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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E02D |
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管理番号 | 1022263 |
審判番号 | 審判1998-7520 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-05-12 |
確定日 | 2000-06-26 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第269252号「土留め構造体の施工法」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 3月31日出願公開、特開平 9- 88080]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願請求項1の発明 本願は、平成7年9月22日の出願であって、その請求項1記載の発明(以下、「本願請求項1の発明」という。)は、平成10年5月12日付け手続補正書により全文補正された明細書及び同手続補正書により補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「複数本の杭を、上り斜面に向って窪む円弧状曲線上に位置するよう適宜間隔を空けて打設し、杭の上端を繋ぐように円弧状の梁を構築して一体化してなる土留め構造体の施工法。」 2.引用文献記載の発明 これに対して、前置審査の拒絶の理由に引用され、この出願の日前に頒布された特開平6-33464号公報(以下、「引用文献」という。)には、 「地表から地滑り面を貫通して打ち込んだ多数の抑止杭からなる地すべり抑止構造において、前記多数の抑止杭を、地滑り方向に対し上流側に突出するアーチ状に配設するとともに、杭頭部をアーチ状の連結材により一体連結することを特徴とする地すべり抑止構造。」(第2頁第1欄【請求項1】) 「この発明は地すべり抑止構造に関し、特に、地表から地滑り面を貫通して打ち込んだ多数の抑止杭からなる地すべり抑止構造に関する。」(第2頁第1欄第16〜18行)、 「本実施例の地すべり抑止構造10は、図1に示すように、地滑り範囲AにおけるX方向の地滑りを抑止すべく構築されたもので、X方向の上流側に突出してアーチ状に、所定間隔をおいて連続打設された多数の抑止杭11と、抑止杭11の杭頭部を一体連結する、アーチ状に構築された連結材12とによって構成される。 抑止杭11は、各種杭打ち工により地中に打設された例えは鋼管杭で、アーチ状の抑止構造10の両端部に位置する大規模杭15と、これらの間に位置する小規模杭16の二種類が用いられる。」(第3頁第3欄第9〜18行及び図1,3)、 「本実施例の地すべり抑止構造10では、小規模杭16は、下端部を下方地盤14に定着して地滑り荷重を支持するのみならず、その上端部を連結材12によりアーチ状に一体連結しているので、連結材12のアーチ効果により上端部でも支持される。また、各抑止杭11は連結材12を介して相互に力を及ぼし合い、これによって各抑止抗11が均等に地滑り荷重を支持することになる。」(第3頁第4欄第5〜12行及び図3)及び 「連結材を介して多数の抑止杭が一体的に均等に滑り荷重を受け持つことにより、抑止杭を小規模にし、あるいは打設本数を減少して合理的かつ経済的に地すべり抑止構造を構築することを可能にする。また、連結材のアーチ効果により地滑り荷重を抑止杭の上端部でも支持することにより、抑止杭の剛性を低減することができるので、さらに経済的に地すべり抑止構造を構成することができる。」(第3頁第4欄第17〜24行) と記載されている。 以上の明細書及び図面の記載からみて、引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。 「多数の抑止杭11を、地滑り方向Xに対し上流側に突出するアーチ状に位置するよう所定間隔を空けて打設し、抑止杭11の杭頭部を連結するようにアーチ状の連結材12を構築して一体化してなる地すべり抑止構造10。」 3.対比・判断 そこで、本願請求項1の発明と引用文献記載の発明とを比較すると、引用文献記載の発明の「多数の抑止杭11」、「所定間隔」、「杭頭部」、「連結する」、「アーチ状の連結材」及び「地すべり抑止構造」は、夫々本願請求項1の発明の「複数本の杭」、「適宜間隔」、「上端」、「繋ぐ」、「円弧状の梁」及び「土留め構造体」に相当しており、また、引用文献記載の発明の「地滑り方向に対し上流側に突出するアーチ状」とあるは、本願請求項1の発明の「上り斜面に向って窪む円弧状曲線上」と表現上は相違するが、実質上同一の事項を意味するものであるから、 本願請求項1の発明と引用文献記載の発明とは、 「複数本の杭を、上り斜面に向って窪む円弧状曲線上に位置するよう適宜間隔を空けて打設し、杭の上端を繋ぐように円弧状の梁を構築して一体化してなる土留め構造体。」 を構成要件としている点で一致しているが、 本願請求項1の発明は、土留め構造体の施工法という方法の発明を対象にしているのに対して、引用文献記載の発明は、土留め構造体(地すべり抑止構造)という物の発明を対象としている点で一応相違している。 そこで、上記相違点について検討すると、 本願請求項1の発明は、発明に係る土留め構造体の構造に実質上意味があり、上記相違点に技術的意味がなく、両者は、同一の技術事項を別のカテゴリーからとらえたにすぎず、単にカテゴリーが相違するのみで、実質的に同一といわざるを得ない。 よって、本願請求項1の発明は、上記引用文献記載の発明と実質的に同一と認められる。 (なお、前置審査においては、上記引用文献を示し、進歩性がないとしたが、これに対する出願人の応答がなく、そして、進歩性がないとした拒絶の理由に対しては、当然に、出願人は、本願請求項1の発明と引用文献記載の発明との異同を判断した上、対応するか否か等を検討するものであるから、前記のように本願請求項1の発明と上記引用文献記載の発明とは、実質的に一致していることが明らかにである場合には、結果として、その点を容認し、応答しなかったものと推定できるから、改めて新規性を否認して拒絶の理由を通知する必要がないものと認められる。) 4.むすび したがって、本願請求項1の発明は、上記引用文献記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-04-10 |
結審通知日 | 2000-04-21 |
審決日 | 2000-05-08 |
出願番号 | 特願平7-269252 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(E02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 憲子、徳廣 正道、浅香 理、宮崎 恭、前川 慎喜、池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
樋口 靖志 |
特許庁審判官 |
鈴木 憲子 小野 忠悦 |
発明の名称 | 土留め構造体の施工法 |
代理人 | 加藤 誠 |