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審決分類 審判 全部申し立て 特29条特許要件(新規)  G01N
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G01N
管理番号 1023856
異議申立番号 異議1999-71092  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-08-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-24 
確定日 2000-04-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2802751号「骨吸収速度測定方法」の請求項1ないし13に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2802751号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 I 手続の経緯
本件特許第2,802,751号の発明についての出願は、1987年11月6日の米国出願を基礎出願とする優先権を主張して昭和63年(1988年)10月21日に国際出願された、特願昭63-509161号出願(特表平3-500818号公報参照)の分割出願として、平成8年7月8日に出願されたものであり、平成10年7月17日に特許の設定登録がなされたものである。
本件特許について、申立人岡本昭二および申立人富士レビオ株式会社外1名より特許異議の申立があり、取消理由通知がなされ、それに対する意見書および訂正請求書がその指定期間内である平成12年1月4日に提出された。

II 訂正請求の適否
前記訂正請求書による請求の適否について以下検討する。
1. 訂正事項
本件訂正は、つぎの訂正事項からなる。
(1) 訂正事項A
訂正前の請求項1の「ペプチド断片の体液中の濃度を定量する骨吸収速度測定方法」において、「体液をペプチド断片に特異的な免疫学的結合パートナーと接触させることにより定量する」ものに限定する訂正。(請求項2〜4は、請求項1を引用しているので、訂正事項Aは、実質的にはこれらの請求項も限定することになる。)
(2) 訂正事項B
請求項5〜請求項7を削除する訂正。
(3) 訂正事項C
上記請求項の削除にともなって、請求項8〜請求項13を請求項5〜請求項10に項番号を整列させる訂正。

2. 訂正の目的;明細書の記載との関係
(1) 訂正事項Aについて
訂正事項Aは、「ペプチド断片の体液中の濃度を定量する」手段として、旧請求項5に記載されている免疫測定法を採用するものである。そして、この免疫測定法は、願書に添付された明細書にも説明されている(【0044】〜【0051】参照)。
また、「ペプチド断片の体液中の濃度を定量する」としてこの免疫測定法以外に電気化学的測定法、蛍光測定法があることが願書に添付された明細書に記載されている(【0052】〜【0055】、【0056】〜【0059】参照)。
そうすると、訂正事項Aは、「ペプチド断片の体液中の濃度を定量する」手段を免疫測定法に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとともに、訂正事項Aは、願書に添付した明細書の記載事項の範囲内であることは明らかである。
(2) 訂正事項B〜訂正事項Cについて
訂正事項B〜訂正事項Cは、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、いずれも、願書に添付した明細書の記載事項の範囲内であることは明らかである。

3. 拡張・変更
訂正事項A〜訂正事項Cは、実質上特許請求の範囲を拡張するものでなく、また、変更するものでもない。

4. 独立特許要件
訂正事項Aは、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであるので、訂正事項Aによる訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される、訂正後の請求項1〜4に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて以下検討する。

4.1 本件訂正後の請求項1〜請求項4に係る発明
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜請求項4(以下、「訂正請求項1」のように略記する。)は、以下のとおりである。
【請求項1】
骨コラーゲン吸収に由来し3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含むペプチド断片の体液中の濃度を定量する骨吸収速度測定方法において、該ペプチドが骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来する2個のアミノ酸配列を有するものであり、体液をペプチド断片に特異的な免疫学的結合パートナーと接触させることにより定量することを特徴とする骨吸収速度測定方法。
【請求項2】
骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列が、次のアミノ酸配列を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
Glu-K-Ala-His-Asp-Gly-Gly-Arg
(式中、Kは、K-K-Kで表わされるヒドロキシリジルピリジノリン及びリジルピリジノリンから選択された3-ヒドロキシピリジニウム架橋の一部を表わす)
【請求項3】
ペプチド断片の分子量が5,000未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
体液が尿、滑液および血清から選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定方法。

4.2 29条柱書きについて
4.2.1 本件明細書の記載
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(1)従来技術
3-ヒドロキシピリジニウム架橋物の体液中濃度を定量することが行われたが、骨吸収速度に対応するものでなかった。(本件特許公報8欄【0016】参照)
(2) 発明が解決しようとする課題
そこで人における全身骨吸収速度を測定できる方法が必要である。最も有用なこの種の方法は、体液、特に尿に適用できる方法である。(本件特許公報8欄【0017】参照)
(3) 発明者の発見
「 本発明は再吸収された骨コラーゲンに由来するリジルピリジノリン(LP)-およびヒドロキシリジルピリジノリン(HP)-ペプチド断片は両方共、代謝されずに尿中に排泄されるという発見に基づいている。本発明は、その他の結合組織は明白な量のLPを含まず、成熟骨コラーゲンのHP:LP比は一生を通じて比較的一定であるという、発見に基づいている。」(本件特許公報11欄【0029】〜【0030】および図1〜図2参照)
(4)骨吸収速度を測定
最も簡単に絶対的骨吸収速度を測定する方法は、3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含むペプチド断片(以下、単に「架橋ペプチド断片」という)の体液中濃度の定量することに基づくものである(本件特許公報11欄【0031】参照)。
(5) 「架橋ペプチド断片」の体液中濃度の定量法
「架橋ペプチド断片」の体液中濃度の定量法には、免疫測定法、電気化学的測定法、蛍光測定法などがあり(本件特許公報15欄〜20欄参照)、そして、「架橋ペプチド断片」の体液中濃度を実際に蛍光法で定量したことが記載されている(本件特許公報18欄【0056】〜20欄【0059】および図5、図6参照)。アミノ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を有する「架橋ペプチド断片」式IIIの体液中濃度を実際に定量したことも記載されている(本件特許公報13欄【0037】参照)。
(6) 免疫測定法
免疫測定法を用いて、体液を、骨コラーゲン吸収に由来する「架橋ペプチド断片」に特異的な免疫学的結合パートナーと単に接触することによって、骨吸収の絶対速度を知ることができる(本件特許公報15欄【0044】〜17欄【0051】参照)。
そして、生理的液体から得られる骨コラーゲン由来のペプチド断片に特異的に結合しうる免疫パートナーは、当業者に公知の方法によって作ることができる(同上参照)。その作成のための免疫方法、抗体産生ハイブリドーマの作成、抗体標識方法などを記載した参考文献が具体的に列挙されている。
(7) 体液中の「架橋ペプチド断片」
(i) 精製、由来
体液中の「架橋ペプチド断片」は、尿から透析や数段階のゲルクロマトグラフィー、イオン交換HPLCを経て、逆相HPLCにより分離、精製することにより入手できる。体液中の「架橋ペプチド断片」は、主に、骨I型コラーゲン由来のものである。(本件特許公報12欄【0034】【実施例】〜14欄【0043】参照)
(ii) アミノ酸配列の由来
骨I型コラーゲン由来の「架橋ペプチド断片」は、骨I型コラーゲンαI(I)鎖のカルボシキ末端(以下「C末端」と略記することがある。)テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を有しているものと、骨I型コラーゲンのアミノ末端(以下「N末端」と略記することがある。)テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を有しているものとに分けられる。(本件特許公報12欄【0034】〜14欄【0043】参照)
(iii) 組成分析、配列分析
分離された主要ペプチドのアミノ酸組成は、回収アミノ酸の全数化学量論によって、純度および分子の大きさが確認され、エドマン分解による配列分析により、I型コラーゲンの公知の架橋部位の配列であることを確認した(本件特許公報13欄3行〜9行参照)。
(iv) C末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列の数
「架橋ペプチド断片」の「カルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列」は骨I型コラーゲンαI(I)鎖のカルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を、二つ有していることが確認された(本件特許公報12欄20行〜26行参照)。
(v) C末端アミノ酸配列の式
その「架橋ペプチド断片」の骨I型コラーゲンαI(I)鎖のカルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列の例が、次のアミノ酸配列を2つ含むものであることが記載されている(本件特許公報5頁構造式IV参照)。
Glu-K-Ala-His-Asp-Gly-Gly-Arg
(式中、Kは、K-K-Kで表わされるヒドロキシリジルピリジノリン及びリジルピリジノリンから選択された3-ヒドロキシピリジニウム架橋の一部を表わす)
(vi) 構造式IV以外のC末端「架橋ペプチド断片」
逆相HPLCによって分離した架橋ペプチドを示す図4の、小さい(minor)ピークとしてあらわれるその他のカルボキシ末端テロペプチド基礎架橋ペプチドは、構造式IVで示される構造にアミノ酸が付加したものおよびその構造からアミノ酸が欠落したものをあらわす。これらの小ピーク内に含まれるペプチドはいずれも下記のように免疫原としての使用に適している(本件特許公報14欄【0039】参照)。
(vii) 構造式III、IVの同等物
上記構造式によってあらわされるペプチドの同等物としては、尿中ペプチド構造に若干の変化が生じたものが含まれる。変化の例は、構造式III およびIVのNおよびC末端へのアミノ酸付加並びに若干の末端アミノ酸欠落である。構造式IVによってあらわされる骨吸収に由来する分子の、より小さいペプチド断片が、特に尿中にあらわれる。これらは図4にみられるカルボキシテロペプチド断片の小ピークとなってあらわれ、アミノ酸組成および配列分析によって確認される(本件特許公報13欄〜14欄【0043】参照)。

4.2.2 本件発明の完成
本件明細書に記載された以上の事実によれば、免疫測定法の測定対象に対する免疫学的結合パートナーを得るための複数の抗原ペプチド断片の体液からの精製・分離法が記載されており、前項(6)の記載にもみられる本件優先権主張日(1988.10.21)当時の免疫分析に関する技術常識を勘案すれば、本件訂正請求項1〜4に係る発明は完成されたものというのが相当である。
したがって、本件請求項1〜4の発明は、特許法29条柱書きの発明に該当する。

4.2.3 特許異議申立人岡本昭二の主張について
なお、この点について、特許異議申立人岡本昭二は、「架橋ペプチド断片」についてその化合物の化学構造を特定しないと発明が実施できないので、本件請求項1の発明は未完成である旨主張する。しかしながら、免疫測定法は、抗原物質を化学構造式のレベルまで、さらにはエピトープがどこであるかまで把握しなければ抗原量を測定できないという性質の測定法ではないし、「カルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列」を有している「架橋ペプチド断片」を定量して、その量が骨吸収量に対応させようとするのが本件明細書に記載するところの発明であるから、前記主張が妥当でないことは明らかである。

4.3 引用刊行物記載の発明と特許法29条違反
取消理由通知には、下記3つの刊行物が引用されている。
刊行物1:特表平3-500818号公報
刊行物2:特表平5-502223号公報
刊行物3:特開平7- 20126号公報
本件訂正後の出願の出願日を確定するために、本件訂正後の出願が分割出願として適法であるか否かについて検討する必要があり、まず原出願の当初明細書(以下「原明細書」という)の記載事項について検討する。

4.3.1 原明細書の記載事項
原明細書には次の事項が記載されている。
(1) 原明細書の請求項(以下、各請求項を「原請求項○」という)の記載
(i) 原請求項5には、次の方法が記載されている。
「骨コラーゲン吸収に由来し、3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつペプチド断片の体液中濃度を定量することから成る絶対的骨吸収速度測定方法において、定量段階が体液を、骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつペプチド断片に特異的な免疫学的結合パートナーと接触させることを含む方法。」(原請求項1および原請求項5参照)
(ii) 原請求項28には、次のペプチド断片が記載されている。
「骨I型コラーゲンのカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列から成る、請求項22記載のペプチド断片」
(iii)原請求項22
「体液から得られ、他のヒトペプチドを含まない骨コラーゲン由来ペプチド断片」
(2)従来技術
3-ヒドロキシピリジニウム架橋物の体液中濃度を定量することが行われたが、骨吸収速度に対応するものでなかった。(原公表公報5頁右上欄〜左下欄参照)
(3) 発明者の発見
「 本発明は再吸収された骨コラーゲンに由来するリジルピリジノリン(LP)-およびヒドロキシリジルピリジノリン(HP)-ペプチド断片は両方共、代謝されずに尿中に排泄されるという発見に基づいている。本発明は、その他の結合組織は明白な量のLPを含まず、成熟骨コラーゲンのHP:LP比は一生を通じて比較的一定であるという、発見に基づいている。」(原公表公報6頁右下欄〜7頁左上欄、 原出願図面Fig.1〜Fig.2参照)
(4)骨吸収速度を測定
最も簡単に絶対的骨吸収速度を測定する方法は、「架橋ペプチド断片」の体液中濃度の定量に基づくものである(原公表公報7頁左上欄)。
(5)「架橋ペプチド断片」の体液中濃度の定量法
「架橋ペプチド断片」の体液中濃度の定量法には、免疫測定法、電気化学的測定法、蛍光測定法などがあり(原公表公報8頁右下欄〜11頁左下欄)、そして、「架橋ペプチド断片」の体液中濃度を実際に蛍光法で定量したことが記載されている(原公表公報11頁左上欄、Fig.4A、Fig.4B参照)。アミノ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を有する「架橋ペプチド断片」式IIIの体液中濃度を実際に定量したことも記載されている(原公表公報8頁左上欄)。
(6)免疫測定法
免疫測定法を用いて、体液を、骨コラーゲン吸収に由来する「架橋ペプチド断片」に特異的な免疫学的結合パートナーと単に接触することによって、骨吸収の絶対速度を知ることができることが記載されている(原公表公報9頁右下欄参照)
(7)体液中の「架橋ペプチド断片」
(i) 由来
体液中の「架橋ペプチド断片」は、主に、骨I型コラーゲン由来のものである。(原公表公報7頁左下欄〜8頁左下欄参照)
(ii) アミノ酸配列の由来
骨I型コラーゲン由来の「架橋ペプチド断片」は、骨I型コラーゲンαI(I)鎖のカルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を有しているものと、骨I型コラーゲンのアミノ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を有しているものとに分けられる。(原公表公報7頁左下欄〜8頁左下欄参照)
(iii) 配列分析
エドマン分解による配列分析により、I型コラーゲンの公知の架橋部位の配列であることを確認した(原公表公報8頁左上欄7行〜10行)。
(iv) C末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列の数
「架橋ペプチド断片」の「カルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列」は骨I型コラーゲンαI(I)鎖のカルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を、二つ有していることが確認された(原公表公報7頁右下欄〜左上欄参照)。
(v) C末端アミノ酸配列
その「架橋ペプチド断片」の骨I型コラーゲンαI(I)鎖のカルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列は、次のアミノ酸配列を含むものであることが記載されている(原公表公報8頁左下欄構造式IV参照)。
Glu-K-Ala-His-Asp-Gly-Gly-Arg
(式中、Kは、K-K-Kで表わされるヒドロキシリジルピリジノリン及びリジルピリジノリンから選択された3-ヒドロキシピリジニウム架橋の一部を表わす)
(vi) 構造式IV以外のC末端「架橋ペプチド断片」
第3b図の小さい(minor)ピークとしてあらわれるその他のカルボキシ末端テロペプチド基礎架橋ペプチドは、構造式IVで示される構造にアミノ酸が付加したものおよびその構造からアミノ酸が欠落したものをあらわす。これらの小ピーク内に含まれるペプチドはいずれも下記のように免疫原としての使用に適している(原公表公報8頁右上欄〜左下欄参照)。

4.3.2 原特許請求の範囲に記載された発明
原明細書の記載事項によれば、原請求項28の「ペプチド断片」は、実質的に原請求項3に記載の「骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつペプチド断片」であるから、原明細書の特許請求の範囲には、次の発明が記載されていたということができる。
「 骨コラーゲン吸収に由来し、3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつペプチド断片の体液中濃度を定量することから成る絶対的骨吸収速度測定方法において、該ペプチドが骨I型コラーゲンのカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列を有するものであり、定量段階が体液を、骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつペプチド断片に特異的な免疫学的結合パートナーと接触させることを含む方法。」

4.3.3 訂正請求項1の発明に関する記載
体液中に存在する、「カルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列」を有する「架橋ペプチド」が、「カルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列」を2個有するものであることが原明細書に記載されていることは前述の通りである(前記4.3.1(7)(iv)参照)。
そうすると、原明細書には、本件訂正請求項1発明が開示されているというのが、相当である。
なお、骨I型コラーゲンの架橋構造については、申立人岡本昭二の提出した甲第2号証730頁1-8行、Fig.8および特許権者の提出する乙第3、4,5号証に記載の如く、「カルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列」2個と1個のらせん構造部位に結合している架橋構造であり、その「カルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列」に、構造式IV中に2個存在する配列であって、請求項2に特定されているアミノ酸配列が存在することは、本件優先権主張日前に知られていたものである。

4.3.4 訂正請求項2の発明に関する記載
骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列が、次のアミノ酸配列を含むものであることは、原明細書に開示されていることは前述の通りである(前記4.3.1(7)(v)参照)。
Glu-K-Ala-His-Asp-Gly-Gly-Arg
そうすると、原明細書には、本件訂正請求項2発明が開示されているというが相当である。

4.3.5 その他の訂正請求項の発明に関する記載
本件訂正請求項3〜4の発明も、前述と同様の理由により、原明細書に開示されているというが相当である。

4.3.6 分割出願の適法性
以上検討したところによれば、本件訂正請求項1〜10の発明は、原明細書に開示されているというが相当である。
そして、ペプチド断片のアミノ酸配列の由来が異なる点で、本件訂正請求項1〜10の発明は、原出願特許発明(特許第2780097号公報参照)とは異なる発明である。
したがって、本件訂正発明について、本件出願は、原出願を適法に分割出願したものということができる。

4.3.7 取消理由に引用した刊行物
取消理由に引用した刊行物は、いずれも、原出願の出願日より後に刊行されたものであるから、これらの刊行物は、適法に分割出願された本件特許発明に対して、29条1項3号の刊行物に該当するということができない。
したがって、本件訂正請求項1〜4の発明は、特許法29条の規定により特許を受けることができないものということはできない。

4.4 特許法36条違反
(1) 訂正請求項1の「2個のアミノ酸配列を有する」との記載
骨I型コラーゲン由来の「架橋ペプチド断片」は、骨I型コラーゲンαI(I)鎖のカルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を有しているものと、骨I型コラーゲンのアミノ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を有しているものとに分けられ、尿から精製・分離されたフラクションに、骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボシキ末端テロペプチド領域由来のアミノ酸配列を二つ含むペプチド断片に富むことが確認されたこと(本件特許公報12欄【0034】〜14欄【0043】参照)、そして、分離された主要ペプチドのアミノ酸組成は、回収アミノ酸の全数化学量論によって、純度および分子の大きさが確認され、エドマン分解による配列分析により、I型コラーゲンの公知の架橋部位の配列であることを確認したこと(本件特許公報13欄3行〜9行参照)、が本件明細書に記載されていることは前述の通りである(4.3.1参照)。
免疫測定法は、抗原物質を化学構造式のレベルまで、さらにはそのエピトープがどこであるかを特定し把握しなければその抗原量を測定できないという性質の測定法ではないし、訂正請求項1における「2個のアミノ酸配列を有する」なる表現は、同請求項1において、「架橋ペプチド断片」が、骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列を2個有するものに限定するものであり、このことは明りょうである。
そして、体液中の「架橋ペプチド断片」が特定の構造式に限られた1種類のものではないことから(前述4.2.1(7)参照)、体液中のこのアミノ酸配列をさらに特定の構造式に限定する必要があるということはできない。
なお、骨I型コラーゲンの架橋構造については、申立人岡本昭二の提出した甲第2号証730頁1-8行、および特許権者の提出する乙第3、4号証に記載の如く、その化学構造が本件優先権主張日前に知られていたものであり、構造式IV中に2個同じものが存在するアミノ酸配列(請求項2に特定されているアミノ酸配列に同じ)が、骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列であることも、本件優先権主張日前に知られていたものであるから、式IVのペプチドの3つの鎖のアミノ酸配列のうち、どの2つのアミノ酸配列を意味するのか本件明細書に明示して記載されてなくとも、請求項1のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来する「2個のアミノ酸配列を有する」ことが、不明確ということはできない。

(2) 訂正請求項2の「アミノ酸配列を含む」との記載
「アミノ酸配列を含む」なる記載は、請求項1における「カルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列」を請求項2に示される構造式のアミノ酸配列を含むものに限定するものであり、このことは明りょうである。そして、免疫測定法の性質ならびに本件明細書の記載(前記4.2.1(7)参照)によれば、上記(1)と同様、請求項2の発明は、他のアミノ酸配列についての限定を必要とするものということはできない。

(3) したがって、訂正請求項1〜4の記載は、特許法36条4項の規定に違反するものとは認められない。

4.5 特許法39条
本件訂正請求項1〜4の発明は、原出願特許発明と異なる発明であることは、前述したとおりである(前記4.3.6参照)。
したがって、本件訂正請求項1〜4の発明は、特許法39条に違反するものということはできない。

4.6 独立特許要件についての検討結果
以上検討したところによれば、本件訂正請求項1〜4の発明は、本件特許出願の際、独立して特許を受けることができる。

5. 訂正適否の検討結果
よって、本件訂正は、特許法120条の4第2項および第3項の規定に適合する。

III 特許異議の申立
1. 本件発明
本件請求項1〜請求項10に係る発明は、それぞれ、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜請求項10に記載された以下のとおりのものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨コラーゲン吸収に由来し3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含むペプチド断片の体液中の濃度を定量する骨吸収速度測定方法において、該ペプチドが骨I型コラーゲンのIα(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来する2個のアミノ酸配列を有するものであり、体液をペプチド断片に特異的な免疫学的結合パートナーと接触させることにより定量することを特徴とする骨吸収速度測定方法。
【請求項2】
骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列が、次のアミノ酸配列を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
Glu-K-Ala-His-Asp-Gly-Gly-Arg
(式中、Kは、K-K-Kで表わされるヒドロキシリジルピリジノリン及びリジルピリジノリンから選択された3-ヒドロキシピリジニウム架橋の一部を表わす)
【請求項3】
ペプチド断片の分子量が5,000未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
体液が尿、滑液および血清から選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項5】
骨コラーゲン吸収に由来し3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含み、骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来する2個のアミノ酸配列を有するペプチド断片を認識し、これに結合する免疫学的結合パートナー。
【請求項6】
モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項5に記載の免疫学的結合パートナー。
【請求項7】
検出可能マーカーに結合したものであることを特徴とする請求項5または6に記載の免疫学的結合パートナー。
【請求項8】
検出可能マーカーが、酵素、発色団、蛍光団、補酵素、酵素阻害剤、化学ルミネッセント物質、常磁性金属、スピンラベルおよび放射性核種から成る群から選択されたものであることを特徴とする請求項7に記載の免疫学的結合パートナー。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の免疫学的結合パートナーを含有することを特徴とする体液中のペプチド断片の濃度測定用試薬キット。
【請求項10】
請求項6に記載の免疫学的結合パートナーを産生する融合細胞ハイブリッド。

2.申立人岡本昭二の申立の概要
申立人岡本昭二の申立の概要は、以下のとおりである。
2.1 29条違反の申立
2.1.1 29条柱書き
本願発明は、当業者が実施することが不可能であり、仮に実施できたとしても科学的に妥当な精度を有数結果を科学的な反復可能性と再現性を持って達成することができないのであるから、 29条柱書きに規定する「産業上利用することのできる発明」として完成されたものではない。
2.1.2 29条2項
刊行物1:特表平3-500818号公報(原出願公表公報)
分割出願は、原出願の明細書に記載されていない発明を要旨とするものであり、原出願に全く依拠していないから適法な分割出願ではない。従って本願は、出願日の遡及の適用を受けることはできないのであり、本分割出願前に公知であった刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

2.2 36条の要件についての申立
(1) 請求項1
「2個のアミノ酸配列を有する」なる表現は、明確でなく、そのアミノ酸組成と化学構造式を明示するべきである。
(2) 請求項2
「アミノ酸配列を含む」なる表現は、明確でなく、関与該当する他の全てのアミノ酸配列をその組成と構造式とによって明示特定するべきである。
(3) 請求項5〜請求項10
明細書の【発明の詳細な説明】において、各項において請求された発明を支持するだけの記載がないから、特許請求は根拠がなく、不当である。
原出願に従えば、免疫学的結合パートナーは、式(IV)のペプチド断片に対する抗体となるべきである。しかしながら、式(IV)のいかなる部分がエピトープを構成するのかが明示されておらず、また抗体の産生の記載もないことから一般的に推定できるように、かかるペプチド断片に対する抗体が免疫学的活性を発揮することは有りえないし、従って、類似した架橋コラーゲン断片を識別しする能力を有することは同様に有りえない。いわんや、骨コラーゲンにのみ由来するペプチド断片を定量することなど不可能であることは言をまたない。

3.申立人富士レビオ株式会社外1名の申立の概要
申立人富士レビオ株式会社外1名の申立の概要は、以下のとおりである。
3.1 請求項1〜請求項10の記載不備の申立
(1)請求項1および請求項5
請求項1および請求項5に記載の「骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来する2個のアミノ酸配列を有するペプチド断片」における、「2個のアミノ酸配列を有するペプチド断片」については、式IVのペプチドの3つの鎖のアミノ酸配列のうち、どの2つのアミノ酸配列を意味するのか本件明細書に記載されてなく、不明確である。
(2) 請求項2
請求項2に記載の「次のアミノ酸配列Glu-K-Ala-His-Asp-Gly-Gly-Argを含むものである」における、「含むもの」は不明確である。
請求項2に記載のアミノ酸配列を含むペプチドであれば、すべて骨組織から得られたペプチドを測定できる抗体を得ることができる記載がない。

3.2 発明の詳細な説明の記載不備の申立
(1) 実施可能性
発明の詳細な説明は、請求項1〜10に記載の発明を当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されていない。
新規なペプチドまたはその抗体を用いる発明が実施可能であるためには、ペプチドがアミノ酸配列によって特定され、そのような抗原であるペプチドが入手できなければならない。またペプチドがアミノ酸の部分配列で特定されている場合は、当該アミノ酸配列部分がエピトープであることが明確である場合でなければならない。
(2) 式(IV)の誤り
C末端テロペプチドの式(IV)は誤りであるから、当業者は、本特許発明を実施して所望の測定ができない。

3.3 29条違反の申立
刊行物1:特表平3-500818号公報(原出願公表公報)
刊行物2:特表平5-502223号公報
上記請求項1、請求項2および請求項5に記載のペプチド断片は、原出願明細書に記載されたものでないので、適法な分割出願とは認められず、出願日は原出願日に遡及せず、平成8年7月8日に出願されたものであるから、請求項1〜10に係る発明は、分割出願日前に頒布された刊行物1に記載の発明と同一であるか、あるいは刊行物2の記載から容易に発明をすることができたものである。

4. 29条柱書きの要件違反の申立(前記2.1.1)について
前述したように、本件請求項1〜4の発明は、29条柱書きの発明に該当しないとはいえない(前記II.4.2参照)。
本件請求項5〜10の発明も、同様の理由により、29条柱書きの発明に該当しないとはいえない。

5. 29条違反の申立(前記2.1.2および3.3)について
本件請求項1〜10の発明については、前述したように、原明細書に実質的に開示されているものであり、原出願特許発明とは異なる発明であるから、本件出願は適法にされた分割出願である(前記II.4.3参照)。
そうすると、本件出願日は、原出願日に遡及する。
したがって、刊行物1および2は、いずれも、本件出願日後に刊行されたものであるから、本件請求項1〜10の発明は、29条1項3号あるいは同条2項の規定に違反して特許されたものということはできない。

6. 36条要件違反の申立について
(1)請求項1および5の「2個のアミノ酸配列を有する」に関して(前記2.2(1)および3.1(1))
請求項1における「2個のアミノ酸配列を有する」なる表現は、請求項1において、「架橋ペプチド断片」が、骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列を2個有するものに限定することは明りょうである。そして、前記II.4.4(1)に述べたように、免疫測定法の性質から、また本件優先権主張日当時の技術水準からして、このアミノ酸配列をさらに特定の構造式に限定する必要があるということはできない。
(2)請求項2の「アミノ酸配列を含む」なる記載に関して(前記2.2(2)、3.1(2))
「アミノ酸配列を含む」なる表現は、請求項1における「カルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列」が請求項2に示される構造式のアミノ酸配列を含むものに限定するものであり、このことは明りょうである。そして、本件明細書の開示事項(前記II.4.2.1参照)および免疫測定法の性質からして、前記II.4.4(2)に述べたように、請求項2の発明は、他のアミノ酸配列についての限定を必要とするものということはできない。
また、本件発明はすべて骨組織から得られたペプチドを測定できるとは、明細書に記載されている事項でもなく、その点を記載不備であるとする申立人の主張は妥当なものではない。

(3) 請求項5〜請求項10について(前記2.2(3))
本件明細書の記載事項は、前述したとおりである(前記II.4.2.1参照)。本件優先権主張日当時の免疫測定における技術常識も勘案すると、これらの記載によれば、明細書の【発明の詳細な説明】において、請求項5〜請求項10の発明を支持する記載があるというべきである。そして、原明細書においても、免疫学的結合パートナーは、式(IV)のペプチド断片に対する抗体に特定されているということもできない。
なお、請求項10の「融合細胞ハイブリッド」という記載表現については、本件明細書の【0027】に「本発明は、3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有する骨コラーゲン由来のペプチド断片に特異的なモノクローナル抗体を産生する融合細胞ハイブリッド(ハイブリドーマ)を含む」と記載されているし、「・・・免疫学的結合パートナーを産生する融合細胞ハイブリッド」と記載されている以上、その記載が意味するものがいわゆる「ハイブリドーマ」であるとは分からない、または別異のものを意味するという不都合はなく、「・・ハイブリドーマ」と記載しなければ特許法36条の記載要件をみたさないとするべき不備があるとはいえない。

(4)発明の詳細な説明の記載不備の申立(前記3.2)について
(1) 実施可能性
抗原である「架橋ペプチド断片」は、体液を精製することにより入手することができることは、本件明細書に記載されている(前記II.4.2.1(7)(i)参照)。
体液中の「架橋ペプチド断片」は、アミノ酸組成分析、アミノ酸配列分析により構造決定したことも、本件明細書に記載され(前記II.4.2.1(7)(iii)参照)、 図4の主要ペプチド断片は、構造式IVで示されることが、本件明細書に記載されている(前記II.4.2.1(7)(iii)参照)。
主要ピーク以外の図4の小ピークのペプチド断片は、アミノ酸組成および配列分析によって確認されること(前記II.4.2.1(7)(vii)参照)、そして、免疫原として使用できること(同(7)(vi)参照)が、本件明細書に記載されている。
ペプチド断片に特異的に結合しうる免疫パートナーは、当業者に公知の方法によって作ることができることも本件明細書に記載されている(前記II.4.2.1(7)(vi)参照)。
これらの記載事項および本件優先権主張日当時の免疫測定における技術常識によれば、本件明細書は、当業者が本件発明を容易に実施できるように記載されていないとまではいえない。ちなみに、乙第2号証(EPOに対して提出されたA.J.Bailey教授の陳述書)からもこの点は裏付けられている。

(2)式IVの誤り
構造式IVの架橋ペプチドに関して言及している申立人富士レビオ株式会社外1名提出の甲第7号証(別件後願に対応するEP出願へのEPO審査指令への応答としてオリオン社が提出した実験報告書)には、その実験に使用した抗ICTP抗血清はどのように作成したのかその記載だけからでは不明な状態で、「このテロペプチドのエピトープは、WO89/04491(D1)により尿から単離されたペプチド(D1の11頁、式IV)中にさえ含まれない。したがって、ICTP分析に用いられる抗体は、式IVのペプチドを認識できない。」と、実験に使用した抗体では式IVの架橋ペプチドが認識できなかったという記載があるものの、式IVに2個含まれているペプチド鎖のアミノ酸配列は、ヒトICTPにもウシIPCTにも含まれている配列であることは、甲第7号証の表1に記載されているところであり、甲第7号証の実験に使用した抗体が式IVを認識しなかったとことから、ただちに本件発明の実施可能性がないと結論づけることはできない。
そして、乙第2号証の陳述書によれば、本件明細書の記載された手順に従い、尿からカルボキシ末端架橋に基づく架橋ペプチドを精製し、本件特許明細書の図4に示されたものと実質的に同じクロマトグラムが得られたこと、その主要なピークを与える物質が3-ヒドロキシピリジニウム架橋の存在が確認されるものであり、更に海外で市販の分析キットを使用して骨分解に特異的なカルボキシ末端ペプチドを認識するポリクローナル抗体と適切な反応性を有するものであることが確認されているものである。
してみると、申立人富士レビオ株式会社外1名の提出した甲第8号証から、構造式IVの架橋ペプチドが、生体中の共有結合構造のものでなく、構造式IVの3つのペプチドシーケンスのうちの上部のペプチドシーケンスとペプチド含有ヒドロキシピリジニウムとの強固に結合した物理的付加物で、このペプチド含有ヒドロキシピリジニウムは、下2つのαI(I)鎖のC-テロペプチドが付いているだけのものであることが本件出願日以降に判明したという事実が存在するとしても、「架橋ペプチド断片」の一例として記載されていた、図4の主要ペプチド断片の構造決定にこのような誤りがあったということだけから、ただちに本件発明の実施可能性がないと結論づけることはできない。

8. 申立についての検討結果
以上検討したところによれば、異議申立人の申立は、いずれも理由がない。

IV むすび
前記IIで検討したように、本件訂正は、特許法120条の4第2項および第3項の規定に適合する。
前記IIIで検討したように、本件特許異議申立の理由によっては、本件請求項1〜請求項10に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1〜請求項10に係る発明についての特許許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1〜請求項10に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
骨吸収速度測定方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】骨コラーゲン吸収に由来し3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含むペプチド断片の体液中の濃度を定量する骨吸収速度測定方法において、該ペプチドが骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来する2個のアミノ酸配列を有するものであり、体液をペプチド断片に特異的な免疫学的結合パートナーと接触させることにより定量することを特徴とする骨吸収速度測定方法。
【請求項2】骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列が、次のアミノ酸配列を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
Glu-K-Ala-His-Asp-Gly-Gly-Arg
(式中、Kは、K-K-Kで表わされるヒドロキシリジルピリジノリン及びリジルピリジノリンから選択された3-ヒドロキシピリジニウム架橋の一部を表わす)
【請求項3】ペプチド断片の分子量が5,000未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】体液が尿、滑液および血清から選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項5】骨コラーゲン吸収に由来し3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含み、骨I型コラーゲンのαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来する2個のアミノ酸配列を有するペプチド断片を認識し、これに結合する免疫学的結合パートナー。
【請求項6】モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項5に記載の免疫学的結合パートナー。
【請求項7】検出可能マーカーに結合したものであることを特徴とする請求項5または6に記載の免疫学的結合パートナー。
【請求項8】検出可能マーカーが、酵素、発色団、蛍光団、補酵素、酵素阻害剤、化学ルミネッセント物質、常磁性金属、スピンラベルおよび放射性核種から成る群から選択されたものであることを特徴とする請求項7に記載の免疫学的結合パートナー。
【請求項9】請求項5〜8のいずれか1項に記載の免疫学的結合パートナーを含有することを特徴とする体液中のペプチド断片の濃度測定用試薬キット。
【請求項10】請求項6に記載の免疫学的結合パートナーを産生する融合細胞ハイブリッド。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は骨吸収速度測定方法に関するものである。さらに詳しく述べるならば、それは特殊な尿中架橋アミノ酸、並びに分解した骨コラーゲンに由来するアミノ酸を含むペプチド断片を定量化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
骨粗霧症は人における最も一般的な骨疾患である。骨折し易くなる初期骨粗糧症は骨格骨量の進行性正味喪失に起因する。米国では1500〜2000万人がこの疾患にかかっていると推定される。その根本原理は、骨再形成における、すなわち骨組織の合成速度と分解速度との、年齢依存性不平衡である。毎年約120万の骨粗鬆症関連骨折が老人におこり、そのうち約538,000例は背骨の圧迫骨折で、約227,000例は股関節部骨折で、その他にかなりの数の以前に骨折した末梢骨がある。股関節骨折の12〜20%は、ひどい外傷及び出血をおこすため致命的であり、生きている患者の半数は療養所のケアを必要とする。骨粗鬆症関連損傷による総コストは年間最低70億ドルに達する[バーンズ(Barnes,O.M.)、科学(Science)236巻914ページ(1987)]。骨粗鬆症症は閉経後女性に最も一般的であり、彼女らは平均して、閉経後10年間で骨量の15%を失う。この病気は年をとった男性および若い無月経の女性運動家にもおこる。骨粗鬆症の重大かつ増大しつつある社会的および経済的結果にもかかわらず、患者または健常者の骨吸収速度を測定する方法はない。この病気をモニターすることがむずかしい主な理由は、骨吸収速度測定法がないことである。
【0003】
骨量測定法は、中性子活性化分析による全身的カルシウム測定または光子吸収法による或る骨の鉱質量測定に依ることが多い。これらの方法は骨量が減少しているかどうかの長期的印象を与え得るだけである。摂取量を排出量と比較するととによるカルシウム平衡の測定は時間がかかり、信頼できない。そして骨鉱質が長期にわたって失われているかどうかを間接的に評価できるに過ぎない。減少した骨量および変化した骨代謝を測定するために現在使用できるその他の方法としては、選択した骨部分(腰、踵骨)での定量的走査ラジオメトリーおよび腸骨稜バイオプシーの組織形態測定がある。前者は単一の骨の特定部位の骨鉱質含量の粗測定値を与える。組織形態測定は、新しく沈着した骨のつぎ目(seam)と吸収面との釣合いの半定量的評価である。
【0004】
24時間の分解骨の全身排出量を知るための尿検査はずっとより有効である。鉱質研究(たとえばカルシウム平衡)は信頼性をもって、或いは容易にはこれをすることができない。骨吸収は鉱質および有機基質の分解を含むから、体液中の新たに分解した骨生成物の特異的生化学的マーカーが理想的インデックスになる。幾つかの可能性のある有機インデックスが試験された。たとえば、オキシプロリン(ほとんどコラーゲンに限定されるアミノ酸であり骨およびその他の結合組織の主要構造蛋白質)が尿中に排泄される。その排出速度はある状態、特に骨ターンオーバーが大きく増加する代謝的骨疾患であるぺージェット病においては増加することが知られている。この理由で尿中オキシプロリンは、コラーゲン分解を示すアミノ酸マーカーとして広く用いられている[シンガー(Singer,F.R.)ら(1978)の“骨代謝疾患(Metabolic Bone Disease)”II巻(Avioli,L.V.およびKrane,S.M.編)489-575ページ、アカデミックプレス、ニューヨーク]。
【0005】
ゴヴァード(Goverde)(米国特許第3,600,132号)は、体液、たとえば血清、尿、腰椎液、その他の細胞間液中のオキシプロリンを測定してコラーゲン代謝の変化をモニターする方法を開示している。詳しく述べるならば、この発明者は、たとえばぺージット病、マルファン症候群、骨形成不全症、コラーゲン組織の新生物増殖および種々の形の矮小発育症などの病的状態において、生物学的液体中のオキシプロリン量によって測定されるコラーゲン同化または異化の増加を明らかにすることができた。この発明者はオキシプロリンを過酸化水素およびN-クロロ-P-トルエンスルフォンアミドで酸化してピロールにし、それをP-ジメチル-アミノ-ベンズアルデヒド中で比色測定することによってオキシプロリンを測定した。
【0006】
ぺージェット病の場合には増加した尿中オキシプロリンは多分ほとんどが骨分解に由来するが、オキシプロリンは概して、特異的指数として用いることができない。尿中オキシプロリンの多くは新しいコラーゲン合成に由来し(新しく形成された蛋白質のうちのかなりの量は組織構造に組み込まれることなく分解し、排泄される)、またある種の血液蛋白質並びにオキシプロリンを含むその他の蛋白質のターンオーバーに由来するかもしれない。その上蛋白質分解に由来する遊離オキシプロリンの約80%が肝臓で代謝され、尿中には決してあらわれない[キヴィリコ(Kiviriko,K.I.)(1970)のInt.Rev.Connect.Tissue Ros.5巻93ページおよびヴァイス(Weiss,P.H.)およびクライン(Klein,L.)(1969)のJ.Clin. Invest.48巻1ページ]。
【0007】
ヒドロキシリジンおよびそのグリコシド誘導体(両方共コラーゲン蛋白質に独特である)はコラーゲン分解のマーカーとしてオキシプロリンより正確であると考えられた。しかしながらオキシプロリンについて上に記したと同じ理由で、ヒドロキシリジンおよびそのグリコシドは多分等しく非特異的な骨吸収マーカーである[クレイン(Krane,S.M.)およびシモン(Simon,L.S.)(1981)のDevelop.Biochem.22巻185ページ]。
【0008】
コラーゲンに特異なアミノ酸に加えて、骨質の種々の非コラーゲン性蛋白質、たとえばオステオカルシン、またはその分解産物が、骨代謝測定を目的とするイムノアッセイの基礎を形成した[プライス(Price,P.A.)ら(1980)、J.Clin. Invest.66巻878ページおよびガンドバーグ(Gundberg,C.M.)ら(1984)Meth.Enzymol.107巻516ページ]。しかしながら、現在では、骨由来の非コラーゲン蛋白は、骨代謝活動の有用な指標となる可能性はあるものの、それ自身が骨吸収の定量手段とはなりそうもないということが明らかになっている。例えば、オステオカルシンの血清中の濃度は、正常な及び代謝性骨疾病の両者で巾広く変動する。その濃度は、骨格のターンオーバーが高められた状態では上昇するが、このことが増加した骨の合成又は分解によるものかどうかは不明である。[クレイン(Krane,S.M.)ら(1981)Develop.Biochem.22巻185ページ,プライス(Price,P.A.)ら(1980)J.Clin.Invest.66巻878ページ,及びガンドバーグ(Gundberg,C.M.)ら(1984)Meth.Enzymol.107巻516ページ。]
【0009】
(コラーゲンの架橋)
最も遺伝的タイプの脊椎コラーゲンのポリマーは、正常に機能するためにはアルデヒド仲介性架橋の形成を必要とする。コラーゲンアルデヒドは二,三の特異的リジンまたはヒドロキシリジン側鎖から、リジン酸化酵素の作用によって誘導される。新しく形成されたコラーゲンポリマー内のこれらアルデヒドの自発的分子内および分子間反応によって、種々の2-、3-および4官能性架橋アミノ酸が形成される。架橋残基の種類は組織の種類と共に特異的に変化する[Eyre,D.R.ら(1984),Ann.Rev.Biochem.53巻717-748ページ参照]。架橋の二つの基礎的径路は、一つはリジンアルデヒドに基礎を置き、他はヒドロキシリジンアルデヒドに基礎を置く縞模様の(67nm反復)繊維性コラーゲンで区別される。リジンアルデヒド径路は成人皮膚、角膜、強膜およびラット尾腱に優勢であり、その他の軟結合組織にもよくおこる。ヒドロキシリジンアルデヒド径路は骨、軟骨、靭帯、大部分の腱および体内の大部分の内部結合組織に優勢である[Eyre,D.R.ら(1974)、上記参照]。機能する径路は、リジン残基がテロペプチド部位(ここには後に、リジル酸化酵素によってアルデヒドが形成される)でヒドロキシル化されるかどうかによって支配される[バ「ンズ(Barnes,M.J)ら(1974)、Biochem.J.139巻461ページ]。
【0010】
リジンアルデヒド径路の成熟した架橋アミノ酸の化学構造は未知であるが、ヒドロキシリジンアルデヒド径路の成熟産物としてはヒドロキシピリジニウム残基が確認された。どちらの径路でも、その大部分の組織で、中間体である水素化棚素還元可能の架橋残基は新しく形成されたコラーゲンが成熟するにつれて消失する。これはそれらが比較的短命の中間体であることを示唆している[Bailey,A.J.ら(1971)、FEBS Lett、16巻86ページ]。例外は骨と歯である。ここでは還元可能残基がかなりの濃度で生存期間中存在する。この理由は一部には明らかに、新しくつくられたコラーゲン繊維の急速な鉱質化がその後の自発的架橋による相互作用を阻害するからである[Eyre,D.R.(1981)“鉱質化結合組織の化学および生物学(The Chemistry and Biology of Mineralized Connectine Tissues)(Veis,A.編集)51-55ページ、エルセヴィール、ニューヨーク、およびウォルターズ(Walters,C.)ら(1983)Calc.Tiss.Intl.35巻401-405ページ)]。
【0011】
3-ヒドロキシピリジニウム架橋の二つの化学構造が確認された(下記構造式IおよびII)。両化合物共、本来蛍光性で、同じ特異的励起と発光スペクトルを有する[フジモトD.ら(1977)、Biochem.Biophys.Res.Commun.76巻1124ページ、およびEyre,D.R.(1981)Develop.Biochem.22巻50ページ]。これらのアミノ酸を組織加水分解産物中に溶かし、逆相HPLCおよび蛍光検出を用いて高感度で直接測定することができる(Eyre,D.R.ら(1984)Analyt.Biochem.137巻380-388ページ)。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
成長しつつある動物ではこれらの成熟架橋は鉱質化コラーゲンよりも骨の非鉱質化コラーゲンフラクションにより多く集中することが報告された(ベインズA.J.ら1983、Biochem.Biophys.Res.Commun.113巻、1975)。しかしながら若いウシまたは成人の骨に対するその他の研究はこの概念を支持していない[Eyre,D.R.(1985)著“鉱質化組織の化学および生物学(The Chemistry and Biology of Mineralized Tissues)”、バトラー(Butler,W.T.)編、105ページ、Ebsca Media社、バーミンガム、アラバマ]。
【0015】
冗長なペプチド分離法と一般的アミノ酸分析を用いて、人尿中にコラーゲンヒドロキシピリジニウム架橋が存在することを始めて報告したのは、Gunja-SmithおよびBoucekであった(Gunji-Smith,ZおよびBoucek,R.J.1981,Biochem.J.197巻759-762ページ)。その当時彼等はHP型の架橋しか知らなかった。
【0016】
ロビンズ(Robins,S.P.1982、Biochem.J.207巻617-620ページ)は、ウシ血清アルブミンに抱合した遊離アミノ酸に対する高濃度のポリクローナル抗体を用いる、尿中HPを測定するための酵素結合免疫測定法を報告した。この測定法は関節疾患でおこる関節破壊の増加をモニターするための指数を提供するためのものであり、ロビンズによると、ピリジノリンは骨コラーゲンよりも軟骨にずっと多く分布するという研究結果に基づいている。酵素結合免疫測定法に関するさらに最近の研究で、ロビンズは、ウシ血清アルブミンに共有結合したピリジノリンに対する抗血清に対してリジルピリジノリンは反応しないと報告した(ロビンズら1986、Ann.Rheum.Diseases45巻969-973ページ)。軟骨破壊をあらわすロビンズの尿指数は、主として軟骨に由来するヒドロキシリジルピリジノリンが関節軟骨吸収度に比例する濃度で尿中に見出されるという発見に基づいている。原則としてこの指数は総体内軟骨喪失量を測定するために用いられる。しかしながら骨吸収に関する情報は手に入らない。実際、ロビンズの測定法は軟骨破壊よりもむしろ、リウマチ様関節炎におこる増加した骨再形成を広く測定していたようにみえる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
そこで人における全身骨吸収速度を測定できる方法が必要である。最も有用なこの種の方法は、体液、特に尿に適用できる方法である。その方法は敏感で、すなわち1ピコモルまで定量できなければならない。そして24時間骨吸収速度を速やかに測定して種々の治療(たとえばエストロゲン)の経過を評価できるようでなければならない。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつペプチドフラクションの体液中濃度を定量することから成る絶対的骨吸収速度測定法を提供する。定量段階は、骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつペプチドフラクションに特異的な免疫学的結合パートナーと、体液とを接触させることから成る。発明の一実施態様では、体液を接触前に任意に精製する。この精製段階は、カートリッジ吸着および溶出、分子篩クロマトグラフィー、透析、イオン交換、アルミナクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、これらの組み合わせなどを含む多数の標準的方法の中から選択される。
【0019】
本発明は、体液中の3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつペプチド断片濃度を定量するその他の方法も含む。これらの方法としては電気化学的滴定、自然蛍光スペクトル分析、および紫外線吸収がある。電気化学的滴定は、さらに精製することなく体液で直接行うことができる。しかしながら過剰量の汚染物質のためにこれが不可能の場合は、体液を電気化学的滴定前に先づ精製する。電気化学的検出前の適した精製法としては、透析、イオン交換クロマトグラフィー、アルミナクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびイオン交換吸着および溶出がある。
【0020】
3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含む体液の蛍光測定法は、骨吸収を定量するもう一つの方法である。蛍光測定法は、さらに精製することなく体液で直接行うことができる。しかしある種の体液、特に尿では、蛍光測定法の前に体液の精製を行うことが好ましい。この精製段階は尿の一部を水溶液に対して透析し、非透析物内に保持される一部精製されたペプチド断片を生成することから成る。それから非透析物を凍結乾燥し、イオン対溶液に溶かし、アフィニティークロマトグラフィーカラム上に吸着させた。クロマトグラフィーカラムをある量のイオン対溶液で洗い、その後ペプチド断片を溶出液でカラムから溶出する。これら精製したペプチド断片をそれから加水分解し、加水分解物をクロマトグラフィーで分離する。クロマトグラフィー分離は、高性能液体クロマトグラフィーか、ミクロボア(microbore)高性能液体クロマトグラフィーで行われる。
【0021】
本発明は、体液から得られる、他のヒトペプチドをほとんど含まない、骨コラーゲン由来のペプチド断片を含む。ペプチド断片は3-ヒドロキシピリジニウム架橋、特にリジルピリジノリン架橋およびヒドロキシリジルピリジノリン架橋を含む。
骨I型コラーゲンのアミノ末端テロペプチド領域から誘導される3-ヒドロキシピリジニウム架橋をもつ特異的ペプチド断片は次のアミノ酸配列を有する。
【0022】
【化3】
【0023】
ここでK-K-Kはヒドロキシリジルピリジノリンまたはリジルピリジノリンで、Glnはグルタミンかまたは完全に環化したピロリドンカルボン酸である。
【0024】
本発明は、骨I型コラーゲンのカルボキシ末端テロペプチド領域から誘導される3-ヒドロキシピリジニウム架橋含有ペプチド断片をも包含する。これらのカルボキシ末端テロペプチド配列は、リジルピリジノリンまたはヒドロキシリジルピリジノリンのどちらかと架橋する。このようなペプチド配列の例は次の構造式によってあらわされる。
【0025】
【化4】
【0026】
ここでK-K-Kはヒドロキシリジルピリジノリンまたはリジルピリジノリンである。
【0027】
本発明は、3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有する骨コラーゲン由来のペプチド断片に特異的なモノクローナル抗体を産生する融合細胞ハイブリッド(ハイブリドーマ)を含む。本発明は、融合細胞ハイブリッドによって産生されるモノクローナル抗体(検出可能マーカーに結合した抗体も含む)をも含む。検出可能マーカーの例は、酵素、発色団、蛍光団(fluorophores)、補酵素、酵素阻害物質、化学ルミネッセント物質、常磁性金属、スピンラベル、放射性核種である。
【0028】
本発明は、骨コラーゲンから誘導され、3-ヒドロキシピリジニゥム架橋を含むペプチド断片に特異的なモノクローナル抗体を含んで成る、体液中に認められる骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋含有ペプチド断片の量を測定するのに有用な試験キットを含む。この試験キットのモノクローナル抗体は上記の検出可能のマーカーに結合させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明は再吸収された骨コラーゲンに由来するリジルピリジノリン(LP)およびヒドロキシリジルピリジノリン(HP)ペプチド断片は両方共、代謝されずに尿中に排泄されるという発見に基づいている。本発明は、その他の結合組織は明白な量のLPを含まず、成熟骨コラーゲンのHP:LPの比は一生を通じて比較的一定である、という発見にも基づいている。
【0030】
図1は人の皮質骨及び海綿状骨のHPおよびLP濃度を年令に関して比較したものである。骨コラーゲン中のHP+LP架橋の濃度は10才ないし15才までに最大に達し、成人寿命中適当に一定に保たれることがわかる。さらに、図2に示されるHP:LPの比は生涯を通じてほとんど変化せず、約3.5:1のところで一定している。これらの基礎データは、骨コラーゲン中の3-ヒドロキシピリジニウム架橋が比較的一定にとどまり、したがって骨コラーゲン分解に由来する体液は、絶対的骨吸収速度に比例する濃度の3-ヒドロキシピリジニウム架橋ペプチド断片を含むことを示している。
【0031】
LPは骨コラーゲンに特異的な3-ヒドロキシピリジニウム架橋であるから、最も簡単に絶対的骨吸収速度を測定する方法は、体液中の3-ヒドロキシピリジニウム架橋、より好ましくはりジルピリジノリン(LP)架橋を含むペプチド断片の濃度の定量に基づくものである。この説明および添付の請求の範囲に用いられる定量(quantitating)という語は、分光光度法、重量測定、容量測定、電量分析、免疫測定、電位差測定または電流測定手段を含む(だがこれらに限定されるわけではない)適した手段によって、体液の部分中の3-ヒドロキシピリジニウム架橋含有ペプチド断片の濃度を測定することを意味する。適した体液としては尿、血清および滑液がある。好ましい体液は尿である。
【0032】
尿中ペプチド濃度は尿量が増加するにつれて減少するから、尿を体液として選ぶ場合は固定時間中、たとえば24時間中に集めた尿プールからの一部をとることが好ましい。この方法で24時間の絶対的骨吸収速度が計算される。別法として、尿中ペプチドを、尿中に見出されるマーカー物質、たとえばクレアチニンに対する比として測定する。この場合は骨吸収の尿指数は尿量に無関係である。
【0033】
本発明の一実施態様において、尿中に見出されるリジルピリジノリン架橋含有ペプチド断片に特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体がつくられる。ペプチド断片はどの患者の尿からも分離される。しかしながらこれらペプチドはぺージェット病患者または副甲状腺能元進症患者の尿から分離するのが好ましい。それは、これら患者に見出されるペプチド断片の濃度が高いからである。
【0034】
【実施例】
(尿ペプチドの分離)
活性ぺージェット病患者から得た尿を低多孔度透析チューブ(>3,500スペクトロポア)で4℃で48時間透析し、かさの大きい溶質を除去する。これらの状態では問題のペプチドは大部分が除去されずにとどまる。凍結乾燥した非透析質をその後Bio-Gel P2(200-400メッシュ)のカラム(90cm×2.5cm)から10%酢酸で室温で溶出する(200mg部分ずつ)。集めたフラクションの297nm励起/395nm発光の蛍光を測定することによって、架橋ペプチドを含む溶出液部分を確認し、このプールを凍結乾燥する。この材料をBio-Gel P-4カラム(200-400メッシュ、90cm×2.5cm)で10%酢酸で溶出することによりさらに分離する。上の溶出液の蛍光をモニターすることによって二つの隣接するフラクションプールを見分ける。より早く溶出されるフラクションは、骨I型コラーゲンの三重らせん体に由来する第三の配列に結合した骨I型コラーゲンαI(I)鎖のカルボキシ末端テロペプチド領域に由来する二つのアミノ酸配列を有するペプチド断片に富む。これら三つのペプチド配列は3-ヒドロキシピリジニウムで架橋されている。これと重なり合う遅い方のフラクションは、3-ヒドロキシピリジニウム架橋によって結合した骨I型コラーゲンのアミノ末端テロペプチド領域に由来するアミノ酸配列を有するペプチド断片に富む。
【0035】
その後個々のペプチドは、TSK DEAE-5-PWカラム(Bio Rad 7・5cm×7.5mm)上のイオン交換HPLCによって上で得られた二つのフラクションの各々から分離される。その際溶出は10%(V/V)アセトニトリルを含む0.02Mトリス-HCl,pH7.5中NaCl(0-0.2M)の勾配で行われた。アミノ末端テロペプチド基礎およびカルボキシ末端テロペプチド基礎架橋ペプチドは、0.08Mおよび0.15M NaCl間の、蛍光の連続3〜4ピークに溶出する。カルボキシ末端テロペプチド基礎架橋ペプチドが最初に一連の蛍光ピークとして溶出し、主要(major)および少量(minor)アミノ末端テロペプチド基礎架橋ペプチドが勾配の終りの方で特徴的ピークとして溶出する。これらの各々を集め、凍結乾燥し、C-18逆相HPLCカラム(Vydac218 TP54,25cm×4.6mm)上クロマトグラフィーにかけ、0.01Mトリフルオロ酢酸中アセトニトリル:n-プロパノール(3:1V/V)の勾配(0-10%)で溶出した。
【0036】
この方法によって、ぺージェット病患者の単一24時間尿から、3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含む個々のペプチド断片が、約100〜500μg分離される。分離された主要ペプチドのアミノ酸組成は、回収アミノ酸の全数化学量論(whole number stoichiometry)によって、純度および分子の大きさが確認された。エドマン分解によるアミノ末端配列分析は、I型コラーゲンの公知の架橋部位の配列並びにぴったり合う(matching)アミノ酸組成から予測される基本的コア構造を確認した。α2(I)鎖のアミノ末端テロペプチド配列は、多分アミノ末端グルタミンが公知のように環化してピロリドンカルボン酸を生成するため、配列分析からさえぎられた。
【0037】
上記の方法によって得られるアミノ酸末端テロペプチドの典型的溶出曲線は図3に示される。得られた主要ペプチド断片は、アミノ酸組成:(Asx)2(Glx)2(Gly)5Val-Tyr-Ser-Thrを有する。ここで、Asxはアミノ酸AspかAsnであり、Glxはアミノ酸GlnかGluである。このペプチドの配列は下記の構造式IIIによってあらわされる。正常尿は構造式IIIによって示されるペプチド断片を、ぺージェット病患者の尿より少量含む。
【0038】
【化5】
【0039】
ここでK-K-KはHPまたはLP架橋アミノ酸をあらわし、Glnはグルタミン又は完全に環化したピロリドンカルボン酸をあらわす。
【0040】
上記のように逆相HPLCによって分離したカルボキシ末端テロペプチド基礎架橋ペプチドを図4に示す。この図からわかるように、これらのペプチドはさらに、各々が3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含む一連のカルボキシ末端テロペプチドに分離される。図4に示される主要ペプチドを上記のように分析し、アミノ酸組成:(Asp)5(Glu)4(Gly)10(His)2(Arg)2(Hyp)2(Ala)5を有することが判明した。このペプチドの配列は下記の構造式IVによって示される。図4の小さい(minor)ピークとしてあらわれるその他のカルボキシ末端テロペプチド基礎架橋ペプチドは、構造式IVで示される構造にアミノ酸が付加したものおよびその構造からアミノ酸が欠落したものをあらわす。これらの小ピーク内に含まれるペプチドはいずれも下記のように免疫原としての使用に適してる。
【0041】
【化6】
【0042】
ここでK-K-KはHPまたはLP架橋アミノ酸をあらわし、Glnはグルタミン又は完全に環化したピロリドンカルボン酸をあらわす。
【0043】
上記構造式によってあらわされるペプチドの同等物としては、尿中ペプチド構造に若干の変化が生じたものが含まれる。変化の例は、構造式IIIおよびIVのNおよびC末端へのアミノ酸付加並びに若干の末端アミノ酸欠落である。構造式IVによってあらわされる骨吸収に由来する分子の、より小さいペプチド断片が、特に尿中にあらわれる。これらは図4にみられるカルボキシテロペプチド断片の小ピークとなってあらわれ、アミノ酸組成および配列分析によって確認される。構造式IIIおよびIVによってあらわされるハプテンに対して産生する抗体はわずかに変化した構造をもつ尿中ペプチドと交差反応すると予想される。或る状態では、骨吸収に由来する尿中ペプチドに対する患者特異的抗体が産生されるのが所望である。このような場合には上記と同じ方法を用いて、構造式IIIおよびIVによってあらわされる構造からほんの少し変化した構造をもった尿中ペプチドを分離する。
【0044】
(骨吸収を指数化するための免疫学的方法)
生理的液体から得られる骨コラーゲン由来のペプチド断片に特異的に結合し得る免疫学的結合パートナーは、当業者に公知の方法によってつくることができる。これらのペプチド断片を分離するための好ましい方法は上記の通りである。ここで用いる免疫学的結合パートナーという語は、抗体および抗体断片を意味する。
【0045】
構造式IIIおよびIVおよびそれらの同等物によってあらわされるペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は当業者に公知の方法によってつくられる。たとえば、キャンベル(Campbell,A.M.)著(1986)“生物学および分子生物学における実験技術(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology)”13巻、エルセヴィールを参照されたい。上記ペプチドまたは分離されたその同等物に対する抗体をつくることは可能である。しかしながらこれらのペプチド断片の分子量は5,000以下であるから、ハプテンを担体分子に結合させることが好ましい。適した担体分子としてはウシ血清アルブミン、卵アルブミン、チログロブリンおよびスカシガイのヘモシアニン(KLH)があるが、これらに限られるわけではない。
【0046】
ハプテンが単体蛋白質に結合するとき、そのハプテンの配向は、抗血清の特異性にとって極めて重要であることは当業者には公知である。その上、すべてのハプテン-蛋白質結合物が等しく成功する免疫原となるわけではない。したがって特定のハプテンを担体蛋白質に結合させるプロトコールの選択は、選択した尿中ペプチド断片のアミノ酸配列に依存する。たとえば、構造式IIIによってあらわされる尿中ペプチド断片が選択される場合、好ましいプロトコールは、このハプテンをカルボジイミドでKLHまたはその他の適した担体と結合させることを含む。これにより、ハプテンの大部分がGlyのカルボキシ末端によって結合し、それによって好ましい抗原決定基、すなわちTyrおよび3-ヒドロキシピリジニウム架橋、を感作された脊椎動物抗体産生細胞(例、Bリンパ球)に与えることが確実になる。
【0047】
その他の尿中ペプチド断片は、その出所によって、異なる結合プロトコールを必要とするかもしれない。よって、多数の結合剤が適切に用いられる。これらにはカルボジイミド、グルタールアルデヒド、混合無水物並びにホモ二官能性およびヘテロ二官能性試薬があるが、これらに限られるわけではない[たとえば、ピアス(Pierce)1986-87カタログ、ピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.)、ロックフォード、IL,、参照]。好ましい結合剤はカルボジイミドおよびヘテロ二官能性試薬、たとえばm-マレイミドベンジル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)である。
ハプテンを担体分子に結合する方法は当業者には公知である。たとえば、チャード(Chard,T)(1987)著“生物学および分子生物学における実験技術”6巻,(パーツ-エルセヴィール,N.Y.)を参照されたい。
【0048】
ハプテン・担体分子免疫原に対するモノクローナルまたはボリクローナル抗体のどちらもつくることができる。しかしながらモノクローナル抗体(MAb)をつくるのが好ましい。この理由でマウスで免疫を行うのが好ましい。マウスの免疫プロトコールはアジュバントを含むのが普通である。適したプロトコールの例はチヤード(1987)が記載している(上記参照)。免疫マウスから脾細胞をとり、ホモジナイズし、その後ポリエチレングリコールの存在下で癌細胞と融合させて融合細胞ハイブリッドをつくる。これは骨コラーゲンに由来するペプチド断片に特異的なモノクローナル抗体を産生する。このようなペプチド断片の例は上記構造式IIIおよびIVによってあらわされる。適した癌細胞としては骨髄腫、肝癌、癌腫および肉腫細胞がある。スクリーニングプロトコール、選択したハイブリッド細胞を増殖させ、選択したハイブリッド細胞によって産生されるモノクローナル抗体を収獲するプロトコールを含むこの方法の詳細な説明はガルフル(Galfre,G)およびミルステイン(Milstein,C)(1981)のMeth.Enzymol.73巻1ページに記されている。好ましい予備的スクリーニングプロトコールは、骨コラーゲン吸収に由来し、3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含むペプチド断片を固相ラジオイムノアッセイにかけることを含む。
【0049】
上記の方法またはこれと同等の方法によってつくられた免疫学的結合パートナー、特にモノクローナル抗体は、種々の免疫測定方法で用いられ、体液中の、骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有するペプチド断片の濃度を定量する。これらの免疫測定法は検出マーカーに結合したモノクローナル抗体または抗体断片を含む。検出可能マーカーの例としては酵素、補酵素、酵素阻害物質、発色団、蛍光団(fluorophores)、化学ルミネッセント物質、常磁性金属、スピンラベル、および放射性核種があるが、これらに限られるわけではない。
【0050】
骨吸収を指数化するのに適した標準的免疫測定法の例は、エライサ(ELISA)(enzyme linked immunosorbent assay)[イングヴァル(Ingvall,E.)(1981)Meth.Enzymol.70]、ラジオイムノアッセイ(RIA)および“サンドイッチ”免疫放射定量測定法(IRMA)であるが、これらに限られるわけではない。最も簡単な形では、これらの免疫測定法を用いて、体液を、骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有するペプチド断片に特異的な免疫学的結合パートナーと単に接触させることによって、骨吸収の絶対速度を知ることができる。上述の免疫測定法は未処理体液に対して直接行うのが好ましい。しかしながら場合によっては汚染物質がその測定を妨害することがあり、体液の一部精製が必要となるかも知れない。部分的精製法には、カートリッジ吸着および溶出、分子篩クロマトグラフィー、透析、イオン交換、アルミナクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびこれらの組み合わせがあるが、これらに限られるわけではない。
【0051】
本発明により使用するのに適した試験キットは、上述のように製造された、体液中の骨コラーゲン吸収に由来する3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有するペプチド断片に特異的に結合するモノクローナル抗体を含む。この試験キットのモノクローナル抗体が上述の種類の検出可能マーカーに結合するのが好ましい。
【0052】
(骨吸収を指数化するための電気化学的方法)
骨吸収を指数化するための別法は、3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有するペプチド断片の物理的特性を測定することから成る。骨吸収の指数化に適したこのような物理的特性の一つは電気化学的検出による。この方法はたとえば尿のような体液の一部を、3-ヒドロキシピリジニウム環を含むペプチドの検出に適した酸化環元電位と釣り合っている電気化学的検出器に注入することから成る。3-ヒドロキシピリジニウム環は、フェノールであるから、可逆的酸化を受ける。したがって電気化学的検出器(たとえば5100A型Coulochem,販売元 esa 45 ウィギンズ アヴェニュー,ベッド-フォード,M.A.)は骨吸収に由来する尿中ペプチドの濃度測定のために適した非常に好都合な器具である。
【0053】
二つの基礎的型の電気化学的検出器が現在市販されている[アンペア測定(例、Bio Analytical Systems)およびクーロン測定(ESA社、ベッドフォード,MA 01730)検出器]。両方共、本発明による使用に適している。しかしながら後者の装置の方が本来感度がより高く、したがってカラム溶出液中の分析すべき分子を完全に酸化または還元できるからより好ましい。その上遮蔽または保護電極が分析電極の上流に置かれ、妨害物質を選択的に酸化または還元し、それによって選択性を改良することができる。本来、分析電極の電圧は試料分子の酸化還元電位に合わせられ、1個以上の前処理セル(pre-treatment cell)が試料中の妨害物を破壊するようにセットされる。好ましい測定法においては最適感度を与える正しい電圧を決定するために、リジルピリジノリンまたはヒドロキシリジルピリジノリンを含む標準ペプチドの標準電流/電圧曲線が作成される。この正しい電圧をその後体液に依って変化させ、汚染物質による妨害を最小にし、感度を最適にする。電気化学的検出器およびそれを使用する最適条件は熟練せる当業者には公知である。複雑な体液混合物を電気化学的検出器で、妨害なしに直接分析できることがよくある。よって大部分の患者では体液の前処理は不要である。しかしながら若干の場合には、妨害化合物が測定法の信頼性を減らすかも知れない。そのような場合にほ体液(たとえば尿)の前処理が必要かも知れない。
【0054】
よって、本発明のもう一つの実施態様では、精製ペプチド断片を電気化学的に滴定する前に、体液を先づ精製する。その精製段階は、透析、イオン交換クロマトグラフィー・アルミナクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、分子節クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせを含む(だがこれらに限られない)種々の方法で行われる。好ましい精製プロトコールでは、24時間尿試料の計量した一部(25ml)を低多孔度透析チューブで透析して混入している蛍光溶質を大部分除去する。非透析質をその後凍結乾燥し、1%ヘプタフルオロ酪酸(HFBA)(イオン対溶液)に溶かし、ペプチドをWaters SeP-Pak C-18カートリッジに吸着させる。このカートリッジをその後1%HFBAsmlで洗い、それから1%HFBA中50%メタノール3mlで溶出する。
【0055】
別の好ましい精製法は、尿の計量した部分をイオン交換吸着フィルターに吸着させ、吸着フィルターを緩衝溶出液で溶出することから成る。3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有するペプチド断片を含む溶出フラクションを集め、測定する。
もう一つの好ましい精製法は分子篩クロマトグラフィーを用いる。たとえば尿の一部をBio-Gel P2またはセファデツクスG-20カラムに入れ、1000-5000ダルトン範囲内に溶出するフラクションを集める。上記方法の組み合わせを用いて尿またはその他の体液を精製または部分的に精製し、3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有するペプチド断片を分離することは熟練せる当業者には自明である。上記の方法によって得られた精製または部分的に精製したペプチド断片は付加的精製法にかけられるか、さらに処理するか、または部分的精製状態で直接測定される。付加的精製法としては、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、または高感度が所望の場合はミクロボアHPLCを用いて部分的精製ペプチド断片を分離することを含む。これらのペプチドはその後電気化学的滴定によって定量される。好ましい電気化学的滴定プロトコールは、電気化学的検出器(Coulochem 5100A型)の検出用セルの酸化還元電位を純粋HPで最大シグナルに合わせることから成る。その後その検出器を用いて、部分的精製された尿中ペプチドを分離するために用いたC-18HPLCカラムからの溶出液をモニターする。
【0056】
(骨吸収を指数化するための蛍光測定法)
3-ヒドロキシピリジニウム架橋を有するペプチド断片の濃度を定量するためのまた別の好ましい方法はこれらペプチド断片の特徴的自然蛍光を測定することである。3-ヒドロキシピリジニウム架橋以外には天然に発生する蛍光物質をほとんど含まない体液では、それ以上体液を精製せずに蛍光測定が直接行われる。この場合、Eyre,D.R.らのAnalyl.Biochem.137巻380ページ(1984)に記載されているものとほとんど同様の方法で、ペプチド断片はHPLCによって分離され、HPおよびLPアミノ酸残基の自然蛍光が297nmで励起されて395nmで測定される。
【0057】
本発明により、蛍光測定は尿で行うのが好ましい。しかし尿は、蛍光測定を実施する前に除去しなければならない天然に発生する蛍光混入物を含むのが普通である。よって尿試料を先づ、上で電気化学的検出のために記したように部分的に精製する。この部分的に精製した尿試料をそれから上述のように蛍光測定することができる。別法として、部分的に精製した尿試料またはその他の体液中のHPおよびLP架橋ペプチドをEyreら(1984)(上記参照)が記載したように6M HCl中で約108℃、約24時間で加水分解することができる。このプロセスは、“トリペプチド”HPおよびLP架橋のリジン前駆体に結合したアミノ酸を加水分解し、構造式IおよびIIによってあらわされる遊離HPおよびLPアミノ酸を生成する。これらの小さい“トリペプチド”をその後上記の方法、好ましくはHPLCによって分離し、自然蛍光を測定する(励起297nm、発光390nm)。
【0058】
任意に、体液(好ましくは尿)を、アセトニトリル/メタノール5〜10V/V%を加えた後C-18逆相アフィニティーカートリッジを直接通過させる。非滞留物をたとえば水酸化テトラブチルアンモニウムなどのカチオン性イオン対試薬で0.05-0.01Mに調節し、第二のC-18逆相カートリッジを通過させる。洗浄した滞留物(蛍光ペプチドを含む)を第二カートリッジからアセトニトリル:水(またはメタノール:水)で溶出し、乾燥し、蛍光ペプチドを逆相HPLCまたはミクロボアHPLCによって、0.01Mトリフルオロ酢酸(溶離剤中)などのアニオン性イオン対試薬を用いて分析する。別法としての、またはこのペプチド精製操作法に含まれる、Bio Gel P2(Bio-Radlabs)または同等のゲル濾過媒質を用いる分子筋段階を用いることができる。
【0059】
図5は、正常人尿からのペプチド断片加水分解物について、逆相HPLCによって分離された自然蛍光の溶出曲線を示す。与えられた成分の範囲内の積分面積を測定することによって、試料中のその成分の濃度を決める。正常人尿およびぺージェット病患者の尿(図6)のHP:LP比は両方共約4.5:1である。これは骨そのものに見出される比4:1よりわずかに高い(Eyre et al.,1984)。尿に見出される比較的高い比は、尿中のHPフラクションの一部がたとえば食事などの骨以外のソースから、またはその他のコラーゲン分解ソース、すなわち軟骨異化作用からくることを示している。骨だけに由来するLPを用いて骨吸収の絶対的指数を提供するのが好ましいのはこのためである。しかしながらたとえばリウマチ様関節炎などの場合のような過剰の軟骨分解がない場合、または骨が急速に吸収される場合にはHPまたはHP+LPの組み合わせが骨吸収の指数として用いられる。
【0060】
本発明を好ましい実施態様に関連づけて説明したが、以上の明細書を読んだ当業者は、ここに示される内容に種々の変化、均等物の変換および変更を加えることができる。したがって本発明はここに詳細に説明された以外の方法で実施され得る。よって、ここで特許証によって付与される保護は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
骨コラーゲン中のヒドロキシピリジニウム残基対年令のグラフである。
【図2】
図2はヒドロキシリジルピリジノリン(HP):リジルピリジノリン(LP)の比対年令のグラフである。
【図3】
図3は3-ヒドロキシピリジニウ架橋を含む主なペプチド断片の位置を示す、アミノ末端テロペプチドの典型的逆相HPLC自然蛍光溶出曲線である。
【図4】
図4は3-ヒドロキシピリジニウム架橋を含む主なペプチド断片の位置を示すカルボキシ末端テロペプチドの典型的逆相HPLC自然蛍光溶出曲線である。
【図5】
図5は正常人尿のペプチド断片の加水分解物をあらわす、自然蛍光の典型的逆相HPLC溶出曲線である。
【図6】
図6はぺージェット病患者の尿中ペプチド断片の加水分解物をあらわす自然蛍光の典型的逆相HPLC溶出曲線である。
化学式等を記載した書面
【化1】

【化2】

【化3】、【化5】(すべて同一内容の化学式である)

【化4】、【化6】(すべて同一内容の化学式である)

 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許請求の範囲の減縮を目的として、下記事項を訂正する。
(1)訂正事項A
請求項1の「ペプチド断片の体液中の濃度を定量する骨吸収速度測定方法」において、「体液をペプチド断片に特異的な免疫学的結合パートナーと接触させることにより定量する」ものに限定する訂正。
(2)訂正事項B
請求項5〜請求項7を削除する 訂正。
(3)訂正事項C
上記請求項の削除にともなって、請求項8〜請求項13を請求項5〜請求項10に項番号を整列させる訂正。
異議決定日 2000-03-24 
出願番号 特願平8-195241
審決分類 P 1 651・ 534- YA (G01N)
P 1 651・ 531- YA (G01N)
P 1 651・ 121- YA (G01N)
P 1 651・ 1- YA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今村 玲英子大久保 元浩亀田 宏之  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 伊坪 公一
植野 浩志
登録日 1998-07-17 
登録番号 特許第2802751号(P2802751)
権利者 ワシントン リサーチ ファンデーション
発明の名称 骨吸収速度測定方法  
代理人 篠田 文雄  
代理人 竹内 卓  
代理人 芳村 武彦  
代理人 津国 肇  
代理人 篠田 文雄  
代理人 津国 肇  
代理人 芳村 武彦  

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