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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1020713 |
異議申立番号 | 異議2000-70321 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-01-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-01-21 |
確定日 | 2000-08-21 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2926352号「無発情または鈍性発情牛の治療方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2926352号の特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2926352号発明は、平成2年5月15日に特許出願され、平成11年5月14日にその特許の設定登録がなされ、その後、デグサ・ヒュルス ジャパン株式会社より特許異議申立がなされ、当審より取消理由通知がなされたものである。 2.特許異議申立についての判断 イ、本件請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、明細書の記載からみて、特許請求の範囲に記載されたとおりの 「ルーメンバイパスするメチオニンを給与することを特徴とする無発情または鈍性発情牛の治療方法。」 と認められる。 ロ、異議申立の概要 異議申立人は、甲第1号証(Wiener Tierawrtztliche Monatsschrift 1985, p.377〜386)及び、甲第2号証(MEPRON(R)、Degussa社のパンフレット)を提出して、 A 本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、 B 本件発明は、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、 同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきであると主張している。 ハ、特許法第29条第1項第3号について a)証拠記載の発明 甲第1号証には、次の事項が記載されている。 i)メプロンの効果について、ホルスタイン種の乳牛38頭を用いて試験期間中で少なくとも2回分娩した乳牛だけを選び、対照グループに11頭、メブロングループに10頭を、分娩期間から分娩後100日までメプロン0.5%を含有する高泌乳牛用飼料を与えた試験グループの乳牛(メプロングループという。)は、分娩間隔が対照グループに対して29.2日短縮されたことが表7に示されている。 ii)妊娠するまでの平均人工授精回数が、メプロングルーブは平均して人工授精回数が対照グループより0.3回少なかったことが表8に示されている。 甲第2号証には、メプロン(R)は反芻動物用の保護されたメチオニンであって、H-ヒドロキシメチル-DL-メチオニン-カルシウム(HMM-Ca)であり、化学的に合成されたメチオニン化合物であり、反芻動物のルーメン中で難分解性で、大部分は第4胃に達し、第4胃中で酸の作用下でこの化合物からメチオニンが放出され、他のアミノ酸と同様に吸収されることが記載されている。 b) 対比・判断 本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載されたものとを対比する。 甲第1号証に記載のメプロンは、甲第2号証の記載から、化学的に合成されたH-ヒドロキシメチル-DL-メチオニン-カルシウムであって、ルーメン中で難分解性で大部分が第4胃に達し、第4胃中でメチオニンが放出し、吸収されるものであるが、本件発明における「ルーメンバイパスするメチオニン」とは、特許明細書の記載によれば、「牛の第1胃(ルーメン)の胃液から保護され、第4胃以降で消化吸収されメチオニンとしての活性を示すものであって、メチオニン誘導体」を包含するものであることから、ルーメンバイパスするメチオニンといえるものである。つまり、甲第1号証にはルーメンバイパスするメチオニンを、牛に分娩期間から分娩後100日まで給与すると、分娩間隔が短縮されたこと、及び妊娠するまでの平均人工授精回数が少なかったことが記載されているものと認められる。 そうすると、両者は分娩間隔を短縮し、人工授精回数を少なくするという効果を奏する、牛にルーメンバイパスするメチオニンを給与する方法で一致し、前者は該メチオニンを無発情または鈍性発情牛の治療に用いるのに対して、後者は特に給与する牛の疾患については記載されていない点で相違する。 すなわち、甲第1号証には、牛の上記疾患について何ら記載されてなく、該メチオニンの給与期間が分娩期間から始まっていることから、分娩後50日以上経過しても無発情又は微弱発情の牛、つまり、無発情または鈍性発情牛の治療に用いられることは記載も、示唆もされていないのである。 また、本件発明と甲第2号証に記載されたものとを対比すると、甲第2号証にはメプロンがルーメンバイパスするメチオニンであることが示されているものの、無発情または鈍発情牛の治療に該メチオニンを用いることについては何ら記載されていない。 したがって、本件発明は甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明ではない。 ニ、特許法第29条第2項について 本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載のものとを対比すると、上記ハ、b)に述べたように、ルーメンバイパスするメチオニンを、前者は無発情または鈍性発情牛の治療に用いるのに対して、後者は給与する牛の疾患については記載されていない点で相違し、その他の点については一致する。 そこで、この相違点について検討すると、無発情または鈍性発情という疾患の原因が明らかで、メチオニンとの因果関係が明確に記載されているならともかく、その原因、及びメチオニンとの因果関係が甲第1号証及び甲第2号証に全く記載されていないのであるから、ルーメンバイパスするメチオニンを無発情または鈍性発情牛とはいえない牛に給与した結果、分娩間隔が短縮され、人工授精の回数が少なかったことをもって、直ちに無発情または鈍性発情牛の治療に用いることは予測できるものではない。 したがって、本件発明は甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件特許が、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項に違反してされたものではない。 また、本件特許については、他に取消理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-08-01 |
出願番号 | 特願平2-123166 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 森井 隆信 |
特許庁審判長 |
吉村 康男 |
特許庁審判官 |
宮本 和子 深津 弘 |
登録日 | 1999-05-14 |
登録番号 | 特許第2926352号(P2926352) |
権利者 | 日本曹達株式会社 |
発明の名称 | 無発情または鈍性発情牛の治療方法 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 東海 裕作 |
代理人 | 山崎 利臣 |