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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1022535
審判番号 審判1998-18705  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-11-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-26 
確定日 2000-05-19 
事件の表示 平成 3年特許願第330565号「アレイプロセッサのメッセージパケットルーティング方法および装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年11月16日出願公開、特開平 5-303558]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年12月13日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成10年8月3日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりのものと認める。
「複数の演算プロセッサと、プロセッサ間の通信を行う低次元のメッシュ状の相互接続ネットワークとから構成されるアレイプロセッサにおいて、送信元プロセッサから単数あるいは複数の宛先プロセッサへメッセージパケットのルーテイングを行う方法であって、前記ネットワーク内の各々の演算プロセッサから発生したあるいは接続された複数の接続リンクの一つから送られてきたメッセージパケットを複数の接続リンクあるいは演算プロセッサの中から指定された単数あるいは複数の宛先に転送する手段および、メッセージパケット内の宛先アドレス情報からメッセージパケットを転送する単数あるいは複数のリンクあるいは演算プロセッサを指定するルーテイング情報記憶手段を備え、前記演算プロセッサにより該ルーテイング情報記憶手段内のメッセージパケットを出力する単数あるいは複数のリンクあるいは演算プロセッサを指定する情報を設定および変更することにより、ネットワーク内の各々のプロセッサから単数あるいは複数の指定した宛先プロセッサに対するメッセージパケットの転送経路を変更することを特徴とするメッセージパケットのルーテイング方法。」
なお、本願の特許請求の範囲の請求項1には、転送経路の変更に関して、「メッセージパケットへの転送経路を変更する」と記載されているが、これは「メッセージパケットの転送経路を変更する」の誤記と認められるので、上記のとおり認定した。
2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-251266号公報(平成元年10月6日出願公開。以下、引用例1という。)には、図面第5図に記載されたような4×4のメッシュ結合方式で接続された並列処理システムのプロセッサ間メッセージ通信方式が記載されており、各プロセッサの構成について、
「各プロセッサPiには、隣接プロセッサ間を接続するための入力ポート10と出力ポート11とが設けられている。入力ポート10を介してプロセッサPi内に入力されたメッセージは、一旦、受信バッファ12に格納されたのち、リンクテーブル13の対応する送信情報に基づいて、プロセッサ本体14及び送信バッファ15a、15b、15c、15dに渡される。リンクテーブル13の各送信情報は、例えば第3図に示すように6つのフィールドより構成されている。図中”識別番号”は、メッセージの種類を示す識別番号を記述するフィールドである。U(up)、D(down)、L(left)、R(right)は、各々プロセッサが外部と接続されている各ポートに対応したフィールドで、”1”であればそのポートからメッセージを送信し、”0”であれば送信しないことを示している。また、”IN”は、そのプロセッサでそのメッセージを取込むかどうかを指示するフィールドで、”1”であれば取込み、”0”であれば取込まないことを示している。このような送信情報は、メッセージの種類毎に用意されている。」と記載され(3頁左上欄10行乃至右上欄11行)、第5図には、プロセッサP0がプロセッサP10にメッセージを送信する場合の経路が例示されている。
また、同一のメッセージを複数のプロセッサに送信する場合について、
「第2図に示すように、プロセッサP0からプロセッサP5、P6、P7、P9、P10に対して同一メッセージを送信する場合について説明する。このメッセージ通信には、”35”という識別番号が設定されているとすると、各プロセッサのリンクテーブル13の識別番号”35”に対応する送信情報には、第4図に示すようなデータがそれぞれ登録されている。即ち、第2図の送信を行なう場合、プロセッサP0は、Rのポートにメッセージを送信するので、第4図(a)に示すようにRのフィールドに”1”、U、D、Lの各フィールドに”0”を登録している。同様に、プロセッサP1及びP6は、DとRのポートにメッセージを送信するので、第4図(b)、(e)に示すようにDとRの各フィールドに”1”、UとLの各フィールドに”0”を登録し、プロセッサP2、及びP5は、Dのポートにメッセージを送信するので、第4図(c)、(d)に示すようにDのフィールドに”1”、U、L、Rの各フィールドに”0”を登録し、その他のプロセッサはメッセージの送信を行なわないので、第4図(f)〜(h)に示すように、U、D、L、Rの全フィールドに”0”を登録する。そして、プロセッサP5、P6、P7、P9、P10は、メッセージを受け取るので、第4図(d)〜(h)に示すように、それらのリンクテーブルのINフィールドのは”1”が登録される。」と記載されている(3頁右上欄17行乃至右下欄3行)。
引用例1には、同一のメッセージを複数のプロセッサに送信する場合のルーテイングについて具体的に説明されており、単数のプロセッサにメッセージを送信する場合のルーテイング方法については具体的例示はない。しかし、引用例1には単数のプロセッサにメッセージを送信することも記載されており、その場合、複数のプロセッサに同一のメッセージを送信する場合とは異なるルーテイング方法を採用する理由もないことから、単数のプロセッサにメッセージを送信する場合においても、識別番号とリンクテーブルを用いてルーテイングを行うことが、実質的に記載されているものと認める。
また、上記摘記事項から、引用例1記載のものが、ネットワーク内の各々のプロセッサ本体から発生したあるいは接続された複数の接続リンクの一つから送られてきたメッセージを複数の接続リンクあるいはプロセッサ本体の中から指定された単数あるいは複数の宛先に転送する手段を有することは当業者に自明である。
したがって、引用例1には、「複数のプロセッサ本体とプロセッサ間の通信を行う4×4のメッシュ結合方式で接続された並列処理システムにおいて、送信元プロセッサから単数あるいは複数の宛先プロセッサへメッセージのルーテイングを行う方法であって、前記ネットワーク内の各々のプロセッサ本体から発生したあるいは接続された複数の接続リンクの一つから送られてきたメッセージを複数の接続リンクあるいはプロセッサ本体の中から指定された単数あるいは複数の宛先に転送する手段および、メッセージ内の識別番号からメッセージを転送する単数あるいは複数のリンクあるいはプロセッサ本体を指定するリンクテーブルを備え、前記プロセッサ本体により該リンクテーブル内のメッセージを出力する単数あるいは複数のリンクあるいはプロセッサ本体を指定する情報を登録することを特徴とするメッセージのルーテイング方法。」という発明(以下、引用例1記載の発明という。)が記載されている。
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-65750号公報(平成3年3月20日出願公開。以下、引用例2という。)には、多次元ネットワークを有するパラレル・コンピューテイング・システムについて、「通信リンクは、また、必要時には、代替経路を利用して、混雑及び不動作リンクを含むネットワーク状態の変化に動的に適用する能力も必要とする。」と記載されている(4頁左上欄7行乃至10行)。
3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、本願発明の「演算プロセッサ」、「複数の演算プロセッサと、プロセッサ間の通信を行う低次元のメッシュ状の相互接続ネットワークとから構成されるアレイプロセッサ」、「メッセージパケット」、「ルーテイング情報記憶手段」及び「設定」は、それぞれ引用例1に記載された発明の「プロセッサ本体」、「複数のプロセッサとプロセッサ間の通信を行う4×4のメッシュ結合方式で接続された並列処理システム」、「メッセージ」、「リンクテーブル」及び「登録」に相当し、引用例1の「識別番号」は、メッセージの宛先を示しており、宛先情報という点で本願発明の「宛先アドレス情報」と一致することから、両者は、
「複数の演算プロセッサと、プロセッサ間の通信を行う低次元のメッシュ状の相互接続ネットワークとから構成されるアレイプロセッサにおいて、送信元プロセッサから単数あるいは複数の宛先プロセッサへメッセージパケットのルーテイングを行う方法であって、前記ネットワーク内の各々の演算プロセッサから発生したあるいは接続された複数の接続リンクの一つから送られてきたメッセージパケットを複数の接続リンクあるいは演算プロセッサの中から指定された単数あるいは複数の宛先に転送する手段および、メッセージパケット内の宛先情報からメッセージパケットを転送する単数あるいは複数のリンクあるいは演算プロセッサを指定するルーテイング情報記憶手段を備え、前記演算プロセッサにより該ルーテイング情報記憶手段内のメッセージパケットを出力する単数あるいは複数のリンクあるいは演算プロセッサを指定する情報を設定することを特徴とするメッセージパケットのルーテイング方法。」で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、演算プロセッサによりルーテイング情報記憶手段内のメッセージパケットを出力する単数あるいは複数のリンクあるいは演算プロセッサを指定する情報を設定および変更することにより、ネットワーク内の各々のプロセッサから単数あるいは複数の指定した宛先プロセッサに対するメッセージパケットの転送経路を変更するものであるのに対して、引用例1には、リンクテーブルの送信情報をプロセッサが登録することは記載されているものの、リンクテーブルの送信情報を変更することによりメッセージの転送経路を変更することについては明記されていない点。
(相違点2)
本願発明の「宛先情報」は「宛先アドレス情報」であって、宛先のアドレスを識別するものであるのに対して、引用例1記載の発明の「宛先情報は「識別番号」であってメッセージの種類を示すものであり、上記摘記事項において、識別番号”35”のメッセージの種類について、「P0から・・・」と記載されているように、宛先を示すだけでなく、送信元をも識別する情報をもっており、同一宛先であっても発信元によりルートを別にする等、より適切なルーテイングが可能となりうるものであると考えられる点。
4.当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例2には、本願発明の対象と同様な多次元ネットワークを有するパラレル・コンピューテイング・システムについて、「通信リンクは、必要時には、代替経路を利用して、混雑及び不動作リンクを含むネットワーク状態の変化に動的に適用する能力も必要とする。」旨記載されており、メッセージの転送経路を必要に応じて変更することが示唆されていることから、ルーテイング情報記憶手段内にメッセージパケットを出力する単数あるいは複数のリンクあるいは演算プロセッサを指定する情報を設定したものにおいて、当該情報を変更することにより、ネットワーク内の各々のプロセッサから単数あるいは複数の指定した宛先プロセッサに対するメッセージパケットの転送経路を変更することは、当業者が容易になし得たことである。
(相違点2について)
引用例1記載の発明においても、識別番号は宛先を識別可能なものであることは明らかであり、宛先を識別可能なものを通常、アドレスと呼ぶものであるから、引用例1記載の発明においても、宛先アドレス情報を用いるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1および2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-02-22 
結審通知日 2000-03-03 
審決日 2000-03-14 
出願番号 特願平3-330565
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 茂和  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 山本 穂積
斎藤 操
発明の名称 アレイプロセッサのメッセージパケットルーティング方法および装置  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  

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