• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  F02B
管理番号 1023803
異議申立番号 異議1999-71039  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-05-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-18 
確定日 2000-03-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2800042号「エンジン」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2800042号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2800042号に係る出願は、平成1年9月29日に特許出願されたものであって、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、同10年7月10日に設定登録された。その後、その特許請求の範囲の請求項1に係る特許について特許異議の申立て、及び取消理由の通知がなされ、取消理由通知の指定期間内である同11年9月27日に願書に添付した明細書について訂正請求がなされたものである。

II.訂正の要旨
上記訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めたものであるが、その要旨は次の(1)、(2)のとおりである。
(1)、特許請求の範囲の請求項1の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として訂正しようとするものであり、特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】 クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドライブシャフトとの間に位置する部位にカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部に湿式多板型クラッチを構成したエンジンにおいて、
前記カウンタシャフトを前記クランクシャフトおよび前記ドライブシャフトよりも上方に配置するとともに、前記クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をクランクケースと一体に形成してシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置し、前記湿式多板型クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔したことを特徴とするエンジン。」
と訂正する。
(2)、特許明細書第2頁第10〜11行中(【課題を解決するための手段】の項)の「前記クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置している。」の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「前記クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をクランクケースと一体に形成してシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置し、前記湿式多板型クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔したことにある。」と訂正する。

III.訂正の適否についての判断
(あ)、訂正の目的、新規事項及び拡張・変更の存否
(1)、上記(1)の訂正について
上記(1)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、(a)「収容部をクランクケースと一体に形成し」、(b)「前記湿式多板型クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔し」の構成要件の附加することによって構成を限定するものであり、特許請求の範囲の請求項1を減縮するものと認められる。
そして、この(1)の訂正に関連する記載として、(ア)特許明細書の第2頁第23〜24行中には、「収容部2は、上記クランクケース1の右側部分1aと一体に形成され、」、(イ)同第3頁第6〜7行中に「上記クラッチ5は、上記収容部2の最上方に配置されており、該収容部2内に貯留された潤滑油Oから離隔されている。」があるので、上記(1)の訂正は、上記(a)、(b)の構成要件の附加することによって構成を限定する訂正をしたものといえるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)、上記(2)の訂正について
上記(2)の訂正は、上記(1)の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と整合させるために発明の詳細な説明を訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明に相当する。そして、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内であり、又、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(い)、独立特許要件について
(1)、上記平成11年9月27日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「訂正請求項に係る発明」という。)は、同訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められる。
(2-1)、これに対して、当審で通知した取消理由で引用した刊行物1(実願昭62-195902号(実開平1-100955号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム、甲1号証)には、以下の事項が記載されている。
第5頁第6〜14行中に「エンジンのクランク軸1端のプライマリドライブギア2がカウンタ軸3上のプライマリドリブンギア4と噛合い、このプライマリドリブンギア4とカウンタ軸3との間には開閉クラッチ5が介装される。
カウンタ軸3にはミッションギア機構のドライブギア列6が軸装され、ドライブ軸7のドリブンギア列と噛合い、そのギアシフトされた減速比によりドライブ軸7が駆動される。」、
第6頁第14行〜第7頁第5行中に「カウンタ軸尾端3aはミッションカバー14から突出し前記プライマリドリブンギア4および開閉クラッチ5が軸合される。ドライブ軸先端7aは側壁12から突出して前記ドライブスプロケットホイール9が固定される。
ミッションケース11の開放端面13はミッションカバー14との合わせ面になっている。その合わせ面の外周からクラッチケース16が広拡して延設され、クラッチカバー17を被せてクラッチ室16aが形成される。クラッチ室16aには上記開閉クラッチ5などと共に、プライマリドライブギア2およびキック軸18が収容される。」、
第8頁第10〜13行中に「吐出口33はミッションカバー14に設けたオイル通路34に接続され、カウンタ軸3,ドライブ軸7の油孔35,36などに導かれる。」
第2図には、ミッションケース11の合わせ面から広拡して延設されたクラッチカバー16が図示されているが、このクラッチカバー16は開閉クラッチ5を収容するほどには延びておらず、クラッチカバー17によって開閉クラッチ5を収容していることが図示されている。第1図には、このクラッチケース16がシリンダブロックの取付面とみられる線から上方に突出しており、カウンタ軸3と同心状にプライマリドリブンギア4が設けられていることが図示されている。そして第2図に、クラッチ5の外径は、プライマリドリブンギア4の外径より少し大きいことが図示されている。
そして、上記記載、及び第1〜4図の記載を併せて見ると、刊行物1には、「クランクケース10とミッションケース11との内部におけるクランク軸1とドライブ軸7との間に位置する部位にカウンタ軸3を備え、かつ該カウンタ軸3の端部に多板型開閉クラッチ5を構成したエンジンにおいて、前記多板型開閉クラッチ5を収容するクラッチカバー17部を配置し、カウンタ軸3内の油孔35は、多板型開閉クラッチ5が介装されているカウンタ軸尾端3aまで穿設され、オイルポンプから供給される油はカウンタ軸3内の油孔35を通って供給されるようにしたエンジン。」が記載されているものと認められる。
(2-2)、当審で通知した取消理由で引用した刊行物2(特開昭61-215411号公報、甲2号証)には、以下の事項が記載されている。
第1頁左下欄第18行〜同頁右下欄第12行中に「自動二輪車の内燃機関としてミッション収納ケースとクランクシャフト収納ケースとが一体のものが実用に供され、第6図はこれを示し、エンジン51のシリンダブロック52の下に配設されるケース53は前部をクランクシャフト収納ケース54とし、後部をミッション収納ケース55として各ケースを共用し、各ケースの下部にオイルパン56が実質上ケース底部を共用して相連通する如く形成されている。オイルパン56上にはオイル57を収納し、オイル57の液面レベルLはミッションケースを潤滑するに必要なレベルとし、オイル57は各機構を潤滑するに必要な量収納する必要があり、またフリクション低減のためクランクシャフト等はオイルに浸らないようにする必要がある。」、
第2頁左下欄第6〜16行中に「図において1はエンジンで、シリンダブロック2の下にケース3が配設され、ケース3は左右の半体4,5,これの外側を覆う左右のカバー6,7で構成されている。
以上のケース3のシリンダブロック2直下の前部をクランクシャフト収納ケース8とし、これの後部の部分をミッション収納ケース9とする。クランクシャフト収納ケース8内にはクランクシャフト10を横架軸支し、ミッション収納ケース9にはミッション機構11を収納する。」、
第3頁左上欄第11〜19行中に「ところでオイルポンプ機構は任意に設けるが、第3図はこれの一例を示し、キックスタータスピンドル14に設けたスタータギヤ15をミッション機構11の出力軸11aの軸端に設けたアイドルギヤ16に噛合せしめ、平行して配設するカウンタシャフト11bのギヤ17に該ギヤ16を相噛合せしめ、クラッチアウタ18肩に設けたギヤ19をクランクシャフト10に設けたスタータギヤ21に噛合せしめる。」
そして、上記記載、及び第6図の記載を併せて見ると、刊行物2の第6図の従来例には、「ケース53の内部に複数のシャフトを備えたエンジンにおいて、前記複数のシャフトのうち、シリンダブロック52の延長下方に配置したシャフトの左隣のシャフトを他のシャフトよりも上方に配置するとともに、該上方に配置したシャフトと同心円状に記載された直径の異なる2つの円形部材のうち直径の大きい方の円形部材を最上方に配置して、該ミッション収納ケース55内に貯留された潤滑油から離隔したエンジン。」が記載されているものと認められる。
(2-3)、また、刊行物2の上記記載、及び第1〜5図の記載を併せて見ると、刊行物2の第1〜5図の実施例には、「第6図の従来例のケース53を改良することにより、ミッション収納ケース9のオイルレベルLを高くし、クランクシャフト収納ケース8のオイルレベルLを低くしたものであり、ケース3の内部におけるクランクシャフト10と出力軸11aとの間に位置する部位にカウンタシャフト11bを備え、かつ該カウンタシャフト11bの端部にクラッチを構成したエンジン。」が記載されているものと認められる。
(2-4)、当審で通知した取消理由で引用した刊行物3(特公昭63-14165号公報、甲3号証)には、以下の事項が記載されている。
第2頁第3欄第11〜16行中に「第1図に示すように、横置クランク軸11と、クランク軸11の後方に配置した変速機12と、変速機12の入力軸12aの端部に配置されクランク軸11と変速機12とを図示しない中間軸を介して連結するクラッチ13等がクランクケース20内に収容されている。」、
第2頁第3欄第21〜40行中に「このクランクケース20はクランク軸11,変速機12等を収容する主ケース部20aと、クラッチ13を収容する副ケース部20bとからなり、これら主ケース部20aと副ケース部20bとはそれぞれ別体に構成されている。主ケース部20aは、上下2つに分割されていて、上方主ケース部21には、各シリンダ41,42用の取付部たるシリンダ接合面22a、22bが前後に設けられている。一方、副ケース20bは、後部シリンダ接合面22bよりも下方に位置する取付面を介して主ケース部20aの一側面に着脱自在に取付けられてクラッチ13の内側を覆う副ケース本体23と、副ケース本体23の開口端に着脱可能に取付けられてクラッチ13の外側を覆う副ケースカバー24とにより形成されており、副ケース本体23の開口端たる副ケースカバー接合面23aは、主ケース部20aの後部シリンダ接合面22bに近接しかつその一部が後部シリンダ接合面22bより上方に張り出している。」
そして、上記記載、及び図面の記載を併せて見ると、刊行物3には、「クランクケース20の内部におけるクランク軸11と変速機12の入力軸12aと中間軸を備え、かつ該入力軸12aの端部に多板型クラッチ13を構成したエンジンにおいて、多板型クラッチ13を収容する副ケース部20bを後傾シリンダ42の接合面22bから突出する態様で配置したエンジン。」が記載されているものと認められる。
(3)、対比・判断
(3-1)、訂正請求項に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1の第2図の図示、及び前記「カウンタ軸3内の油孔35は、多板型開閉クラッチ5が介装されたカウンタ軸尾端3aまで穿設され、オイルポンプから供給される油はカウンタ軸3内の油孔35を通って供給されようにした」構成が記載されていることからみて、開閉クラッチ5は、湿式多板型クラッチであると認められる。
次に、第1,2図に図示されたクラッチケース16及びクラッチカバー17について見てみると、第2図には、ミッションケース11の合わせ面から広拡して延設されたクラッチカバー16が図示されているが、このクラッチケース16は開閉クラッチ5を収容するほどには延びていないので、部材16の名称はクラッチケースであるが、クラッチ5を収容していると見ることはできない。第2図では、クラッチカバー17によって開閉クラッチ5を収容していることが図示されているが、第1図には、クラッチ5を収容するクラッチカバー17の形状が図示されていないため、クラッチカバー17のクラッチ5収容部がシリンダブロックの取付面より突出していると見ることができない。また、第2図で、プライマリドリブンギア4の外径より少し外径の大きいクラッチ5が、カウンタ軸3に取り付けられていることからみて、第1図において、クラッチカバー17がクラッチ5を収容している部分では、クラッチカバー17はシリンダブロックの取付面より突出していると見ることができない。また、エンジン運転状態におけるクラッチケース16及びクラッチカバー17内の潤滑油の油面も記載されていない。
上記刊行物1に記載された発明の「クランクケース10とミッションケース11」、「クランク軸1」、「ドライブ軸7」、「カウンタ軸3」、「クラッチカバー17」は、それぞれ訂正請求項に係る発明の「クランクケース」、「クランクシャフト」、「ドライブシャフト」、「カウンタシャフト」、「収容部」に相当する。
したがって、両者は、「クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドライブシャフトとの間に位置する部位にカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部に湿式多板型クラッチを構成したエンジン。」の点では一致している。
(3-2)、訂正請求項に係る発明と、刊行物2の第6図の従来例として記載された発明とを対比する。
刊行物2は、第6図の従来例のケース53を改良することにより、ミッション収納ケース9のオイルレベルLを高くし、クランクシャフト収納ケース8のオイルレベルLを低くして、第1〜5図の実施例に記載のようにした発明であることから、前記第3頁左上欄第11〜19行中の「ところでオイルポンプ機構は任意に設けるが、第3図は・・・スタータギヤ21に噛合せしめる。」の記載を参照し、第6図の従来例に記載の「ケース53の内部に配置した複数のシャフト」がそれぞれどのようなシャフトであるかを、第1〜5図の実施例と対応させてみると、シリンダブロック52の延長下方に配置されたシャフトはクランクシャフトであり、その左隣のシャフトはカウンタシャフトであり、さらにその左隣のシャフトはドライブシャフトであり、またさらにその左下隣のシャフトはキックスタータスピンドルであり、前記「上方に配置したシャフト」はカウンタシャフトであると認められる。また、前記「最上方に配置されたシャフトと同心円状に記載された直径の異なる2つの円形部材」のうち直径の大きい方の円形部材は、(a)クラッチ、(b)ギア18、(c)その他のうちのいずれかとみられ、直径の小さい方の円形部材は、ギア17、ミッション機構11のギア、その他のうちのいずれかとみられる。
第6図に記載されたオイルの液面レベルLは、エンジン運転状態での液面レベルを示していると認められる。
そして、上記の点、及び第6図の記載を併せて見ると、刊行物2の第6図の従来例には、「ケース53の内部に複数のシャフトを備えたエンジンにおいて、前記複数のシャフトのうち、最上方に配置されたシャフトと同心円状に記載された直径の異なる2つの円形部材は、エンジン運転状態では、いずれも貯留された潤滑油から離隔するようにしたエンジン。」が記載されているものと認められる。
上記刊行物2の第6図の従来例に記載された発明の「ケース53」、「ミッション収納ケース55」は、本件訂正請求項に係る発明の「クランクケース」、「収容部」に相当する。
したがって、前記「直径の大きい方の円形部材」が(a)クラッチであるとした場合、両者は、「クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドライブシャフトとの間に位置する部位にカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部にクラッチを構成したエンジンにおいて、
前記カウンタシャフトを前記クランクシャフトおよび前記ドライブシャフトよりも上方に配置するとともに、前記クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔したエンジン。」の点では一致している。
(3-3)、訂正請求項に係る発明と、刊行物2の第1〜5図の実施例として記載された発明とを対比する。
上記刊行物2の第1〜5図の実施例として記載された発明の「ケース3」、「出力軸11a」は、訂正請求項に係る発明の「クランクケース」、「ドライブシャフト」に相当する。
したがって、両者は、「クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドライブシャフトとの間に位置する部位にカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部にクラッチを構成したエンジンン。」の点では一致している。
(3-4)、訂正請求項に係る発明と、刊行物3に記載された発明とを対比する。
上記刊行物1に記載された発明の「クランク軸11」、「入力軸12a」、「副ケース部20b」、「後傾シリンダ42」、「接合面22b」は、それぞれ訂正請求項に係る発明の「クランクシャフト」、「カウンタシャフト」、「収容部」、「シリンダブロック」、「取付面」に相当する。
したがって、両者は、「クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部に多板型クラッチを構成したエンジンにおいて、前記クランクケースにおける多板型クラッチの収容部をシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置したエンジン。」の点では一致している。
(3-5)、甲第1〜3号証刊行物に記載された発明には、上記(3-1)〜(3-4)のように、それぞれ一致点を有しているが、いずれの発明にも、本件発明の構成に欠くことのできない事項である、湿式多板型クラッチを構成したエンジンにおいて「クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置し、前記湿式多板型クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔した」構成を有していない。
そして、訂正請求項に係る発明は、上記構成により、本件明細書に記載された「このため、上記エンジンによれば、クラッチ5での上記潤滑油Oによるメカニカルロスが可及的に防止されるようになる。」、及び「エンジンの前後長を短く構成することができる。」等の明細書に記載された作用効果を期待できるものである。
したがって、訂正請求項に係る発明は上記甲第1〜3号証刊行物に記載された発明とすることはできず、また、上記甲第1〜3号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

(う)、訂正の適否についての判断結果
上記(あ)〜(い)に示すとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合するものであり、当該訂正を認める。

IV.特許異議の申立ての判断
(あ)、本件発明
本件特許第2800042号の請求項1に係る発明(以下「本件請求項に係る発明」という。)は、前記訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

(い)、申立ての理由の概要・判断
特許異議申立人は、上記刊行物1〜3を甲第1〜3号証として提出し、本件請求項に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明であるから、又は刊行物1〜3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項に係る発明は、特許法第29条第1項第3号、又は同法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、その特許は取り消されるべきものである旨、主張している。
これに対して、本件請求項に係る発明は、前記「3.訂正の適否についての判断」の「(い)、独立特許要件の判断」において検討したとおり、特許異議申立人が提出した上記刊行物1に記載された発明とすることもできないし、上記刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

V.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は合法になされたものであり、特許異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エンジン
(57)【特許請求の範囲】
クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドライブシャフトとの間に位置する部位にカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部に湿式多板型クラッチを構成したエンジンにおいて、
前記カウンタシャフトを前記クランクシャフトおよび前記ドライブシャフトよりも上方に配置するとともに、前記クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をクランクケースと一体に成形してシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置し、前記湿式多板型クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔したことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明は、クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドライブシャフトとの間に位置する部位にカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部に湿式多板型クラッチを構成したエンジンに関する。
【従来の技術】
一般に、自動二輪車に搭載されるエンジンでは、作動時のショックを和らげるために、湿式多板型のクラッチが多く採用されている。
この湿式多板型クラッチは、複数枚のクラッチディスクとクラッチプレートとを交互に重ね合わせることによって構成され、クランクケースに設けられた収容部内に収容されており、該クランクケースの内部に貯留された潤滑油に常時浸漬されている。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、昨今のエンジンは、その更なる出力の向上が要求されている。
しかしながら、上記のようなエンジンでは、エンジンの運転中、上記クラッチ機構がクランクケース内の潤滑油を常時撹拌することになり、著しいメカニカルロスが招来され、出力向上の妨げとなっている。
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、更なる出力の向上を図ることのできるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明では、クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドライブシャフトとの間に位置する部位にカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部に湿式多板型クラッチを構成したエンジンにおいて、前記カウンタシャフトを前記クランクシャフトおよび前記ドライブシャフトよりも上方に配置するとともに、前記クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をクランクケースと一体に成形してシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置し、前記湿式多板型クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔したことにある。
【作用】
上記構成によれば、クランクケースの内部に貯留された潤滑油からクラッチ機構を離して配置することができ、このクラッチ機構部での上記潤滑油によるメカニカルロスを可及的に防止することができる。
【実施例】
以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
第1図および第2図は、本発明に係るエンジンを概念的に示したものである。ここで例示するエンジンは、4サイクル縦置V型2気筒のもので、第1図中の矢印A方向を車両進行方向に向けた状態で自動二輪車に搭載される。
このエンジンでは、第2図に示すように、車両の左右方向に分割されるクランクケース1が採用されており、そのうちの右側部分1aの最外方に収容部2が構成されている。収容部2は、上記クランクケース1の右側部分1aと一体に成形され、外方に向けて開口する凹部2aと、この凹部2aの開口を覆着するカバー2bとを備えており、クランクケース1における後部側シリンダブロック3の取付面1bから上方(図中における上方)に突出する態様で、しかも、上記取付面1bの最外縁1b’から十分な距離Lをもった位置に配置されている。なお、図には示していないが、この収容部2の下部には、連通孔が形成されており、第1図に示すように、上記クランクケース1の内部に貯留された潤滑油Oを流通させるための連通孔を形成するようにしており、この流通された潤滑油Oが内部に貯留されている。
第1図に示すように、この収容部2には、カウンタシャフト4の端部に構成された湿式多板型のクラッチ5と、クランクシャフト6の端部に固着され、上記クラッチ5の図示していないクラッチアウタに歯合する歯車7等とが収容されている。図からも明らかなように、上記クラッチ5は、上記収容部2の最上方に配置されており、該収容部2内に貯留された潤滑油Oからは離隔されている。
また、上記クラッチ5を備えたカウンタシャフト4は、上記クランクシャフト6および上記カウンタシャフト4に図示していない複数の変速歯車列を介して連係されたドライブシャフト8の双方よりも上方に位置されている。
なお、図には示していないが、上記エンジンは、運転状態にあるときに、クランクケース1内に貯留された潤滑油Oを上記クラッチ5に供給する潤滑油供給手段を備えている。
上記のように構成されたエンジンは、図示していないピストンの往復運動によって上記クランクシャフト6が回転されると、該クランクシャフト6に固着された歯車7を介してクラッチ5が収容部2内で回転され、図示していないクラッチレバーの操作によって、カウンタシャフト4への動力伝達が断続される。
クラッチレバー(図示せず)の操作により、クラッチ5を介してカウンタシャフト4に動力を伝達されると、該動力が上述した図示せぬ複数の変速歯車列によって適宜減速された後にドライブシャフト8へ伝達され、該ドライブシャフト8から外部に出力されることになる。
この間、上記クラッチ5においては、収容部2内に貯留された潤滑油Oから離隔した位置で空転した状態にあり、上述した図示していない潤滑油供給手段から常時潤滑油が供給されている。
このため、上記エンジンによれば、クラッチ5での上記潤滑油Oによるメカニカルロスが可及的に防止されることになり、エンジンの更なる出力向上を図ることができるようになる。
また、上記クラッチ5を備えるカウンタシヤフト4が、上記クランクシャフト6および上記ドライブシャフト8よりも上方に位置されているため、これらの軸間距離を短くすることができ、エンジンの前後長を短く構成することができる。
さらに、クランクケース1に設けた収容部2をシリンダブロック3の取付面1bにおける最外縁1b’から十分な距離Lをもった位置に配置しているため、クランクケース1の製造工程において上記取付面1bに容易に切削加工を施すことができる。
なお、上記実施例では、4サイクル縦置V型2気筒エンジンを例示しているが、本発明はもちろんその他の形式のエンジンであっても構わない。
また、上記実施例では、車両に対しての左右に2分割されるクランクケース1を採用しているが、本発明ではこれに限定されず、たとえば、車両に対して上下に2分割されるクランクケースを採用してもよい。
【発明の効果】
上記したように、本発明に係るエンジンによれば、クランクケースの内部に貯留された潤滑油からクラッチを離して配置することができ、このクラッチでの上記潤滑油によるメカニカルロスを可及的に防止することができるため、更なるエンジン出力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係るエンジンを概念的に示した側面一部断面図、第2図は第1図におけるII-II線断面図である。
1……クランクケース、
1b……シリンダブロックの取付面、
2……収容部、
3……シリンダブロック、
4……カウンタシャフト、
5……クラッチ、
6……クランクシャフト、
8……ドライブシャフト。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件特許第2800042号発明の明細書を次のとおり訂正する。
(1)、願書に添付した明細書の特許請求の範囲を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】 クランクケースの内部におけるクランクシャフトとドライブシャフトとの間に位置する部位にカウンタシャフトを備え、かつ該カウンタシャフトの端部に湿式多板型クラッチを構成したエンジンにおいて、
前記カウンタシャフトを前記クランクシャフトおよび前記ドライブシャフトよりも上方に配置するとともに、前記クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をクランクケースと一体に形成してシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置し、前記湿式多板型クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔したことを特徴とするエンジン。」
と訂正する。
(2)、特許明細書第2頁第10〜11行中(【課題を解決するための手段】の項)の「前記クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置している。」の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「前記クランクケースにおける湿式多板型クラッチの収容部をクランクケースと一体に形成してシリンダブロックの取付面から突出する態様で配置し、前記湿式多板型クラッチを最上方に配置してエンジン運転状態では、該収容部内に貯留された潤滑油から離隔したことにある。」
と訂正する。
異議決定日 2000-02-02 
出願番号 特願平1-256586
審決分類 P 1 651・ 113- YA (F02B)
P 1 651・ 121- YA (F02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 進  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 林 晴男
清水 信行
登録日 1998-07-10 
登録番号 特許第2800042号(P2800042)
権利者 スズキ株式会社
発明の名称 エンジン  
代理人 杉本 修司  
代理人 越川 隆夫  
代理人 越川 隆夫  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ