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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16F |
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管理番号 | 1022628 |
審判番号 | 審判1998-6438 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1990-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-04-23 |
確定日 | 2000-07-19 |
事件の表示 | 平成 1年特許願第126302号「防振装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 2年12月25日出願公開、特開平 2-309032]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、出願日が平成1年5月19日であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成9年9月1日付け、平成10年5月25日付け、及び平成10年9月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 (1)振動発生部又は振動受部の一方へ連結される内筒と、前記内筒と同軸的に配置され振動発生部又は振動受部の他方へ連結される外筒と、前記内筒と前記外筒とを連結する弾性体本体と、前記内筒に固着され半径方向外側へ突出される径方向延設部材と、前記延設部材の外筒側端部に設けられ実質周方向に延設される周方向延設部材と、から構成され、前記外筒と前記内筒との軸直角方向相対移動を制限する移動量制限手段と、前記周方向延設部材の外筒側端部に固着され、前記弾性体本体より高硬度の弾性体と、を有し、前記径方向延設部材と前記周方向延設部材とは、前記径方向延設部材の半径方向外側端に形成された被かしめ部が前記周方向延設部材に形成された孔に挿通されてかしめ固定されていることを特徴とした防振装置。 2.引用例 これに対し、前置審査における平成10年11月12日付け拒絶理由通知において引用された実願昭61-100614号(実開昭63-6247号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、流体封入式防振ブッシュに関し、 イ.「第1図および第2図において、10は、厚肉円筒状を成す内筒部材としての内筒金具である。この内筒金具10の外周面には、その軸心方向中央部に位置して所定厚さのストッパ金具12がその中央孔14において圧入固定されていると共に、そのストッパ金具12の外面に跨ってゴム弾性体としてのゴムスリーブ16が一体加硫成形せしめられており、またこのゴムスリーブ16の外周面には外筒部材としての外筒金具18が嵌着されている。そして、本実施例のサスペンションブッシュは、この外筒金具18の外周面において所定の筒状部材に嵌入されると共に、前記内筒金具10の内孔20において所定の取付軸に外挿されて取り付けられ、これによってそれら筒状部材と取付軸とを防振連結するようになっている。…外筒金具18は内筒金具10に対して同心的に配置されている。」(第9頁第5行〜第10頁第2行)こと、 ロ.「ストッパ金具12は、第1図および第2図に示されているように、矩形状部の相対向する一対の辺部からそれぞれ台形状のストッパ部34,34が突出形成された形状を呈して」(第12頁第3〜6行)いること、及び ハ.「各ストッパ部34,34の先端部には、その先端部からブッシュ軸心方向およびブッシュ周方向にそれぞれ所定寸法突出する状態で、円弧状断面を有する矩形板状の突出部材42,42が位置固定されている。」(第13頁第6〜10行)こと。 ニ.「各突出部材42は内周側の補強金具44とその外周面に一体加硫成形せしめられた所定厚さの緩衝ゴム層46とから成っており、雄ネジ48によってストッパ部34の先端部に螺着されている。」(第14頁第1〜5行)こと、が記載されている。 以上の記載事項及び図面の記載から、引用例1には、 「所定の取付軸へ連結される内筒金具10と、前記内筒金具10と同心的に配置され所定の筒状部材へ連結される外筒金具18と、前記内筒金具10と前記外筒金具18とを連結するゴムスリーブ16と、前記内筒金具10に圧入固定され半径方向外側へ突出されるストッパ部34,34と、前記ストッパ部34,34の外筒金具18側端部に設けられ実質周方向に延設される突出部材42,42と、から構成され、前記外筒金具18と前記内筒金具10との軸直角方向相対移動を制限するストッパ金具12と、前記突出部材42,42の外筒金具18側端部に固着される緩衝ゴム層46と、を有する流体封入式防振ブッシュ」が記載されているものと認められる。 3.対比 本願発明と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の「所定の取付軸」は、本願発明の「振動発生部又は振動受部の一方」に、以下同様に、「内筒金具10」は「内筒」に、「同心的」は「同軸的」に、「所定の筒状部材」は「振動発生部又は振動受部の他方」に、「外筒金具18」は「外筒」に、「ゴムスリーブ16」は「弾性体本体」に、「圧入固定」は「固着」に、「ストッパ部34,34」は「径方向延設部材」に、「突出部材42,42」は「周方向延設部材」に、「ストッパ金具12」は「移動量制限手段」に、「緩衝ゴム層46」は「弾性体」に、「流体封入式防振ブッシュ」は「防振装置」に、それぞれ相当するから、両者は「振動発生部又は振動受部の一方へ連結される内筒と、前記内筒と同軸的に配置され振動発生部又は振動受部の他方へ連結される外筒と、前記内筒と前記外筒とを連結する弾性体本体と、前記内筒に固着され半径方向外側へ突出される径方向延設部材と、前記延設部材の外筒側端部に設けられ実質周方向に延設される周方向延設部材と、から構成され、前記外筒と前記内筒との軸直角方向相対移動を制限する移動量制限手段と、前記周方向延設部材の外筒側端部に固着される弾性体と、を有する防振装置」である点で一致し、以下の各点において相違するものと認められる。 [相違点1] 周方向延設部材の外筒側端部に固着される弾性体を、本願発明では、「弾性体本体より高硬度」にしたのに対し、引用例1記載の発明では、弾性体の硬度について不明な点。 [相違点2] 径方向延設部材と周方向延設部材とが、本願発明では、「径方向延設部材の半径方向外側端に形成された被かしめ部が周方向延設部材に形成された孔に挿通されてかしめ固定されている」のに対して、引用例1記載の発明では、雄ネジによって固定されている点。 4.当審の判断 そこで、上記各相違点について検討する。 ・相違点1について 前置審査における平成10年11月12日付け拒絶理由通知において引用された実願昭61-120933号(実開昭63-27732号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、金属製の内筒2と外筒3の間に、内部に空間部5を有するゴム4が装着された構造のサスペンション等に用いられるゴムブッシュに関し、前記空間部5の内側のゴム4部分の外面がストッパ面4aとされているものにおいて、内筒2と外筒3の相対変位に際し、前記外筒3の内周面に当接する前記ストッパ面4aが摩耗するのを防止するために、当該ストッパ面4aにゴム4よりも硬質材料から成る部材(「ばね定数調整部材74」)を設けたこと(第5図の実施例参照)が記載されている。そして、引用例2記載のものは、サスペンションに適用されるブッシュに係る技術である点で、引用例1記載のものと同様な技術分野に属するものと認められるから、引用例1に引用例2記載のものを適用し、上記相違点1における本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたものである。 ・相違点2について 部品相互を固定する手段として、「かしめ」や「ねじ」による固定手段は、いずれも慣用手段にすぎず、製造分野において、固定手段としてどのようなものを選択するかは、当業者が固定手段の特徴及びそれらが適用される箇所等を考慮して、適宜になしうる選択事項にすぎないこと、また、部品の穴に被かしめ部を挿入しかしめ固定することも、かしめの一態様として周知であること、そして、本願発明が、固定手段としてかしめを採用したことにより、径方向延設部材と周方向延設部材とを強固に固定できるという作用効果も、「かしめ」が本来有する作用効果以上のものはなく、当業者が予測できる範囲内のものであることを総合的に勘案すれば、引用例1記載のものにおいて、固定手段としてねじによる固定手段に代えて「かしめ」を採用し、上記相違点2における本願発明のように構成することは、当業者にとって格別の困難性はない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-04-21 |
結審通知日 | 2000-05-09 |
審決日 | 2000-05-24 |
出願番号 | 特願平1-126302 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F16F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡田 幸夫、幸長 保次郎、佐藤 荘助、千葉 成就、久保 竜一、内田 博之 |
特許庁審判長 |
佐藤 洋 |
特許庁審判官 |
鳥居 稔 和田 雄二 |
発明の名称 | 防振装置 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |