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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1023101
審判番号 審判1998-10770  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-07-08 
確定日 2000-08-18 
事件の表示 平成 4年特許願第206641号「半導体装置およびその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 2月25日出願公開、特開平 6- 53232]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (出願の経緯・発明の要旨)
本願は、平成4年8月3日の出願であって、その発明の要旨は、平成7年9月28日付、平成9年11月28日付、平成10年8月4日付及び平成12年4月14日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載よりみて、その特許請求の範囲請求項1及び2に記載された「半導体装置及びその製造方法」にあるものと認められるところ、請求項1記載の発明は以下のとおりである。
「主表面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の主表面に素子形成領域を分離するように形成された分離絶縁膜と、
前記半導体基板内で前記分離絶縁膜の下面近傍から前記素子形成領域内の所定の深さ位置に延びる第1導電型の不純物濃度ピークを有する領域と、
前記分離絶縁膜に隣接する前記素子形成領域内で前記半導体基板の主表面に形成された第1の濃度を有する第2導電型の第1不純物領域と、
前記第1不純物領域と前記第1導電型の不純物濃度ピークとの間でかつ前記分離絶縁膜の下面近傍に前記第1不純物領域に接するように形成された、前記第1の濃度よりも低い第2の濃度を有する第2導電型の第2不純物領域とを備え、
前記分離絶縁膜の前記下面近傍において、前記第2不純物領域が前記第1導電型の不純物濃度ピークを有する領域に達していることを特徴とする半導体装置。」
(引用例)
当審における拒絶の理由において引用された特開平3-222480号公報(以下、「引用例」という。)には、「先ず第2図Aの如く、P型の半導体基板(1)にシリコン酸化膜(2)とシリコン窒化膜(3)を順次積層する。続いて第2図Bの如く、レジスト膜(4)を使って、前記シリコン窒化膜(3)をエッチングし、予定の活性領域上にこのシリコン窒化膜(3)を残す。続いて第2図Cの如く、前記シリコン窒化膜(3)を耐酸化膜として活用しLOCOS酸化膜(5)を形成する。続いて第2図Dの如く、チャンネルストッパー領域(6)を破線の如く形成するホウ素をイオン注入する。更に、第2図Eの如く、前記活性領域上のシリコン酸化膜(2)を除去し、再度ゲート酸化膜(7)を形成し、ゲート(8)とLOCOS酸化膜(5)をマスクとして、ソース領域(9)およびドレイン領域(10)を形成する。最後に第2図Gの如く、層間絶縁膜を介して電極を形成し、半導体装置を形成する。」(第2頁左下欄第8行〜右下欄第7行)が第2図A〜Gと共に記載されている。また、第2図Gにおけるソース領域(9)及びドレイン領域(10)を取り囲む領域は、第1図Fの記載から見て、ソース領域(9)及びドレイン領域(10)と同一導電型で、ソース領域(9)及びドレイン領域(10)の不純物濃度より低濃度の領域であることは明らかであり、チャンネルストッパー領域(6)はホウ素のイオン注入によって形成されるのであるから不純物濃度ピークを有しており、第2図Gには、チャンネルストッパー領域(6)が、半導体基板(1)内でLOCOS酸化膜(5)の下面近傍から素子形成領域内の所定の深さに延び、不純物濃度ピークを有しており、LOCOS酸化膜(5)の下面近傍で上記低濃度の領域に接していない構成が記載されている。 してみると、上記引用例には、主表面を有するP型の半導体基板(1)と、前記半導体基板(1)の主表面に形成された、素子形成領域を分離するLOCOS酸化膜(5)と、半導体基板(1)内でLOCOS酸化膜(5)の下面近傍から素子形成領域内の所定の深さに延び、不純物濃度ピークを有するチャンネルストッパー領域(6)と、前記ソース領域(9)及びドレイン領域(10)と前記チャンネルストッパー領域(6)との間に有り、LOCOS酸化膜(5)の下面近傍で前記チャンネルストッパー領域(6)と接しないように形成された、前記ソース領域(9)及びドレイン領域(10)と同一導電型で、前記ソース領域(9)及びドレイン領域(10)の不純物濃度より低濃度の領域を有する半導体装置が記載されているものと認められる。
(対比)
次に、本願発明と上記引用例記載の発明とを対比すると、上記引用例記載の発明の「P型の半導体基板」、「LOCOS酸化膜」、「チャンネルストッパー領域」、「ソース領域及びドレイン領域」及び「低濃度の領域」はそれぞれ本願発明の「第1導電型の半導体基板」、「分離絶縁膜」、「第1導電型の不純物濃度ピ-クを有する領域」、「第2導電型の第1不純物領域」及び「第2導電型の第2不純物領域」に相当するから、本願発明と上記引用例記載の発明とは「主表面を有する第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の主表面に素子形成領域を分離するように形成された分離絶縁膜と、前記半導体基板内で前記分離絶縁膜の下面近傍から前記素子形成領域内の所定の深さ位置に延びる第1導電型の不純物濃度ピークを有する領域と、前記分離絶縁膜に隣接する前記素子形成領域内で前記半導体基板の主表面に形成された第1の濃度を有する第2導電型の第1不純物領域と、前記第1不純物領域と前記第1導電型の不純物濃度ピークとの間でかつ前記分離絶縁膜の下面近傍に前記第1不純物領域に接するように形成された、前記第1の濃度よりも低い第2の濃度を有する第2導電型の第2不純物領域とを備えたことを特徴とする半導体装置」の点で一致し、第2不純物領域が、本願発明においては、分離絶縁膜の下面近傍において、第1導電型の不純物濃度ピークを有する領域に達しているのに対して、上記引用例記載の発明においては、分離絶縁膜の下面近傍において、第1導電型の不純物濃度ピークを有する領域に達していない点で両者は相違するものと認められる。
(検討)
そこで、上記相違点につき以下検討する。
上記引用例記載の発明においては、P型の半導体基板の濃度は低濃度であり、分離絶縁膜の下面近傍において、第2不純物領域と第1導電型の不純物濃度ピークを有する領域との間にはP型の半導体基板が存在するから、上記相違点は、上記引用例記載の発明が分離絶縁膜の下面近傍において、第1導電型の不純物ピークを有する領域と第2導電型の第1不純物領域との間に低濃度の第2導電型の第2不純物領域のみならず低濃度の第1導電型の第3不純物領域をも介在させたのに対して、本願発明が分離絶縁膜の下面近傍において、第1導電型の不純物ピークを有する領域と第2導電型の第1不純物領域との間から低濃度の第1導電型の第3不純物領域を排除し、介在させていない点であると言い換えることができる。そして、本願発明が分離絶縁膜の下面近傍において、第1導電型の不純物ピークを有する領域と第2導電型の第1不純物領域との間から低濃度の第1導電型の第3不純物領域を排除し、介在させないことに特段の意義も認められないから、上記引用例記載の発明においては分離絶縁膜の下面近傍において第1導電型の不純物ピークを有する領域と第2導電型の第1不純物領域との間から低濃度の第1導電型の第3不純物領域を排除し、介在させないことに格別の創意工夫を必要としない。
本願発明の効果について検討すると、本願発明の効果は、(a)急激な濃度勾配を無くすことによって拡散電流を低減し、ひいてはリーク電流を低減すること、(b)急激な濃度勾配を無くして電界強度を小さくすることにより、リーク電流を低減することである。効果(a)について検討すると、高濃度の相異なる導電型の不純物が接すると濃度勾配が急激になることは明らかであり、濃度勾配が急激になると拡散電流が大きくなることは周知である。拡散電流が大きくなればリーク電流も大きくなることは容易に予測できることであり、リーク電流を低減するためには濃度勾配を緩やかにすればよいことは以上のことから容易に導くことができる。そして上記引用例も高濃度の第1導電型の不純物ピークを有する領域とやはり高濃度の第2導電型の第1不純物領域との間に低濃度の第2導電型の第2不純物領域とやはり低濃度の第1導電型の第3不純物領域をも介在させたものであるから、上記の点から、本願発明と同様の効果(a)が得られることは明らかである。効果(b)について検討すると、耐圧が低下するとリーク電流が発生することは特開昭61-268055号公報に示すように周知であり、そして特開昭62-229880号公報、特開昭62-274767号公報、特開平3-222433号公報及び特開平3-283574号公報に示すように、高濃度の相異なる導電型の不純物が接すると耐圧が低下し、耐圧低下を防止するために高濃度の相異なる導電型の不純物の間に低濃度層を介在させることは周知であるから、両周知技術を考察すると、高濃度の相異なる導電型の不純物の間に低濃度層を介在させると耐圧が上昇し、ひいてはリーク電流が低減することは容易に理解できる。そして上記引用例記載の発明も高濃度の第1導電型の不純物ピークを有する領域とやはり高濃度の第2導電型の第1不純物領域との間に低濃度の第2導電型の第2不純物領域とやはり低濃度の第1導電型の第3不純物領域をも介在させたものであるから、上記の点から、本願発明と同様の効果(b)が得られることは明らかである。
なお、審判請求人は平成12年4月14日付の意見書において、(1)引用例の第2図Gにおいてチャンネルストッパ領域6とソース・ドレイン領域9、10との間から基板1のP型領域を排除することは明らかに引用例の目的に反する、(2)濃度勾配が急激になると拡散電流が大きくなることが周知であるとする根拠が示されていない、(3)引用例と本願とでその目的、効果が全く異なる旨主張する。上記の主張について反論する。(1)については、引用例から認定した発明は第1図等からなる引用例の発明ではなく、第2図からなる従来技術であるから、チャンネルストッパ領域6とソース・ドレイン領域9、10との間から基板1のP型領域を排除することが引用例の発明の目的に反するからといって引用例の第2図等に示す従来技術においてチャンネルストッパ領域6とソース・ドレイン領域9、10との間から基板1のP型領域を排除することができないとする理由はない。(2)については、キャリア密度の勾配が大きいと拡散電流が大きくなることは良く知られていることであり(「3 キャリアの拡散」電子デバイス入門 株式会社技術評論社昭和58年12月5日発行 第22〜24頁参照)、濃度勾配が大きいとキャリア密度勾配が大きくなることも良く知られていることであるから、濃度勾配が急激になると拡散電流が大きくなることが周知であるとした点になんら問題はない。(3)については、上述の本願発明の効果の項で述べたように引用例記載の発明も本願発明と同じ目的・効果を有することは明らかである。よって、上記審判請求人の主張は採用できない。
したがって、上記相違点は当業者が容易に想到し得るものである。
(むすび)
本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうである以上、他の発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-05-23 
結審通知日 2000-06-02 
審決日 2000-06-13 
出願番号 特願平4-206641
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 拓也  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 橋本 武
岡 和久
発明の名称 半導体装置およびその製造方法  
代理人 森田 俊雄  
代理人 伊藤 英彦  
代理人 吉田 博由  
代理人 深見 久郎  

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