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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B41J |
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管理番号 | 1023847 |
異議申立番号 | 異議1999-71713 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-04-17 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-28 |
確定日 | 2000-04-24 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2819658号「インクジェット記録装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2819658号の特許を維持する。 |
理由 |
[手続の経緯] 本件特許第2819658号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成1年9月5日に特許出願され、平成10年8月28日にその特許の設定登録がなされ、その後、その特許について日本電気株式会社より特許異議の申立がなされ、当審において取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成11年10月12日に訂正請求がなされ、当審において訂正拒絶理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年2月15日に意見書が提出されたものである。 [訂正の適否についての判断] 【1】訂正の内容 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1において、「前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着するとともに、前記インクタンクの前記インク供給口の内端に第2のフィルタを装着した」を「前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着し、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と前記第1フィルタとを連結すると共に前記第1フィルタを囲む密封した垂直経路を、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し、前記インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、前記インクタンクの内部に吸収材が充填され、前記空間と前記吸収材との境界に前記吸収材と密着する第2のフィルタを装着した」と訂正する。 (2)訂正事項b 特許明細書の発明の詳細な説明中の特許請求の範囲の請求項1に関する記載において、「前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着するとともに、前記インクタンクの前記インク供給口の内端に第2のフィルタを装着した」(特許掲載公報2頁3欄7〜11行)を、「前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着し、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と前記第1フィルタとを連結すると共に前記第1フィルタを囲む密封した垂直経路を、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し、前記インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、前記インクタンクの内部に吸収材が充填され、前記空間と前記吸収材との境界に前記吸収材と密着する第2のフィルタを装着した」と訂正する。 【2】訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否 (1)訂正事項aについて この訂正は、特許掲載公報2頁4欄31〜32行の記載及び第3,5図の記載の範囲内において、インクタンクの内部と記録ヘッドのノズルに至る流路のうちインク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と第1フィルタとを連結すると共に第1フィルタを囲む密封した部分を「垂直経路」と新たに表現すると共に、その「垂直経路」の構成を「インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し」と限定し、 また、同2頁3欄48行〜同頁4欄5行,同2頁4欄35〜38行の記載及び第4,5図の記載の範囲内において、「インクタンク」の構成を「インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、前記インクタンクの内部に吸収材が充填され、前記空間と前記吸収材との境界に前記吸収材と密着する第2のフィルタを装着した」と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (2)訂正事項bについて この訂正は、上記訂正事項aの訂正に伴い、それとの整合を図るために発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (3)独立特許要件について 訂正後の請求項1に係る発明は、後述するように、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 (4)訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、特許明細書に対する本訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1,2,3項の規定に適合するので、認める。 【3】特許異議申立について (1)特許請求の範囲の請求項1に係る発明 訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりである。 「【請求項1】記録ヘッドに対し着脱可能で該記録ヘッドへのインク供給口に封止部材を装着したインクタンクと、該インクタンクの前記封止部材に挿入され前記インクタンクの内部と前記記録ヘッドのノズルに至る流路とを連通させるインク供給針とを備えた前記記録ヘッドとを有するインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着し、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と前記第1フィルタとを連結すると共に前記第1フィルタを囲む密封した垂直経路を、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し、前記インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、前記インクタンクの内部に吸収材が充填され、前記空間と前記吸収材との境界に前記吸収材と密着する第2のフィルタを装着したことを特徴とするインクジェット記録装置。」 (2)特許異議申立の理由の概要 異議申立人は、証拠方法として甲第1号証〔特開昭52-150034号公報=取消理由及び訂正拒絶理由の刊行物1〕,甲第2号証〔特開昭59-33153号公報=同刊行物2〕,甲第3号証〔特開昭63-87242号公報=同刊行物3〕,甲第4号証〔実願昭57-183547号(実開昭59-87946号)のマイクロフィルム=同刊行物4〕を提出し、訂正前の本件発明は甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものであると主張している。 (3)甲各号証に記載された発明 1.甲第1号証〔特開昭52-150034号公報〕 甲第1号証には、インク供給源からノズルに至るインクシステムに空気あるいはゴミ細片が混入しないように配慮したインクジェット記録装置に関する発明が記載され、その構成及び作用効果に関する公報2頁右下欄12行〜3頁左上欄10行,4頁右上欄1行〜左下欄4行,5頁右上欄14行〜左下欄17行,6頁右上欄14行〜右下欄10行,等の記載及び第1〜7図の記載からみて、プリントヘッドHに対し着脱可能で口金102にシール部材108を装着したインク供給装置Aと、該インク供給装置Aの前記シール部材108に挿入され前記インク供給装置Aの内部と前記プリントヘッドHのノズル1に至るインク供給系路P、室211及び小室202とを連通させる管状針206とを備えた前記プリントヘッドHとを有するインクジェット記録装置であって、前記プリントヘッドHの前記管状針206より前記ノズル1側に前記管状針206の針孔断面より大きな面積を有するフィルタ213を装着し、前記管状針206のプリントヘッドHのノズル1側端部と前記フィルタ213とを連結すると共に前記フィルタ213を囲む密封した室211を、その上壁面である仕切板205を中央部に若干の平面211aを有すると共に、その端から外側に向けて勾配を有する面211b或いは平面を形成し、前記インク供給装置Aの口金102の内端に記録用インクを内包し且つ圧力を発生せしめうるように弾性(可撓性)材料から成るバルーン状容器100の基部を保持したことを特徴とするインクジェット記録装置が記載されている。 2.甲第2号証〔特開昭59-33153号公報〕 甲第2号証には、インクジェット記録装置のインク容器に関する技術が記載され、その構成等に関する公報2頁左上欄5行〜右上欄6行,等の記載及び第3,4図の記載からみて、インクカセットケース7の内部にインク袋8を収納しこのインク袋8内に内蔵したインクはインク供給チューブ9を介して外部に導出できること、インク供給チューブ9の先端に取り付けた接続コネクタ11にインクジェットプリンター側の接続針10を挿入すること、接続コネクタ11は一端を閉じ他端を開放した断面略コ字状弾性材料でなる盲栓12と盲栓12内に多孔質材料でなるフィルタ13を固定する弾性材料でなる固定リング14からなること、盲栓12と固定リング14とで形成する内部空間をフィルタ13により2分して空間15,16を形成すること、等の技術が記載されている。 3.甲第3号証〔特開昭63-87242号公報〕 甲第3号証には、プリントヘッドを一体的に設けたインクジェットペンに関する技術が記載され、その構成等に関する公報2頁左下欄9行〜右下欄16行,3頁左下欄5行〜右下欄4行,等の記載及びFig1,2の記載からみて、ペン本体10の内部に内壁62,64を設けて形成した3つのインク貯蔵仕切り室12,14,16内にそれぞれポリウレタンフォーム(発泡体)の3つの部分42,44,46を装填すること、ペン本体10のプリントヘッド28側の内面に3つのインクパイプ94,96,98により3つのインク室88,90,92を形成すること、各インク室88,90,92と各部分42,44,46との境界に各部分42,44,46と密着するステンレスワイヤメッシュ製のインクフィルタ36,38,40をそれぞれ装着すること、各インクフィルタ36,38,40が各フォーム・ボディ部42,44,46から供給されるインクの空気泡及び固体粒子を濾過すること、等の技術が記載されている。 4.甲第4号証〔実願昭57-183547号(実開昭59-87946号)のマイクロフィルム〕 甲第4号証には、インクジェットプリンタに関する技術が記載され、その構成等に関する明細書6頁5行〜7頁6行,等の記載及び第3図の記載からみて、インク貯蔵容器201の内部にスポンジゴムなどの発泡材302を設けること、発泡材302を設けたインク貯蔵容器201のインク供給出口304側にフィルタ室306を設け、該フィルタ室306に数μm程度のメッシュを持つフィルタ303を設けること、フィルタ303が発泡材302を通過したインク301に含まれる微細なごみにより印字ヘッド100内の微細なノズル孔101が塞がれるのを防ぐこと、等の技術が記載されている。 (4)本件発明と甲各号証に記載された発明との対比・検討 甲第1号証に記載された発明における「プリントヘッドH」,「口金102」,「シール部材108」,「インク供給装置A」,「ノズル1」,「インク供給装置Aの内部とプリントヘッドHのノズル1に至るインク供給系路P、室211及び小室202」,「管状針206」,「フィルタ213」,「管状針206のプリントヘッドHのノズル1側端部とフィルタ213とを連結すると共にフィルタ213を囲む密封した室211」が、本件発明における「記録ヘッド」,「記録ヘッドへのインク供給口」,「封止部材」,「インクタンク」,「ノズル」,「インクタンクの内部と記録ヘッドのノズルに至る流路」,「インク供給針」,「第1のフィルタ」,「インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と第1フィルタとを連結すると共に第1フィルタを囲む密封した垂直経路」にそれぞれ相当するから、両者は、「記録ヘッドに対し着脱可能で該記録ヘッドへのインク供給口に封止部材を装着したインクタンクと、該インクタンクの前記封止部材に挿入され前記インクタンクの内部と前記記録ヘッドのノズルに至る流路とを連通させるインク供給針とを備えた前記記録ヘッドとを有するインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着し、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と前記第1フィルタとを連結すると共に前記第1フィルタを囲む密封した垂直経路を設けたことを特徴とするインクジェット記録装置。」の点で一致し、次の点で相違する。 1.本件発明が、「垂直経路」を、「インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し」ているのに対し、甲第1号証に記載された発明は、該「垂直経路」に対応する「室211」がそのような構成になっていない。(以下「相違点1」という) 2.本件発明が、「インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、インクタンクの内部に吸収材が充填され、空間と吸収材との境界に吸収材と密着する第2のフィルタを装着した」のに対し、甲第1号証に記載された発明は、該「インクタンク」に対応する「インク供給装置A」がそのような構成になっていない。(以下「相違点2」という) (5)上記相違点1,2についての検討 1.相違点1について 本件発明の甲第1号証に記載された発明との上記相違点1に係る構成である「インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し」た「垂直経路」の点は、上記甲第2〜4号証の何れにも記載されていない。 即ち、上記「先細状に形成し」た「垂直経路」は、特許権者が主張するようにインクの円滑な流れに寄与するものと認められ、この点において、「室211」内でのインクの円滑な流れに言及せず、しかも、該「室211」の「管状針206」の先端上方に気泡を集めて泡抜きをするものである甲第1号証に記載された発明とは、格別の差異があるものと認められ、また、該「垂直経路」は、特許掲載公報2頁4欄40〜45行の「インクタンク交換時供給針開孔部に気泡が入るが、新たにインクタンクを装着したときその気泡は空間21内へ浮き上がり、下方供給針の方へ進むのが防がれ、しかも浮き上がった気泡は次にインクタンクを交換するとき、インクタンクと共に捨てられる。」との記載からみて、該「垂直経路」内に存在する気泡をその先細状部分の斜面により「インクタンク」の供給口内端の「空間21」内へ導いて記録ヘッドへの侵入を防止することにも寄与するものであると推測でき、この点においても、甲第1号証に記載された発明とは、格別の差異があるものと認められる。 従って、たとえ、流路の拡大部を傾斜面で連続させてスムーズな流れを得ることが一般的に周知の技術であるとしても、この周知技術を甲第1号証に記載された発明の「室211」に単に適用しただけでは、本件発明の如くの構成は想到しえないことと認められる。 2.相違点2について 本件発明の甲第1号証に記載された発明との上記相違点2に係る構成である「インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、インクタンクの内部に吸収材が充填され、空間と吸収材との境界に吸収材と密着する第2のフィルタを装着した」点は、上記甲第2〜4号証の何れにも記載されていない。 ところで、甲第2号証にはインクカセットケース7の接続コネクタ11に形成された空間15内に接続針10が挿入されるようにしたインク容器とインクジェットプリンター側の接続針10との結合技術が示され、また、甲第3号証にはインク貯蔵仕切り室12,14,16の内部にポリウレタンフォーム(発泡体)の3つの部分42,44,46を充填してなるペン本体10の内端に形成されたインク室88,90,92がプリントヘッド28と連通するようにしたペンの技術が示され、更に、甲第4号証には内部に発泡材302を挿入したインク貯蔵容器201のインク供給出口304側のフィルタ室306にフィルタ303を設けて印字ヘッド100と連通するようにしたインクジェットプリンタの技術が示されているが、甲第2号証のものはインク袋8内に吸収材を挿入せず、甲第3号証のものはインク室88,90,92とプリントヘッド28との連通をインク供給針によらず、甲第4号証のものはフィルタ室306と印字ヘッド100との連通をインク供給針によらず且つ発泡材302とフィルタ303とが密着せず、しかも、これら甲第2〜4号証には、インク供給針を含むインク経路内の気泡をインクタンクの空間内に積極的にとどまらせるという技術思想は開示ないし示唆されていないものであるから、これら甲第2〜4号証に記載された技術を甲第1号証に記載された発明の「インク供給装置A」に適用して本件発明の如くの構成にすることは当業者といえども想到しえないことと認められる。 3.まとめ そして、本件発明は、上記相違点1,2に係る構成を発明を特定する事項とすることにより、特許明細書に記載された「インク供給針をインクタンクの封止部材に貫通させてインクタンク内部に挿入するときに侵入する異物等を大きなフィルタで確実に捕えるとともに、フィルタでの流路抵抗の増大を防止し、円滑なインク供給を可能にする。フィルターを二重に配置し、交換用フィルターで多くの異物を捕捉させ、交換しないフィルターには負担をかけず、小面積ながらもフィルター寿命を延ばすことができた。」(特許掲載公報3頁5欄15〜23行)等の、甲第1〜4号証には期待することができない格別の作用効果を奏するものである。 (6)特許異議申立についての結論 結局、本件発明は、甲第1〜4号証に記載された発明であるとも、甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであるとも認めることができないから、本件発明の特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものであるという異議申立人の主張は採用できない。 [むすび] 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由および証拠方法によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 インクジェット記録装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 記録ヘッドに対し着脱可能で該記録ヘッドヘのインク供給口に封止部材を装着したインクタンクと、該インクタンクの前記封止部材に挿入され前記インクタンクの内部と前記記録ヘッドのノズルに至る流路とを連通させるインク供給針とを備えた前記記録ヘッドとを有するインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着し、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と前記第1フィルタとを連結すると共に前記第1フィルタを囲む密封した垂直経路を、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し、前記インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、前記インクタンクの内部に吸収材が充填され、前記空間と前記吸収材との境界に前記吸収材と密着する第2のフィルタを装着したことを特徴とするインクジェット記録装置。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は信頼性を向上させたコンパクトなインクジェット記録装置に関する。 〔従来の技術〕 インクタンクをキャリッジ上に設置し、ヘッドと共に移動するインクジェット記録装置、及び吸収材を内部に充填したインクタンクは既に提案されてきている。 〔発明が解決しようとする課題〕 しかしながら、従来の記録装置にあっては、インクタンク交換時の気泡侵入対策をはじめとする気泡対策が充分でなかった。又、吸収材は微細なホコリ等を発生し易く、フィルターの寿命が問題であった。 そこで本発明は前述した従来技術の課題を解決するものであり、その目的とするところは、インクジェットヘッドヘの気泡や異物の侵入を確実に防止するインクジェット記録装置を提供することにある。 〔課題を解決するための手段〕 本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドに対し着脱可能で該記録ヘッドヘのインク供給口に封止部材を装着したインクタンクと、該インクタンクの前記封止部材に挿入され前記インクタンクの内部と前記記録ヘッドのノズルに至る流路とを連通させるインク供給針を備えた前記記録ヘッドとを有するインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着し、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と前記第1フィルタとを連結すると共に前記第1フィルタを囲む密封した垂直経路を、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し、前記インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、前記インクタンクの内部に吸収材が充填され、前記空間と前記吸収材との境界に前記吸収材と密着する第2のフィルタを装着したことを特徴とする。 〔実施例〕 以下に実施例に沿って本発明について詳しく説明する。第1図、第2図は本発明による記録装置のインクジェットヘッドの基板の実施例を示した図であり、第1図はその平面図、第2図はA-Aに関する断面図である。 高分子樹脂、ガラスあるいは金属等の平板状材料の基板1の片面に圧力室2、絞り部3、共通インク室4のための一連の流路溝を形成しており、その上に薄板8を接合して流路としている。各圧力室2には流路反対面へ貫通した連絡流路5を形成しており、その先端にはエレクトロフォーミングで微小ノズル穴6を形成したニッケルノズルプレート7を接合している。薄板8上には共通電極膜を介して板状の圧電素子9を各圧力室に対応した形で接着している。尚、第1図で破断線は薄板8を破断させたところを示す。 インクは後述するインク供給口10より入り、全流路を満たし、圧電素子9に電圧を印加することでノズル穴6よりインク滴を噴射する。 第3図はインク供給口付近の実施例の詳細を図示した断面図である。基板1及び薄板8に設けた供給口10には接続パイプ12の先端部が挿入されてあり、その平坦部13で薄板8に接合している。接続パイプ12の内部の下方にはナイロン繊維またはステンレス繊維等からできた薄い第1のフィルター11を配し、該フィルター11を押えるように第2の接続パイプ14を挿入している。接続パイプ12と第2の接続パイプ14の間にはゴムパッキン15を配してインク漏れを防いでいる。第2の接続パイプ14には上方よりステンレス製の供給針16を打ち込んでいる。 第3図から明らかなように、フィルター11は供給針16の針孔の断面より大きな面積を有し、供給針16を後述するインクタンクのゴム栓20を貫通させてインクタンク内部に挿入するときに侵入する異物等を大きなフィルターで確実に捕えるとともに、フィルタでの流路抵抗の増大を防止し、円滑なインク供給を可能にしている。 第4図は本発明によるインクジェット記録装置に用いるインクタンクの実施例を示した図である。 インクタンク17はややテーパ状の内部に吸収材18を装填しており、吸収材18内にインクを保持、貯蔵している。吸収材18に押し付けられてその下部にナイロン繊維またはステンレス繊維より成る第2のフィルター19がある。フィルター19は熱融着または接着剤により固定される。フィルター19の下部にはゴム栓20を押し込んで固定してあり、ゴム栓20とフィルター19との間には、空間21を形造っている。尚、22は通気孔である。 第5図は、キャリッジ23上に配したインクジェットヘッド28とインクタンク17の設置状態の実施例を示した図である。インクジェットヘッド28はキャリッジ23に固定され、インクタンク17はキャリッジ23に作られたガイド24に沿って上方より挿入される。インクタンク17を度当るまで挿入すると供給針16はゴム栓20を貫通して、その先端部の開孔は空間21内へ突出する。 供給針16がゴム栓20を貫通するとき、上方より大きな力を受ける。そこで第2の接続パイプ14に突起を設け、上方からの荷重を直接キャリッジで受けるようにし、基板1や薄板8に影響が及ばないようにしている。 25はガイド軸であって、キャリッジ23はガイド軸25に案内されて紙面垂直方向に移動をくり返す。26は記録紙である。 試作例によれば、ノズル穴6の径φ50μm、絞り部3の流路深さ30μmであり、第1のフィルター11は25μm以上の異物を阻止、第2のフィルター19は20μm以上の異物を阻止できるよう、フィルターメッシュを設定した。 以上に説明した本発明による実施例によれば、キャリッジ上にヘッドとインクタンクを搭載し、インク滴を下向きに記録紙上に噴射して記録を行なう。インクの初期的充填や気泡の侵入というトラブルに対しては、従来周知の記録範囲外での吸引手段の動作によって実施または回復させることができる。 上述したように第1のフィルターからインクタンクにかけてはほぼ垂直上方に流路を構成している。インクタンク内にあっては吸収材の微小孔によって気泡は下方へは進み難い。又、第2のフィルターによってさらに侵入を防止している。第2のフィルターと吸収材を密着させることによって、その間に空気の存在するような空間を無くし、かつ毛細管力によって吸収材から第2のフィルターヘスムーズにインクを流すことができる。インクタンクにインクがなくなると、図示していないタンク内の2電極間のインピーダンスが増大して警報を発する。インクタンク交換時供給針開孔部に気泡が入るが、新たにインクタンクを装着したときその気泡は空間21内へ浮き上がり、下方供給針の方へ進むのが防がれ、しかも浮き上がった気泡は次にインクタンクを交換するとき、インクタンクと共に捨てられる。 フィルターは二重に設置されている。吸収材にはホコリや微細な吸収材カスが混入し、しかもその洗浄がむずかしいが、それらの異物は第2のフィルターによってヘッド方向へ進むのが阻止される。第1のフィルターはインクタンクを抜いた状態で、またはゴム栓の切りくずが供給針から入ってもヘッド方向へ進むのを阻止するもので、記録装置の寿命まで交換されない。 ノズル穴寸法、絞り部寸法に対し、第1および第2のフィルター孔寸法を前述の関係の如く設定する。すなわち、ノズル穴や絞り部を閉塞するような異物は第1または第2フィルターで阻止する。第2のフィルターを通過した異物は第1のフィルターをも通過せしめ、よって交換のない第1のフィルターの寿命が短くならないようにしている。 〔発明の効果〕 本発明のインクジェット記録装置によれば、記録ヘッドのインク供給針よりノズル側にインク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着するとともに、インクタンクのインク供給口の内端に第2のフィルタを装着したことにより、インク供給針をインクタンクの封止部材に貫通させてインクタンク内部に挿入するときに侵入する異物等を大きなフィルタで確実に捕えるとともに、フィルタでの流路抵抗の増大を防止し、円滑なインク供給を可能にする。 フィルターを二重に配置し、交換用フィルターで多くの異物を捕捉させ、交換しないフィルターには負担をかけず、小面積ながらもフィルター寿命を延ばすことができた。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明によるインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの基板の実施例を示した図、第2図は第1図のA-Aに関する断面図、第3図は本発明によるインクジェット記録装置のインク供給路の実施例を示した図、第4図は本発明によるインクジェット記録装置のインクタンクの実施例を示した図、第5図は本発明によるインクジェット記録装置においてインクタンクを装着したときの実施例を示した図。 1……ヘッド基板 2……圧力室 3……絞り部 6……ノズル穴 8……薄板 10……供給口 11……第1のフィルター 12……接続パイプ 14……第2の接続パイプ 16……供給針 17……インクタンク 18……吸収材 19……第2のフィルター 20……ゴム栓 21……空間 23……キャリッジ 28……インクジェットヘッド |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1において、「前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着するとともに、前記インクタンクの前記インク供給口の内端に第2のフィルタを装着した」を「前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着し、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と前記第1フィルタとを連結すると共に前記第1フィルタを囲む密封した垂直経路を、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し、前記インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、前記インクタンクの内部に吸収材が充填され、前記空間と前記吸収材との境界に前記吸収材と密着する第2のフィルタを装着した」と訂正する。 (2)訂正事項b 特許明細書の発明の詳細な説明中の特許請求の範囲の請求項1に関する記載において、「前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着するとともに、前記インクタンクの前記インク供給口の内端に第2のフィルタを装着した」(特許掲載公報2頁3欄7〜11行)を、「前記記録ヘッドの前記インク供給針より前記ノズル側に前記インク供給針の針孔断面より大きな面積を有する第1のフィルタを装着し、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部と前記第1フィルタとを連結すると共に前記第1フィルタを囲む密封した垂直経路を、前記インク供給針の記録ヘッドのノズル側端部に向けて先細状に形成し、前記インクタンクの供給口の内端に空間が形成されると共に、前記インクタンクの内部に吸収材が充填され、前記空間と前記吸収材との境界に前記吸収材と密着する第2のフィルタを装着した」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-03-31 |
出願番号 | 特願平1-229764 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(B41J)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤本 義仁 |
特許庁審判長 |
小沢 和英 |
特許庁審判官 |
伊波 猛 信田 昌男 |
登録日 | 1998-08-28 |
登録番号 | 特許第2819658号(P2819658) |
権利者 | セイコーエプソン株式会社 |
発明の名称 | インクジェット記録装置 |
代理人 | 磯貝 克臣 |
代理人 | 磯貝 克臣 |
代理人 | 佐藤 一雄 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 佐藤 一雄 |