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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
管理番号 1020537
異議申立番号 異議1999-74005  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-09-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-25 
確定日 2000-07-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第2886525号「床板」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2886525号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2886525号に係る発明は、平成10年2月24日に出願されたもので、平成11年2月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、平成11年10月25日に段谷産業株式会社より、特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件請求項1〜10に係る発明
本件特許第2886525号の請求項1〜10に係る発明(以下、「本件請求項1〜10に係る発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項によって構成される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 木質系基板の表面に紙系化粧材が接着され、かつ木質系基板に紙系化粧材上からエンボスによる模様が形成されているとともに、紙系化粧材上に着色塗装層及び表面塗装層が順次積層されてなる床板であって、
前記紙系化粧材が、紙シートの裏面にシーラー樹脂層が積層されているとともに、紙シートの表面にベタインキ層及び模様インキ層並びにこれらべタインキ層及び模様インキ層を覆うリコート樹脂層が順次形成されたものであることを特徴とする床板。
【請求項2】 木質系基板の表面に紙系化粧材が接着され、かつ木質系基板に紙系化粧材上からエンボスによる模様が形成されているとともに、紙系化粧材上に着色塗装層及び表面塗装層が順次積層されてなる床板であって、
前記表面塗装層が、紫外線硬化塗料による内層、充填剤を含む紫外線硬化塗料による中間層、及び、抗菌剤を含む紫外線硬化塗料による外層からなる3層構造に形成されていることを特徴とする床板。
【請求項3】 木質系基板の表面に紙系化粧材が接着され、かつ木質系基板に紙系化粧材上からエンボスによる模様が形成されているとともに、紙系化粧材上に着色塗装層及び表面塗装層が順次積層されてなる床板であって、
前記紙系化粧材が、紙シートの裏面にシーラー樹脂層が積層されているとともに、紙シートの表面にべタインキ層及び模様インキ層並びにこれらべタインキ層及び模様インキ層を覆うリコート樹脂層が順次形成されたものであり、
前記表面塗装層が、紫外線硬化塗料による内層、充填剤を含む紫外線硬化塗料による中間層、及び、抗菌剤を含む紫外線硬化塗料による外層からなる3層構造に形成されていることを特徴とする床板。
【請求項4】 木質系基板が、合板、MDF又はパーティクルボードからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の床板。
【請求項5】 木質系基板の表面に紙系化粧材が酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤により接着されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の床板。
【請求項6】 紙シートが強化紙又は含浸紙からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の床板。
【請求項7】 シーラー樹脂層がポリウレタン系樹脂により形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の床板。
【請求項8】 リコート樹脂層がポリウレタン系樹脂により形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の床板。
【請求項9】 充填剤がアルミナである請求項1〜8のいずれか1項に記載の床板。
【請求項10】 抗菌剤がゼオライトである請求項1〜9のいずれか1項に記載の床板。 」

3.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、
甲第1号証(特開平8-27990号公報)、甲第2号証(特開昭48-19709号公報)、甲第3号証(特開昭49-71106号公報)、甲第4号証(特開平6-198607号公報)及び甲第5号証(特開昭51-41414号公報)を提出し、本件請求項1〜10に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1〜10に係る発明の特許は取り消されるべきものであると主張している。

4.甲各号証に記載の発明
甲第1号証には、第2欄第11行〜第3欄第15行、第3欄第28行〜第4欄第14行及び図1に記載されたものから見て、
「紙状基材3の表面に柄印刷4を施した印刷シート5を木質製基材2上に貼り合わせて設け、上記印刷シートの上からエンボスにより凹凸を賦型し、表面にサンディングシーラー塗装及び研磨を行い、次ぎにワイピングによりエンボスで凹状になった導管柄部とサンディングシーラー研磨部にインキ6を充填し、最後にウレタン樹脂にホワイトアルミナの粉体などの研磨剤を混入したトップコート層7を設けた化粧板。」という発明が記載されていると認められる。
甲第2号証には、第1頁左下欄特許請求の範囲、第2頁右上欄第2行〜左下欄第17行、第3頁左上欄第2〜11行及び第1、2図に記載されたものから見て、
「合板表面に接着剤により貼着する任意の模様を印刷した薄紙において、予め薄紙に対し浸透性がよく、且つ薄紙の成分と化学反応して硬化し、接着剤及び上塗塗料とも化学的に反応して結合する薬品を塗装して浸透させた薄紙。」という発明が記載されていると認められる。
甲第3号証には、第1頁左下欄特許請求の範囲、第2頁左上欄末行〜左下欄第11行及び第2図に記載されたものから見て、
「合板、パーティクルボード等の木質系基板1の上面に接着剤2を介してパターン紙3を貼着し、該パターン紙3上に紫外線硬化樹脂塗布層4を形成し、該紫外線硬化樹脂塗布層4の研削表面上に上塗り層5を形成した化粧板。」という発明が記載されていると認められる。
甲第4号証には、第2欄第29〜末行及び図1に、
「抗菌性金属を含有する無機質系抗菌剤を混入させた塗料を木質系基板の上面に貼着された薄葉紙上に塗布する抗菌性化粧板の製造方法に係り、抗菌剤として銀イオン含有ゼオライトを用いること、抗菌剤を混入する塗料としてウレタン樹脂塗料を用いること及び合板の表面に酢酸ビニール系樹脂接着剤を介して薄葉紙を貼着すること」が記載されていると認められる。
甲第5号証には、第1頁左下欄第33行〜右下欄第5行に、
「紙貼りプリント合板の紙間剥離抵抗性を向上させる為に、薄葉紙に予めウレタン樹脂などを含浸または塗布して用いること」が記載されていると認められる。

5.対比・判断
(本件請求項1に係る発明について)
本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを比較すると、甲第1号証に記載された発明の「印刷シート5」、「紙状基材3」、「木質製基材2」及び「トップコート層7」は、本件請求項1に係る発明の「紙系化粧材」、「紙シート」、「木質系基板」及び「表面塗装層」に相当するから、両者は、以下の点で相違する他は、実質上、一致していると認められる。
相違点
(1)本件請求項1に係る発明は、紙系化粧材上に着色塗装層が積層されているのに対して、甲第1号証に記載された発明は、サンディングシーラー塗装及び研磨を行い、次ぎにワイピングによりエンボスで凹状になった導管柄部とサンディングシーラー研磨部にインキを充填している点。
(2)本件請求項1に係る発明は、紙シートの裏面にシーラー樹脂層が積層されているとともに、紙シートの表面にベタインキ層及び模様インキ層並びにこれらべタインキ層及び模様インキ層を覆うリコート樹脂層が順次形成されているのに対して、甲第1号証に記載された発明は、紙シートの表面に柄印刷を施している点。
そこで、上記相違点を検討すると、
相違点(1)について
相違点(1)における本件請求項1に係る発明は、紙系化粧材と表面塗装層との間に着色塗装層を積層したものであり、甲第1号証に記載された発明の、サンディングシーラー塗装し、研磨したり、導管柄部とサンディングシーラー研磨部にインキを充填することとは、明らかに相違し、そして、甲第2〜5号証のいずれにも、相違点(1)における本件請求項1に係る発明の事項が記載されておらず、また、甲第2〜5号証のいずれかから、当業者が容易に想到できるとすることもできない。
相違点(2)について
甲第2号証には、合板表面に貼着する紙シートに、予め紙シートに対し浸透性がよく、且つ薄紙の成分と化学反応して硬化し、接着剤とも化学的に反応して結合する薬品を塗装して浸透させたことが記載されており、本件請求項1に係る発明の紙系化粧材と木質系基板との接着性を向上させるという課題において共通するものの、解決手段としては、甲第2号証に記載された発明は、接着剤と化学的に反応して結合する薬品を紙シートに含浸したものであるのに対して、本件請求項1に係る発明は、紙シートの裏面にシーラー樹脂層を積層したもので、明らかに相違しており、また、甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に想到できるとすることもできない。
そして、甲第3〜5号証のいずれにも、相違点(2)における本件請求項1に係る発明の紙シートの裏面にシーラー樹脂層を積層したものが記載されておらず、また、甲第3〜5号証のいずれかから、当業者が容易に想到できるとすることもできない。
したがって、相違点(2)において本件請求項1に係る発明の紙シートの裏面にシーラー樹脂層が積層されている事項以外の事項について検討する迄もなく、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとすることができない。
(本件請求項2に係る発明について)
本件請求項2に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを比較すると、甲第1号証に記載された発明の「印刷シート5」、「木質製基材2」及び「トップコート層7」は、本件請求項2に係る発明の「紙系化粧材」、「木質系基板」及び「表面塗装層」に相当するから、以下の点で相違する他は、実質上、一致していると認められる。
相違点
(1)本件請求項1に係る発明は、紙系化粧材上に着色塗装層が積層されているのに対して、甲第1号証に記載された発明は、サンディングシーラー塗装及び研磨を行い、次ぎにワイピングによりエンボスで凹状になった導管柄部とサンディングシーラー研磨部にインキを充填している点。
(2)表面塗装層が、本件請求項1に係る発明は、紫外線硬化塗料による内層、充填剤を含む紫外線硬化塗料による中間層、及び、抗菌剤を含む紫外線硬化塗料による外層からなる3層構造に形成されているのに対して、甲第1号証に記載された発明は、ウレタン樹脂にホワイトアルミナの粉体などの研磨剤を混入したトップコート層としている点。
そこで、上記相違点を検討すると、
相違点(1)について
相違点(1)は、上記「(本件請求項1に係る発明について)」の相違点(1)と同じであり、上記「(本件請求項1に係る発明について)」の相違点(1)についてで検討したとおりである。
相違点(2)について
甲第3号証には、木質系基板の表面に接着された紙系化粧材であるパターン紙上に積層した表面塗装層を、紫外線硬化樹脂塗布層と該紫外線硬化樹脂塗布層の研削表面上に上塗り層5とから形成したことが記載され、また、甲第4号証には、抗菌剤として銀イオン含有ゼオライトを用い、該抗菌剤を混入させた塗料を、木質系基板の上面に貼着された薄葉紙上に塗布することが記載されていると認められる。
しかしながら、甲第3号証及び甲第4号証には、上記相違点(2)における本件請求項2に係る発明の特定の材料による、内層、中間層及び外層からなる3層構造が記載されておらず、また係る3層構造が甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明から当業者が容易に想到できるとすることもできない。
そして、甲第2号証及び甲第5号証には、上記相違点(2)における本件請求項2に係る発明の事項について記載されておらず、示唆もされていない。
したがって、本件請求項2に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとすることができない。
(本件請求項3に係る発明について)
本件請求項3に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを比較すると、甲第1号証に記載された発明の「印刷シート5」、「紙状基材3」、「木質製基材2」及び「トップコート層7」は、本件請求項3に係る発明の「紙系化粧材」、「紙シート」、「木質系基板」及び「表面塗装層」に相当するから、
本件請求項3に係る発明と甲第1号証に記載された発明とは、上記「(本件請求項1に係る発明について)」で記載した相違点(1)、(2)及び上記「(本件請求項2に係る発明について)」で記載した相違点(2)で相違する他は、実質上、一致していると認められる。そして、これら相違点に対する検討は、上記「(本件請求項1に係る発明について)」及び上記「(本件請求項2に係る発明について)」でしたとおりである。
したがって、本件請求項3に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるとすることができない。
(本件請求項4〜10に係る発明について)
本件請求項4〜10に係る発明は、それぞれ請求項1〜3のいずれか1項を引用するものであり、本件請求項1〜3に係る発明に対する対比・判断は、上記「(本件請求項1に係る発明について)」〜「(本件請求項3に係る発明について)」でしたとおりであるから、本件請求項4〜10に係る発明のいずれも甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1〜10に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜10に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-07-05 
出願番号 特願平10-42157
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 宮崎 恭
鈴木 憲子
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2886525号(P2886525)
権利者 南海プライウッド株式会社
発明の名称 床板  
代理人 畑中 芳実  

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