• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1022472
審判番号 審判1999-1080  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-20 
確定日 2000-05-31 
事件の表示 平成 9年特許願第171221号「フィルム剥離装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 3月10日出願公開、特開平10- 67463]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 <1> 本願発明
本願は、平成2年10月26日に出願された特願平2-287355号の一部を特許法第44条第1項の規定により、平成9年6月13日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、平成10年9月24日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 少なくとも片面にはフィルムが貼着されている基板を該片面を上方に向けて実質上水平な状態で搬送せしめる基板搬送手段と、該フィルムの前端部を該基板から部分的に分離せしめる端部分離手段と、該前端部が部分的に分離された該フィルムを該基板から完全に分離せしめる剥離手段とを具備し、該剥離手段は該前端部が該基板の該片面から分離された該フィルムを該基板から上方に強制的に搬送するフィルム剥離搬送手段を含み、該フィルム剥離搬送手段は該基板の上方に配設されたベルト機構を含み、該ベルト機構は、該基板の搬送方向に間隔をおいて配設された上流、中央及び下流下部ベルト車、該下部ベルト車の各々よりも上方に配設された1個の中間部ベルト車、及び該中間部ベルト車の更に上方に配設された上部ベルト車を含むフィルム剥離装置において、 該ベルト機構は、該中央下部ベルト車と該中間部ベルト車に巻き掛けられた内側無端ベルト、及び該下流下部ベルト車、該上部ベルト車、該上流下部ベルト車及び該中間部ベルト車にこの順序で巻き掛けられた外側無端ベルトを含み、該内側無端ベルトと該外側無端ベルトとの協働によって、該基板の該片面上を先ず上方に延び次いで該中間部ベルト車の外周面に沿った円弧形状で方向を逆転して下方に延びる略逆U字形状のフィルム搬送経路が規定されている、ことを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項2】 該ベルト機構は該基板の幅方向に間隔をおいて複数個配設されている、請求項1記載のフィルム剥離装置。」

<2> 引用例の記載
1.これに対して原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-83974号公報(以下、「引用文献」という)には下記の事項が記載されている。
(a)「パネル(14)の少なくとも1つの側面に付着されたフィルム(16,18)を除去するシート剥離機(10)であって、パネル(14)とガイドレール(216、218)を動かし、自動的にパネル(14)をその上に位置させるフィードコンベア(202,204,206,208)と、パネル(14)の移動を1時的に阻止する調節可能なストップ機構(240)と、パネル(14)からフィルム端部(16,18)を分離するための端部分離手段(278,284)と、フィルムをパネルから剥離するナイフ手段(326,328)と、パネルから除去されたフィルムを集め器(358)へと動かすフィルムガイド手段(334,336,346,348,350)とを有することを特徴とするシート剥離機。」(請求項21;第3頁右下欄第14行〜第4頁左上欄第7行、なお、第8,9図参照)
(b)「前記ガイド手段は、前記ナイフ手段(328)に隣接した第1の軸(349)と、その軸から一定の間隔で配された第2の軸(349)との間に張設され、前記フィルムがパネル(14)から剥離された後にそのフィルムと出会うように配された第1の可動ベルト装置と、前記第1の軸(349)に隣接した第3の軸(347)と第2の軸(349)に隣接した第4の軸(352)との間に張設された第2の可動ベルト装置と、前記第4の軸(352)と第5の軸(351)との間に張設され、前記第1の軸(349)の前記第3の軸(347)について対向する側に配された第3の可動ベルト装置とを有するとともに、前記第2と第3のベルト装置(346,350)が、第2の軸(349)と隣接する分岐方向に動くベルト(354)の片寄り交叉を形成し、前記フィルム16が、第1と第2の可動ベルト装置(346,348)によって交叉の第1の方向へ運搬された後、該フィルム(16)の方向がその交叉(354)の中で第3のベルト装置(350)と接触して実質的に逆転させられ、そのフィルムが第1と第3のベルト装置(348,350)によって第2の方向へと運ばれる特許請求の範囲第22項記載のフィルム剥離機。」(請求項27;第4頁左下欄第20行〜第5頁左上欄第2行、なお、第13図参照)

<3> 対比・判断
3-1.請求項1に係る発明について
ここで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と上記引用文献に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比する。
第8,9図を参酌すれば、上記(a)の「フィードコンベア」は、少なくとも片面にはフィルムが貼着されている基板を該片面を上方に向けて実質上水平な状態で搬送せしめるものであるから、本願発明1の「基板搬送手段」に相当し、「端部分離手段」は、フィルムの前端部を基板から部分的に分離せしめるものであるから、本願発明1の「端部分離手段」に相当し、「ナイフ手段」および「フィルムガイド手段」は、両手段により、前端部が部分的に分離されたフィルムを基板から完全に分離せしめるものであり、かつ、前端部が基板の片面から分離されたフィルムを基板から上方に強制的に搬送するものであるから、本願発明1の「剥離手段」に相当し、かつ、「フィルム剥離搬送手段」に相当する。そして、該「フィルム剥離搬送手段」の一部である「フィルムガイド手段」が、本願発明1の、基板の上方に配設された「ベルト機構」に相当する。
上記(b)の「軸」は、ベルト(可動ベルト装置)を張設するものであるから本願発明1の「ベルト車」に相当し、第13図を参酌すれば、「第5の軸」「第1の軸」「第3の軸」がそれぞれ、本願発明1の「上流」「中央」「下流」下部ベルト車に相当し、「第2の軸」「第4の軸」が、それぞれ、本願発明1の「中間部」「上部」ベルト車に相当する。また、「第1の可動ベルト装置」は、第1の軸(中央下部ベルト車)と第2の軸(中間部ベルト車)に巻き掛けられたものであり、本願発明1の「内側無端ベルト」に相当する。「第2の可動ベルト装置」は、第3の軸(下流下部ベルト車)、第4の軸(上部ベルト車)と第2の軸(中間部ベルト車)に巻き掛けられた無端ベルト装置であり、「第3の可動ベルト装置」は第4の軸(上部ベルト車)、第5の軸(上流下部ベルト車)と第2の軸(中間部ベルト車)にそれぞれ巻き掛けられた無端ベルト装置であって、両ベルト装置によって内側無端ベルトの外側を覆っており、その意味においてのみ、「第2の可動ベルト装置」「第3の可動ベルト装置」の両ベルト装置が本願発明1の「外側無端ベルト装置」に相当する。そして、「第1の可動ベルト装置」(内側無端ベルト)と「第2の可動ベルト装置」「第3の可動ベルト装置」(外側無端ベルト装置)との協働によって、基板の片面上を先ず上方に延び次いで中間部ベルト車の外周面に沿った円弧形状で方向を逆転して下方に延びる略逆U字形状のフィルム搬送経路が規定されている点においても、本願発明1と共通している。
したがって、本願発明1と引用発明は、
「少なくとも片面にはフィルムが貼着されている基板を該片面を上方に向けて実質上水平な状態で搬送せしめる基板搬送手段と、該フィルムの前端部を該基板から部分的に分離せしめる端部分離手段と、該前端部が部分的に分離された該フィルムを該基板から完全に分離せしめる剥離手段とを具備し、該剥離手段は該前端部が該基板の該片面から分離された該フィルムを該基板から上方に強制的に搬送するフィルム剥離搬送手段を含み、該フィルム剥離搬送手段は該基板の上方に配設されたベルト機構を含み、該ベルト機構は、該基板の搬送方向に間隔をおいて配設された上流、中央及び下流下部ベルト車、該下部ベルト車の各々よりも上方に配設された1個の中間部ベルト車、及び該中間部ベルト車の更に上方に配設された上部ベルト車を含むフィルム剥離装置において、 該ベルト機構は、該中央下部ベルト車と該中間部ベルト車に巻き掛けられた内側無端ベルト、及び該下流下部ベルト車、該上部ベルト車、該上流下部ベルト車及び該中間部ベルト車に巻き掛けられた外側無端ベルトを含み、該内側無端ベルトと該外側無端ベルトとの協働によって、該基板の該片面上を先ず上方に延び次いで該中間部ベルト車の外周面に沿った円弧形状で方向を逆転して下方に延びる略逆U字形状のフィルム搬送経路が規定されている、ことを特徴とするフィルム剥離装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。
(相違点)本願発明1においては、外側無端ベルトが、下流下部ベルト車、上部ベルト車、上流下部ベルト車及び中間部ベルト車にこの順序で巻き掛けられたものであるのに対し、引用発明においては、外側無端ベルトが、下流下部ベルト車、上部ベルト車と中間部ベルト車に巻き掛けられた無端ベルト装置、および、上部ベルト車、上流下部ベルト車と中間部ベルト車に巻き掛けられた無端ベルト装置からなる点。
上記相違点は、外側無端ベルトが、下流下部ベルト車、上部ベルト車、上流下部ベルト車及び中間部ベルト車に巻き掛けられたものである点では一致しているから、本願発明1が、外側無端ベルトを、搬送物の方向転換部位で分けることなく1つの無端ベルトで構成したのに対し、引用発明が、外側無端ベルトを、搬送物の方向転換部位で分けて2つの無端ベルトで構成したという相違点に帰するものである。
上記相違点について検討する。
シート状物の搬送装置において、内側無端ベルトと外側無端ベルトでシート状物を搬送する際に、搬送物の方向転換部位で分けることなく1つの無端ベルトで外側無端ベルトを構成することは、周知の技術である。(必要ならば、実願昭62-127648号(実開昭63-151080号)のマイクロフィルム、特開昭50-21963号公報参照) そして、外側無端ベルトを搬送物の方向転換部位で2つに分けて構成するよりも、搬送物の方向転換部位で分けることなく1つの無端ベルトで構成する方が、巻き込みや巻き付きが減少するであろうことは、技術常識から当業者が容易に予測しうる事項に過ぎないから、巻き込みや巻き付きを減少させるという、シート状物搬送装置における自明の課題のために該周知技術を適用して、本願発明1の構成とすることに格別の困難性は認められない。したがって、本願発明1は、「シート状物の搬送装置において、内側無端ベルトと外側無端ベルトでシート状物を搬送する際に、搬送物の方向転換部位で分けることなく1つの無端ベルトで外側無端ベルトを構成すること」が周知の技術であることに鑑みれば、上記引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3-2.請求項2に係る発明について
本願請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に対して、「ベルト機構は該基板の幅方向に間隔をおいて複数個配設されている」構成を新たに特定したものである。しかしながら、上記引用文献の第8図の記載を参酌すれば、上記の新たに特定した構成は、引用発明に含まれる構成に過ぎないことがわかる。したがって、本願請求項2に係る発明も、請求項1に係る発明に対する理由と同様の理由により、上記引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

<4> むすび
したがって、この出願の請求項1および請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-03-08 
結審通知日 2000-03-21 
審決日 2000-04-06 
出願番号 特願平9-171221
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉野 裕幸中島 昭浩  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 森林 克郎
鈴木 美知子
発明の名称 フィルム剥離装置  
代理人 小野 尚純  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ