路とを有する距離検出装置とするものである。
【0005】
【実施例】
以下本発明について図面を用いて詳細に説明する。
【0006】
図1は本発明の適用したカメラ用距離検出装置の原理を説明する為の概念図で、図2は図1の受光素子の平面図である。
【0007】
図1および図2においてIREDは投光素子で、線状の赤外光を投光レンズL1を介して被写体Ob1、Ob2上に投射する。L2は測距されるべき被写体Ob1、Ob2からの反射光を投光軸から所定距離1(以下この1を基線長と称す)離れた2つの受光素子SPC1、SPC2上に結像させる受光レンズである。受光素子SPC1、SPC2上の被写体からの反射光によって形成される像RIは被写体の距離により連続的に前記投光軸と垂直な方向(以下基線長方向)11に沿って移動する。ここで受光素子SPC1、SPC2の構造は図2図示の如き楔形であるので、該素子出力は被測距体距離の変化に応じ、それぞれ一方の受光素子の出力が増せば、一方の受光素子の出力が減少する。受光素子SPC1、SPC2の出力をそれぞれA、Bとすると、(A+B)により正規化された、例えばA/(A+B)信号は被測距体の位置を示す。尚該装置の出力により撮影レンズの移動量を制御することによりオートフォーカス装置が実現される。
【0008】
図3は本発明を適用した測距装置の実施例の概略図である。図3において1は例えば図1、図2に示す受光素子SPC1、SPC2の如き被測距物体距離に依存して変化する第1、第2の測距信号を時分割的に出力する測距情報発生手段である。2は測距情報発生手段1、後述の信号処理回路3、スイッチ手段4、記憶手段5、演算手段6、距離判定手段7を制御する制御手段で、この実施例は電気的スイッチにより行なうものであるが不図示のシャッターボタンの押下げ操作に連動する部材により機械的なスイッチを切り換えたり、或いは受光素子SPC1、SPC2にマスクを設け該マスクを所定の順序で移動させることにより測距情報発生手段の出力を制御する方法も用いることができる。3は前述の信号処理回路で、増幅等の信号処理を行う。4は測距情報発生手段1から発生する情報の種類或いは時分割のモードに応じ信号処理回路3の出力を後述の記憶手段5、演算手段6に伝えるスイッチ手段である。
【0009】
5は前記信号処理回路3の出力を記憶する記憶手段、6は記憶手段5の出力と、スイッチ手段4から直接出力される信号処理回路3の出力とを演算する演算手段である。7は前記演算手段6の出力から被写体距離を判定し、不図示の表示回路或いは不図示の撮影レンズ制御回路に制御信号を出力する距離判定手段である。
【0010】
つぎに上記の如く構成される実施例の動作を説明する。制御手段2により測距情報発生手段1の第1の出力は信号処理回路3に送られる。制御手段2により制御されたスイッチ手段4により信号処理回路3の出力は記憶手段に送られ保持される。次に制御手段2に制御されて測距情報発生手段1は第2の出力を信号処理回路3に送る。制御手段2により切り換えられたスイッチ手段4により信号処理回路3の出力は記憶手段5を経ずに演算手段6に送られ、記憶手段5に保持された信号と共に演算手段6において演算され演算結果が算出される。距離判定手段7により演算結果が判定され距離情報として後段に送られる。
【0011】
つぎに本発明を適用したカメラ用距離検出装置(測距装置とも記す)の具体的な実施例について図4を用いて説明する。
【0012】
図4において、IREDは図4図示のL1の如きレンズ(不図示)を介して被測距物体(不図示)に光を投射する投光素子で、例えば赤外発光ダイオードが用いられる。IRDRはIREDを所定の光量で点滅させるIRED用駆動回路である。
【0013】
MS1、MS2はMOS-FETで構成されるアナログスイッチ、MSB1、MSB2はMOS-FET、MS1、MS2のオン-オフ信号を増幅するバッファアンプ、演算増幅器(以下オペアンプと称す)MAは前述の図1、図2図示の様に構成された受光素子SPC1、SPC2の出力電流を電圧に変換する高入力インピーダンスのアンプで、抵抗R3〜R5、コンデンサC1から構成される負帰遷路により直流抑圧機能を有している。PAはコンデンサC2、抵抗R8で形成されるハイパスフィルタを介して直流分がカットされた信号を非反転入力端に受け該信号を増幅するプリアンプ、INVは-1倍のゲインを有し、プリアンプPAの出力信号を反転するインバータ、INTはコンデンサーC3とともにミラー積分回路を構成し、プリアンプPAの出力を積分するオペアンプ、SPA、SINV、SDSCはオン時に電圧降下の生じないアナログスイッチ、R11はオペアンプINVの反転入力端子に接続された抵抗、CP1、CP2、CP3はコンパレータ、R13、R14、R15はコンパレータCP1、CP2、CP3の夫々に基準レベル電圧を供給する分圧抵抗で、互いに直列接続され、また抵抗R13の一端は接地され、抵抗R15の一端は-Vボルトの電源に接続される。
【0014】
OSCはクロック信号を発生する公知の発振回路、JCはOSCからのクロック信号を1/2×段数に分周するとともに、1クロック幅を単位として位相のずれている分周出力と同周期の信号を得るためのジョンソンカウンタ、ANDはアンドゲートで、後述の測距完了判定およびラッチ回路JLCからハイレベル(以下Hレベルと称す)の信号が出力されている時、すなわち測距動作中ジョンソンカウンタJCの分周出力を後述の分周回路DIVに送り、後述の測距完了判定およびラッチ回路JLCからローレベルの信号が出力されたとき、すなわち測距動作が完了した後にはジョンソンカウンタJCからの分周出力を後述の分周回路DIVに送ることを禁止するアンドゲート、DIVは前記分周回路で、クロック信号を更に分周し、2進カウンタBCに送ると共に、後述の積分特性圧縮用インターバルデコーダIIDに各段の出力信号を送るものである。BCはフリップフロップで構成される4ビットの2進カウンタで、分周回路DIVの出力信号をカウントし、後述のタイミング制御用デコーダTCDおよび後述の測距ゾーン判定用デコーダZJDに各フリップフロップの出力を供給する。尚本実施例の説明では2進カウンタBCの内容を16進数で表わし、回路の動作を説明する。前記測距ゾーン判定用デコーダZJDは2進カウンタBCの信号と後述の測距完了判定およびラッチ回路JLCの測距完了信号から被測距物体がどの距離ゾーンにあるかを検出する。例えば測距動作が完了し、測距完了信号がHレベルからローレベル(以下Lレベルと称す)に反転した時の2進カウンタBCの内容が“7”あるいは“8”であれば被測距物体は遠距離ゾーンにあり、“9”であれば中距離ゾーン、“A”であれば近距離ゾーン、“B”であれば至近距離ゾーンにあることを示す信号を出力する。EICは外部インターフェース回路で、測距ゾーン判定用デコーダZJDの出力信号に応答して測距データを表示したり、スティルカメラ、ビデオカメラ等の撮影レンズ(不図示)を駆動させる回路である。TCDはタイミング制御用デコーダで、2進カウンタBCの信号に応じて図5のTCD1〜TCD5で示す様な各種タイミング信号を発生し、該タイミング信号を測距完了判定およびラッチ回路JLC、後述の圧縮信号波形整形回路CSC、SPC制御用ラッチ回路SCL、IRED制御回路ICC、積分スイッチ制御回路ISC、アナログスイッチSDSCに送り、これらを制御する。CSCはコンパレータCP1で検出された圧縮信号のチャタリングを防止する為の圧縮信号波形整形回路で、前述のミラー積分器の出力の上昇過程に於いてコンパレータCP1が出力した最初のHレベルの信号を保持し、一方前記ミラー積分器の出力の下降過程においてはコンパレータCP1が出力した最初のLレベルの信号を保持する。
【0015】
IIDは積分特性圧縮用インターバルデコーダで、オペアンプINTの出力に圧縮をかけるために分周回路DIVの出力(図9のAND1参照)をデコードして図9のIID1に示す様なパルスを後述の積分スイッチ制御回路ISCに送り、積分特性を圧縮する時における積分特性決定用アナログスイッチSPA、SINVの制御信号を作り出す。
【0016】
ISCは積分スイッチ制御回路であり、図5、図7でISC1、ISC2として示される様なアナログスイッチSPA、SINVの開閉を制御する信号をジョンソンカウンタJCの出力信号から作る。
【0017】
ICCはIRED制御回路であり、2進カウンタBCの内容が“0”あるいは“1”であるという信号をタイミング制御用デコーダTCDから受けたときおよび測距完了判定およびラッチ回路JLCの出力信号がLレベルであるとき投光素子IREDをオフし、前記以外のときには後述のSPC制御用ラッチ回路SCLの出力信号とジョンソンカウンタJCの出力信号との排他的論理和を算出した信号により投光素子IREDを点滅させる。
【0018】
SCLは図5のSCL1、SCL2で示すようなパルスを出力する前記SPC制御用ラッチ回路であり、上昇積分時には受光素子SPC1の出力信号が、下降積分時には受光素子SPC1、SPC2の出力信号がオペアンプMAに入力する様アナログスイッチMS1、MS2を制御する。PSGは電源投入時に各回路をクリアするPUC信号を出力するPUC信号発生回路である。
【0019】
つぎに上記構成にかかる測距装置の動作について図5乃至図9を用いて説明する。
【0020】
カメラのレリーズボタン(不図示)が押下されると、電源回路PUから図4図示の如き電圧(V+、V-)が発生し、該電圧が図4の各回路に供給される。
【0021】
同時にPUC信号発生回路PSGからパワーアップクリア信号PUCが発生し、ジョンソンカウンタJC、分周回路DIV、2進カウンタBC、SPC制御用ラッチ回路SCL、測距完了判定およびラッチ回路JLCはクリアされる。かかるクリア動作が完了すると、ジョンソンカウンタJCは発振回路OSCからのクロック信号をカウントし、該カウンタJCの出力端JC3は該クロック信号を分周した出力信号を発生する。この時アンドゲートANDの一方の入力端には測距完了判定およびラッチ回路JLCよりハイレベル(以下Hレベルと称す)の信号が与えられているので、アンドゲートANDはジョンソンカウンタJCからの分周出力を分周回路DIVに供給し、該分周回路DIVは該入力信号(図9のAND1参照)を更に分周した後に2進カウンタBCに入力信号として供給する。その為、カウンタBCの内容はパワーアップクリア動作後に“0”より順次上昇する。該カウンタBCの内容をデコードするデコーダTCDの出力端TCD1は図5のTCD1で示される様にカウンタBCの内容が“0”から“1”の間はLレベルであるので、IRED制御回路ICCの出力端もカウンタBCの内容が“0”から“1”の間Lレベルを保持し、IRED駆動回路IRDRはこの間投光素子IREDを駆動せず、投光は行われない。又タイミング制御用デコーダTCDの出力端TCD2はカウンタBCの内容が“0”から“2”の間においてはLレベル(図5のTCD2参照)を保持し、積分スイッチ制御回路ISCの出力端ISC1、ISC2をLレベルとするので、アナログスイッチSPA、SINVはオフ状態を保持し、ミラー積分器の積分動作は開始されない。一方タイミング制御用デコーダTCDの出力端TCD3はカウンタBCの内容が“0”から“2”の間Hレベル(図5のTCD3参照)であるのでアナログスイッチSDSCはこの間オン状態を保持し、抵抗R12、R11を介してコンパレータCP3の出力端をオペアンプINTの反転入力端に接続し、INT-CP3-SOSC-Rl2-R11=INTからなる閉回路を形成する。該閉回路が形成された時、たとえばオペアンプINTの出力端の電位V2がVr2+OF2(但しVr2はコンパレータを形成するオペアンプCP3の反転入力端の電位であり、OF2はオペアンプCP3のオフセット電圧)より高い場合にはオペアンプCP3の出力端はHレベルとなりアナログスイッチSDSC、抵抗R12、R11を介してコンデンサC3を充電するので、その充電電圧に応じてオペアンプINTの出力端の電位V2は徐々に降下し、所定時間後にオペアンプINTの反転入力端の電位V1とオペアンプCP3の出力端の電位V3とが同電位になるとコンデンサC3に対する前記充電動作は停止する。
【0022】
一方前記オペアンプINTの出力端の電位V2が前記電位Vr2+OF2より低い場合には前記オペアンプCP3の出力端はLレベルとなって抵抗R11、R12並びにアナログスイッチSDSCを介してコンデンサC3に蓄積されていた電荷が放電するので、オペアンプINTの出力端の電位V2は上昇する。そして所定時間後に前述のケースと同様にオペアンプINTの反転入力端の電位VlとオペアンプCP3の出力端の電位V3とが同電位となるとコンデンサC3の放電は停止し、安定状態となる。
【0023】
かかる安定状態に達した時におけるオペアンプINTの出力端の電位V2は次の様である。即ちオペアンプCP3の増幅率をαとすると、各電圧の関係は
V3=V2+α(V2-Vr2-OF2)=V1
【0024】
【外1】

となる。
【0025】
一般にオペアンプ(演算増幅器)の増幅率αはα≫1とおくことができるから、上式はV≒Vr2+OF2となり、オペアンプINTの出力端の電位V2はオペアンプCP3の閾値電圧(Vr2+OF2)にほぼ等しくなる。
【0026】
この結果、コンデンサC3の端子電圧はオペアンプINTの反転入力端電位V1=Vr2-OF1とコンパレータCP3の非反転入力端電位V2=Vr2-OF2との差電圧となるので、オペアンプINTおよびコンパレータCP3のオフセット電圧OF1、OF2が自動的に補償できると共に、オペアンプINTの無信号時の出力レベルが基準レベル(図4図示実施例の場合は該基準レベルはグランドレベルである)以下に設定される。尚該実施例の如く、オペアンプINTの出力が後述する様に無信号時の出力レベルに対して一方向(正方向)のみに振れる場合には、前述の様にオペアンプINTの無信号時の出力レベルがグランドレベル以下に設定されるとオペアンプINTの出力のダイナミックレンジが広がるので、S/N比が向上する。
【0027】
次いでパワーアップクリア後にカウンタBCの内容(図5、図7、図8のBC参照)が“2”になり、デコーダTCDの出力端TCD1(図5TCD1参照)がLレベルからHレベルに反転すると、IRED制御回路ICCの出力端はジョンソンカウンタJCの出力端JC3からの出力信号に応答してHレベル並びにLレベルを繰返すので、IRED駆動回路IRDRは投光素子IREDを間欠的に駆動し、投光素子IREDは図1図示レンズL1の如きレンズを介して測距物体に光を投光する。点灯開始直後においては、投光素子IREDの内部温度は低い為に発光エネルギーは高いが、連続的な点灯により内部温度が上昇してくるとそれに伴って投光素子IREDの発光エネルギーは徐々に減少する。そして投光素子IREDの内部温度が投光素子の周囲温度より高くなり、投光素子内での発熱量と同じ熱量を外界に放出するような所謂熱平衡状態に達すると投光素子IREDの発光エネルギーは安定状態に達する。しかる後にカウンタBCの内容が“2”から“3”に変わると、デコーダTCDの出力端TCD3(図5のTCD3参照)はHレベルからLレベルに反転するので、アナログスイッチSDSCは開成してINT-CP3-SDSC-R12-R11-INTからなる閉回路は開き、ミラー積分器による積分動作が開始される。尚この時点ではSPC制御用ラッチ回路SCLの出力端SCL1はLレベル、SCL2はHレベルであって受光素子SPC1のみがアンプMAの入力端に接続されている。
【0028】
また、カウンタBCの内容が“3”に変わった後に積分スイッチ制御回路ISCの出力端ISC1は図5のISC1に示す様なジョンソンカウンタJCの出力端JC1からのパルスとほぼ逆位相のパルスを発生してアナログスイッチSPAの開閉を開始し、更に出力端ISC2は図5図示のISC2に示す様なジョンソンカウンタJCの出力端JC2からのパルスとほぼ同位相のパルスを発生してアナログスイッチSINVの開閉を開始する。
【0029】
従ってカウンタBCの内容が“3”に変ってアナログスイッチSDSCが前述の様に開成した後に、測距物体で反射した投光素子IREDからの光が受光素子SPC1に入射することによって、アンプPAから入射光の強さに応じた図6aの波形PAに示す如き出力が発生し、またインバータINVから図6bの波形INVに示す如き出力が発生すると、アナログスイッチSPA、SINVは図6aにおいて波形SPA、SINVで示す様な開成動作をしているので、ミラー積分器を形成するオペアンプINTの反転入力端には図6aのINTに示す様な常に負のレベルを持った信号が与えられる。従ってコンデンサC3はカウンタBCの内容が“3”から“6”の間の一定時間Tの間充電され続け、その端子電圧は図5の波形INTで示す様に受光素子SPC1への入射光量に応じて上昇する。そして一定時間Tが経過した時、コンデンサC3は測距物体が近距離の時には高く、遠距離の時には低い電圧に充電される。
【0030】
その後カウンタBCの内容が“6”から“7”に変化し、デコーダTCDの出力端TCD4が図5の波形TCD4に示す様にHレベルからLレベルに変化すると、まずSPC制御用ラッチ回路SCLの出力端SCL1、SCL2の夫々が図5の波形SCL1、SCL2に示す様に反転してアナログスイッチMS1を開成し、アナログスイッチMS2を閉成し、アンプMAの入力端に受光素子SPC1、SPC2を並列接続する。また前述のデコーダTCDの出力端TCD4の出力変化によりSPC制御用ラッチ回路の出力端SCL3も図5図示の波形SCL3の様にLレベルからHレベルに変化するのでIRED制御回路ICCはジョンソンカウンタJCの出力端JC3からのパルスの位相を180°ずらせたパルスをIRED駆動回路IRDRに供給する。更に前述のデコーダTCDの出力端TCD4の出力変化に同期して、デコーダTCDの他の出力端TCD2が図5図示の波形TCD2の様にHレベルからLレベルに変するので、該出力端TCD2からの信号を受ける積分スイッチ制御回路ISCの両出力端ISC1、ISC2は共にLレベルとなってアナログスイッチSPA、SINVを開成し、ミラー積分器による積分動作を中断させ、受光素子SPC1、SPC2の切換えに伴って生じるアンプMPの過渡的変動による誤測距を失くす。カウンタBCの内容が“7”から“8”に変化し、デコーダTCDの出力端TCD2の出力信号がLレベルから再度Hレベルに変化すると、アナログスイッチSPA、SINVは再度積分スイッチ制御回路ISCの出力端ISC1、ISC2からの出力信号(図5のISC1、ISC2参照)に応じて開閉動作を繰返すが、前述した様にIRED制御回路ICCから出力されるパルスの位相がカウンタBCの内容が“6”から“7”に切換わった時点で180°ずれたので、投光素子IREDの点灯時にアナログスイッチSPAが開成し、投光素子IREDの消灯時にアナログスイッチSINVが開成することになる(図6b参照)。
【0031】
このためミラー積分器のアンプINTの反転入力端にはカウンタBCの内容が“8”に移行した時点から図6bの波形INTで示す様な正方向の電圧が与えられる。勿論オペアンプINTの反転入力端に与えられる正方向の電圧は受光素子SPC1の出力とSPC2の出力との和の出力に相応した電圧である。カウンタBCの内容が“8”に移行した後にオペアンプINTに前述した様な正方向の電圧が次々に与えられると、オペアンプINTの出力レベルは入力信号のレベルすなわち測距物体までの距離に応じて図5の波形INTで示す様に徐々に低下してゆく。尚図5の波形INTにおいてINT-1は測距物体が近距離の場合、INT-2は測距物体が中距離の場合、INT-3は測距物体が遠距離の場合、INT-4は測距物体が近距離で、かつ高反射率の測距物体である場合、INT-5は測距物体が極めて遠距離の場合のオペアンプINTの出力特性の概略を夫々示している。
【0032】
ここでまず測距物体が近距離の場合であってオペアンプINTの出力がINT-1(図6INT出力参照)で示される様な出力特性を呈する場合の動作について説明する。
【0033】
オペアンプINTの出力がコンパレータCP3の閾値より低下すると、コンパレータCP3の出力端はHレベルからLレベルに反転し、ラッチ回路JLCに測距完了信号を与える。この時タイミング制御用デコーダTCDの出力端TCD5(図5のTCD5参照)はHレベルとなっているのでラッチ回路JLCはコンパレータCP3からの測距完了信号に応答してLレベルの出力信号(図5のJLC1参照)をIRED制御回路ICC、積分スイッチ制御回路ISC、コンパレータCP3、アンドゲートAND並びに測距ゾーン判定デコーダZJDの夫々に与える。このため投光素子IREDの投光は停止され(図5IRED参照)、両アナログスイッチSPA、SINVは開かれて(図5ISC1、ISC2参照)ミラー積分器の積分動作は停止され、コンパレータCP3の作動も停止される。
【0034】
またアンドゲートANDの出力もHレベルからLレベルに反転してカウンタJCから分周回路DIVへのパルスの伝達を阻止する。従って2進カウンタBCは前述の測距完了信号がコンパレータCP3より出力された時点の数値“A”を保持し、また測距ゾーン判定用デコーダZJDにはカウンタBCの内容である数値“A”が与えられる。この時測距ゾーン判定デコーダZJDには前述の様にコンパレータCP3からの測距完了信号に応答してラッチ回路JLCよりLレベルの信号が与えられているので、測距ゾーン判定デコーダZJDは2進カウンタBCからの情報をもとに測距物体の距離情報を外部インターフェース回路(この実施例においてはカメラ内の所定の回路)へ伝達する。
【0035】
ここで該測距ゾーン判定デコーダZJDの演算について詳述する。
【0036】
上昇方向の積分(積分時間T)時におけるミラー積分器を構成するコンデンサC3の充電電圧と、下向方向の積分(積分時間t)時におけるコンデンサC3の降下電圧は図5のINTから明らかな様に等しい。
【0037】
よって
【0038】
【外2】

が成立する。
【0039】
ここでC3…コンデンサC3の容量、R11…入力抵抗R11の抵抗値、A…受光素子SPC1の出力電流値、B…受光素子SPC2の出力電流値、T…前述した上昇方向時の積分時間、t…前述した下降方向時の積分時間、α…オペアンプMAの電流-電圧変換定数とオペアンプPAの増幅率との積並びに両アナログスイッチSPA、SINVの開閉デューティ比で定まる比例定数である。
【0040】
上記(2)式は積分時間Tが一定である時は他の積分時間tを測定することによりA/A+B、すなわち測距物体の距離を判定できることを示している。測距ゾーン判定デコーダZJDはこの原理を利用して距離を演算するものである。
【0041】
すなわち前述のようにしてカウンタBCより与えられた数値“A”から積分時間tを算出し、既知の一定時間TからA/A+Bを求め、測距物体までの距離を算出し、前述のように外部インターフェース回路に測距物体迄の距離情報を出力する。
【0042】
尚測距物体が中距離にある時にはコンパレータCP3がカウンタBCの内容が“9”の時に前述のような測距完了信号を発生するので、測距ゾーン判定デコーダZJDは測距物体が中距離にあることを示す信号を出力する。更に測距物体が遠距離にある時にはコンパレータCP3がカウンタBCの内容が“8”の時に前述のような測距完了信号を発生するので測距ゾーン判定デコーダZJDは測距物体が遠距離にあることを示す信号を出力する。
【0043】
次に測距物体が極めて遠距離にあって、ミラー積分器の出力レベルが積分特性INT-5(図5のINT参照)に示される様にカウンタBCの内容が“7”に移行した時にもコンパレータCP2の閾値CP2T(図5の波形INT参照)を越えない場合には、タイミング制御デコーダTCDの出力端TCD4がHレベルからLレベルに反転した際にラッチ回路JLCはこのレベルの反転に同期してコンパレータCP2から出力されているLレベルの信号をラッチする。この結果、ラッチ回路JLCの出力は前記デコーダの出力端TCD4の出力の反転に応答して測距物体が前述の如き通常の範囲内に存在した場合と同様にHレベルからLレベルに変化し(図5のJLC1参照)、投光素子IREDの投光は停止され、カウンタBCの内容は“7”に保持され、また測距ゾーン判定デコーダZJDはカウンタBCの内容“7”並びにラッチ回路JLCの出力信号から測距物体が極めて遠距離に存在することを示す信号を外部インターフェース回路EICに出力する。
【0044】
最後に測距物体が近距離にあって、かつ高反射率のものである時の動作について説明する。かかる場合はミラー積分器の出力電圧は図5の積分特性INT-4に示される様に受光素子SPC1からの出力電流に応じて積分開始後急激に上昇する。そしてコンパレータCP1の閾値CP1T(図7のINT参照)を越えるとコンパレータCP1の出力(図8のCP1参照)はLレベルからHレベルに反転し、圧縮信号波形整形回路CSCの出力は図8の波形CSCで示される様にHレベルからLレベルに反転する。このため積分スイッチ制御回路ISCの出力端ISC1、ISC2からのパルスは積分インターバルデコーダIIDからのパルス(図9のIID1参照)によって図7の波形ISC1、ISC2に示される様に間引かれたパルス列となる。
【0045】
かかる間引かれたパルス列はアナログスイッチSPA、SINVに供給され、アナログスイッチSPA、SINVは該パルス列に応答して開閉するのでミラー積分器を形成するオペアンプINTの出力電圧は図5に示される様に緩い傾斜をもって上昇する。
【0046】
そしてカウンタBCの内容が“7”に移行すると前述の場合と同様にタイミング制御デコーダTCDの出力端TCD2から出力されるLレベルの信号に応答してアナログスイッチSPA、SINVが開成し、コンデンサC3の充電路を遮断するので、ミラー積分器の積分動作は停止する。
【0047】
そして2進カウンタBCの内容が“8”に移行すると、タイミング制御デコーダTCDの出力端TCD2はLレベルから再びLレベルに反転し(図5の波形TCD2参照)、積分スイッチ制御回路ISCの出力端ISC1、ISC2は再び図7のISC1、ISC2の様な間引かれたパルスをアナログスイッチSPA、SINVに供給するので、アナログスイッチSPA、SINVは開閉し再び積分動作は開始され、積分器を形成するオペアンプINTの出力は受光素子SPC1からの出力電流とSPC2からの出力電流の和の電流に応じ、かつ期間T1(図5INT参照)における積分特性の傾きをKAとすると-K(A+B)の傾きをもって図7の波形INT或いは図5の波形INT-4に示される様に徐々に降下する。積分器の出力が更に降下してコンパレータCP1の閾値CP1T(図5、図7の波形INT参照)以下となると、コンパレータCP1の出力はHレベルからLレベルに反転して圧縮信号波形形成回路CSCの出力をLレベルからHレベルに反転させ(図8の波形CSC参照)、積分スイッチ制御回路ISCの出力端ISC1、ISC2から出力されるパルスのデューティ比を元に戻す。このため積分器の出力は図5のINT出力(波形INT-4参照)に示される様に急激に降下する。そして該積分器の出力、すなわちオペアンプINTの出力電圧がコンパレータCP3の閾値以下となるとコンパレータCP3の出力はLレベルに反転して測距完了判定およびラッチ回路JLCの出力を反転させ(図5の波形JLC1参照)、前述の場合と同様に投光素子IREDの投光を停止させると共に測距ゾーン判定デコーダZJDよりカウンタBCの内容(“B”)に応じた距離情報、すなわち測距物体は至近距離にある事を示す情報を外部インターフェース回路EICに出力する。
【0048】
以上詳細に説明した実施例に関し、本発明の範囲内で種々の変形を施すことができる。すなわち投光手段等の無いいわゆる受動式(パッシブ)測距装置、例えば焦点面近傍に配置した2個の受光素子にそれぞれ入射する被写体像のコントラストの差等に起因するレベル信号を比較することにより合焦検知を行なう系等にも適用可能である。またこの場合、本実施例に於ける如く同期整流の同期位相をずらすことにより時系列的に逆極性信号を得ることは出来ないが、例えば図10に示す如く信号発生部での受光素子接続自体を逆にする等により第1モードと第2モードの信号極性を逆にすることも可能である。すなわち、図10は図4における、演算増幅器MA及びその周辺部品を省略的に示したもので、スイッチSWAがオン、スイッチSWBがオフの場合、受光素子SPCAに入射する信号光により演算増幅器OP1の出力は負帰還回路FC1を介して一方の極性に振れ、スイッチSWBがオン、スイッチSWAがオフの場合は逆極性に振れることになる。或いはまた、時分割された各モードで信号の極性を変えるのに信号経路の中に反転回路を設けこの機能を活かしたり停止したりするという様に構成することも可能である。
【0049】
また、第3の説明でも記した様に、複数情報発生手段の時分割を制御する方式は、電気的方式ばかりでなく機械的方式も可能であり、切り換える方式も、受光素子の接続を直接切り換えるという本方式の実施例の様なものが処理回路の兼用による回路規模削減並びに回路間の不整合に基づく検出精度の低下の防止につながり望ましいが、図11に示す様に、個々の受光素子に入力回路を設けその出力を切換える様に構成しても良いことは云うまでもない。図11は図3のブロック1に対応するものでOP2、OP3は演算増幅器、SPCC、SPCDは受光素子、FC2、FC3は負帰還回路、SWCは切換え手段である。図11の例では、図4で示した実施例の様に両受光素子の和出力を得るには工夫を要するが、撮影レンズ繰出し量と演算結果の比例性を必ずしも必要としない系に於いてはこれでも充分である。図4に於けるミラー積分器の演算機能を図11の如き情報発生手段と組み合わせた場合、その結果は2つの受光素子への入射光量比とみても良いし、単に差演算或いは大小比較と見なして処理することも可能である。
【0050】
また受光素子に関しても、図4迄の実施例に於けるような2つのカソードコモンのシリコン受光素子に限定されるものでなく特願昭58-29076号公報に示された各入力回路、受光素子が適用可能である。特に半導体位置検出器(以下PSDと記す)と組み合わせた場合、PSD自体の持つアナログ的高分解能と相俟って一層高精度な系を構成することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上の様に本発明によれば、時分割に発生された信号がほぼ同一の処理系を経る為に、従来例の情報数に対応した複数処理系の間の整合に調整等の手間をかける必要もなくなり、安価に提供できるばかりでなく、高精度な装置を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明を適用した距離検出装置の原理図。
【図2】
図1図示の受光素子の平面図。
【図3】
本発明を適用した距離検出装置の概略図。
【図4】
本発明を適用した距離検出装置の詳細回路図。
【図5】
図4図示回路の各部の波形図。
【図6】
図4図示回路の各部の波形図。
【図7】
図4図示回路の各部の波形図。
【図8】
図4図示回路の各部の波形図。
【図9】
図4図示回路の各部の波形図。
【図10】
本発明の他の実施例の回路図。
【図11】
本発明の他の実施例の回路図。
【符号の説明】
IRED 発光素子
SPC1、SPC2、SPCA〜SPCD 受光素子
TCD 遅延回路を形成するタイミング制御用デコーダ
BC カウンタ
ISC 積分スイッチ制御回路
SPA、SINV アナログスイッチ
PA、INV、INT、MA、OP1〜OP3 オペアンプ
C3 コンデンサ
 
訂正の要旨 (1)特許第2675979号発明の明細書中、特許請求の範囲において、「測距光を投射し、その反射光を受光することにより測距物体までの距離に相応して相対関係の変化する第1の信号と第2の信号を出力する受光回路と、該受光回路から前記第1、第2の信号を時系列で発生させるための時系列化手段と、該時系列化手段により時系列で発生される前記第1、第2の信号をそれぞれ積分し、積分された前記第1の信号と第2の信号とを演算して距離情報を検出する距離情報検出回路とを有することを特徴とする距離検出装置。」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「測距光を投射し、その反射光を受光することにより測距物体までの距離に相応して相対関係の変化する第1の信号と第2の信号を出力する受光回路と、該受光回路から前記第1、第2の信号を時系列で発生させるための時系列化手段と、該時系列化手段により時系列で発生される前記第1、第2の信号をそれぞれ同一の積分器により積分し、積分された前記第1の信号と第2の信号とを演算して距離情報を検出する距離情報検出回路とを有することを特徴とする距離検出装置。」と訂正する。
(2)特許第2675979号発明の明細書において、明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明を前記(1)に対応させるべく訂正する。
異議決定日 1999-09-08 
出願番号 特願平6-95104
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G01C)
P 1 651・ 113- YA (G01C)
P 1 651・ 532- YA (G01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 居島 一仁  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 森 雅之
渡邊 聡
登録日 1997-07-18 
登録番号 特許第2675979号(P2675979)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 距離検出装置  
代理人 丸島 儀一  
代理人 丸島 儀一  

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