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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B
管理番号 1022552
審判番号 審判1997-14942  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-09-03 
確定日 2000-05-19 
事件の表示 平成 2年特許願第107770号「電線及び配線器具」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 1月10日出願公開、特開平 4- 6712]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I 手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年4月24日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「1.電路となる導体1の周囲全体乃至一部に、絶縁体として用いると共に温度変化に応じて変色する高分子化合物2を配設し、該高分子化合物2は、高分子基材を100重量部、感熱変色色素を5〜10重量部、可塑剤を50重量部、耐熱透明安定剤としてジノルマルオクチル錫ジメルカプタイドを5重量部、滑性安定剤を1重量部、酸化防止剤を1重量部、光安定剤を1重量部として、配合され、さらに、上記高分子化合物2の周囲全体に透明乃至半透明の耐紫外線高分子化合物3を被覆形成したことを特徴とする電線。」

II 引用例
これに対して、当審における、平成11年6月15日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開昭57-167380号公報(以下「引用例1」という。)、特開昭52-128942号公報(以下「引用例2」という。)、実願昭61-58857号(実開昭62-171815号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)、実公昭61-32761号公報(以下「引用例4」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されている。
1 引用例1
熱変色性材料に関し、
「先ず、重合体との併用を説明する。前記熱変色材料または熱変色材料内包微小カプセルを重合体にその本質の性能をそこなうことなく、均質に含有させた可逆性熱変色重合体組成物を得ることができる。・・・そしてさらにこれらは各種の熱変色性を有した形状即ち、ブロック、フィルム、フィラメント、微粒子、ゴム状弾性体、液体等を得ることができる。」(7頁左上欄17行〜右上欄11行)
「一方、前記熱変色材料を重合体に含有せしめるとき、所望の熱変色性を与えるに要する熱変色材料の量は広範囲に変化しうるしそして本質的に重合体の種類、重合体の用途に左右される。重合体組成物の重量に基いて約0.1ないし約40重量%の熱変色材料が所望の特性を与えるのに通常は充分であり、約0.5ないし約20重量%の熱変色材料含有が好ましい。また、重合体組成物の改良のために添加剤を本発明の組成物中に加えることができる。かかる添加剤の代表的なものは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、顔料、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤、抗ブロック剤、等がある。」(7頁左下欄19行〜右下欄11行)
「次に本発明に使用する重合体を例示する。・・・(中略)・・・含ハロゲン樹脂としては例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、等。」(7頁右下欄12行〜8頁左上欄7行)
「以上述べたごとく、本発明は優れた特性を有することにより、従って従来の熱変色性材料の用途に加えさらに、前記の新変色性の特性を利用し、新しい分野あるいは用途への応用が可能となった。例えば、・・・(中略)・・・、電気回路及び電気機器の過荷による発熱の早期発見用温度標識、・・・(中略)・・・等の用途がある。」(28頁右下欄1行〜17行)
2 引用例2
安定化されたポリ塩化ビニル樹脂に関し、
「一般に、ポリ塩化ビニル樹脂は熱、光、酸素、オゾンなどの作用により分解しやすく、次第に着色、黒変、脆化などがおこり、基材のもつ本来の性質を失ってしまう欠陥を有している。従来、これらの性質低下を防止するために安定剤、滑剤などが用いられてきた。これらのうち、熱安定剤として多用されているものには、・・・(中略)・・・または有機錫化合物などである。しかしながら、特に耐熱性はもちろん透明性も維持されたポリ塩化ビニル樹脂を提供する場合には有機錫化合物が用いられてきている。」(1頁右下欄10行〜2頁左上欄8行)
「本発明で用いられる有機錫化合物としてはラウレート系、マレート系およびメルカプタイド系に大別されている。」(2頁左上欄13〜15行)
3 引用例3
「断熱体上に発熱体を配設しその上に表面体を積層してなる電気カーペットにおいて、上記表面体上面に感熱塗装を施した温度表示ラベルを設け、該温度表示ラベル上に紫外線遮断フィルムを取付けてなることを特徴とする電気カーペット。」(実用新案登録請求の範囲)
「5は上記温度表示ラベル4の上面に貼着等の方法により取付けられたアルミを蒸着したポリエステルフィルム等からなる透視性を有する紫外線遮断フィルムで、該紫外線遮断フィルムにより直射日光による感熱塗装の変退色を防止しうるようになっている。」(明細書3頁18行〜4頁4行)
4 引用例4
呈色性多層容器に関し、
「例えば、電子供与性呈色性有機化合物を混入した外層1に紫外線吸収剤等の添加剤を添加しても耐候性が不十分な場合は更に外層1の外側に一層紫外線吸収剤等を添加した熱可塑性樹脂を設けると耐候性が大幅に改善される。」(5欄41行〜6欄1行)

III 対比
1 引用例1には、電気回路及び電気機器の具体的な例示の記載はないが、電気回路及び電気機器において、過荷による発熱が問題となるものに電線があることは周知の事項であるから(必要があれば、特開昭60-216409号公報、実願昭55-105581号(実開昭57-29013号)のマイクロフィルム等参照。)、引用例1に記載される電気回路及び電気機器に電線が含まれることは、当業者には明らかである。
また、電線において、塩化ビニル樹脂が絶縁体として使用されることも、周知の事項であるから、引用例1記載の可逆性熱変色重合体組成物が電線に使用される際、電路となる導体の周囲に配置される絶縁体として使用されることも、当業者には明らかである(上記実願昭55-105581号(実開昭57-29013号)のマイクロフィルムの明細書1頁20行〜2頁2行には、「コードの皮膜として用いられている塩化ビニールに所定の温度によって色が変わる化学的成分を添加する」ことが記載されている。)。
してみると、引用例1には、重合体に熱変色材料、および、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、顔料、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤、抗ブロック剤等の添加剤を加えた可逆性熱変色重合体組成物を、電路となる導体の周囲に配置される絶縁体として用いた電線が実質的に記載されているものと認められる。
2 本願発明と引用例1に記載された発明とを対比するに、引用例1の「可逆性熱変色重合体組成物」、「重合体」、「熱変色材料」、「潤滑剤」、「紫外線吸収剤」が、それぞれ、本願発明の「高分子化合物」、「高分子基材」、「感熱変色色素」、「滑性安定剤」、「光安定剤」に相当するから、両者は、
「電路となる導体の周囲全体乃至一部に、絶縁体として用いると共に温度変化に応じて変色する高分子化合物を配設し、該高分子化合物は、高分子基材、感熱変色色素、可塑剤、滑性安定剤、酸化防止剤、光安定剤を配合したことを特徴とする電線。」
で一致し、次の点で相違する。
(1) 本願発明の高分子化合物は、耐熱透明安定剤としてジノルマルオクチル錫ジメルカプタイドを含有するのに対し、刊行物1には、この添加剤について記載がない点(以下「相違点1」という。)。
(2) 本願発明の高分子化合物は、その各成分の重量部が所定値(高分子基材を100重量部、感熱変色色素を5〜10重量部、可塑剤を50重量部、耐熱透明安定剤としてジノルマルオクチル錫ジメルカプタイドを5重量部、滑性安定剤を1重量部、酸化防止剤を1重量部、光安定剤を1重量部)に限定されるものであるのに対し、刊行物1には、熱変色材料の含有量以外の重量比について記載がない点(以下「相違点2」という。)。
(3) 本願発明は、高分子化合物の周囲全体に透明乃至半透明の耐紫外線高分子化合物を被覆形成するのに対し、刊行物1には、この構成の記載がない点(以下「相違点3」という。)。

IV 当審の判断
1 相違点1について
塩化ビニル樹脂において、耐熱性、透明性等を維持するために、添加剤としてメルカプタイド系有機錫化合物を添加することは、刊行物2に記載されるように周知の事項であり、また、ジノルマルオクチル錫ジメルカプタイドは、メルカプタイド系有機錫化合物としてごく普通のものであるから、刊行物1記載の重合体に、添加剤としてジノルマルオクチル錫ジメルカプタイドを加えて、耐熱性、透明性を向上させることは、当業者が容易に行い得ることである。
2 相違点2について
本願発明は、高分子化合物の各成分の重量部を所定値に限定するものであるが、本願明細書において、その所定値は、高分子化合物の配合処方の一実施例として示されているだけであり、比較例の記載は一切なく、その所定値に限定する根拠について、技術的意義が説明されていない。
また、本願明細書には、本願発明の作用効果として、絶縁体としての高分子化合物が熱劣化し難くなること、紫外線に対する耐性が著しく向上すること等が記載されているが、これらの効果は、安定剤を添加したことによる自明な効果であって、添加量の数値限定に基づく効果ではない。
そもそも、安定剤(添加剤)とは、添加量が少なければ必要とされる特性を充分得ることができず、多すぎると他の特性を悪くする虞があるという一般的性質を有するものであるから、添加剤の添加量は、必要とされる組成物の特性に対応して、当業者が適宜選択するものである。
したがって、本願発明における高分子化合物の各成分の重量部には臨界的意義はなく、必要とされる特性に応じて、当業者が適宜選択し得る程度のものである。
してみると、刊行物1の可逆性熱変色重合体組成物において、添加剤の重量部を本願発明のように選択することは、当業者が必要に応じて容易に行い得ることである。
なお、請求人は、高分子基材100重量部に、耐熱透明安定剤としてジノルマルオクチル錫ジメルカプタイドを5重量部含ませることは、当業者間における周知慣用の技術からかけ離れた全く独自かつ新規なものであり、当業者が予想し得ない水準にあることは明白である旨主張するが、塩化ビニル系樹脂において、有機錫系安定剤を5重量部程度添加することは、ごく普通に行われていることであり(必要があれば、特開昭56-50946号公報、特開昭63-277260号公報等参照。)、この点にも格別の困難性は認められない。
3 相違点3について
刊行物3には、電気カーペットに設ける温度表示ラベルにおいて、直射日光による感熱塗装の変退色を防止するため、温度表示ラベル上に透視性を有する紫外線遮断フィルムを貼着することが記載されており、また、刊行物4は、呈色性多層容器に関するものであるが、呈色性有機化合物を混入した外層に紫外線吸収剤等の添加剤を添加しても耐候性が不十分な場合は更に外層の外側に一層紫外線吸収剤等を添加した熱可塑性樹脂層を設けると耐候性が大幅に改善されることが記載されている。
すなわち、引用例3、4には、熱変色性材料を使用する場合、耐候性を向上させることは、当業者が通常考慮する事項であり、そのために、熱変色性材料の表面に透視性の紫外線遮断フィルム、紫外線吸収樹脂層等の対紫外線高分子化合物を被覆配置することが記載されている。
してみると、刊行物1記載の可逆性熱変色重合体組成物の周囲全体に透明乃至半透明の耐紫外線高分子化合物を被覆形成することは、当業者が必要に応じて容易に行い得ることである。
4 作用効果について
本願発明の作用効果についてみても、引用例1〜4に記載された発明から当業者が容易に予測し得る程度のものであり、格別のものではない。

V むすび
したがって、本願発明は、引用例1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-02-07 
結審通知日 2000-02-25 
審決日 2000-03-22 
出願番号 特願平2-107770
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 柿沢 恵子
小林 信雄
発明の名称 電線及び配線器具  
代理人 中谷 武嗣  
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