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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01C
管理番号 1023350
審判番号 審判1999-2979  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-02-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-25 
確定日 2000-10-04 
事件の表示 昭和63年特許願第202142号「セラミック基板の製造方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成2年2月21日出願公開、特開平2-51292、平成7年5月24日出願公告、特公平7- 48409、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
1.手続きの経緯・本願発明
本願は、昭和63年8月12日の特許出願であって、その請求項1に係る発明は、出願公告された明細書及び図面、及び出願公告後の平成12年8月22日付けの手続補正書により補正された明細書からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)
「1.粉体と溶剤及びバインダーを混合し、キャリアテープ上にグリーンシートを形成し、これを焼成してセラミック基板を得るセラミック基板の製造方法において、グリーンシートを形成し、縦横に各々複数本の刃が一体に形成された金型を設け、上記縦横の刃の交差部分の角部が、上記刃の先端部分から金型側である基端部分にかけて凹面状の曲面であって上記溝の幅よりも大きい曲率半径の曲面に形成され、上記グリーンシートに上記金型の刃を押し付けて、縦横の溝を同時に上記グリーンシート表面に形成するとともに、上記金型の刃の交差部分の凹面状の曲面により上記グリーンシートには、縦横の上記溝の交差部の角部が凸状の曲面に形成され、この後グリーンシートを焼成し、上記溝に沿って分割することを特徴とするセラミック基板の製造方法。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由である特許異議の決定の理由に引用された実願昭56-69738号(実開昭57-181060号公報)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。
(i)「電子部品に使用される種々なセラミック基板や其の他多くの機能部品としてのセラミック基板の製造に当たっては、1枚のセラミック生シートに多数の同一印刷や孔加工を施し、それに分割用溝を形成して焼結後多数個に分割して量産する方法が採用されている。」(公報第2頁第6-11行目を参照。)
(ii)「本考案は以上のような欠点を除去するために成された分割用溝入りセラミック基板であり、本考案の第3図および第4図の斜視図により、その要旨を説明する。
基板21の表裏両面の同一線上に分割用溝の縦溝23、24および横溝25、26を設置したもの、および基板31の表裏両面に分割用溝の縦溝33、34および横溝35、36の交点に面取り用貫通孔38が設置されたことを特徴とするものである。
・・・(中略)・・・
また、分割用溝の交点に設けた面取り用貫通孔38は分割単体32に対して円弧または角辺であることが設置の容易さやカケ防止の点より良好である。」(公報第3頁第10行-第4頁第15行目を参照。)
(iii)「以下、本考案の分割用溝入りセラミック基板の実施例により説明する。
第3図は基板の表裏両面の同一線上に分割用溝を設けた斜視図であり、60×50×1.2tmmのセラミック基板21に9ケ取り分割用溝入りで焼結したものであり、分割用上面縦溝23および横溝25となる突出刃をセラミック生シートの打抜金型である上型に刃角度10、20、30、40、50度をそれぞれ突出長さ0.3mmとして構設し、また分割用下面の縦溝24および横溝26となる突出刃を下型に刃角度10、20、30、40、50度のそれぞれにて突出長さ0.1mmを構設して、分割用単体22の製品孔27と同時に打抜き加工し得られたものであり、刃角度による不都合の差は余りなかった。然し50度以上になると分離やカケ等が発生しやすくなる。
第4図は別の実施例で、・・・(中略)・・・これはセラミック生シートの打抜金型である上型に上面縦溝33および横溝35となる突出刃とその交点の面取り貫通孔38となる突出柱を構設する。」(公報第4頁第20行目-第6頁第3行目を参照。)
上記記載事項(ii)において、面取り用貫通孔が分割単体に対して円弧であること、上記記載事項(iii)において、上下の型に設けられる突出刃は縦横に形成されているものと認められることを考慮すると、上記突出刃はその交差部分の側面は曲面状に形成されているものである。
そうすると、上記引用例には、上記記載事項及び図面の記載を勘案して、結局、次の発明が記載されている。
セラミック生シートを焼成してセラミック基板を得るセラミック基板の製造方法において、セラミック生シートを形成し、縦横に各々複数本の突出刃が一体に設けられているとともに、上記突出刃の交差部分の側面が円弧状の曲面に形成された上記打抜金型の刃を、上記セラミック生シートに押し付けて、縦横の溝を同時に上記セラミック生シート表面に形成し、この後セラミック生シートを焼成するセラミック基板の製造方法。

3.対比・判断
本願発明と上記引用例に記載された発明とを対比する。上記引用例に記載された発明における「セラミック生シート」は、本願発明における「グリーンシート」に相当するから、両者は、グリーンシートを焼成してセラミック基板を得るセラミック基板の製造方法において、グリーンシートを形成し、縦横に各々複数本の突出刃が一体に設けられているとともに、上記突出刃の交差部分の側面が円弧状の曲面に形成された上記打抜金型の刃を上記グリーンシートに押し付けて、縦横の溝を同時に上記グリーンシート表面に形成し、この後グリーンシートを焼成するセラミック基板の製造方法である点では共通するものの、(a)金型の刃の交差部分の側面の形状に関し、本願発明においては、「縦横の刃の交差部分の角部が、上記刃の先端部分から金型側である基端部分にかけて凹面状の曲面であって上記溝の幅よりも大きい曲率半径の曲面に形成され」ているのに対し、上記引用例に記載された発明においては、円弧状の曲面であるが曲率半径について限定されておらず、(b)グリーンシートに形成される溝の交差部の形状に関し、本願発明においては、「縦横の上記溝の交差部の角部が凸状の曲面に形成され」るものであるのに対し、上記引用例に記載された発明においては、溝の交差部の角部の面を凸状の曲面に形成することについて何ら示されていない点で相違する。そして、本願発明は、多数個取りの分割用の溝の交差部の四方の角部を溝の幅より大きい曲率半径の曲面に形成したことにより、後で個々にチップ部品の毎の絶縁基板に分割する際にも、絶縁基板の周縁部にバリやヒビ割れがほとんど発生せず、端面の研磨工程を不要にし、チップ部品製造の歩留りも向上させることができ、また、金型によりグリーンシートに一度に縦横の溝を形成するので、金型によるプレスの際に溝の交差部に盛り上り部を生ずることがなく、後の工程で個々のチップ部品の絶縁基板に分割する際にバリが発生することがないという明細書に記載の上記引用例に記載された発明からは当業者が予測することができない格別の効果を奏するものである。
したがって、上記相違点に係る本願発明の構成を当業者が容易に想到できたものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用例に記載された発明であるとすることはできず、また、上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2000-08-31 
出願番号 特願昭63-202142
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01C)
P 1 8・ 113- WY (H01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀧 廣往朽名 一夫仲間 晃須原 宏光  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 新川 圭二
治田 義孝
発明の名称 セラミック基板の製造方法  
代理人 廣澤 勲  

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