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審決分類 審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C03C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
審判 一部申し立て 2項進歩性  C03C
管理番号 1024165
異議申立番号 異議1998-73017  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-07-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-06-17 
確定日 2000-06-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2691276号「半導体ドープマトリックスの製造方法」の請求項1ないし4、7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2691276号の請求項1ないし4、7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2691276号は、昭和63年1月19日に特許出願され、平成9年9月5日にその特許の設定登録がなされ、その後、吉田義男より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年5月15日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
ア.訂正事項
訂正事項a.
特許請求の範囲の請求項1において、
「半導体を分散した分散液を、少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加し、該金属アルコキシドまたは該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする半導体ドープマトリックスの製造方法。」とあるのを、
「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体を分散した分散液を、少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加し、該金属アルコキシドまたは該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。」と訂正する。
訂正事項b.
特許請求の範囲の請求項3において、
「少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を半導体分散液に浸漬し、該半導体を該金属アルコキシドの部分加水分解.縮合生成物に含有せしめることを特徴とする半導体ドープマトリックスの製造方法。」とあるのを、
「少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体分散液に浸漬し、該半導体を該金属アルコキシドの部分加水分解.縮合生成物に含有せしめることを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。」と訂正する。
訂正事項c.
特許請求の範囲の請求項4において、
「半導体原料を溶解させた半導体原料溶液を、少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加したのち、前記添加させた半導体原料を反応させて半導体粒子とし、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。」とあるのを、
「半導体原料を溶解させた半導体原料溶液を、少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加したのち、前記添加させた半導体原料を反応させてCuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体粒子とし、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。」と訂正する。
訂正事項d.
特許明細書第14頁第2〜3行、およひ特許明細書第20頁第2行(特許公報第4頁左欄14行、および第5頁左欄第11〜12行)に記載の「テトラキシシラン」を「テトラエトキシシラン」と訂正する。
訂正事項e.
特許明細書第17頁第11行(特許公報第4頁右欄第20行)に記載の「硫化銅」を「硫化カドミウム」と訂正する。
訂正事項f.
特許明細書第17頁第16行(特許公報第4頁右欄第25行)に記載の「硫化カドミウム」を「硫酸カドミウム」と訂正する。
訂正事項g.
特許明細書第19頁第17行(特許公報第5頁左欄第9行)に記載の「硫化銅」を「硫酸銅」と訂正する。
訂正事項h.
特許明細書第15頁第11行〜第16頁第11行に記載の「〔実施例3〕・・・次にこの」を、
「〔実施例3〕
メチルトリエトキシシラン2モルと、フェニルトリエトキシシラン1モルおよび水9モルを反応容器中にいれ、80℃で約5時間反応させた。副反応生成物のエタノールおよび水を留去し粘調液体を得た。この粘調液体を150〜190℃で約1分加熱した後冷却し生成物を得た。この生成物を溶解したジメチルフォルムアミド(DMF)溶液を、酢酸銅を溶解したDMF溶液中に加えた。次にこの」と訂正する。
訂正事項i.
特許明細書第21頁第13行〜第22頁第6行(特許公報第5頁右欄第1〜10行)に記載の「[実施例13]・・・得た。」を削除する。
訂正事項j.
特許明細書第16頁第7行に記載の[実施例4]を[実施例3]と、同第16頁第16行に記載の[実施例5]を[実施例4]と、同第17頁第15行に記載の[実施例6]を[実施例5]と、同第18頁第14行に記載の[実施例7]を[実施例6]と、同第19頁第5行に記載の[実施例8]を[実施例7]と、同第19頁第16行に記載の[実施例9]を[実施例8]と、同第20頁第7行に記載の[実施例10]を[実施例9]と、同第20頁第15行に記載の[実施例11]を[実施例10]と、同第21頁第5行に記載の[実施例12]を[実施例11]と、同第22頁第7行に記載の[実施例14]を[実施例12]と、訂正する。
訂正事項k.
特許明細書第19頁第2行、同第19頁第13行、同第22頁第10行、同第23頁第15行に記載の[実施例6]を[実施例5]と訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a、b、cは、「半導体」を「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl」に限定しようとするものであり、当該半導体群は特許明細書第11頁第15〜17行(特許公報第3頁右欄第24〜25行)に記載されている。また、上記訂正事項a、b、cは、「半導体ドープマトリックス」を「非線形光学素子用の半導体ドープマトリックス」に限定しようとするものであり、当該「非線形光学素子」は特許明細書第23頁第13行(特許公報第5頁右欄第32行)に記載されたものである。したがって、この訂正a,b,cは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
上記訂正事項d〜gは誤記の訂正を目的とする訂正であり、また願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
上記訂正事項h及びiは、特許明細書の不明瞭な記載を削除するためのもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
上記訂正事項j及びkは、訂正事項h及びiに整合するように特許明細書の実施例の番号を矛盾無く付け替えたもので、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
そして、上記訂正事項a〜kは、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
ウ.訂正明細書の請求項1〜7に係る発明
訂正明細書の請求項1〜7に係る発明(以下「本件発明1〜7」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された次のとおりのものである。
「(1)CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体を分散した分散液を、少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加し、該金属アルコキシドまたは該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(2)半導体分散液とアルコキシド溶液とを混合することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(3)少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体分散液に浸漬し、該半導体を該金属アルコキシドの部分加水分解.縮合生成物に含有せしめることを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(4)半導体原料を溶解させた半導体原料溶液を、少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加したのち、前記添加させた半導体原料を反応させてCuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体粒子とし、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(5)金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、二種以上の半導体溶液に浸漬し、前記半導体原料を反応させ半導体を生成させることを特徴とする特許請求の範囲第4項記載の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(6)少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、少なくとも一種の半導体原料溶液に浸漬した後、気体の半導体原料と反応させ、半導体を生成させ、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする半導体ドープマトリックスの製造方法。
(7)金属アルコキシドがテトラエトキシシランであることを特徴とする特許請求の範囲第1項から第6項記載のいずれかの半導体ドープマトリックスの製造方法。」
エ.独立特許要件の判断
I.取消理由通知において本件特許が特許法第36条第3項違反であると指摘した点について
「本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が容易に実施できる程度に発明の構成が記載されているとはいえない」と指摘した取消理由は、上記訂正請求による訂正によって解消した。
II.訂正明細書の請求項1〜4及び同請求項1〜4を引用する請求項7に係る発明、即ち本件発明1〜4及び本件発明1〜4を引用する本件発明7が特許法第29条第1項第3号に該当するか否かについて
(引用刊行物1)
本件発明1〜4及び本件発明1〜4を引用する本件発明7に対して、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭59-115366号公報)には、次の発明が記載される。
(1)1頁右下欄には、プラスチック製品、木材製品、金属製品等の表面硬度、耐摩耗性、耐薬品性、耐食性、耐候性等を改善した硬化膜を有する複合体に関するものであり、該硬化膜の屈折率を約1.5〜2.0まで任意に選定可能にし、該硬化膜の耐久特性を著しく向上せしめたものである、ことが記載される。
(2)特許請求の範囲には、(A)一般式(1)で示される少なくとも1種のエポキシ基を有するケイ素化合物又はその部分加水分解物、(B)一般式(2)で示される少なくとも1種のケイ素化合物又はその部分加水分解物、(C)粒径200ミリミクロン以下、屈折率1.6以上の無機微粒子、(D)周期律表第IV族の原子のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、金属アルコラート或いは配位子を有する金属キレート化合物、の上記(A)、(B)、(C)及び(D)を少なくとも含有する混合物を構成したことを特徴とする硬化膜を有する複合体、が記載される。
(3)2頁右上欄には、上記(A)、(B)成分は、硬化膜の主骨格を成し、該硬化膜の表面硬度、耐摩耗性に寄与するが、最大の特徴は、複合材基材との密着性を確保しながら硬化膜に可撓性を付与するものであることが記載される。
(4)2頁左下欄〜同右下欄には、(C)成分は、硬化膜の屈折率を約1.5以上に調節すべく添加するものであり、(C)成分は(A)、(B)両成分と(D)成分の触媒そして/或いは架橋作用により、より緻密な三次元性の硬化膜を形成する官能基を多数有するものでなければならない、と記載される。また、Al2O3,TiO2,・・・・・・・・、ZnO等が例示されている。使用に際しては、微粒子粉末を直接用いても、水又は有機溶媒に分散せしめたコロイド溶液としても良い、ことが記載される。
(5)3頁左下欄には、上記混合物の塗布後、複合体基材の変形温度や変形温度以下の温度で30分〜5時間焼付け、硬化させる、ことが記載される。
(対比・判断)
[本件発明1について]
本件発明1と上記刊行物1に記載の発明とを比較検討する。
刊行物1には、TiO2,ZnO等の無機微粒子(C)を分散した分散液を、少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物(A)、(B)中に、触媒そして/或いは架橋作用を有する(D)成分と共に添加し、該金属アルコキシドまたは該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することにより、無機微粒子(C)が含有された硬化膜を製造する方法、が記載されているといえる。
しかしながら、刊行物1には、本件発明1のように「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体」を使用する記載は一切無いし、その相違に伴い、刊行物1の「無機微粒子(C)が含有された硬化膜を製造する方法」は、本件発明1の「非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法」とは明らかに相違する。また、刊行物1のものは「触媒そして/或いは架橋作用を有する(D)成分」を必須成分とするが、本件発明1はそのような物を使用するものではない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。
[本件発明2について]
本件発明2は、本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。
[本件発明3について]
[本件発明1について]の判断の項で述べたように、刊行物1には、本件発明3のように「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体」を使用する記載は一切無いし、その相違に伴い、刊行物1の「無機微粒子(C)が含有された硬化膜を製造する方法」は、本件発明3の「非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法」とは明らかに相違する。また、刊行物1のものは「触媒そして/或いは架橋作用を有する(D)成分」を必須成分とするが、本件発明3はそのような物を使用するものではない。
したがって、本件発明3は、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。
[本件発明4について]
[本件発明1について]の判断の項で述べた理由と同様な理由により、本件発明4は、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。
[本件発明1〜4を引用する本件発明7について]
本件発明1〜4を引用する本件発明7は、本件発明1〜4を引用する発明であるから、本件発明1〜4についての判断と同様の理由により、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。
したがって、本件発明1〜4及び本件発明1〜4を引用する本件発明7は特許出願の際独立して特許を受けることができないものとはいえない。
オ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについての判断
ア.申立ての理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証(上記刊行物1)、甲第2号証(特開昭58-110414号公報)、甲第3号証(表面Vol.25,No.8,1987,株式会社広信社、1987年8月1日発行、477〜495頁)、甲第4号証(窯業協会昭和62年講演予稿集、昭和62年5月12日発行、865〜866頁)及び甲第5号証(特開昭61-97102号公報)を提出して、次の理由により本件請求項1〜4に係る発明及び本件請求項1〜4に係る発明を引用する請求項7に係る発明の特許を取り消すべきと主張している。
(1)本件特許は、特許法第36条の規定に違反している。
(2)本件請求項1〜4に係る発明及び本件請求項1〜4に係る発明を引用する請求項7に係る発明の特許は、甲第1号証或いは甲第2号証の記載を基に特許法第29条第1項第3号の規定に違反している。
(3)本件請求項1〜4に係る発明及び本件請求項1〜4に係る発明を引用する請求項7に係る発明の特許は、甲第1〜甲第5号証の記載を基に特許法第29条第2項の規定に違反している。
イ.本件発明1〜4、7
本件発明1〜4,7は、前記2.項ウに記載のとおりのものである。
ウ.申立人の主張(1)について
「本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が容易に実施できる程度に発明の構成が記載されているとはいえない」とする申立人の主張(1)は、上記訂正請求による訂正によって妥当なものではなくなった。
エ.申立人の主張(2)、(3)について
(甲各号証)
甲第1号証;
甲第1号証には、前記2.項エに記載のとおりの発明が記載される。
甲第2号証;
シリカと結合可能な周期律表第IV族の金属酸化物及びシリカを主な構成成分とする無機酸化物とその製造方法に関するもので、周期律表第IV族の金属酸化物として酸化チタニウムが例示されている。
上記無機酸化物を製造する方法として、次の方法が例示されている。
(1)加水分解可能な有機珪素化合物と加水分解可能な第IV族金属の有機化合物とを加水分解し、反応生成物を析出させる方法(5頁右下欄9〜14行)。
(2)加水分解可能な有機珪素化合物と加水分解可能な第IV族金属の有機化合物とを加水分解し、反応生成物を析出させ、次いで該反応系に加水分解可能な有機珪素化合物を添加し加水分解させて得る方法(8頁右下欄6〜13行)。
上記(1)、(2)の方法において用いられる有機珪素化合物としては、アルコキシシラン又はアルコキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合物が記載されており(5頁右下欄15行〜左上欄4行、8頁右下欄18行〜9頁左上欄2行)、また、第IV族金属の有機化合物としては、例えばチタンのアルコキシドが記載されている(6頁左上欄5行〜右上欄3行)。
甲第3号証;
TiO2、ZnOが半導体であることが記載される。
甲第4号証;
アナターゼ型酸化チタン系光触媒の相転移温度に及ぼすエチルシリケートの添加効果、について記載される。
甲第5号証;
半導体微粒子と溶液とを接触させた反応系に光を照射させて酸化還元反応を起こさせる光酸化還元法において、光ファイバーの側面に半導体微粒子を担持せしめて半導体微粒子つき光ファイバーとし、該半導体微粒子つき光ファイバーを溶液と接触させた後該光ファイバーを通して光ファイバー側面の反応系に光を照射する光酸化還元法、が記載される。
(対比・判断)
[本件発明1について]
前記2.項エにて記載したように、本件発明1は、甲第1号証(刊行物1)に記載であるとはいえない。
次に、本件発明1が甲第2号証に記載の発明であるか否かについて検討する。
甲第2号証は、シリカと結合可能な周期律表第IV族の金属酸化物及びシリカを主な構成成分とする無機酸化物とその製造方法に関するもので、甲第2号証には、本件発明1のように「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体」を使用する記載は一切無いし、その相違に伴い、甲第2号証の「シリカと結合可能な周期律表第IV族の金属酸化物及びシリカを主な構成成分とする無機酸化物の製造方法」は、本件発明1の「非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法」とは明らかに相違する。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。
さらに、本件発明1が甲第1〜甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものか否か検討する。
既に述べたように、甲第1,2号証記載の発明は、本件発明1のように「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体」を使用するものではなく、その相違に伴い、本件発明1の「非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法」の発明とは明らかに相違する。
また、甲第3〜甲第5号証にも、本件発明1のように「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体」を使用する記載は一切無いし、また、本件発明1の「非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法」を開示する記載も一切無い。
したがって、本件発明1は、甲第1〜甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
[本件発明2について]
本件発明2は、本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1或いは甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、また、甲第1〜甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
[本件発明3について]
前記2.項エにて記載したように、本件発明3は、甲第1号証(刊行物1)に記載であるとはいえない。
次に、本件発明3が甲第2号証に記載の発明であるか否かについて検討するに、甲第2号証には、本件発明3のように「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体」を使用する記載は一切無いし、その相違に伴い、甲第2号証の「シリカと結合可能な周期律表第IV族の金属酸化物及びシリカを主な構成成分とする無機酸化物の製造方法」は、本件発明3の「非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法」とは明らかに相違する。
したがって、本件発明3は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。
さらに、[本件発明1について]の判断の項で述べた理由と同様な理由により、本件発明3は、甲第1〜甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
[本件発明4について]
[本件発明1について]の判断の項で述べた理由と同様な理由により、本件発明4は、甲第1或いは甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、また、甲第1〜甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
[本件発明1〜4を引用する本件発明7について]
本件発明1〜4を引用する本件発明7は、本件発明1〜4を引用する発明であるから、本件発明1〜4についての判断と同様の理由により、甲第1或いは甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、また、甲第1〜甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
エ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜4及び本件発明1〜4を引用する本件発明7の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜4及び本件発明1〜4を引用する本件発明7の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、平成6年改正法附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体ドープマトリックスの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
(1)CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群がら選ばれた半導体を分散した分散液を、少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加し、該金属アルコキシドまたは該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線型光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(2)半導体分散液とアルコキシド溶液とを混合することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(3)少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体分散液に浸漬し、該半導体を該金属アルコキシドの部分加水分解.縮合生成物に含有せしめることを特徴とする、非線型光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(4)半導体原料を溶解させた半導体原料溶液を、少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加したのち、前記添加させた半導体原料を反応させてCuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群がら選ばれた半導体粒子とし、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線型光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(5)金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、二種以上の半導体原料溶液に浸漬し、前記半導体原料を反応させ半導体を生成させることを特徴とする特許請求の範囲第4項記載の半導体ドープマトリックスの製造方法。
(6)少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、少なくとも一種の半導体原料溶液に浸漬した後、気体の半導体原料と反応させ、半導体を生成させ、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする半導体ドープマトリックスの製造方法。
(7)金属アルコキシドがテトラエトキシシランであることを特徴とする特許請求の範囲第1項から第6項記載のいずれかの半導体ドープマトリックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
〔発明の属する分野〕
本発明は半導体ドープマトリックスの製造方法、さらに詳細には、種々の光学素子に適用可能な半導体をドープしたマトリックスの製造方法に関する。
〔従来技術〕
光論理素子や光スイッチなどの実現を目的として非線形光学効果の大きい物質の探索が進められている。この種のものとして金属または半導体の微粒子を分散したガラスなどの誘電体が最近注目されている。従来のこの種のガラスの合成方法としては、例えば塩化第1銅(CuCl)をドープする方法を例にとると、硅酸塩系ガラス原料とCuClの原料である銅化合物および塩素化合物を混合、溶融しガラスブロックを合成した後、再加熱処理によりガラス中にCuClを析出していた。この方法において、CuC1微粒子の粒径は熱処理条件によって変えることができるが、その制御は極めて困難であった。また、この方法は溶融時および固化時での半導体原料の溶融度に大きな差異が必要であり、適用できる半導体の種類は限定されていた。
〔発明が解決する問題点〕
これらの問題点を打破するため、最近ゾルゲル法によるガラス合成時にシリコンなどの半導体微粒子をドープする方法が提案されている。この方法はマトリックス中に均一にドープできるなどの優れた特徴を持っているが、半導体の粒径および粒径分布は出発微粒子のそれによって限定される問題点がある。実際問題として、粒径が小さくかつ均一な半導体微粒子を入手することは困難であるため、実質的にドープできる半導体の種類は限られていた。
本発明は、上述の問題点を解決することを目的とする。さらに詳細には粒径が小さくかつ粒径の分布の均一な半導体をドープしたマトリックスの製造方法、および新しいドーパントの添加を可能にするマトリックスの製造方法を提供することを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
上述の問題点を解決するため、本発明による半導体ドープマトリックスの製造方法は、半導体を分散した分散液を、少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加し、該金属アルコキシドまたは該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴としている。
また、半導体原料を溶解させた半導体原料溶液を少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加したのち、前記添加させた半導体原料を反応させて半導体粒子とし、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴としている。
また、本発明の半導体ドープマトリックスの製造方法によれば、少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を半導体分散液に浸漬し、該半導体を該金属アルコキシドの部分加水分解.縮合生成物に含有せしめることを特徴とする。
さらに本発明の半導体ドープマトリックスの製造方法によれば、少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、少なくとも一種の半導体原料溶液に浸漬した後、気体の半導体原料と反応させ、半導体を生成させ、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする。
本発明者らは粒径が小さくかつ粒径分布の均一な半導体微粒子をドープしたマトリックス、および広範囲の半導体のドープを可能にするマトリックスの製造方法を種々検討した結果、半導体分散液を少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加し、加水分解・縮合することにより、あるいは半導体原料溶液を金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加した後、反応させて半導体粒子を形成させ、加水分解・縮合することにより、さらには少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を半導体分散液に浸漬し、該半導体を該金属アルコキシドの部分加水分解.縮合生成物に含有せしめることにより、あるいは少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、少なくとも一種の半導体原料溶液に浸漬した後、気体の半導体原料と反応させ、半導体を生成させ、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することにより粒径が小さくかつ粒径分布の均一な半導体をドープしたマトリックスが得られることを見出し本発明に至ったものであり、さらに本発明によれば広範囲の半導体をドープしたマトリックスの製造が可能になることも見出した。
次に本発明ついてさらに詳細に説明する。
本発明におけるマトリックス成分は金属アルコキシドの加水分解および縮合生成物からなるが、これらの反応を中途段階でとめたものあるいは実質的に終了したものが含まれる。
本発明における金属アルコキシドにおける金属は、Si,Ge,Ti,Zr,Al,B,Nb,Ga,Sn,Pb,P,Sb,Ta等が例示されるが、Siが最も一般的である。
本発明の金属アルコキシドにおいてはすべての置換基がアルコキシル基でなくてもよい。金属がシランの場合を例にとると、石英ガラスの原料であるテトラアルコキシシランのほかにアルコキシル基の一部が有機基に置換されたトリアルコキシシラン、ジアルコキシラン、モノアルコキシシランがあげられる。この種の有機基は特に限定するものではないが、エチル、メチル等のアルキル基、ビニル等のアルケニル基、フェニル等のアリール基あるいはこれらの誘導体が例示される。また、これらの有機基中に重合性二重結合が含まれる場合はこれを利用して分子間の架橋を生じさせることができる。また、アルコキシル基の代わりに塩素等のハロゲンを用いてもアルコキシシランを用いた場合と同様な効果が期待できる。
本発明に用いられるモノアルコキシドとしてはメトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシフェニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン等が例示される。ジアルコキシドとしてはジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルー3、3、3-トリフロロプロピルシラン、ジエトキシジビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-(2-アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、トリス-(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、ジブトキシ鉛等が例示される。トリアルコキシドとしてはメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、3、3、3-トリプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-(N-メチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリス(2-アミノエトキシ)シラン、トリアセトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、エチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリブトキシガリウム、トリエトキシボロン等が例示される。テトラアルコキシドとしてはテトラメトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラエトキシジルコン、テトラメトキシゲルマン、テトラブトキシゲルマン、テトラプロポキシ錫、テトラブトキシチタン等が例示される。ペンタアルコキシドとしてはペンタブトキシニオブ、ペンタブトキシタリウム等が例示される。
本発明における金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物とは、金属アルコキシドの加水分解反応および縮合反応が完全に終了していないものであり、さらに加熱することによって縮合反応が進む。金属アルコキシドがテトラアルコキシシランの場合にはゲルあるいはゾルと呼ばれるものである。
金属アルコキシドの加水分解反応および縮合反応はテトラアルコキシシランを例にとると(1)、(2)式の様に示される。
Si(OR)4+4H2O→Si(OH)4+4ROH ...(1)
Si(OH)4→SiO+H2O ...(2)
しかし、周知のごとく一般に縮合反応速度は加水分解反応速度より遥かに速いため、加水分解と縮合は逐次的に生じるものではなく、実際には同時に起こっているものと考えられている。したがって、触媒、温度、時間などの反応条件を調節し、加水分解速度を制御することにより、反応の進行状態の異なった生成物、すなわち異なった特性を持つ生成物が得られる。これらの生成物は出発原料のアルコキシドの種類や反応の進行度によって構造や特性、例えば有機溶媒に対する溶解性などが異なるため所望とする特性の生成物を得ることが可能であるとともに、一旦生成物として取り出した後再加熱などにより反応を進めることができる。
本発明における半導体およびその原料は特に限定するものではなく有機化合物、無機化合物の何れでもよく、各種の有機溶媒、無機溶媒に溶解あるいは分散するものなら適用可能である。具体的にはCuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、ZnxCd1-x、CoS、CuC1等が例示される。
本発明による半導体ドープマトリックスの製造方法は、具体的にはいくつかの異なった方法がある。半導体として硫化カドミウム(CdS)を例にとるとCdSは例えば次のような反応によって得られる。
CdSO4+H2S→CdS+H2SO4 ...(3)
Cdl2+H2S→CdS+2Hl ...(4)
(3)式および(4)式に示したCdSの原料は水やジメチルフォルムアミド(DMF)等の有機溶媒に溶解し、また生成物のCdSは水に分散してハイドロゾルになり、あるいは有機溶媒に分散してオルガノゾルとなる。このようなオルガノゾルやハイドロゾルの粒径は一般に小さく100Å以下の粒径の微粒子も比較的容易に得られる。したがって、金属アルコキシドの溶液、あるいは金属アルコキシドの加水分解・縮合生成物中に上記のハイドロゾルやオルガノゾルを加えた後、加水分解・縮合することによりCdSをドープしたマトリックスが得られる。同様にオルガノゾルあるいはハイドロゾルを分散した分散液中に金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を浸した後、さらに該生成物を加水分解・縮合することによりCdSをドープしたマトリックスが得られる。また、別の方法としてはCdSO4やCdCl2の溶液中に金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を溶解あるいは浸した後、H2Sガスと反応することにより、CdSをドープしたマトリックスが得られる。また、例えばオルガノゾルやハイドロゾルを例にとると、特に特別の方法をとらない限り、マトリックス中の微粒子径の大きさは分散液中のそれと同じであるため、粒径が小さくかつ均一な微粒子がドープされる。
本発明において、分離膜などを用いて粒径分布を揃えた後、該分散液をマトリックスあるいはその出発原料中になどに加えても良い。これも本発明が溶液あるいは分散液を用いることの利点の1つである。なお、分散液において、スチレン/無水マレイン酸などの分散安定剤を加えることも有効である。
〔実施例1〕
水に硫酸銅を溶解した後脱気した。この溶液にヘリウムガスで希釈した濃度5%の硫化水素ガスを流し、硫化銅のハイドロゾルを得た。また、テトラエトキシシラン、水、アンモニア水およびエタノールからなる溶液を70℃で2週間反応させた。得られたゲル状ガラスを100℃で3日間乾燥し、多孔質ガラスを得た。
この多孔質ガラスをハイドロゾル溶液中に常温で3時間含浸した後、減圧化で乾燥し、硫化銅がドープされたマトリックスを得た。
〔実施例2〕
酢酸銅をジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解した後脱気した。次にこの溶液にヘリウムで希釈した硫化水素ガスを流し、反応させ暗緑色コロイド(オルガノゾル)が分散した分散液を得た。X線解析などの結果、このコロイド状化合物はCuSであることがわかった。また、レーザー光散乱法により測定した結果、平均粒径は700Åであった。
メチルトリエトキシシラン2モルと、フェニルトリエトキシシラン1モルおよび水9モルを反応容器中に入れ、80℃で約5時間反応させた。副反応生成物のエタノールおよび水を留去し粘調液体を得た。この粘調液体を150〜190℃で約1分加熱した後冷却し、生成物を得た。
この生成物を溶解したDMSOの溶液を上記のオルガノゾルを分散した液中に加え、この溶液をガラス板上にキャストし、減圧下で乾燥した後150℃で200分加熱し、硫化銅がドープされたマトリックスを得た。
〔実施例3〕
メチルトリエトキシシラン2モルと、フェニルトリエトキシシラン1モルおよび水9モルを反応容器中にいれ、80℃で約5時間反応させた。副反応生成物のエタノールおよび水を留去し粘調液体を得た。この粘調液体を150〜190℃で約1分加熱した後冷却し生成物を得た。この生成物を溶解したジメチルフォルムアミド(DMF)溶液を、酢酸銅を溶解したDMF溶液中に加えた。次にこの溶液をガラス板上にキャストし、減圧下で乾燥した溶媒を除去した後、150℃で200分加熱しフイルムとした。次に該フイルムを硫化水素と室温下で5日間反応させ、黒色の硫化銅がドープされたマトリックスを得た。
〔実施例4〕
ヨウ化カドミウムをジメチルフォルムアミド(DMF)に溶解した後脱気した。次にこの溶液に硫化水素ガスを流し反応させ、黄色コロイド(オルガノゾル)が分散した分散液を得た。X酸解析などの結果、このコロイド状化合物はCdSであることがわかった。また、レーザー光散乱法により測定した結果、平均粒径は50Åであった。次にテトラエトキシシラン、水、アンモニア水およびエタノールからなる溶液を70℃で2週間反応させた。得られたゲル状ガラスを100℃で3日間乾燥し、多孔質ガラスを得た。この多孔質ガラスをオルガノゾル溶液中に常温で3時間含浸した後、減圧下で乾燥し、硫化カドミウムがドープされた多孔質ガラスを得た。さらにこの多孔質ガラスを1200℃加熱しガラス化し、硫化カドミウムがドープされたマトリックスを得た。
〔実施例5〕
硫酸カドミウムを水に溶解した後脱気した。次にこの溶液中に硫化水素を流し反応させ、黄色コロイド(ハイドロゾル)が分散した分散液を得た。X線解析などの結果、このコロイド状化合物はCdSであることがわかった。また、レーザー光散乱法により測定した結果、平均粒径は60Åであった。
次にテトラエトキシシラン、水、アンモニア水およびエタノールからなる溶液を70℃で2週間反応させて得た溶液中に上記のハイドロゾル分散液を加えた後、該溶液を100℃で3日間熱処理し、CdSがドープされたガラス微粒子を得た。
さらにCdSがドープされたガラス微粒子を1200℃で加熱し、硫化カドミウムがドープされたマトリックスを得た。第1図に生成物の赤外吸収スペクトルを示す。1000cm-1付近にCdSの吸収(ショールダー)が認められる。
〔実施例6〕
苛性ソーダでpH9に調節した硫化アンモニウム〔(NH4)2S〕水溶液中に硫酸カドミウム水溶液を加えた。添加が進むにともない溶液は黄色になり、硫化カドミウムの生成が認められた。なお、この反応においては凝集防止剤として、0.1重量%のスチレン/無水マレイン酸共重合体を用いた。このハイドロゾルを用い、実施例5と同様な方法により、CdSがドープされたガラス微粒子およびマトリックスを得た。
〔実施例7〕
硫化アンモニウム〔(NH4)2S〕を溶解したアセトニトリルの溶液中に硝酸カドミウムを溶解したアセトニトリル溶液を加えた。添加が進むに連れて溶液は薄青色になり硫化カドミウムの生成が認められた。なお、この反応においては凝集防止剤として、0.1重量%のスチレン/無水マレイン酸共重合体を用いた。このオルガノゾルを用い、実施例5と同様な方法により、CdSがドープされたガラス微粒子およびマトリックスを得た。
〔実施例8〕
水に硫酸銅を溶解した後脱気した。この溶液にヘリウムガスで濃度5%に希釈した硫化水素ガスを流し、硫化銅のハイドロゾルを得た。次に該ハイドロゾル溶液をテトラエトキシシラン、水、アンモニア水およびエタノールからなる溶液に加え、該溶液を70℃で2週間加熱した。次に溶液を100℃で3日間加熱し硫化銅をドープしたマトリックスを得た。
〔実施例9〕
酢酸銅を溶解したDMF溶液中に実施例2に用いたと同様なアルコキシドの加水分解生成物のフィルムを常温で3時間浸した。減圧下で乾燥することにより溶媒を除去した後、該フィルムと硫化水素を室温で1週間反応させた。しかる後得られた複合体を150℃で3時間加熱し、CuSをドープしたマトリックスを得た。
〔実施例10〕
60℃に加熱した硫酸銅の水溶液に塩化ナトリウムを加え溶解した。この溶液にメチルエトキシシランとフェニルエトキシシランの加水分解・縮合生成物からなるフイルムを5時間浸した後、該フイルムを150℃で200分加熱した。さらに得られたフィルムに室温で4時間二酸化硫黄を通じ塩化第1銅をドープしたマトリックスを得た。
〔実施例11〕
実施例1で作製したアルコキシドの加水分解縮合生成物をヨウ素およびヨウ化カリを溶解した水溶液中に室温で2時間浸した後、硫酸銅およびチオ硫酸ナトリウム水溶液中に浸し、70℃で5時間反応した。得られた暗緑色のフィルムを減圧乾燥した後、170℃で200分加熱し硫化銅をドープしたマトリックスを得た。
〔実施例12〕
テトラメトキシゲルマン、メチルアルコールおよびアンモニア水溶液からなる水溶液を60℃で1週間反応させた。この溶液に実施例5で用いたと同様な方法により合成した硫化カドミウム(CdS)のハイドロゾルの分散液をくわえた後、120℃まで徐々に昇温し、120℃で3日間熱処理し、CdSをドープしたマトリックスを得た。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば半導体またはその原料を溶解した溶液または分散した分散液を用いるため、粒径が小さくまた均一な粒径分布を持つ半導体微粒子をドープすることができる。また、有機または無機の溶媒に溶解あるいは分散する半導体またはその原料の適用が可能であるため、極めて広範囲の半導体をドープすることができる。さらに、マトリックスとしては置換あるいは未置換の金属アルコキシドの加水分解・縮合生成物を用いるため、1000℃以上での高温での成形が可能であるとともに150℃程度の低温での成形も可能であるため、広い範囲のドーパントの適用が可能であるとともに、素子や部品製造のプロセスとの適合が容易である利点がある。したがって、本発明のマトリックスは広い範囲において非線形光学素子として用いられる利点がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例5において得られた生成物の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
 
訂正の要旨 訂正事項a.
特許請求の範囲の請求項1において、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「半導体を分散した分散液を、少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加し、該金属アルコキシドまたは該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする半導体ドープマトリックスの製造方法。」とあるのを、
「CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体を分散した分散液を、少なくとも一種の金属アルコキシドまたは金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加し、該金属アルコキシドまたは該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。」と訂正する。
訂正事項b.
特許請求の範囲の請求項3において、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を半導体分散液に浸漬し、該半導体を該金属アルコキシドの部分加水分解.縮合生成物に含有せしめることを特徴とする半導体ドープマトリックスの製造方法。」とあるのを、
「少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を、CuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体分散液に浸漬し、該半導体を該金属アルコキシドの部分加水分解.縮合生成物に含有せしめることを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。」
と訂正する。
訂正事項c.
特許請求の範囲の請求項4において、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「半導体原料を溶解させた半導体原料溶液を、少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加したのち、前記添加させた半導体原料を反応させて半導体粒子とし、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。」とあるのを、
「半導体原料を溶解させた半導体原料溶液を、少なくとも一種の金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物中に添加したのち、前記添加させた半導体原料を反応させてCuS、CdS、NiS、Cu2S、HgS、ZnS、PdS、MnS、CoS、CuCl、よりなる群から選ばれた半導体粒子とし、該金属アルコキシドの部分加水分解・縮合生成物を加水分解・縮合することを特徴とする、非線形光学素子用の半導体ドープマトリックスの製造方法。」と訂正する。
訂正事項d.
特許明細書第14頁第2〜3行、およひ特許明細書第20頁第2行(特許公報第4頁左欄14行、および第5頁左欄第11〜12行)に記載の「テトラキシシラン」を「テトラエトキシシラン」と訂正する。
訂正事項e.
特許明細書第17頁第11行(特許公報第4頁右欄第20行)に記載の「硫化銅」を「硫化カドミウム」と訂正する。
訂正事項f.
特許明細書第17頁第16行(特許公報第4頁右欄第25行)に記載の「硫化カドミウム」を「硫酸カドミウム」と訂正する。
訂正事項g.
特許明細書第19頁第17行(特許公報第5頁左欄第9行)に記載の「硫化銅」を「硫酸銅」と訂正する。
訂正事項h.
特許明細書第15頁第11行〜第16頁第11行に記載の「〔実施例3〕・・・次にこの」を、
「〔実施例3〕
メチルトリエトキシシラン2モルと、フェニルトリエトキシシラン1モルおよび水9モルを反応容器中にいれ、80℃で約5時間反応させた。副反応生成物のエタノールおよび水を留去し粘調液体を得た。この粘調液体を150〜190℃で約1分加熱した後冷却し生成物を得た。この生成物を溶解したジメチルフォルムアミド(DMF)溶液を、酢酸銅を溶解したDMF溶液中に加えた。次にこの」と訂正する。
訂正事項i.
特許明細書第21頁第13行〜第22頁第6行(特許公報第5頁右欄第1〜10行)に記載の「[実施例13]・・・得た。」を削除する。
訂正事項j.
特許明細書第16頁第7行に記載の[実施例4]を[実施例3]と、同第16頁第16行に記載の[実施例5]を[実施例4]と、同第17頁第15行に記載の[実施例6]を[実施例5]と、同第18頁第14行に記載の[実施例7]を[実施例6]と、同第19頁第5行に記載の[実施例8]を[実施例7]と、同第19頁第16行に記載の[実施例9]を[実施例8]と、同第20頁第7行に記載の[実施例10]を[実施例9]と、同第20頁第15行に記載の[実施例11]を[実施例10]と、同第21頁第5行に記載の[実施例12]を[実施例11]と、同第22頁第7行に記載の[実施例14]を[実施例12]と、訂正する。
訂正事項k.
特許明細書第19頁第2行、同第19頁第13行、同第22頁第10行、同第23頁第15行に記載の[実施例6]を[実施例5]と訂正する。
上記訂正事項d〜gは誤記の訂正を目的とする訂正である。
上記訂正事項h〜kは明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
異議決定日 2000-05-30 
出願番号 特願昭63-9229
審決分類 P 1 652・ 113- YA (C03C)
P 1 652・ 531- YA (C03C)
P 1 652・ 121- YA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三崎 仁  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 新居田 知生
能美 知康
登録日 1997-09-05 
登録番号 特許第2691276号(P2691276)
権利者 日本電信電話株式会社
発明の名称 半導体ドープマトリックスの製造方法  
代理人 澤井 敬史  
代理人 吉川 俊雄  
代理人 澤井 敬史  

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