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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) A23K
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) A23K
管理番号 1022982
審判番号 審判1999-35061  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1985-03-15 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-04 
確定日 2000-09-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第1715694号発明「ペツトフ-ド」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1715694号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第1715694号に係る発明は、昭和58年8月24日特許出願され、平成4年11月27日にその特許権の設定の登録がなされ、平成11年2月4日に本件特許を無効にする審判が請求され、平成11年5月24日に訂正請求がなされたが、その訂正請求は取り下げられたものである。
2.請求人の主張等
請求人は、下記の証拠方法を提示し、本件特許は、次の理由により特許法第123条第1項第1号および第3号の規定により、無効とすべきものである旨主張する。
理由(1)本件特許発明の要件である「食物繊維含有量0.5%以上」に関し、その「食物繊維」がどういうものであるかの定義ならびにその測定法は明細書に全く開示がないし、本件特許発明の出願当時(昭和58年8月24日)において、この用語及び方法が当業者に自明のものでもないから、発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることが出来る程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されていないから、本件特許発明は、特許法第36条第3項から5項の規定により特許を受けることができないものである。
理由(2)本件特許発明は、下記の甲第9号証を考慮すると、甲第5号証あるいは第6号証に記載された発明と同一、あるいは、その記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項あるいは第2項の規定により特許を受けることができないものである。

甲第1号証:「食品科学大事典」(昭和56年11月18日発行、講談社)第404〜406頁
甲第2号証:日本栄養士会編「食物繊維」(1989年10月1日発行、第一出版株式会社)第1〜10,38〜43頁
甲第3号証:「食物繊維を含む機能性成分の新測定法と分析システム確立に関する共同研究報告書」平成2年6月発行、第32〜40頁
甲第4号証:「食物繊維-食品学・栄養学的アプローチ」(昭和58年11月15日発行、篠原出版株式会社)第4〜22頁
甲第5号証:米国特許第3946123号明細書
甲第6号証:宣誓供述書及び同訳文
甲第7号証:Official Methods of Analysis of the Association of official Analytical Chemists,1983、第132、134頁
甲第8号証:O.Nutr.128,2795S-2797S,1998
甲第9号証:米国農務省のウェブサイト(httm://www.nal.usda.gov/fnic/cgi-bin/list_nut-pl)からのプリント(31.08.1999)
なお、甲第7ないし9号証は、平成11年9月27日付け弁駁書に添付して提出された。
3.被請求人の反論
「食物繊維」の「定義」については、乙第1号証(「食品の食物繊維・無機質・コレステロール・脂肪酸含量表」1985年(昭和60年)医歯薬出版株式会社発行)の第1ページに、食物繊維の定義として「現在では動物性食品起源も含めて“人間の消化酵素で水解されない食物中の難消化性成分の総体”(桐山修八(1980)」と記載されており、本件特許発明の出願前において食物繊維の定義がなされており、本件特許発明は、この定義をもとになされたものであり、また、「測定法」については、請求人が提出している甲第2号証には、その38頁に「現在,もっとも注目されている方法として,Van Soestのdetergent fiber法とSouthgateの多糖類分別定量法がある。」と記載され、54頁(被請求人の平成12年5月25日付け上申書の添付資料)に「全食物繊維の定量法としてSouthgate法は精度が高く、すぐれた分析法である」と記載されていることからもわかるように、本発明においてはこのSouthgate法によって行われたことは言うまでもないから、本件特許明細書の記載に不備はない。
4.当審の判断
理由(1)について
甲第1号証の404頁の「食物繊維」の項には、「食物繊維に対する簡潔な定義、特にヒトに栄養上果たす役割をも含めた形での定義はまだ確立されていない・・・従来の栄養学の書物には,ほとんど食品中の〈粗繊維〉の値しか記載されていない。」と記載されており、乙第1号証の1頁9〜15行には、食物繊維の定義として「食物繊維は1972年トロウェル博士により,生理的意味を含む用語として提出されたダイエタリー・ファイバー(dietany fiber)の訳語である.トロウェル博士は最初,ダイエタリー・ファイバーを“人の消化酵素で消化されない植物細胞の構造残渣”と定義したが,・・・さらにその後,研究の進むにつれて,動物性の難消化性物質にも生理的意義をもつものが見出されるようになり,現在では動物性食品起原も含めて “人間の消化酵素で水解されない食物中の難消化性成分の総体(桐山修八、1980)とされている.」と記載されている。
また、甲第2号証の6頁27行〜7頁2行には、「Southgateは植物の利用不能炭水化物のセルロース,ヘミセルロース,リグニンを系統的に分別定量するさらに精度の高い方法を発表した。しかし,この方法は操作が複雑であり,一試料の分析に5日間も要するので,一般的普及に難点があるとされている」と記載され、38頁9〜17行には、「食物繊維の分折法としては,食物繊維の各成分に対して高い回収率を示し,精度がよく,しかも簡易,迅速に測定できることが要求される。今までに,いろいろの分析法が検討され,発表されているが,食物繊維の定義そのものが必ずしも充分に合意されていない関係もあり,いまだ統一された方法は開発されていない。現在,もっとも注目されている方法として,Van Soestのdetergent fiber法とSouthgateの多糖類分別定量法がある。この他、消化酵素を作用させ,非消化性残渣を測定する方法,近赤外域(Near-intrared-refrectance)における食物繊維の特性吸収を利用して測定する方法などが発表されている。」と記載され、さらに、54頁(被請求人の平成12年5月25日付け上申書の添付資料)に「全食物繊維の定量法としてSouthgate法は精度が高く,すぐれた分析法であるが,操作が煩雑であること,分析に相当の日数を必要とする欠点がある。」と記載されている。
まず、「食物繊維」の定義について検討すると、甲第1号証には、「食物繊維に対する簡潔な定義・・・はまだ確立されていない」と、甲第2号証には、「食物繊維の定義そのものが必ずしも充分に合意されていない」と記載されており、乙第1号証には、「現在では動物性食品起原も含めて “人間の消化酵素で水解されない食物中の難消化性成分の総体(桐山修八、1980)とされている.」と記載されているが、乙第1号証が本件出願後に頒布されたものであることを考慮すると、乙第1号証によっても「食物繊維」の定義が本件出願前に確立しているとはいえない。
したがって、本件出願前に「食物繊維」の定義が確立していると認めることはできない。
次に、食物繊維の分析法について検討すると、特許明細書には、「食物繊維含有量」をいかなる分析法で計測したか記載されておらず、且つ、示唆されてもいない。
そして、甲第2号証によれば、食物繊維の分折法としては、「Van Soestのdetergent fiber法」「Southgateの多糖類分別定量法」「消化酵素を作用させ,非消化性残渣を測定する方法」「近赤外域(Near-intrared-refrectance)における食物繊維の特性吸収を利用して測定する方法」が本件出願前に存在しており、食物繊維の分折法は「食物繊維の定義そのものが必ずしも充分に合意されていない関係もあり,いまだ統一された方法は開発されていない」し、また、Southgate法は、精度の高い分析法であるが、「操作が複雑であり,一試料の分析に5日間も要するので,一般的普及に難点がある」とされているから、「Southgate法」が本件出願時に食物繊維の分折法として通常用いられていたとすることはできない。
以上のように、本件出願時に、「食物繊維」の定義が確立しているとはいえず、また、本件出願時に、通常用いられていた食物繊維の分折法が特定されていたとは認められないから、本件発明において食物繊維の含有量をどの分析法によって測定したのか明らかでなく、また、その分折法の違いによって食物繊維含有量の値が異なることもある(甲第4号証)から、特許明細書の「食物繊維の含有量を0.5%以上とするのが、ペット動物の健康上から望ましい。特に望ましい食物繊維の含有量は1.0〜5.0%程度であるが、0.5%以下ではその効果が期待できない。」、「食物繊維含有量1.1%」及び「食物繊維含有量1.7%」は、その意味する内容が不明りょうであり、本件明細書には当業者が容易にその発明を実施をすることができる程度に、本件発明の構成及び効果が記載されているとはいえない。
また、特許請求の範囲に記載された「食物繊維含有量0.5%以上」は、その食物繊維含有量が不明りょうであり、特許請求の範囲には、発明の構成に欠くことができない事項が記載されていると認めることはできない。
したがって、本件発明に係る出願は、その明細書の記載が特許法第36条第3項又は第4項に規定する要件を具備していない。
なお、(2)の理由については、特許発明が不明りょうであるから、その新規制、進歩性については判断できない。
5、むすび
以上のとおりであるから、本件特許は、その明細書の記載が特許法第36条第3項又は第4項に規定する要件を満たしていない特許出願であるから、特許法第123条第1項第3号に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-06-06 
結審通知日 2000-06-16 
審決日 2000-07-07 
出願番号 特願昭58-153146
審決分類 P 1 112・ 532- Z (A23K)
P 1 112・ 531- Z (A23K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉岡 正志徳廣 正道  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 鈴木 寛治
新井 重雄
登録日 1992-11-27 
登録番号 特許第1715694号(P1715694)
発明の名称 ペツトフ-ド  
代理人 安田 徹夫  
代理人 小堀 貞文  
代理人 安藤 克則  
代理人 浅村 皓  
代理人 平木 祐輔  
代理人 浅村 肇  

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