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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1023118
審判番号 審判1998-20296  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-12-24 
確定日 2000-08-18 
事件の表示 平成 7年特許願第 26794号「半導体装置の製造方法および半導体製造装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 8月30日出願公開、特開平 8-222564]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,手続きの経緯と発明の要旨
本願は平成7年2月15日の出願であって、その発明の要旨は、平成12年4月10日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものであり、その中で、請求項4には次のとおりに記載されている。
「【請求項4】製膜装置と、
内部を減圧状態に保つことができる基板搬送装置と、該製膜装置に、ゲートバルブおよび該基板搬送装置を介して接続された埋め込み装置であって、
真空排気可能な気密容器と、
該気密容器内に収容され、回転半径方向にほぼ垂直に一枚の基板の基板面を支持する一つの半導体基板支持手段を壁面に備えた回転ドラムと、
該回転ドラムを回転駆動する駆動手段と、
該気密容器の内面の一部に設けられ、該半導体基板支持手段に支持された半導体基板を加熱することのできる半導体基板加熱手段とを有する埋め込み装置とを含む半導体製造装置。」
2,引用例
一方、当審における平成12年2月8日付け拒絶理由書において引用した特開平5-3257号公報(以下「第1引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0007】【作 用】本発明によれば、Si基板上の段差面上に形成した被膜に対して、粘性流動を生じる温度にまで加熱し、さらに遠心力によりSi基板に垂直下向きの重力を加えることによってリフローを生じさせるようにしたので、ステップカバレッジおよび平坦度を向上させることが可能である。
【0008】【実施例】以下に、本発明の実施例について、図面を参照して詳しく説明する。図1は本発明の実施に用いる遠心力付与装置の概要を示す平面図である。図に示すように、回転軸12を中心に回転自在とされる円盤状の回転体11の上に上端が開放された円筒状体13を設置するとともに、この円筒状体13の外壁に沿うようにしてヒータ14を埋め込む。そして、回転体11の上に円筒状体13の内壁に沿うように平坦性のよいプラテンを設置し、その上にウェーハ10を配列し、ヒータ14で一定温度に加熱して、図示しない駆動装置で回転体11を一定速度で回転することにより、ウェーハ10に所定の遠心力を加えることができる。
【0009】このように構成された遠心力付与装置を、ウェーハ10の製造工程に適用して処理する手順について、以下に説明する。まず、図2(a)に示すように、Si基板1の拡散層5に対して、第1層間絶縁膜6を介してコンタクトホール2を開口する。その後、図2(b)に示すように、高融点金属を含むバリヤメタル7およびAl合金薄膜8をスパッタリング法により成膜する。ここで、バリヤメタル7は、Al合金薄膜8中のAlと拡散層5中のSiの相互拡散を防止するための層である。しかし、この状態で得られたウェーハ10は、Al合金8がスパッタリング法で形成されているので、コンタクトホール2においては図示のごとく、従来例と同様にオーバーハングがひどく、ステップカバレッジが悪いものである。
【0010】そこで、ウェーハ10を本発明の遠心力付与装置の回転体11上に載置し、ヒータ14で400〜500℃の温度に加熱しながら回転体11を所定の速度で回転させ、遠心力によってウェーハ10には垂直でかつ下向きの重力を作用させる。この加熱温度を400〜500℃の範囲に保つのは、コンタクトホール2の段差部上に形成したAl合金薄膜8を粘性流動化させるためである。また、ウェーハ10に作用させる遠心力は102〜105G程度が望ましい。
【0011】これによってAl合金薄膜8はリフ口ーし、図2(c)に示すようなコンタクトホール2の部分を埋め込んだ形状になる。このようにして、オーバーハングがなくステップカバレッジの向上した段差部を有するウェーハが得られることになる。」
第1引用例の上記記載と図1〜3によれば、同引用例には、回転体の中に基板を加熱するヒータと、複数の基板を支持するプラテンを備えた円筒状体を有し、先ず、半導体基板の拡散領域上にコンタクトホールを有する層間絶縁層を形成し、コンタクトホールを覆ってスパッタリングにより配線材料(Al)を堆積した後、回転ドラム内に基板を移して、遠心力が基板に垂直に作用するように、即ち基板表面が回転中心を向いて回転半径と基板面の法線方向とが一致するように、複数枚の基板を回転体内の円筒状体壁面(プラテン)に保持し、回転体内のヒータにより400〜500℃に加熱して粘性流動化した上記配線材料を、回転体の遠心力によって各基板のコンタクトホール内に埋め込み、これによって平坦度の向上した配線構造が得られるようにした装置が記載されている。
同じく引用した特開平6-169018号公報(以下「第2引用例」という。)には、以下のような事項が記載されている。
「【0012】この成膜装置は、ガス導入管17Aと排気管18Aを有するスパッタチャンバー11と、ガス導入管17Bと排気管18Cとを有するリフローチャンバー13と、ゲートバルブ16と排気管18Bとを有しスパッタチャンバー11とリフローチャンバー13とを接続するチャンバー12とから主に構成されている。…
【0014】次に図2に示したスパッタチャンバー11の支持台15Aに基板をセットしたのち、Alターゲット14を用いるArスパッタ法にて図1(b)に示すように、厚さ0.5μmのAl膜5(又はAl合金膜)を形成する。
【0015】次に、真空から出す事なく基板1を搬送チャンバ12を介してリフローチャンバー13に搬送し加熱機構付支持台15Bにセットする。この時、Al膜5の表面が酸化され約0.5nmの厚さの自然酸化膜6が形成される。基板がリフローチャンバ13に送られたのち、まず、ガス導入管17BよりArガスを導入し、圧力を8mTorrとする。そして支持台15Bに13.56MHzの高周波をかけプラズマを発生させる。この時の基板バイアスを300Vとする。イオン化したArが基板表面に衝突する事により、図1(c)に示すように、Al膜5の表面の自然酸化膜6は約10秒間でスパッタされ除去される。
【0016】次に,高周波を切り、支持台15Bをヒータ等により加熱する。基板温度を450℃で90秒間保持する事によりAlがリフローし,図1(d)に示すように、コンタクト孔3にAlが理め込まれAl膜の表面が平坦化される。」
第2引用例の上記記載と図1〜2によれば、同引用例には、半導体基板のコンタクトホール上に減圧状態でAl配線層を堆積し、ゲートバルブを有する搬送チャンバーを介して減圧を保ったままで基板をリフローチャンバーへ搬送して、リフローチャンバーにてAlをリフローさせ平坦化するようにした装置が記載されている。
同じく引用した特開平2-35732号公報(以下「第3引用例」という。)には、以下のような事項が記載されている。
「(実施例)以下、本発明の一実施例について、図面に基づいて説明する。まず、本発明に用いられる一例の装置の構成外観上面図を第2図に、第3図には同装置の構成外観正面図を示す。同図において、チェンバー10は円筒形のステンレス製容器で作られており、脚19の上に設置されている。チェンバー10の上部端面の一部にふた11が備えられており、ここを通じて試料の交換が行なわれる。また、チェンバー10には排気系12とガス導入系13がつながれており、チェンバー内は各種のガス雰囲気を保つことができる。チェンバー10の中心の中心軸14からは十字にアーム15が4本延び、アーム15の先には基板搬器16が取り付けられている。中心軸14はチェンバー10の下に位置するダイレクトドライブモーター17に接続され、基板搬器16を任意速度で回転させることができる。系の加熱機構としてチェンバー10の回りにはヒーター18が取り囲んであり、チェンバー10内を450℃まで一様に加熱できる。」(第2頁右上欄第13行〜左下欄第14行)
第3引用例の上記記載と第1〜5図によれば、同引用例には、半導体基板のコンタクトホール上にAlを堆積させ、それらの基板をカセット(基板搬器)ごとステンレス製の排気系を備えた気密容器(チェンバー)内に設けた回転装置に移して保持し、減圧状態で加熱して回転装置を回転させ、遠心力によってAlをコンタクトホール内に埋め込むようにした装置が記載されている。気密容器(チェンバー)内には、チェンバー10内を450℃まで一様に加熱できる加熱装置(ヒーター)が回転装置の外側に設けられている。
3,対比
本願の請求項4に係る発明と第1引用例記載の発明とを対比すると、両者は、「製膜装置と、容器と、回転半径方向にほぼ垂直に基板の基板面を支持する半導体基板支持手段を壁面に備えた回転ドラムと、該回転ドラムを回転駆動する駆動手段と、該半導体基板支持手段に支持された半導体基板を加熱することのできる半導体基板加熱手段とを有する埋込装置とを含む半導体製造装置。」という点で一致しており、以下の各点で相違する。
A,本願の請求項4に係る発明が、内部を減圧状態に保つことができる基板搬送装置を備え、ゲートバルブを介して基板を埋め込み装置に接続するものであるのに対して、第1引用例の発明においては、内部を減圧状態に保つ基板搬送装置やゲートバルブは示されていない(相違点A)、
B,本願の請求項4に係る発明においては、真空排気可能な回転ドラムを収容する気密容器を有するのに対して、第1引用例の発明においては、回転ドラムを収容する真空排気可能な気密容器は示されていない(相違点B)、
C、本願の請求項4に係る発明が、一枚の基板を支持する一つの半導体基板支持手段を壁面に備えた回転ドラムの壁面に支持するものであるのに対して、第1引用例の発明においては、複数枚の基板を支持する複数の半導体基板支持手段を壁面に備えた回転ドラム(回転体内の円筒状体)に支持している(相違点C)、
D、本願の請求項4に係る発明においては、半導体基板加熱手段が気密容器の内面の一部に設けられるものであるのに対し、第1引用例の発明においては、半導体基板加熱手段(ヒータ)は回転体の中に設けられる(相違点D)。
よって、上記各相違点について、以下検討する。
A,相違点Aについて
上記第2引用例には、半導体基板のコンタクトホール上に減圧状態でAl配線層を堆積し、ゲートバルブを有する搬送チャンバーを介して減圧を保ったままで基板をリフローチャンバーへ搬送して、Alを平坦化するようにした装置が記載されている。したがって、第1引用例の発明において、ゲートバルブを備えた基板搬送装置を介して内部を減圧状態に保った状態で埋め込み装置に接続する手段を加えるようにすることは、当業者が格別の困難性を要することなく容易に想到し得たことと認められる。
B,相違点Bについて
上記第3引用例には、半導体基板のコンタクトホール上にAlを堆積させ、それらの基板をステンレス製の気密容器に収められた回転装置に移して保持し、減圧状態で加熱して回転装置を回転させ、Alを遠心力によってコンタクトホール内に埋め込むようにした方法及び装置が記載されている。したがって、第1引用例の発明において、回転ドラムを収容する容器を、真空排気可能な気密容器とすることは当業者が容易に想到し得たことと認められる。
C,相違点Cについて
回転ドラムへ支持する基板の数を、複数枚から1枚に変更することは、そのことによって特に装置の構成上の工夫などの必要性が生じる訳ではなく、単に当業者の任意の選択的事項であるに過ぎない。すなわち、支持する基板の数を、複数枚から1枚(或いは2枚でも同様であるが)に変更することによって、請求人が主張するような、「コンタクトホールに埋め込むAlなどの配線材料の酸化を押さえることができる」という効果、或いは回転ドラムの大きさを小さくできる、というような効果を生じたとしても、それは、回転ドラムへの基板の支持数を減らすことによって生じる当然の効果であって、支持される基板の数は少ないほど配線材料の酸化の影響や回転ドラムの大きさを小さくできるが、反面、処理に必要な基板の数だけ埋め込みの工程数を増やさなければならないから、基板支持数の減少と埋め込み工程数の減少とは見合いの関係にある。
したがって、第1引用例において回転ドラムへ複数枚の基板を支持することに代えて、1枚の基板を支持するようにすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
D、相違点Dについて
第3引用例には、遠心力によってAlをコンタクトホール内に埋め込むために、気密容器(チェンバー)内を一様に加熱できる加熱装置(ヒーター)が気密容器内の回転装置の外側に設けられているから、第1引用例の発明において、半導体基板加熱手段を回転体の中に設けることに代えて、半導体基板加熱手段を気密容器の内面の一部(回転体の外側)に設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
4,むすび
以上のとおりであるから、本願請求項4に係る発明は第1引用例〜第3引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうである以上、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-05-18 
結審通知日 2000-05-30 
審決日 2000-06-13 
出願番号 特願平7-26794
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 健次瀧内 健夫早川 朋一  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 石川 正幸
左村 義弘
発明の名称 半導体装置の製造方法および半導体製造装置  
代理人 高橋 敬四郎  

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