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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1020734
異議申立番号 異議1998-72780  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-05-28 
確定日 2000-08-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第2685708号「化粧組成物」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2685708号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続きの経緯
本件特許第2685708号は、平成5年2月22日(優先権主張、1992年2月21日、仏国)に出願された特願平5-72751号の出願に係り、平成9年8月15日に設定登録された後、丹羽美喜子から特許異議の申立てがあり、それに基づく特許取消の理由通知に対し、平成12年6月30日付けで訂正請求がなされたものである。
第2 本件訂正請求
本件訂正請求は、本件明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、即ち、(i)特許請求の範囲の請求項1において、「化粧的に許容しうる媒体に」を「染毛用あるいはブリーチング用化粧組成物であって、化粧的に許容しうる媒体に」に訂正し、(ii)同請求項1における式

に訂正し、(iii)同請求項1の「(b)カチオンまたは両性実在性ポリマーを0.05〜10%を含み、」を「(b)カチオンまたは両性実在性ポリマーを0.05〜10%および(c)一種以上の酸化染料前駆体および/または酸化剤の作用下で、1種以上のにメラニン型色素を生成するインドール染料および/任意には直接染料、あるいは使用時に添加する毛髪ブリーチ剤を含み、」に訂正し、(iv)請求項5〜7を削除し、(v)明細書(0001)における「本発明は非イオン界面活性剤およびカチオンまたは両性の実在性ポリマーをベースとする新規化粧組成物、ケラチン繊維の染色またはブリーチ組成物の製造に対しこの組成物の使用およびこれらの組成物を使用する染色または漂白方法に関する。」を「本発明は非イオン界面活性剤およびカチオンまたは両性の実在性ポリマーをベースとする新規染毛用組成物あるいはブリーチング用化粧組成物に関する。」に訂正し、
(vi)明細書(0007)における式

に訂正し、(vii)明細書(0018)における「A1およびB1は2〜20個の炭素原子を含むポリメチレン基を表わし、これは・・・ポリ(第4アンモニウム)ポリマー。」を「A1およびB1は2〜20個の炭素原子を含むポリメチレン基を表わし、X-は無機または有機酸由来のアニオンを表わす)に相当する反復ユニットを有するポリ(第4アンモニウム)ポリマー。」に訂正する、ものである。
次に本件訂正請求の適否について検討すると、上記(i)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、その組成物の用途を染毛もしくはブリーチに限定するものであるが、これは訂正前の明細書(0001)等に明記されていたものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲を減縮するものであり、訂正事項(ii)は特許請求の範囲の請求項1において、正しくない右辺の式を左辺の式に単に合致させるだけのものであるから、明らかな誤記の訂正に該当し、訂正事項(iii)は、訂正前の請求項6及び7に記載されていたものを請求項1に加入してこれを限定するものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮をするものであり、訂正事項(iv)は、請求項5〜7を削除するものであるから、明らかに特許請求の範囲の減縮をするものであり、訂正事項(v)は、訂正事項(ii)と同様、式の訂正を発明の詳細な説明で行うものであり、訂正事項(vi)は、特許請求の範囲の減縮に対応させて、発明の詳細な説明の記載をこれに整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明をするものであり、訂正事項(vii)は、発明の詳細な説明において、その記載からは、直ちには、実在性ポリマーであるか不明な重合体を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明をするものであり、これら訂正により特許請求の範囲が拡張ないし変更されるものでないことは明らかである。
そして後記するように、訂正後の特許請求の範囲に記載される事項により構成される発明が出願の際独立して特許を受けることができない発明とも認められない。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1〜3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第3項で準用する同法第126条第2〜4項の規定に適合するものである。
第3 特許異議申立人の主張の概要
本件訂正前の発明に対し、特許異議申立人丹羽美喜子は、下記甲第1〜第3号証の2を提示し、本件請求項1、2、4〜7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、同1、2、5、6に係る発明は甲第2号証に記載された発明であり、そして本件請求項1〜7に係る発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件請求項1〜6に係る発明は甲第2号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであり、さらに、本件明細書には記載の不備があるから、本件は特許法第29条第1項第3号もしくは同条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第36条第4項又は第5項及び第6項の規定を満足しない出願に対して特許されたものであるから、その特許は取り消されるべきである旨、主張している。

甲第1号証:特公昭62-28122号公報
甲第2号証の1:旧東ドイツ特許第271219号明細書
甲第2号証の2:同上の2頁、実施例2の訳
甲第3号証の1:CFTA Cosmetic Ingredient Handbook 1版、337頁
甲第3号証の2:同上のPOLYQUATERNIUM-6の訳
第4 訂正後の本件発明
本件特許第2685708号の発明は、訂正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により構成される次のとおりのもの(以下、順次「本件第1発明」、「本件第2発明」・・・「本件第4発明」という。)である。
「【請求項1】 染毛用あるいはブリーチング用化粧組成物であって、化粧的に許容しうる媒体に、(a)直鎖または分枝鎖の脂肪アルコールおよびオキシエチレン化および/またはオキシプロピレン化および/またはポリグリセロール化脂肪アルコールおよび/またはフェノール誘導体から選択した非イオン界面活性剤の混合物を14〜50%、この混合物はグリフィンが使用した意味のHLBは14より低くなく、重量濃度〔A〕で含む少なくとも1種の界面活性剤Aおよびグリフィンが使用した意味のHLB値が1より低くなくかつ10より低く、重量〔B〕で含む非イオン界面活性剤Bを含み、この非イオン界面活性剤AおよびBの50重量%以上は不等式0.5≦R≦1.6(式中、Rは比【化1】



を表わし、nCAは界面活性剤Aの脂肪鎖の炭素原子数であり、nCBは界面活性剤Bの脂肪鎖の炭素原子数である)を満足し、(b) カチオンまたは両性実在性ポリマーを0.05〜10%および(c)1種以上の酸化染料前駆体および/又は酸化剤の作用下で、1種以上のメラニン型色素を生成するインドール染料および/任意には直接染料、あるいは使用時に添加する毛髪ブリーチ剤を含み、組成物は室温および5.5以上のpHで安定である、化粧組成物。
【請求項2】 組成物に含む非イオン界面活性剤は界面活性剤AおよびBの定義に相当しない界面活性剤を48%未満の量で含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】 14より低くないHLB値を有するタイプA界面活性剤は30モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化オレオセチルアルコール、12モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化ラウリルアルコール(C12-C14/55-45%)、23モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化ラウリルアルコール、100モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化ステアリルアルコール、20モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化イソステアリルアルコール、20モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化ベヘニルアルコール、40モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化C30第1アルコール、11〜50モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化オクチルフェノール、12〜50モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化ノニルフェノールおよび15モルのエチレンオキシドを含有するオキシエチレン化セチル/ステアリルアルコールから選ばれる、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】 1より低くなく、10より高くないHLB値を有するタイプB非イオン界面活性剤は3.5モルのエチレンオキシドを有するオキシエチレン化デシルアルコール、70%のC18を有するオレイルアルコール、ラウリルアルコール、セチル/ステアリル(50:50)アルコール、2モルのエチレンオキシドを有するオキシエチレン化イソステアリルアルコール、3モルのエチレンオキシドを有するオキシエチレン化オレイルアルコール、4モルのエチレンオキシドを有するオキシエチレン化ラウリルアルコール、3モルのプロピレンオキシドを有するオキシプロピレン化ラウリルアルコール、4モルのエチレンオキシドを有するオキシエチレン化C50第1アルコール、2モルのグリセロールを有するポリグリセロール化オレイルアルコール、4.5モル未満のエチレンオキシドを有するオキシエチレン化オクチルフェノール、5モル未満のエチレンオキシドを有するオキシエチレン化ノニルフェノールおよび4モルのエチレンオキシドを有するオキシエチレン化C50第1アルコールから選択する、請求項1から3のいずれか1項記載の組成物。」
第5 対比・検討
甲第1号証には、「一般式(I)


[式中、R1,R2,R3,R4は、それぞれ場合によっては置換された炭化水素基を表わし、又はR1,R2及び/又はR3,R4の各対になったものはそれ等が結合する窒素原子とともに、さらに酸素または硫黄をヘテロ原子として含み得る複素環式基を表わし:A1及びA2は同一でも異なってもよく、それぞれ直鎖状又は分岐状アルキレン基又は20個までの炭素原子を含む置換又は非置換アリーレン基を表わし:Xは式:

-CO-NH-,-COO-,-OCONH-,-CO-X2-CO-,
-CO-X'2-CO-,又は-OCO-X3-COO-の2価の基を表わし;yは0又は1に等しく;R5,R6,R7,R8,R9及びR10は水素原子又は低級アルキル基を表わし;X1はアルキレン基、・・又は直接共有結合を表わし;X2はジアミノアルキレン基、ジヒドロキシアルキレン基又はポリヒドロキシアルキレン基である二価の基を表わし、・・・;A3は式:-B1-Y-B2-(式中、B1及びB2はアルキレン基又はアリーレン基を表わしYは・・・を表わす)・・・の構造を含有する第4級化重合体を含むことを特徴とする毛髪用化粧料組成物。」(特許請求の範囲第1項)について発明が記載され、この発明は「化粧料としてのカチオン性重合体の使用、該重合体を含有する化粧料組成物及び該重合体を用いる毛髪のトリートメントの方法に関するもの」であり(7欄19〜22行)、「ある種の特殊なカチオン性重合体の利用が従来使用されていたカチオン性重合体と比較して種々の利点を与えることが認められた」(7欄28〜30行)ことに基づくものであることが記載され、「シャンプー、毛染め、セット、ブラッシング、パーマネント等の如き処理の場合に式(I)の重合体を単独で又は他の有効成分と共に毛髪に施用すると、毛髪の品質を認め得る程に向上させる。例えば、該重合体は処理を容易にし、濡れた毛髪のくし通りを良くする。高濃度でも濡れた毛髪にべとつく感触を与えない。通常のカチオン性薬剤とは対照的に、該重合体は乾いた毛髪をべとつかせずふっくらとした毛髪に仕上げる。乾いた毛髪にしつとりした感じや艶を与える。乾いた毛髪をときほぐすことは簡単になる。脱色、パーマネント又は毛染めの如き処理により影響を受けた毛髪の欠陥を解消するのに前記の重合体は効果的である。」(15欄33行〜16欄3行)として、該発明の重合体の毛髪への適用により得られる利点が具体的に記載されている。
また「本発明の毛髪用化粧料組成物は一般に毛髪用化粧料組成物に通常用いられる少なくとも1つの助剤を含有し、水溶液、アルコール溶液又は含水アルコール溶液の形、乳液(特にクリーム)の形、ゲルの形又は粉末の形で存在し得る」(16欄11〜15行)と、その存在形態が記載され、「本発明の毛髪用化粧料組成物中の式(I)の重合体は、・・染色組成物、脱色組成物・・中に添加剤として存在させることができる」(16欄16〜24行)として、該重合体を染色あるいは脱色用の組成物中に存在させることも記載されている。そして、実施例の「例 C4:酸化染色剤」では、セチルステアリルアルコール12g、15モルのE.O.でオキシエチレン化したステアリルアルコール7g・・・を含む酸化染色剤において、式


で表される構造を有するカチオンポリマー(例39のボリマー)を3g含有する酸化染色剤の処方例が記載されている。
しかしながら、甲第1号証には、本件第1発明で規定する実在性ポリマーを用いることは記載されておらず、甲第1号証に記載されたポリマーは「あるカチオン性薬剤とは反対に、重合体(I)はゲル状の組成物を製造する従来法を用いた非イオン性誘導体と一般的に相溶性である。」(14欄41〜43行)として、従来よりの非イオン性活性剤に対し相溶性であると記載され、他方本件第1発明では、そのカチオン性又は両性のポリマーは実在性であり、特に本発明による定義に相当しない非イオンビヒクルに相溶しない(本件明細書(0013))ものであるから、この点で両発明は相違していると認められ、その他甲第1号証には、本件第1発明を示唆する記載は見出せない。
そして本件第1発明は、特別の非イオン界面活性剤の組み合わせにより、非イオン界面活性剤を使用する際の相溶性の問題の解決をはかったものであり、これらは甲第1号証の記載からは予測されないことである。
したがって、本件第1発明は甲第1号証に記載されたものではなく、またこれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
甲第2号証には、カチオン性の仕上げ加工材、高エトキシ化脂肪アルコールと脂肪酸のジーまたはポリジエタノールアミドを化含有する染毛剤組成物に関する発明が記載され、その実施例2では、乳化型染毛剤として、ベーシックレッド76,ベーシックブルー99、ポリクォータニウム-6、エチル硫酸ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジエタノールアミド、合成脂肪アルコール(C16/C20)+100EO、パルミチルアルコール及び水の各所定量からなるものが記載され、ここにおけるポリクオータニウム-6は、甲第3号証の1において、ジメチルジアリルアンモラウムクロライドの重合体であることが示されている。
しかしながら、染料に関しては塩基性染料が記載されているだけで、この組成を毛髪の漂白もしくは酸化染色に適用することを示唆する記載は見出せない。
したがって、本件第1発明が甲第2号証に記載された発明とも、また、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認めることはできない。
本件第2発明、第3発明及び第4発明は本件第1発明の構成をより限定したものであるから、本件第1発明と同様、甲第1号証もしくは甲第2号証に記載された発明とも、また甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認めることはできない。
本件特許異議申立人は、本件明細書に関し、(1)Rの式に不備があること、(2)本件請求項1の「この非イオン界面活性剤AおよびBの50重量%以上は不等式0.5≦R≦1.6を満足し」は不備であることを主張するので、この点について以下検討する。
(1)について、該式は明らかな誤記であり、かかる不備は訂正請求により解消した。
(2)について、該記載の意味するところは、複数種の非イオン界面活性剤について、上記(a)で規定する界面活性剤Aと同Bがその50重量%以上が該式を満足するというもので、格別当該記載に矛盾はない。
したがつて、明細書の記載に関する特許異議申立人の主張は採用しない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の提示する証拠及び主張する理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-07-18 
出願番号 特願平5-72751
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61K)
P 1 651・ 113- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉住 和之冨士 美香  
特許庁審判長 柿 崎 良 男
特許庁審判官 吉 村 康 男
小 島 隆
登録日 1997-08-15 
登録番号 特許第2685708号(P2685708)
権利者 ロレアル
発明の名称 化粧組成物  
代理人 長沼 暉夫  
代理人 浅村 肇  
代理人 歌門 章二  
代理人 浅村 皓  

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