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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04B
管理番号 1020486
異議申立番号 異議2000-71495  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-12 
確定日 2000-08-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第2962289号「ページング着呼の信号送出エリア割出方式」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2962289号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯及び本件発明
特許第2962289号に係る発明についての出願は、平成9年8月26日に特許出願され、平成11年8月6日にその特許の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社より特許異議の申立がなされたものである。
そして、その請求項1乃び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」乃び「本件発明2」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1乃び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
携帯型無線電話システムにおけるページング着呼方式において、交換機のリソース管理部が端末の空/塞等のリソース情報を有し、ページング着呼時に、端末グループ管理部が前記リソース管理部で管理しているページンググループ端末のリソース情報を読み出して通信中の端末を割り出し、位置登録情報を読み出すプロトコル制御部には、空き状態のページンググループ端末のみ引き渡すことで、ページング着呼の着信信号送出エリアを空き状態の端末位置登録エリアに限定することを特徴とするページング着呼の信号送出エリア割出し方式。
【請求項2】
携帯型無線電話システムにおけるページング着呼の制御方式において、交換機が、ページンググループの属する端末の加入者情報、及び、ページンググループの着信状態等のデータを管理し、ページング着呼サービスを実現する端末グループ制御部と、端末の空/塞を管理するリソース管理部と、無線端末に送受信するメッセージの生成/解析を行い位置登録情報から信号送出する呼び出しエリアを割り出すプロトコル制御部と、を含み、ページング着呼時、前記交換機の前記端末グループ制御部において、ページンググループ端末のリソース情報を前記リソース管理部から読み出し、該端末が通信中であればページンググループ端末情報から削除し、空き状態のページンググループ端末のみを前記プロトコル制御部に引き渡すことで、前記プロトコル制御部が位置登録情報から信号送出する呼び出しエリアを割り出す端末数を減らし、最小限の呼び出しエリアにのみページング着呼の着呼信号を送出する、ことを特徴とするページング着呼の信号送出エリア割出し方式。」

2.特許異議申立ての概要
特許異議申立人エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社は、請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願の出願日である平成9年8月26日前に頒布された、甲第1号証(特開平1-120165号公報)、甲第2号証(特開平9-163427号公報)及び甲第3号証(特開平5-55980号公報)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

3.甲号各証の記載
3-1 甲第1号証(特開平1-120165号公報)
(a)「着信時に交換機からの起動信号を受けて発信加入者にガイドメッセージを送出するガイドメッセージ送出手段と、前記発信加入者からPB信号で送られてくる被呼者番号を受信してこれを前記交換機に通知する通知手段と、前記発信加入者のメッセージを蓄積するメッセージ蓄積手段と、前記交換機からメッセージ送出信号を受けたとき前記メッセージ蓄積手段から読み出したメッセージを複数の回線に送出するメッセージ送出手段とを備えることを特徴とする一斉通信方式」(特許請求の範囲の欄)
(b)「第1図において、システムは加入者電話機(以下SUB)70,71,〜7nを収容した電話交換機(以下SWE)6に通信回線を介して一斉通信装置(以下GCE)1が接続されてなる。SWE6は一般的な電話交換機で、ネットワーク(以下NW)61と、NW61に接続された発信レジスタトランク(以下ORT)62、呼出信号トランク(RGT)63、中央制御装置(以下CC)64を含んでおり、NW61にSUB70,71,〜7nが収容されている。GCE1は…(中略)…登録メッセージ格納エリア(以下RDM)41を備えている。」(第2頁左上欄第13行〜同頁右上欄第12行)
(c)「続いて、発信加入者がSUB70(学校)からSUB71,〜7n(生徒宅)に緊急連絡する場合を例にとって本実施例の動作について説明する。発信加入者がSUB70をオフフックすると、公知のようにSUB70はNW61を介してORT62に接続され、発信加入者は発信音を聞いた後、一斉通信サービス要求用の特番をダイヤルする。…(中略)…発信加入者が第1のガイドメッセージを聴いて連絡したい生徒の家庭の電話番号をPB信号により入力する。…(中略)…発信加入者が第2のガイドメッセージを聴いて連絡したい内容、例えば「本日は台風の為臨時休校とします」のメッセージを送話器から入力すると、このメッセージはNW61、LCT11を介してVPRC3に送られ、VPRC3において信号処理され、VME4のRDM4に蓄積される。…(中略)…次にCC64は先に受信した被呼者番号に基づきその被呼者(例えばSUB71)の空き、話中の状態をチェックし、SUB71が空きのときはNW61を介してSUB71をRGT63と接続して呼出信号を送出する。SUB71が応答するとCC64はNW61を介してSUB71とLCT11とを接続するとともにSYC5にメッセージ送信信号を送出する。…(中略)…CC64はメッセージ送出終了信号を受信すると、NW61を解放してSUB71とLCT11間のバスを解放するとともにその被呼者番号情報をメモリから消去し、次の被呼者番号情報を取り出して同様の接続およびメッセージ送出動作を繰り返す。…(中略)…また、CC64が被呼SUBの空き、話中状態をチェックしたときその被呼SUBが話中であれば、その被呼者番号情報を記憶したままスキップして次の被呼者番号への呼出動作を進める。CC64は空き被呼SUBへの緊急連絡を一通り終了した後、予め定めた時間が経過したとき、上記無応答SUBおよび話中SUBへの呼出しを順次行う。」(第2頁右上欄第13行〜第3頁左下欄第7行)
(d)「以上説明したように本発明は、電話交換機が被呼加入者の空き、話中の状態をチェックし、空きの被呼加入者を呼び出すので、話中時の再発呼等の無効な発呼動作の繰返しを防止することができる。また従来方式のような自局内トランク、入トランク、出トランク等を使用しないので、これら共通機器の話中に伴う再発呼も防止できる。つまり、電話交換機側の異常輻輳を招くことなく、短時間に経済的に一斉通信サービスを行うことができる効果がある。」(第3頁左下欄第19行〜同頁右下欄第8行)
3-2 甲第2号証(特開平9-163427号公報)
(a)「【請求項1】 新たな無線ゾーンへ移動した場合に所定の在圏位置登録を行う複数の移動局と、所定の無線ゾーンを有しこの無線ゾーンに在圏する各移動局と無線回線を介して接続される複数の基地局と、各移動局が在圏する無線ゾーンを示す在圏位置を記憶する位置登録レジスタと、各基地局および位置登録レジスタと有線または無線回線を介して接続され位置登録レジスタに記憶されている各移動局の在圏位置に基づいて各種呼接続制御を行うことにより移動局間の通信を実現する制御局とからなる移動通信システムにおいて、各移動局は、自局が所属するグループのグループ番号とこのグループに所属する移動局を識別するための付加番号とから構成される移動局番号を有し、位置登録レジスタは、任意の移動局からの在圏位置登録に応じて各グループごとに個々の所属移動局の在圏位置を記憶し、制御局は、所定のグループに対する呼が生起した場合には、そのグループに所属する各移動局の在圏位置を位置登録レジスタから読出し、各在圏位置に対応する基地局に対してのみ前記呼で使用する通信チャネルの割り当てを行うようにしたことを特徴とする移動通信システムのグループ通信制御方法。
【請求項2】 新たな無線ゾーンへ移動した場合に所定の在圏位置登録を行う複数の移動局と、所定の無線ゾーンを有しこの無線ゾーンに在圏する各移動局と無線回線を介して接続される複数の基地局と、各移動局が在圏する無線ゾーンを示す在圏位置を記憶する位置登録レジスタと、各基地局および位置登録レジスタと有線または無線回線を介して接続され各移動局の在圏位置に基づいて各種呼接続制御を行うことにより移動局間の通信を実現する制御局とからなる移動通信システムにおいて、移動局は、自局を識別するための個別移動局番号と自局が所属するグループのグループ番号とを有し、位置登録レジスタは、任意の移動局からの在圏位置登録に応じて各グループごとに個々の所属移動局の在圏位置と個別移動局番号とを対応させて記憶し、制御局は、所定のグループに対する呼が生起した場合には、そのグループに所属する各移動局の在圏位置を位置登録レジスタから読出し、各在圏位置に対応する基地局に対してのみ前記呼で使用する通信チャネルの割り当てを行うようにしたことを特徴とする移動通信システムのグループ通信制御方法。
【請求項3】 請求項2記載の移動通信システムのグループ通信制御方法において、 位置登録レジスタは、任意の移動局からの在圏位置登録に応じて個別移動局番号ごとに所属グループ番号と在圏位置とを記憶するとともに、各グループごとに所属移動局の在圏位置を記憶するようにしたことを特徴とする移動通信システムのグループ通信制御方法。」(【特許請求の範囲】の欄)
(b)「【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態である移動通信システムのブロック図であり、同図において、BS1〜BSnはそれぞれ無線ゾーン1〜nを構成し各無線ゾーンに在圏する移動局MS1〜MSmを通話チャネルCH1〜CHjを介して接続する基地局、10は各基地局BS1〜BSnと有線または無線回線を介して接続し呼の接続制御を行う制御局、11は個々の移動局MS1〜MSmの在圏無線ゾーンの位置登録管理を行う位置登録レジスタである。
【0012】
ここでは、同一グループを構成する移動局MS1,MS2およびMSmがグループ通信中であり、無線ゾーン1に在圏する移動局MS1およびMS2が通話チャネルCH1を介して基地局BS1と接続されているとともに、無線ゾーンnに在圏する移動局MSmが通話チャネルCHjを介して基地局BSnに接続されていることを示している。
【0013】
また、通話チャネルCH1とCHjとは、基地局BS1およびBSnを介して制御局10により相互に接続されている。なお、図1において、基地局BS1,BS2,BSn以外の基地局、移動局MS1〜MSm以外の移動局については省略されている。
【0014】
図2は各移動局が有する移動局番号の構成例を示す説明図であり、21はグループ通信に使用されるグループ番号、22は同一のグループ番号21を有する移動局のうち個々の移動局を識別するための付加番号である。また図3は本発明の第1の実施の形態による位置登録レジスタの構成例を示す説明図であり、31はグループ番号、32はそれぞれのグループに所属する個々の移動局が在圏する基地局を付加番号「a」〜「m」により管理する在圏位置、33は各グループに所属する個々の移動局が在圏する基地局を無重複にて示す在圏基地局番号である。
【0015】
この場合、システム内にはグループG1〜Gkが存在し、各グループには最大で「a」〜「m」の付加番号が付与された移動局が存在していることを示している。この位置登録レジスタ11では、グループ番号21と付加番号22との組からなる移動局番号(図2参照)による位置登録要求が行われると、移動局番号を構成するグループ番号21と付加番号22により決定される在圏位置32のアドレス位置に、在圏無線ゾーンの基地局番号(BS1〜BSn)が記憶される。
【0016】
例えば、グループ番号「G1」+付加番号「b」という組からなる移動局番号を有する移動局の在圏位置は、基地局番号「BS1」の基地局であることを示している。在圏基地局番号33には、任意の移動局の位置登録が行われるごとに、これら各移動局番号に対応して記憶された基地局番号がグループ番号31ごとに重複排除されて更新され再記憶されており、各グループに所属する移動局は、この在圏基地局番号33で示される基地局の無線ゾーンのいずれかに在圏していることになる。
【0017】
次に、図4を参照して、本発明の第1の実施の形態による動作として、グループ通信の呼接続シーケンスを例に説明する。図4はグループ通信の呼接続処理を示すシーケンス図である。なお、この場合、グループG1には移動局番号「G1?a」を有する移動局MS1、移動局番号「G1?b」を有する移動局MS2、および移動局番号「G1?n」を有する移動局MSnが存在し、これら移動局の在圏位置は、前述した図3のような構成を有する位置レジスタ11により管理されているものとする。
【0018】
今、移動局MS1が自身の所属するグループG1内でグループ通信を行うために「発呼」41を送信する。この発呼情報は基地局BS1を介して制御局10に転送され、ここで位置レジスタ11に対して「在圏位置問合せ」42が出力される。これに応じて位置レジスタ11は、このグループG1に所属する移動局の在圏基地局番号33(図3参照)の内容を読出し、「在圏位置報告」43として制御局10に報告する。
【0019】
制御局10は、報告を受けたすべての在圏基地局BS1,BS2,・・,BSnに対してグループG1への「着呼」44をそれぞれ通知する。これに応じて各基地局BS1,BS2・・BSnは、それぞれの無線ゾーン1,2〜nに対して、「着呼」44に対する「通話チャネル割り当て」45を行うとともに、「着信呼出」46を行い、呼び出された各移動局MS1,MS2,・・,MSmの応答に応じて、「通話チャネル割り当て」45により割り当てられた通話チャネルCH1,CHjを介して「通話」47に移行する。
【0020】
このように、位置登録レジスタ11にて、各グループごとにそのグループに所属する移動局の在圏するすべての基地局の基地局番号を在圏基地局番号33として管理し、グループ通信を行うための「発呼」41に応じて、対応するグループの在圏基地局番号33にて管理されている基地局に対してのみ「着呼」44を通知するようにしたので、発呼のあったグループに所属する移動局が在圏しない基地局に対しては「着呼」44が通知されなくなり、その無線ゾーンに対する無駄な通話チャネル割り当てや着信呼出が回避されるものとなり、無線周波数が効率よく利用される。
【0021】
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図5は本発明の第2の実施の形態による位置登録レジスタの構成を示す説明図であり、特に個別通信用の個別移動局番号およびグループ通信用のグループ番号の2つの番号を有する移動局からなる移動通信システムに適用される。図5において、51はグループ番号、52は各グループに所属する移動局ごとにその個別移動局番号と在圏基地局番号とを示す移動局別在圏位置、53は各グループに所属する個々の移動局が在圏する基地局を無重複にて示す在圏基地局番号である。
【0022】
この場合、各移動局に付与されたグループ番号と個別移動局番号とを別々に管理する必要があることから、それぞれのグループに所属する移動局の在圏位置を管理する移動局別在圏位置52に、位置登録要求を行った移動局の個別移動局番号と在圏基地局番号とを対として記憶している。また、在圏基地局番号53には、任意の移動局の位置登録が行われるごとに、移動局別在圏位置52に記憶された基地局番号のみが重複排除されて更新され再記憶される。
【0023】
したがって、所定の移動局に対して個別移動局番号にて発呼が生起した場合には、位置登録レジスタ11の移動局別在圏位置52から、その個別移動局番号と対として記憶されている在圏基地局番号が読出されて、制御局10に報告されるものとなる。また、グループ通信による発呼が生起した場合には、前述と同様に在圏基地局番号53が制御局10に報告され、報告を受けた在圏基地局にのみ制御局10から着呼が通知される。
【0024】
このように、位置登録レジスタ11の移動局別在圏位置52に個別移動局番号と在圏基地局番号と対として記憶するようにしたので、個別通信用の個別移動局番号およびグループ通信用のグループ番号の2つの番号を有する移動局からなる移動通信システムに対しても本発明を適用することが可能となり、前述と同様に移動局が在圏しない基地局の無線ゾーンに対する無駄な通話チャネル割り当てや着信呼出が回避されるものとなり、無線周波数が効率よく利用される。
【0025】
次に、図6を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。 図6は本発明の第3の実施の形態による位置登録レジスタの構成を示す説明図である。特に個別通信用の個別移動局番号およびグループ通信用のグループ番号の2つの番号を有する移動局からなる移動通信システムに適用される。
【0026】
図6において、61は個々の移動局に付与された個別移動局番号62ごとに、そのグループ番号63と在圏基地局番号64とを記憶する個別移動局番号による位置登録テーブル、65は各グループ番号66ごとにそのグループに所属する個々の移動局が在圏する無重複の在圏基地局番号67を記憶するグループ所属移動局在圏位置登録テーブルである。
【0027】
この場合、2つの位置登録テーブル61,65を設けて、位置登録テーブル61により、それぞれの移動局が所属するグループおよび在圏位置を管理し、位置登録テーブル65により、各グループに所属する移動局が在圏するすべての在圏基地局を管理するものとなっている。任意の移動局の位置登録が行われるごとに、位置登録テーブル61の在圏基地局番号64が更新記憶されるとともに、各グループ番号66を有する移動局の在圏基地局番号64が集計され、重複排除されて在圏基地局番号67に再記憶される。
【0028】
したがって、所定の移動局に対して個別移動局番号にて発呼が生起した場合には、位置登録レジスタ11内の位置登録テーブル61から、その個別移動局番号62に対応して記憶されている在圏基地局番号64が読出されて、制御局10に報告されるものとなる。また、グループ番号による発呼が生起した場合には、位置登録テーブル65から在圏基地局番号67が読出されて制御局10に報告され、報告を受けた在圏基地局にのみ制御局10から着呼が通知される。
【0029】
このように、位置登録レジスタ11に位置登録テーブル61,65を設けて、各移動局の所属グループと在圏位置とを位置登録テーブル61にて管理するとともに、各グループに所属する移動局が在圏するすべての在圏基地局を位置登録テーブル65にて管理し、任意の移動局の在圏位置登録に応じて位置登録テーブル61を更新するとともに位置登録テーブル65も更新するようにしたので、個別移動局番号およびグループ番号のいずれの番号に基づく発呼が生起した場合でも、所望する在圏位置を迅速に参照することが可能となり、呼制御の処理速度を向上させることが可能となる。」(第【0011】〜【0029】欄)
(c)「【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、各移動局に、自局が所属するグループのグループ番号とこのグループに所属する移動局を識別するための付加番号とから構成される移動局番号を付与するとともに、任意の移動局からの在圏位置登録に応じて各グループごとに個々の所属移動局の在圏位置を記憶する位置登録レジスタを設け、所定のグループに所定のグループに対する呼が生起した場合には、そのグループに所属する各移動局の在圏位置を位置登録レジスタから読出し、その在圏位置に対応する基地局に対してのみ呼で使用する通信チャネルを割り当てるようにしたので、発呼のあったグループに所属する移動局が在圏しない基地局に対しては着呼が通知されなくなり、その無線ゾーンに対する無駄な通話チャネル割り当てや着信呼出が回避されるものとなり、無線周波数が効率よく利用される。
【0031】
また、移動局に、自局を識別するための個別移動局番号と自局が所属するグループのグループ番号とを付与するとともに、任意の移動局からの在圏位置登録に応じて各グループごとに個々の所属移動局の在圏位置と個別移動局番号とを対応させて記憶する位置登録レジスタを設けて、所定のグループに対する呼が生起した場合には、そのグループに所属する各移動局の在圏位置を位置登録レジスタから読出し、各在圏位置に対応する基地局に対してのみ呼で使用する通信チャネルの割り当てを行うようにしたので、個別通信用の個別移動局番号およびグループ通信用のグループ番号の2つの番号を有する移動局からなる移動通信システムに対しても本発明を適用することが可能となり、前述と同様に移動局が在圏しない基地局の無線ゾーンに対する無駄な通話チャネル割り当てや着信呼出が回避されるものとなり、無線周波数が効率よく利用される。
【0032】
また、位置登録レジスタにて、任意の移動局からの在圏位置登録に応じて個別移動局番号ごとに所属グループ番号と在圏位置とを記憶するとともに、各グループごとに所属移動局の在圏位置を記憶するようにしたので、個別移動局番号およびグループ番号のいずれの番号に基づく発呼が生起した場合でも、所望する在圏位置を迅速に参照することが可能となり、呼制御の処理速度を向上させることが可能となる。」(第【0030】〜【0032】欄)
3-3 甲第3号証(特開平5-55980号公報)
(a)「【0002】
【従来の技術】
従来、この種の一斉同報通信方式は、一斉同報専用端末から指定された基地局サービスエリア内に存在する非通話中の移動局に対してのみ一斉同報通信を行っていた。」(第【0002】欄)
(b)「【0007】
一斉同報の発信は一斉同報専用端末1からの特定番号としての2桁のダイヤリングにより実施する。交換機3は一斉同報用トランク2を経由して受信した2桁のダイヤル数字により基地局5を決定する。交換機3はその基地局5対応の音声チャネル用トランク4を捕捉し、基地局5に一斉同報専用オーダーを送出する。基地局5はそのオーダーを受信することにより基地局5のサービスエリア内に存在する移動局に対して一斉同報通知を行う。ここで、移動局6は非通話中、移動局7は通話中であるとする。交換機3は移動局7の通話チャネル上に一斉同報用通知信号を基地局5を介して送出して一斉同報通知中であることを知らせる。通話チャネル上で一斉同報通知中であることを知らされた移動局7は通話相手の加入者に対して一斉同報通知中であることを、例えば警告ランプあるいは警告音で表示する。この表示により通話相手加入者は一斉同報割込みキーを押下すると、移動局7から一斉同報通信用チャネルへのチャネル切替え要求信号を基地局5に送出する。このチャネル切替え要求信号を受けた基地局5は一斉同報通信用チャネルへのチャネル切替え指示信号を移動局7に返送し、移動局7はその一斉同報通信用チャネルに同調して一斉同報通話を受信する。」(第【0007】欄)

4.対比・判断
4-1 本件発明1について
本件発明1と上記甲号各証記載の発明とを比較すると、当該刊行物のいずれにも、「交換機のリソース管理部が端末の空/塞等のリソース情報を有し、ページング着呼時に、端末グループ管理部が前記リソース管理部で管理しているページンググループ端末のリソース情報を読み出して通信中の端末を割り出し、位置登録情報を読み出すプロトコル制御部には、空き状態のページンググループ端末のみ引き渡すことで、ページング着呼の着信信号送出エリアを空き状態の端末位置登録エリアに限定すること」については記載されていない。特に、甲第1号証に記載の一斉通信方式では、上記3-1(d)に記載したように、電話交換機側の異常輻輳を招くことがないという目的または効果においては本件発明1と同様であるが、上記3-1(a)〜(c)の記載からその対象がいわゆる有線電話であって、ここで言う一斉通信とは、一斉通信の対象となる被呼加入者の電話機に順次呼出を行うことであって、本件発明1の携帯型無線電話システムにおいてページンググループの各端末に対して同時にページング着呼の着信信号の送出を行うこととは明らかに異なる技術である。この点について、甲第2号証には、上記3-2(a)〜(c)に記載のように移動通信システムのグループ通信制御方法として、グループ通信を行うための発呼に応じて、そのグループに所属する各移動局の在圏位置を位置登録レジスタから読み出し、各在圏位置に対応する基地局に対してのみ呼で使用する通信チャネルの割り当てを行うようにすること、すなわち本件発明1でいう従来技術に相当する技術が記載されていると認められる。そして、甲第1号証及び甲第2号証に記載された技術の組み合わせについて検討すると、甲第1号証ではそもそも有線電話であるから、本件発明1で前提とするページング着呼の着信信号送出エリアという概念がなく、また、一斉通信の手法自体も異なり、一斉通信の際に話中の被呼加入者の電話機をスキップするとしても、このことから直ちにページング着呼の着信信号送出エリアを空き状態の端末位置登録エリアに限定することが導き出せるとは言えないから、上記甲第1号証と甲第2号証をたとえ組み合わせたとしても、本件発明1を構成できたとは言えない。なお、甲第3号証は上記3-3(a)に記載されているように「従来、この種の一斉同報通信方式は、一斉同報専用端末から指定された基地局サービスエリア内に存在する非通話中の移動局に対してのみ一斉同報通信を行っていた。」という記載があるのみで、上記3-3(b)に記載のようにこれは特定基地局内の移動局に対して、非通話中の移動局に対してのみ一斉同報通信を行うことであるから、本件発明1の「ページング着呼の着信信号送出エリアを空き状態の端末位置登録エリアに限定する」点の進歩性を否定する根拠とはなり得ない。
したがって、本件発明1は、上記甲号各証に記載の発明から当業者が容易に発明できたものではない。
4-2 本件発明2について
本件発明2と上記甲号各証記載の発明とを比較すると、当該刊行物のいずれにも、「交換機が、ページンググループの属する端末の加入者情報、及び、ページンググループの着信状態等のデータを管理し、ページング着呼サービスを実現する端末グループ制御部と、端末の空/塞を管理するリソース管理部と、無線端末に送受信するメッセージの生成/解析を行い位置登録情報から信号送出する呼び出しエリアを割り出すプロトコル制御部と、を含み、ページング着呼時、前記交換機の前記端末グループ制御部において、ページンググループ端末のリソース情報を前記リソース管理部から読み出し、該端末が通信中であればページンググループ端末情報から削除し、空き状態のページンググループ端末のみを前記プロトコル制御部に引き渡すことで、前記プロトコル制御部が位置登録情報から信号送出する呼び出しエリアを割り出す端末数を減らし、最小限の呼び出しエリアにのみページング着呼の着呼信号を送出する」については記載されていない。
なお、本件発明2は「ページング着呼時、前記交換機の前記端末グループ制御部において、ページンググループ端末のリソース情報を前記リソース管理部から読み出し、該端末が通信中であればページンググループ端末情報から削除し、空き状態のページンググループ端末のみを前記プロトコル制御部に引き渡すことで、前記プロトコル制御部が位置登録情報から信号送出する呼び出しエリアを割り出す端末数を減らし、最小限の呼び出しエリアにのみページング着呼の着呼信号を送出する」ものであって、基本的には本件発明1と同様の構成であるから、上記「4-1 本件発明1について」で述べたのと同じ理由により、上記甲号各証に記載の発明から当業者が容易に発明できたものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-08-11 
出願番号 特願平9-244611
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 匡明  
特許庁審判長 松野 高尚
特許庁審判官 大橋 隆夫
金子 幸一
登録日 1999-08-06 
登録番号 特許第2962289号(P2962289)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 ページング着呼の信号送出エリア割出方式  
代理人 谷 義一  

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