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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09J
管理番号 1022239
審判番号 審判1999-2295  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-12 
確定日 2000-06-16 
事件の表示 平成7年特許願第67295号「接着剤及び接着方法」拒絶査定に対する審判事件[平成9年1月14日出願公開、特開平9-12992]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年3月27日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成11年2月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「接着すべき基材のうち少なくとも一の基材に該接着剤を櫛目ゴテ又はカートリッジを用いて塗布し、その後基材を接着する接着剤であって、下記(A)成分100重量部(固形分基準)及び(B)成分50〜250重量部を含有し、該接着剤の固形分が60〜85重量%であり、かつその粘度が50〜900Pa・Sであり、かつ床材用基材を接着する用途に用いる床材用接着剤又はスレート屋根基材を接着する用途に用いる屋根用接着剤。
(A)成分:エチレン-酢酸ビニル-高級カルボン酸ビニルエステル系共重 合体を含有する水性エマルジョン
(B)成分:無機質フィラー 」

2.刊行物に記載の事項
これに対して、当審の拒絶理由通知で引用した刊行物1(特開平5-17732号公報)及び刊行物2(特開平4-261488号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)刊行物1(特開平5-17732号公報)
刊行物1に記載された発明は、加圧式カートリッジガン等を用いてノズルから吐出される天井材や床材などの建築現場用接着剤組成物に関するものであり、「使用後は長期にわたって接着剤としての効果が発現されなければならない。腐敗やカビの発生があってはならず、耐水、耐酸、耐アルカリを有しており、さらには白蟻、ゴキブリ、ねずみ等に対する耐性も考慮する必要がある。」(公報の〔0010〕欄)、「エチレン-酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、粘着付与樹脂エマルジョン、無機または有機充填剤およびエチレングリコールの配合割合は、
・エチレン-酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(固形分として)
100重量部
・粘着付与樹脂エマルジョン(固形分として) 5〜70重量部
・無機または有機充填剤 50〜300重量部
・エチレングリコール(系中に含まれる水に対して)10〜60重量%、に設定すると共に、乾燥による体積収縮率が40%以下となるようにする。」(公報の〔0028〕欄)、「エチレン-酢酸ビニル系共重合体エマルジョンは・・・固形分濃度は50重量%程度以上、さらには55重量%程度以上というようにできるだけ高濃度であることが望ましい。」(公報の〔0021〕欄)、「無機または有機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、・・・・・などが例示される。ここで比重が約0.1以下、粒径が約40μm以下の合成樹脂バルーンを充填剤として用いると・・・・床の衝撃音やきしみ音を有効に緩和することができる。」(公報の〔0025〕欄)、「本発明の接着剤組成物は、床根太と床下張材との接着、断熱材、内装壁材、天井材、床材、胴縁、巾木、階段の踏み板の接着など、建築作業現場で用いる接着剤として有用である。」(公報の〔0030〕欄)と記載され、表1の実施例1にはエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発分56%)100重量部に対し無機充填材である炭酸カルシウム100重量部を添加した、不揮発分69.6重量%、粘度2000PSに調整された接着剤が記載され、ダグラスファーの無欠点乾燥材と合板を調湿または乾燥して湿潤材、凍結材、乾燥材となした後、該接着剤を塗布して試験片となし、木材接着力等を測定した結果が記載されている。(公報の〔0034〕〜〔0055〕欄)
(2)刊行物2(特開平4-261488号公報)
刊行物2に記載された発明は、エチレン-酢酸ビニル-高級カルボン酸ビニルエステル系共重合体を含有する木工用接着剤に関するものであり、「ポリ酢酸ビニル系(共)重合体エマルジョンに代表されるビニルエステル系(共)重合体エマルジョンは、木工用等の接着剤として用いられているが、耐水性、耐アルカリ性が不良であり、この点の向上が当該業界では強く要望されている。」(公報〔0002〕欄)、「本発明は上記木工用ビニルエステル系共重合体エマルジョン接着剤の耐水性を向上させるための手段を提供するものである。」(公報〔0003〕欄)、「本発明者らは、高級カルボン酸ビニルエステルのなかで、弾性率を上げ得る単量体としてピバリン酸ビニルに着目し種々検討した結果、ピバリン酸ビニルを特定量含み・・・・・すぐれた耐水性の接着剤が得られることを見出したものである。」(公報〔0004〕欄)、「本発明における共重合体の組成は上述の組成を基本とするが、本発明の目的を損なわない範囲で、ピバリン酸ビニル、酢酸ビニルと共重合可能な単量体を共重合しても良い。例えば、・・・・・・・フマール酸等の不飽和カルボン酸類、・・・・バーサチック酸ビニル(「Veova-10」)、シェル化学の商品名」、塩化ビニル等である。」(公報〔0005〕欄)と記載されている。

3.当審の判断
刊行物1に記載の「カートリッジガン」及び「無機充填材」は、それぞれ請求項1に記載の「カートリッジ」及び「無機質フィラー」に相当する。
また、刊行物1には、接着剤の用途として「床根太と床下張材との接着、断熱材、内装壁材、天井材、床材、胴縁、巾木、階段の踏み板の接着」と記載され、実施例においてダグラスファーの無欠点乾燥材と合板を接着剤で接着して木材接着力等を測定していること、及び本願発明の床材用接着剤が建築現場用のものを排除するものではないことから、刊行物1に記載の接着剤は、請求項1に記載の「接着すべき基材のうち少なくとも一の基材に該接着剤を塗布し、その後基材を接着する接着剤」及び「床材用接着剤」に相当する。
そして、刊行物1の実施例1には、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発分56%)100重量部に対し無機質フィラーに相当する炭酸カルシウム100重量部を添加した、不揮発分69.6重量%、粘度2000PSに調整された接着剤が記載され、粘度2000PSは、200Pa・Sに相当するので、本願発明と刊行物1に記載の発明における、共重合体に対する無機質フィラーの添加量並びに接着剤の固形分及び粘度は重複している。
結局、本願発明と刊行物1に記載の発明は、「接着すべき基材のうち少なくとも一の基材に該接着剤をカートリッジを用いて塗布し、その後基材を接着する接着剤であって、下記(A)成分100重量部(固形分基準)及び(B)成分100重量部を含有し、該接着剤の固形分が69.6重量%であり、かつその粘度が200Pa・Sであり、かつ床材用基材を接着する用途に用いる床材用接着剤。
(A)成分:共重合体を含有する水性エマルジョン
(B)成分:無機質フィラー 」である点で一致し、(A)成分に関して、前者が「エチレン-酢酸ビニル-高級カルボン酸ビニルエステル系共重合体」であるのに対し、後者では「エチレン-酢酸ビニル系共重合体」である点で、相違している。

以下、上記相違点について検討する。
刊行物2には、発明の目的として、従来のビニルエステル系共重合体エマルジョン接着剤の欠点であった耐水性を向上させることが記載されており、これによると、高級カルボン酸ビニルエステルの採用により、従来のエチレン-酢酸ビニル共重合体の改質を企画することが刊行物2に開示されているとみることが適当であり、刊行物1に記載の接着剤にも耐水性の要求されることが記載されているところ、「エチレン-酢酸ビニル系共重合体」に代えて、刊行物2に記載されている「エチレン-酢酸ビニル-高級カルボン酸ビニルエステル系共重合体」を採用することは、当業者が容易になし得ることと認められる。
そして、本願発明の効果も、刊行物1及び2の記載から、当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別顕著な効果を認めることができない。

請求人は、当審の拒絶理由通知に応答して平成12年3月7日付けで意見書を提出し、本願発明の床材用接着剤は粘着付与樹脂エマルジョンを含まない旨主張しているので、その点について以下言及する。

本願明細書の請求項1には「・・・下記(A)成分100重量部(固形分基準)及び(B)成分50〜250重量部を含有し、・・」と記載されており、また本願明細書の発明の詳細な説明(段落[0013])には、本願発明の接着剤に関して、接着剤に一般的に使用されている添加剤、たとえば増粘剤、粘着付与剤、可塑剤、消泡剤、防腐剤・・・・・などを混合して用いてもよい旨のことが記載され、実施例においても消泡剤等を添加した接着剤が例示されていることからして、請求項1に係る発明の接着剤は、(A)成分と(B)成分以外の、接着剤に一般的に使用されている添加剤の配合を許容するものであると認められる。
したがって、本願発明の接着剤には「粘着付与剤、可塑剤或いは防腐剤等が添加された床材用接着剤」も包含され、意見書における請求人の上記主張は、本願発明に属する一部の発明についてのものであり妥当でない。

ちなみに、水系の接着剤において、粘着付与剤をエマルジョンの形態で添加して初期接着力を向上させること及びエチレングリコール等の凍結防止剤を添加することは、本願出願前に周知の事項(例えば、粘着付与剤の添加について:特開昭57-151665号公報、特開昭60-79081号公報、特開昭62-218462号公報、特開昭63-256672号公報、特開平1-292082号公報、特開平2-38478号公報、特開平5-311137号公報、特開平5-320601号公報、特開平6-158012号公報を参照。凍結防止剤の添加について:特開昭53-91941号公報、特開昭57-151665号公報、特開昭58-225173号公報、特開平1-161078号公報、特開平5-9447号公報、特開平5-32951号公報、特開平5-86576号公報又は日本工業新聞社発行の「接着技術便覧」、昭和38年7月20日、第142頁「その他の添加剤」の項目を参照。)であり、しかも刊行物1に記載された接着剤におけるそれら添加量も通常添加されている範囲内のものと認められる。
他方、本願発明においても、増粘剤や粘着付与剤或いは防腐剤等、接着剤に一般的に添加される各種添加剤を加えてもよいとしていることからすると、本願発明において、粘着付与樹脂エマルジョン及びエチレングリコールを刊行物1に記載された程度の量で添加することが排除されているものとは認められず、結局、上記の点を実質的な相違とすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-03-24 
結審通知日 2000-04-07 
審決日 2000-04-19 
出願番号 特願平7-67295
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松井 佳章近藤 政克  
特許庁審判長 花田 吉秋
特許庁審判官 星野 浩一
谷口 操
発明の名称 接着剤及び接着方法  
代理人 久保山 隆  
代理人 久保山 隆  
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