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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1022734
審判番号 審判1999-1832  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-04 
確定日 2000-08-09 
事件の表示 平成 9年特許願第 25967号「固体撮像装置およびそれを用いた撮像カメラ」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 8月 7日出願公開、特開平10-210373]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯、本願発明
本願は、平成9年1月24日の出願であって、平成10年8月31日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】固体撮像装置が設けられる同一チップ上に、該固体撮像装置で発生する画素欠陥の位置情報やノイズ情報に加えて、該固体撮像装置を最適に動作させるための駆動条件やバイアス条件を含む最適動作条件情報を記憶するためのメモリを備えたことを特徴とする固体撮像装置。」
なお、平成11年2月25日付け手続補正は、当該補正により補正された発明が本願特許出願の際独立して特許を受けることができないという理由により、本日付けで決定をもって却下した。
[2]引用例
[2-1] 原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-126012号(実開平61-39957号公報)のマイクロフィルム(昭和61年3月13日出願公開、以下「刊行物1」という。)には、
(a)「アドレス付けされた複数の感光絵素を有する固体撮像素子と、該素子の欠陥感光絵素のアドレスを記憶した記憶素子とを同一チップ上に形成してなり、記憶素子の上面に遮光膜を設けた事を特徴とする固体撮像装置。」(実用新案登録請求の範囲)、
(b)「該固体撮像素子(11)は光を入力信号として受けて電気信号に変換する機能を有する素子であり、記憶素子(12)としては例えば電気的な書き込みなどの手段により書き込みを行なうことができるプログラマブルROMである。」(明細書第6頁第1行〜第5行)、
(c)「本考案の固体撮像装置は以上の説明から明らかな如く、固体撮像素子と記憶素子とを同一チップ上に並設して記憶素子の上面に遮光膜を設けたものであるので、外部記憶素子を不要としてテレビカメラの小型軽量化をはかると共に、記憶素子が固体撮像素子専用に設計されるので、欠陥絵素のアドレスの記憶作業を簡素化できる。しかも従来装置の如く個別の上記両素子を管理しなければならないと云う不都合を解消する事ができる。」(明細書第8頁第9行〜第17行)と記載されている。
[2-2] 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-86174号(平成6年3月25日出願公開、以下「刊行物2」という。)には、
(d)「赤外線を入力し電気信号に変換する撮像部と、この撮像部で発生する固定パターンノイズを記憶する固定パターンノイズ記憶部と、前記撮像部の出力と前記固定パターンノイズ記憶部の出力との演算を行なう演算部とを有することを特徴とする赤外線イメージセンサ。」(特許請求の範囲の請求項1)、
(e)「本実施例においては、イメージセンサ自身で画像信号から固定パターンノイズを除去するので、固定パターンノイズ除去のための外部処理装置が不要であり赤外線イメージセンサを用いた赤外線撮像装置を小型化及び軽量化できるという効果を奏する。」(段落番号0018)と記載されている。
[2-3] 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-18793号(平成9年1月17日出願公開、以下「刊行物3」という。)には、
(f)「複数の画素を有し、被写体の画像光を撮像して対応する画像信号を出力する撮像素子と、前記撮像素子の画素ごとの固定パターン雑音を示すデータを記憶する不揮発性メモリと、複数フレームにわたり、画素毎の画像データの積分値を記憶可能なフレームメモリと、前記撮像素子からの出力画像信号と、前記不揮発メモリの読み出しデータと、前記フレームメモリの読み出しデータとを相互に演算可能な演算制御回路と、を具備することを特徴とする撮像装置。」(特許請求の範囲の請求項1)、
(g)「本発明は、撮像装置に関し、特に、比較的簡単な装置構成によって撮像素子の暗電流などによる固定パターン雑音を適切に補正除去して高品質の撮像画像を得ると共に、多様な機能を持たせることが可能な撮像装置に関する。」(段落番号0001)、
(h)「図1は、本発明に係わる撮像装置をデジタル電子カメラに適用した実施例の装置を示す。」(段落番号0032、公報第8欄第43行〜第44行)と記載されている。
[2-4] 原査定で周知例として引用された特開平4-142776号(平成4年5月15日出願公開、以下「刊行物4」という。)には、
(i)「基板に所定の電位を印加することにより、光電変換部で発生した電荷のうち取り扱い能力を上回る過剰電荷成分を上記基板側へ排出するようにした固体撮像素子において、電位が印加される入力端子と、上記基板に接続された出力端子と、書き込み端子とを有し、上記入力端子に一定の電位が印加された場合に、上記出力端子の電位を、予め上記書き込み端子から書き込まれた内容に応じた電位とするプログラム可能なメモリ部を備えたことを特徴とする固体撮像素子。」(特許請求の範囲の請求項1)、
(j)「この第3図により明らかなように基板電位(Vofd)を増大していくことにより受光部に蓄積できる信号電荷量(Qsig)は減少していき、特定値VbでQsigはゼロとなる。(中略)従って、Vofdの最適値Vaを素子毎に求めてその値に正確に合わせなければならない。これは駆動条件の素子毎の調整が必要なことを意味し、使用上の大きな制約となる。そこで、この発明の目的は、素子毎に駆動条件を変えることなくその素子に最適な基板電位を得ることができる固体撮像素子を提供することにある。」(第2頁左上欄第5行〜右上欄第9行)、
(k)「テスト段階で素子毎に最適な基板電位を求めて、その基板電位になるように上記プログラム可能なメモリ部に書き込みを行う。そうすることにより、入力端子に素子に依存しない一定の電位を印加することで、素子毎に最適の基板電位が得られる。従って、素子毎に基板電位を調整する必要がなく、素子使用上の利便性が高まる。」(第2頁左下欄第8行〜第14行)と記載されている。
[3]対比判断
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「感光絵素」「欠陥感光絵素のアドレス」「記憶素子」は、それぞれ本願発明の「画素」「画素欠陥の位置情報」「メモリ」に相当するので、両者は、
「固体撮像装置が設けられる同一チップ上に、該固体撮像装置で発生する画素欠陥の位置情報を記憶するためのメモリを備えたことを特徴とする固体撮像装置。」である点において一致しており、以下の点において相違している。
(イ)本願発明において、上記「メモリ」は、さらに「ノイズ情報」を記憶するためのものであるのに対し、刊行物1には、特に記載されていない点。
(ロ)本願発明において、上記「メモリ」は、さらに、「固体撮像装置を最適に動作させるための駆動条件やバイアス条件を含む最適動作条件情報」を記憶するためのものであるのに対し、刊行物1には、特に記載されていない点。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点(イ)について
赤外線イメージセンサにおいて、撮像部の固定パターンノイズを記憶する記憶部をセンサー部に設けることは刊行物2に記載されている。また、電子スチルカメラにおいて、その固体撮像装置の固定パターン雑音データを記憶するメモリを設けることは、刊行物3に記載されている。してみれば、刊行物2の赤外線イメージセンサも、固体撮像装置の一種であり、刊行物1、2及び3に記載された発明は、本願発明と同様の固体撮像装置に関するものであるので、刊行物2及び3に記載された、ノイズ情報をメモリに記憶する公知の技術を、刊行物1に記載された発明に適用し、刊行物1の発明の「メモリ」に、ノイズ情報をも記憶するようにすることは当業者が容易に想到しうることである。
相違点(ロ)について
本願発明の、「固体撮像装置を最適に動作させるための駆動条件やバイアス条件を含む最適動作条件情報」に関して、本願明細書には、「固体撮像装置の駆動電圧やバイアス電圧は、規格で定められた範囲で動作するようになっているが、装置の製造プロセスのバラツキを考慮してもマージンをもって設定されている。しかし、最適な駆動電圧やバイアス電圧で動作させると、さらに高い性能を得ることが可能となる。例えば、図6におけるPウェルに加える電圧を最適に設定するとフォトダイオード13に蓄積できる最大電荷量が1.5〜2倍に増加できる利点がある。」(段落番号0065、0066参照)と記載されている。
刊行物4には、固体撮像素子において、素子毎に最適な基板電位を求めて、その基板電位になるようにメモリに記憶し、使用時に、最適の基板電位を得られるれるようにすることが、記載されている。また、刊行物4には、従来技術および技術課題の説明において、「Vofd(基板電位)の最適値Vaを素子毎に求めてその値に正確に合わせなければならない。これは駆動条件の素子毎の調整が必要なことを意味し」(上記(j)参照)と記載されている。刊行物4の「基板電位」は本願発明の「バイアス条件」に相当しているので、刊行物4には、固体撮像装置を最適に動作させるために、駆動条件やバイアス条件が調整される必要があることを前提として、固体撮像素子において、素子毎に最適なバイアス条件を求めて、これをメモリに記憶することが開示されている。
してみれば、周知例である刊行物4の技術に基づいて、刊行物1に記載された発明のメモリに、駆動条件やバイアス条件を含む最適動作条件情報をも記憶することは、当業者が容易に想到しうることである。
そして、上記相違点(イ)(ロ)を総合して勘案しても、本願発明の作用効果は、上記引用例1〜3及び周知例に記載された範囲内であり、格別のものではない。
[4]むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された上記刊行物に記載された発明及び周知発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-05-16 
結審通知日 2000-05-30 
審決日 2000-06-16 
出願番号 特願平9-25967
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 水谷 好男
特許庁審判官 橋本 恵一
小林 秀美
発明の名称 固体撮像装置およびそれを用いた撮像カメラ  
代理人 京本 直樹  

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