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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47B
管理番号 1023245
審判番号 審判1999-2730  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-24 
確定日 2000-09-13 
事件の表示 平成 8年特許願第240915号「耐震縦型収納庫」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 2月24日出願公開、特開平10- 52330]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年8月9日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成10年4月30日付けの手続補正書、及び平成11年2月24日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「床面から天井にわたって天井との間に所定の隙間を残して立設され、かつ該床面に締付・固定された収納庫本体と、該収納庫本体を建物の壁面に直に固定するため上記収納庫本体の天面と前記天井との間の前記隙間に嵌入する笠木と、前記収納庫本体内に摺動・出没自在にスライドレールを介して縦方向に並設された複数の内引き出しと、前記収納庫本体の下部に配設された摺動・出没自在な外引き出しと、からなり、かつ、前記内引き出しの底板の張り出し部分に喰い込む落下防止金具を前記スライドレールの摺動面に設けてなる耐震縦型収納庫。」

2.引用刊行物記載の発明
(1)引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開平2-305504号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、
(イ)「家具本体の天板上面と底板下面、又は天板上面と底板下面及び少なくとも一方の側板外側に、進退可能な張出し部材を設けてなる据置式収納家具。」(特許請求の範囲)、
(ロ)「張出し部材を前進させ、床面、天井、室壁、隣接する家具の側面等に当接させることにより、家具本体をこれら床面、天井、室壁、隣接する家具の側面等の間にわたって係止する。」(第2頁左上欄第6〜10行)
(ハ)「張出し部材によって床面、天井、室壁、隣接する家具の側面等の間にわたって家具本体を係止して、地震等の際にも倒れる虞れのない、安定的な据置が可能な据置式収納家具を提供し得る。」(第3頁左下欄第6〜9行)
との記載があり、上記(イ)〜(ハ)の記載、及び第1〜5図の記載からみて、次の発明が記載されているものと認められる。
「家具本体の天板上面と底板下面に、進退可能な張出し部材を設け、張出し部材を前進させ、床面、天井に当接させることにより、家具本体をこれら床面、天井の間にわたって係止して、地震等の際にも倒れる虞れのない、安定的な据置が可能とした縦型の据置式収納家具。」
(2)引用刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された実願昭62-852号(実開昭63-108344号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物2」という。)には、
(イ)「この考案は大地震時における転倒防止の配慮を加えた家具及び備品に関するものである。」(明細書第1頁第8〜9行)
(ロ)「扉を開け、引出をはずしたりして、家具などの内側から小孔(3)にワッシャー(5)をはめこみ、ねじり釘(6)を通して、建物の壁(7)に緊結する。」(同第2頁第14〜16行)
との記載があり、上記(イ)〜(ロ)の記載、及び第1〜4図の記載からみて、次の発明が記載されているものと認められる。
「家具をねじり釘を用いて建物の壁に緊結することにより、大地震時における転倒を防止した家具。」
(3)引用刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された実願昭63-109112号(実開平2-31520号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物3」という。)には、
「第1図における(1)は高所収納庫で、その上段の筺体(2)における両開き扉(3)(3)の後方には、複数段の引出し(4)が収容されている。」(明細書第4頁第5〜7行)
との記載があり、上記の記載及び第1図の記載からみて、次の発明が記載されているものと認められる。
「収納庫本体内に縦方向に並設された複数の内引出しを有する収納庫。」
(4)引用刊行物4
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された実願平5-12722号(実開平5-91449号)のCD-ROM(以下、「引用刊行物4」という。)には、
「【実施例】
図面の各図においてケース側壁は符号1で示される。引き出し側壁は符号2を、引き出し底部は符号3をそして引き出しの前蓋は符号7を有する。引き出し底部3の下方には抜き出し案内セツト22が配置される。該抜き出し案内セツト22は引き出しの各側でケース側壁1に固定された支持レール5およびそこに引き出しが取り付けられるる抜き出しレール6からなる。該抜き出しレール6と支持レール5との間には、そこに走行ローラが取り付けられる図示してない走行車両が配置される。抜き出し案内セツト22は引き出し底部3の下方に引き出し側壁2とすぐ並んで存在する。抜き出しレール6はその後方端に引き出しの後壁4の孔24に突出するフツク8を有する。前蓋7の近くで前方に引き出しが本発明による板ばね20によつてそれぞれの抜き出しレール6上に停止される。
前方端において各抜き出しレール6はストツパ23を画成する凹所24を有する。ストツパ23の前方には抜き出しレール6の垂直バーからなるストツパ21が屈曲されかつストツパ23を超えて横方向に突出する。
引き出し側壁2はその下側に2つの孔25を備えている。該孔25は引き出し側壁の内方側面2’のすぐ傍にありかつ横方向の穿孔26を有する。
各引き出し側壁2には板ばね22が横たわる。該板ばね22は筒状に曲げられる横方向突起27を有し、そのさい前方突起27は板ばね20から打ち出される。突起27の直径は孔25に対応しそして突起27はそれゆえ引き出し側壁2の下方に差し込み可能でありかつ引き出し側壁2は屈曲された突起27の弾性により保持される。
家具の取り付けに際して引き出し案内セツト22は支持レール5によりケース側壁1に固定される。抜き出しレール6は支持レール5上でその後方位置に好都合に存在する。引き出しの固定のために支持レール5は抜き出しレール6上に載せられかつフツク8が引き出しの後端4の孔24打ちに突出するまで後方に動かされる。引き出しが後方でフツク8に衝突すると、板ばね20は抜き出しレール6と横方向に並んでおりかつストツパ21,23の一方において係合する。それにより引き出しは抜き出しレール6に関連して抜き出し方向に停止されかつフツク8とのその固定から外に出されることができない。
引き出しが家具ケースから引き出されると、引き出しは抜き出しレール6とともに支持レール5上で動く。
引き出しを解放するためには、板ばね20の前方端が凹所24の範囲において抜き出しレール6との固定から外れて案内されることができるので、引き出しを持ち上げれば十分である。」(明細書段落【0012】〜【0018】)、
との記載があり、上記の記載、及び図1〜7の記載からみて、次の発明が記載されているものと認められる。
「ケース側壁1に固定された支持レール5およびそこに引き出しが取り付けられる抜き出しレール6とからなる引き出し案内セット22を有し、抜き出しレール6はその後方端に引き出しの後壁4の孔24に突出するフツク8と、引き出し側壁に設けられた板ばね20と係合するストツパ21,23とを有し、フック8を孔24に係合させるとともに板ばね20をストッパ21,23に係合させることにより引き出しを抜き出しレールに固定した引き出し。」

3.対比・判断
引用刊行物1に記載された発明は、「地震等の際にも倒れる虞れのない、安定的な据置が可能な据置式収納家具」であるから、「耐震収納家具」であるものと認められ、又「張出し部材を前進させ、床面、天井に当接させる」ものであるから、家具本体は床面から天井にわたって天井との間に所定の隙間を残して立設された後に、張出し部材を前進させて床面、天井に当接させるものと認められる。
そこで、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用刊行物1に記載された発明とを対比すると、引用刊行物1に記載された発明の「家具本体」、「天板上面」及び「収納家具」は、それぞれ本願発明の「収納庫本体」、「天面」及び「収納庫」に相当するから、両者は、床面から天井にわたって天井との間に所定の隙間を残して立設された収納庫本体と、該収納庫本体を建物に固定するため上記収納庫本体の天面と前記天井との間の前記隙間を埋める部材を設けてなる耐震縦型収納庫である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
本願発明が、「床面に締付・固定された収納庫本体」であるのに対して、引用刊行物1に記載された発明は、家具本体(収納庫本体)が張出し部材により天井と床面との間にわたって係止されている点。
〈相違点2〉
収納庫本体の天面と天井との間の隙間を埋める部材について、本願発明が、「収納庫本体を建物の壁面に直に固定するため収納庫本体の天面と天井との間の隙間に嵌入する笠木」を有するのに対して、引用刊行物1に記載された発明は、家具本体(収納庫本体)を天井と床面との間にわたって係止させる張出し部材を有している点。
〈相違点3〉
本願発明が、「収納庫本体内に摺動・出没自在にスライドレールを介して縦方向に並設された複数の内引き出しと、前記収納庫本体の下部に配設された摺動・出没自在な外引き出しと、からなり、かつ、前記内引き出しの底板の張り出し部分に喰い込む落下防止金具を前記スライドレールの摺動面に設けて」なるのに対して、引用刊行物1に記載された発明は、そのような構成が不明である点。
上記相違点について検討する。
相違点1について、「家具をねじり釘を用いて建物の壁に緊結することにより、大地震時における転倒を防止した家具」は、引用刊行物2に記載されており、しかも引用刊行物1に記載の発明と引用刊行物2に記載の発明は家具類という共通の技術分野に関するものであるとともに、地震時の転倒を防止するという共通の課題を解決しようとするものであるから、引用刊行物1に記載の発明に上記引用刊行物2に記載の技術を適用して、家具本体(収納庫本体)を建物に固定することは、当業者が容易に想到し得ることである。又、その場合に家具本体(収納庫本体)を壁ではなく床面に固定することは、当業者が必要に応じて適宜に変更し得る程度の事項であり、特に床面に固定することが技術的に困難であるともいえない。ところで、本願発明の「床面に締付・固定された」は、「床面に締付かつ固定された」と解釈でき、本願の明細書及び図面からみてその具体的構成を考えた場合、(イ)「『ビス』により締付かつ固定された」、(ロ)「『笠木』により締付され、『ビス』で固定された」、若しくは(ハ)「『笠木』により締付かつ固定された」と三通りの解釈をすることができる。上記(イ)のように解釈した場合について検討すると、ねじり釘を用いて緊結することは、ビスにより締付かつ固定されたことと同様の作用効果を奏するものであるから、「締付」については、引用刊行物2に開示されているものと認められる。上記(ロ)のように解釈した場合について検討すると、張出し部材は家具本体を床面と天井の間にわたって係止するもので、笠木とほぼ同様の機能を有するものであるから、「締付」については、引用刊行物1に開示されているものと認められる。上記(ロ)のように解釈した場合について検討すると、張出し部材は家具本体を床面と天井の間にわたって係止するもので、笠木とほぼ同様の機能を有するものであるから、「締付かつ固定」については、引用刊行物1に開示されているものと認められる。これらより、引用刊行物1に記載の発明に引用刊行物2に記載の技術を適用して、本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
相違点2について、家具などを建物の壁面に直に固定するため家具本体の天面と天井との間の隙間に嵌入する笠木は、当該技術分野において従来から周知の技術手段(例えば、拒絶査定で例示した実願平2-33849号(実開平3-125435号)のマイクロフィルム、実願平1-80973号(実開平3-21235号)のマイクロフィルムを参照。)であり、引用刊行物1に記載の発明の張出し部材は家具本体を床面と天井の間にわたって係止するもので、笠木とほぼ同様の機能を有するものであるから、引用刊行物1に記載の発明の張出し部材に代えて上記周知の技術手段を適用して、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
相違点3について、収納庫本体内に縦方向に並設された複数の内引出しを有する収納庫は、上記引用刊行物3に記載されており、同発明は、その第1図からみて、下部は外引き出しと推定され、そもそも内引き出しと外引き出しを組み合わせた家具は、当該技術分野において従来から周知の技術手段であるから、引用刊行物1に記載の発明に引用刊行物3に記載の技術及び上記周知の技術手段を適用して、内引き出しと外引き出しとからなるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。又、引き出しにおいて、「ケース側壁1に固定された支持レール5およびそこに引き出しが取り付けられる抜き出しレール6とからなる引き出し案内セット22(本願発明の「スライドレール」に相当する。)を有し、抜き出しレール6はその後方端に引き出しの後壁4の孔24に突出するフツク8(同「落下防止金具」に相当する。)と、引き出し側壁に設けられた板ばね20と係合するストツパ21,23とを有し、フック8を孔24に係合させるとともに板ばね20をストッパ21,23に係合させることにより引き出しを抜き出しレールに固定した引き出し」は、上記引用刊行物4に記載されており、内引き出しに上記引用刊行物4に記載の引き出しに関する技術を適用することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その場合に、フック(落下防止金具)を引き出しの後壁の孔に代えて引き出しの底板の張り出し部分に喰い込ませて係合させることは、当業者が必要に応じて適宜に変更し得る程度の事項であり、特に底板に係合させることが技術的に困難であるともいえない。これらより、引用刊行物1に記載の発明に引用刊行物3及び4に記載の技術並びに上記周知の技術手段を適用して、本願発明の上記相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、全体として、本願発明の効果は、引用刊行物1〜4に記載された発明及び上記の各周知の技術手段から当業者が当然に予想し得る程度のものである。
又、引用刊行物1〜4に記載された発明及び上記の各周知の技術手段を相互に適用し、組み合わせることに、特に阻害する要因もない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物1〜4に記載された発明及び上記の各周知の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-06-30 
結審通知日 2000-07-14 
審決日 2000-07-25 
出願番号 特願平8-240915
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 向後 晋一田村 嘉章平城 俊雅  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 宮崎 恭
小野 忠悦
発明の名称 耐震縦型収納庫  
代理人 大川 晃  

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