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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B05D 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:541 B05D 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:543 B05D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B05D |
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管理番号 | 1024232 |
異議申立番号 | 異議1999-71982 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-06-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-05-25 |
確定日 | 2000-03-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2827644号「潤滑性、成形加工性、成形後外観性および耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2827644号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続の経緯 特許第2827644号の請求項1乃至4に係る発明は、平成3年12月12日に出願され、平成10年9月18日に設定登録され、その後、新日本製鐵株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月18日に訂正請求がなされたものである。 (2)訂正の適否 ア.訂正の内容 a.特許請求の範囲の訂正 (a-1)【請求項1】第9行及び第14行(特許公報第1頁左下欄第6行及び第10行)に「溶剤系熱硬化型樹脂」とあるのを、「溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂」に訂正する。 (a-2)【請求項1】第24行(特許公報第1頁右下欄第14行)に「からなっていること」とあるのを、「からなる架橋構造体であること」に訂正する。 b.発明の詳細な説明の訂正 (b-1)【0016】段落第9行及び第14行、【0018】段落第1行(特許公報第3頁左欄第31行及び第35行、第3頁右欄第42行)の「溶剤系熱硬化型樹脂」とあるのを、「溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂」に訂正する。 (b-2)【0016】段落最終行及び【0018】段落第10行(特許公報第3頁左欄第43〜44行及び第3頁右欄第50行〜第4頁左欄第1行)の「からなっていること」とあるのを、「からなる架橋構造体であること」に訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記の訂正(a-1)は、【請求項1】に記載された「溶剤系熱硬化型樹脂」をより下位概念の「溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂」と限定するものであり、上記の訂正(a-2)は、【請求項1】に記載された「溶剤系熱硬化型樹脂」を「架橋構造体」である点で限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、上記の訂正(b-1)(b-2)は、上記【請求項1】の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当し、又、上記の訂正a.b.は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ.独立特許要件の判断 1)訂正明細書の請求項1乃至4に係る発明 訂正明細書の請求項1乃至4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】亜鉛めっき鋼板または亜鉛系合金めっき鋼板の少なくとも1つの亜鉛系めっき層の上に、クロメート被膜が形成され、そして、前記クロメート被膜の上に、塗料の塗布そしてその加熱硬化による樹脂被膜が形成されている亜鉛系めっき鋼板であって、 前記クロメート被膜の量は、金属クロム換算で、鋼板の片面当たり5〜200mg/m2の範囲内であり、 前記樹脂被膜の厚さは、鋼板の片面当たり、0.3〜3.0μmの範囲内であり、前記樹脂被膜は、固形分換算で、 (A)溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂 :100重量部、 (B)固形潤滑剤としての90〜130℃の融点を有するポリエチレン樹脂 :1〜30重量部、および、 (C)防錆顔料 :3〜30重量部、 からなっており、そして、 前記溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂は、 (A)下記からなる水酸基含有ウレタンプレポリマー、 (a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール、 (b)イソシアネート化合物、および、 (c)2価のアルコール、 および、 (B)硬化剤としてのブロックポリイソシアネートプレポリマーおよびアミノ樹脂のうちの少なくとも1種、 からなる架橋構造体であることを特徴とする、潤滑性、成形加工性、成形後外観性および耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板。 【請求項2】前記水酸基含有ウレタンプレポリマー中の前記イソシアネート化合物は、芳香族環を有するイソシアネートである、請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板。 【請求項3】前記固形潤滑剤は、平均分子量が5,000以下で且つ粒径が20μm以下であるポリエチレン樹脂からなっている、請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板。 【請求項4】前記防錆顔料は、クロム酸塩系化合物およびシリカのうちの少なくとも1種からなっている、請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板。」 2)第29条第1項第3号,第2項違反について (引用刊行物1乃至5記載の発明) 訂正明細書の請求項1乃至4に係る発明に対して、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開平1-301332号公報:特許異議申立人の提示した甲第1号証)には、 「亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板上に、クロム付着量が、金属クロム換算で、片面で200mg/m2以下のクロメート被膜を両面に有し、その上に、下記組成の樹脂混合物または複合物で、かつ、該樹脂混合物または複合物のガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、その付着量が、片面で乾燥重量で0.3〜3g/m2である樹脂被覆を両面に有することを特徴とする成形性に優れた潤滑樹脂処理鋼板。 樹脂混合物または複合物の組成 ・水酸基および/またはカルボキシル基を有する樹脂 100重量部 ・シリカ 10〜80重量部 ・融点が70℃以上のポリオレフィンワックス 200重量部以下」 が記載され、 公報第3頁左上欄第7行〜右上欄第2行に、『上記従来技術・・・目的とするものである。』なる記載、同第3頁右上欄第4行〜左下欄第3行に、『前述した従来技術・・・本発明に至った。』なる記載、同第4頁右上欄第8〜14行に、『本発明の潤滑樹脂混合物・・・ウレタン樹脂・・・等があげられる。』なる記載、同第5頁右上欄第17〜20行に、『ポリオレフィンワックスは、ポリエチレン・・・から成るワックスであれば、いずれでもよい。』なる記載、同第5頁左下欄第13〜16行に、『耐食性を・・・好ましい。』なる記載が、第8頁表1(その1),表2(その2)に、『融点90℃のポリエチレンワックスの使用』が記載されている。 同刊行物2(特開平3-16726号公報:特許異議申立人の提示した甲第2号証)には、 「亜鉛または亜鉛系あるいはアルミニウム系合金めっき鋼板上に、クロム付着量が、金属クロム換算で片面で200mg/m2以下のクロメート皮膜を両面に有し、その上に、下記組成の樹脂混合物または複合物で、その付着量が、片面で乾燥重量で0.3〜3g/m2である樹脂被覆を両面に有することを特徴とする成型性に優れた潤滑樹脂処理鋼板。 樹脂混合物または複合物の組成 水酸基および/またはカルボキシル基を有する樹脂 100重量部 シリカ 10〜80重量部 平均粒径が1〜7μmのポリオレフィンワックス 10重量部以下」 が記載され、 公報第2頁右下欄第7行〜第3頁左上欄第2行に、『上記従来技術・・・目的とするものである。』なる記載、同第3頁左上欄第4〜18行に、『前述した従来技術・・・本発明に至った。』なる記載、同第3頁右下欄第2〜8行に、『本発明の潤滑樹脂混合物・・・ウレタン樹脂・・・等があげられる。』なる記載、同第4頁左下欄第13〜20行に、『ポリオレフィンワックスはポリエチレン・・・用いてもよい。』なる記載、同第4頁右下欄第16〜19行に、『耐食性を・・・好ましい。』なる記載がある。 同刊行物3(特開平3-237173号公報:特許異議申立人の提示した甲第3号証)には、 「(1)官能基数が少なくとも3のポリエステルポリオールおよび(2)有機ジイソシアネートと、低分子量グリコールおよび、マクロジオールからなる数平均分子量100〜1000のOH成分との反応により得られる末端にNCO基を有するプレポリマーのブロック化物を含有してなる一液性熱硬化型樹脂組成物を金属板に塗布し、加熱硬化せしめたことを特徴とするプレコートメタル。」 が記載され、 公報第2頁左上欄第4〜13行に、『プレコート金属板・・・要求される。』なる記載、同第2頁右下欄第11行〜第6頁左下欄第10行に、『本発明に用いられる・・・芳香族ジイソシアネート・・・芳香脂肪族ジイソシアネート・・・前述のプレポリマーのブロック化物は公知の方法によりブロック剤と反応させることによって得られる。この反応に用いられるブロック剤としては・・・アミン系・・・重亜硫酸カリなど。』なる記載、同第7頁左上欄第11行に、『合成ワックス系』なる記載、同第7頁右上欄第5〜12行に、『プレコートメタル・・・亜鉛めっき鋼板,合金化亜鉛めっき鋼板・・・あげられる。』なる記載、同第7頁右上欄第16〜18行に、『塗装前処理としてはクロメート化成処理・・・などがある。』なる記載がある。 同刊行物4(特公昭63-28935号公報:特許異議申立人の提示した甲第4号証)には、 「(1)(イ)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(a1)と脂肪族二塩基酸(a2)と第1級ヒドロキシル基を持つ第2級アミン(a3)とを反応させてなる末端に第1級ヒドロキシル基を持つプレポリマー(A)と(ロ)ポリイソシアネート化合物(b1)とイソシアネート保護剤(b2)を反応させてなる部分保護イソシアネート化合物(B)とを(Aに含まれる第1級ヒドロキシル基の数)/(Bに含まれる遊離のイソシアネート基の数)の比が10/1〜1/1となるように反応させてなるウレタン変性エポキシ樹脂組成物 40〜70重量%、 (2)水可溶分が1重量%以下の防錆顔料 15〜25重量% (3)ポリオレフィンワックス 1〜10重量% (4)二硫化モリブデン 0.5〜5重量%及び (5)シリコーン樹脂 0.05〜1重量% を含んでなることを特徴とするプレコート鋼板用塗料組成物。」 が記載され、 公報第1頁右下欄第6〜10行に、『本発明は・・・組成物に関する』なる記載、同第2頁左欄第24〜28行に、『従って、本発明の・・・改良することにある。』なる記載、同第2頁右欄第29〜34行に、『本発明の・・・防錆顔料・・・クロメート顔料・・・好適である。』なる記載、同第3頁左欄第12〜14行に、『潤滑剤として、ポリオレフィンワックス、好ましくは分子量が1500〜3000程度のポリエチレン』なる記載、同第3頁右欄第18〜20行に、『本発明の塗料組成物を適用する素材としては、亜鉛めっき鋼板、亜鉛系めっき鋼板、・・・等である。』なる記載がある。 同刊行物5(特開平2-263633号公報:特許異議申立人の提示した甲第5号証)には、 「亜鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板の表面に、第1層として水可溶分が1〜30%、Cr6+/Cr3+の比が0.01〜1.0で且つ総クロム付着量が片面10〜150mg/m2からなる難溶性のクロメート皮膜を形成し、その上層に第2層として下記割合からなる有機溶剤型塗料組成物を固形皮膜として0.3〜5μm形成してなることを特徴としたプレス加工性及びスポット溶接性に優れた高耐食性着色薄膜塗装鋼板。 (イ)ウレタン化エポキシエステル樹脂(但し数平均分子量300〜100,000) 30〜90% (ロ)親水性ポリアミド樹脂(重合度50〜1,000) 5〜40% (ハ)シリカ粉末(平均粒径1〜100mμ) 5〜40% (ニ)ポリエチレンワックス(分子量1,000〜10,000) 1〜20% (ホ)平均粒径0.05〜5μmの無機顔料又は不溶性のアゾ系、アゾレーキ系、フタロシアニン系有機顔料からなる顔料群の少なくとも1種 0.1〜20% 〔不揮発分重量%〕」 が記載され、 公報第1頁右下欄第16〜18行に、『従来にない外観の意匠性やプレス加工性、電着塗装、溶接性といった機能性に富んだ高耐食性の表面処理鋼板』なる記載、同第4頁右上欄第12〜15行に、『次に・・・10〜20重量%の範囲内で用いられる』なる記載がある。 (対比・判断) <訂正明細書の請求項1に係る発明について> 訂正明細書の請求項1に係る発明と上記刊行物1乃至5に記載の発明とを対比すると、刊行物1乃至5に記載の発明は、訂正明細書の請求項1に係る発明を特定する事項である 「前記溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂は、 (A)下記からなる水酸基含有ウレタンプレポリマー、 (a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール、 (b)イソシアネート化合物、および、 (c)2価のアルコール、 および、 (B)硬化剤としてのブロックポリイソシアネートプレポリマーおよびアミノ樹脂のうちの少なくとも1種、 からなる架橋構造体である」 事項を備えておらず、当該事項により訂正明細書の請求項1に係る発明は、「表面に潤滑油等を塗布することなく、優れた潤滑性および成形加工性を有し、摩擦熱が発生する厳しい条件で成形加工が施されても、被膜に損傷や黒化が生ぜず、優れた成形後外観性および耐食性が得られる、工業上有用な効果が発揮される。」という顕著な効果を奏するものである。 したがって、訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1乃至5記載の発明であるとも、刊行物1乃至5記載の発明から容易に発明をすることができたものであるともいえない。 <訂正明細書の請求項2乃至4に係る発明について> 訂正明細書の請求項2乃至4に係る発明は、訂正明細書の請求項1に係る発明を引用するものであるから、訂正明細書の請求項2乃至4に係る発明についての判断は、訂正明細書の請求項1に係る発明についての判断と同じである。 3)第36条第4項,第5項違反について (記載不備の理由) 当審が通知した取消理由で指摘した記載不備の理由は、下記のとおりである。 本件特許公報の請求項1と段落【0016】には、樹脂被膜を形成する溶剤系熱硬化樹脂は、 「(A)下記からなる水酸基含有ウレタンプレポリマー、 (a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール、 (b)イソシアネート化合物、および、 (c)2価のアルコール、 および、 (B)硬化剤としてのブロックポリイソシアネートプレポリマーおよびアミノ樹脂のうちの少なくとも1種、 からなっている」 と記載されている。 ところが、本件特許公報の段落【0042】以下に記載された実施例では、熱硬化型樹脂は水酸基含有ウレタンプレポリマーであるとされ(15欄1〜3行に「表1のNo.1熱硬化型樹脂である水酸基含有ウレタンポリマーの製造例について述べる」と記載)、その製造にはポリエステルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)、及び2価のアルコール(c)が使用されているだけであり、(B)の硬化剤であるブロックポリイソシアネートプレポリマーあるいはアミノ樹脂を使用することは全く記載されていない。また、7頁に掲げられた成分表を見ても、いかなる硬化剤の使用も示されていない。このことは、表1のNo.1以外のNo.2〜8についても同様である(15欄23行〜16欄2行に、「上記と同じ方法により、表1のNo.2〜8の各種の異なる成分組成、不揮発分および粘度を有する水酸基含有ウレタンプレポリマーを調製した」とある)。そして更に、16欄9〜16行には、「表1に示した樹脂No.1〜8、表2に示した潤滑剤A、および、防錆顔料であるクロム酸塩系化合物としてのクロム酸ストロンチウムからなる塗料を、(中略)塗布した。次いで、これを、(中略)加熱して、(中略)樹脂被膜を形成した」とあり、この記載は、実施例に示された樹脂被膜は、硬化剤(B)を使用することなく、表1に示した樹脂、すなわち水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)のみを樹脂成分として形成したことを示している。このように、請求項1に記載された本件発明の構成要件fの溶剤系熱硬化型樹脂(水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)と硬化剤(B)とからなるもの)は、実施例により裏付けされておらず、従って溶剤系熱硬化型樹脂を含む樹脂被膜も、ひいてはこれらを構成要件とする本件発明の亜鉛系めっき鋼板自体も、実施例により少しも裏付けされていないものであるから、本件発明を発明の詳細な説明から明確に把握することはできない。これらから明らかなとおり、本件特許公報の発明の詳細な説明は、請求項1に記載された発明を実施しようとする当業者が容易にその実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載されてはいない。また、本件の特許請求の範囲は、発明の詳細な説明に記載した発明を記載しているとも、特許を受ける発明を明確に記載しているとも言えない。 (判断) 訂正明細書の【請求項1】,【0016】段落, 【0018】段落の記載を参照すると、「溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂」が以下の事項を具備する架橋構造体であることが明確に記載されている。 「(A)下記からなる水酸基含有ウレタンプレポリマー、 (a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオール、 (b)イソシアネート化合物、および、 (c)2価のアルコール、 および、 (B)硬化剤としてのブロックポリイソシアネートプレポリマーおよびアミノ樹脂のうちの少なくとも1種」。 そして、【0019】段落〜【0025】段落には、上記「ポリオール」,「イソシアネート化合物」,「2価のアルコール」,「硬化剤」として具体的にどのようなものが使用されるかの記載がある。 又、樹脂被膜の形成について記載する【0034】段落は、上記の記載を受けて記載されるものであるから、上記【0034】段落における「上述した溶剤系熱硬化型樹脂」に水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)および硬化剤(B)が含まれることは明らかである。 以上のとおり、訂正明細書の【特許請求の範囲】及び【発明の詳細な説明】には、「溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂」が、「水酸基含有ウレタンプレポリマー」及び「硬化剤」からなる架橋構造体であることが、明確に記載されていると言える。 なお、【0042】段落以降の実施例、特に【0043】段落の【表1】, 【0045】段落では、「硬化剤」について言及していないが、上記【請求項1】,【0016】段落, 【0018】段落,【0019】段落〜【0025】段落,【0034】段落の記載からみて、【0042】段落以降の実施例においても、「溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂」に水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)および硬化剤(B)が含まれることは明らかである。 したがって、訂正明細書の請求項1乃至4に係る特許は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものである。 4)よって、訂正明細書の請求項1乃至4に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 エ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)特許異議申立てについて ア.申立ての理由の概要 特許異議申立人新日本製鐵株式会社は、甲第1号証(特開平1-301332号公報),甲第2号証(特開平3-16726号公報),甲第3号証(特開平3-237173号公報),甲第4号証(特公昭63-28935号公報),甲第5号証(特開平2-263633号公報)を提出し、 請求項1に係る発明は、甲第1,2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、請求項1乃至4に係る発明は、甲第1乃至5号証に記載された発明をもとに容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、それぞれ、特許を受けることができないものであり、 又は、 請求項1乃至4に係る特許は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、 特許を取り消すべき旨主張している。 イ.判断 訂正明細書の請求項1乃至4に係る発明は、上記2.(2)ウ.2)で示したように、特許異議申立人の提示した甲第1乃至5号証に記載された発明であるとも、それらから容易に発明をすることができたものともすることはできない。 また、訂正明細書の請求項1乃至4に係る特許は、上記2.(2)ウ.3)で示したように、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいえない。 また、他に訂正明細書の請求項1乃至4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 潤滑性、成形加工性、成形後外観性および耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 亜鉛めっき鋼板または亜鉛系合金めっき鋼板の少なくとも1つの亜鉛系めっき層の上に、クロメート被膜が形成され、そして、前記クロメート被膜の上に、塗料の塗布そしてその加熱硬化による樹脂被膜が形成されている亜鉛系めっき鋼板であって、 前記クロメート被膜の量は、金属クロム換算で、鋼板の片面当たり5〜200mg/m2の範囲内であり、 前記樹脂被膜の厚さは、鋼板の片面当たり、0.3〜3.0μmの範囲内であり、前記樹脂被膜は、固形分換算で、 (A)溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂 :100重量部、 (B)固形潤滑剤としての90〜130℃の融点を有するポリエチレン樹脂 :1〜30重量部、および、 (C)防錆顔料 :3〜30重量部、 からなっており、そして、 前記溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂は、 (A)下記からなる水酸基含有ウレタンプレポリマー、 (a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールからなる群がら選ばれた少なくとも1種のポリオール、 (b)イソシアネート化合物、および、 (c)2価のアルコール、 および、 (B)硬化剤としてのブロックポリイソシアネートブレポリマーおよびアミノ樹脂のうちの少なくとも1種、 からなる架橋構造体であることを特徴とする、潤滑性、成形加工性、成形後外観性および耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板。 【請求項2】 前記水酸基含有ウレタンプレポリマー中の前記イソシアネート化合物は、芳香族環を有するイソシアネートである、請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板。 【請求項3】 前記固形潤滑剤は、平均分子量が5,000以下で且つ粒径が20μm以下であるポリエチレン樹脂からなっている、請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板。 【請求項4】 前記防錆顔料は、クロム酸塩系化合物およびシリカのうちの少なくとも1種からなっている、請求項1記載の亜鉛系めっき鋼板。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、その表面上に潤滑油等を塗布しなくても、優れた潤滑性、成形加工性および成形後外観性を有し、且つ、耐食性の良好な、亜鉛めっき鋼板または亜鉛系合金めっき鋼板(以下、「亜鉛系めっき鋼板」と略称する)に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 亜鉛系めっき鋼板は、耐食性に優れていることから、各種の産業分野において広く使用されている。このような亜鉛系めっき鋼板を、複写機等の事務機器、音響機器、家庭電気製品等の材料として使用する場合には、亜鉛系めっき鋼板に対して、種々のプレス成形加工が施され、また、モータカバー、カートリッジ式タンク等の材料として使用する場合には、亜鉛系めっき鋼板に対して、絞り成形加工が施される。 【0003】 亜鉛系めっき鋼板の成形加工性は、冷延鋼板に比べて劣る。その原因は、プレス等による成形加工時の、金型に対する亜鉛系めっき鋼板の摺動抵抗が、冷延鋼板のそれよりも大きいためである。そこで、亜鉛系めっき鋼板の成形加工性を向上させ、成形加工後の外観を良好にならしめるために、一般に、亜鉛系めっき鋼板の表面上に、潤滑油や防錆油を塗布することが行われている。しかしながら、亜鉛系めっき鋼板の表面上に、潤滑油等を塗布することは、製造工程を煩雑にし、且つ、作業環境を悪化させる。のみならず、潤滑油等を塗布して成形加工した場合でも、成形加工条件が厳しい場合には、成形物にかじりが発生して、耐食性が劣化することがある。 【0004】 一方、亜鉛系めっき鋼板の耐食性を、より向上させるために、亜鉛系めっき層の表面上に、クロメート被膜、または、クロメート被膜および樹脂被膜が形成されたクロメート処理亜鉛系めっき鋼板が知られている。このようなクロメート処理亜鉛系めっき鋼板の、成形加工を施さない平板状での耐食性は、良好である。しかしながら、潤滑油等を塗布しないで成形加工を施すと、クロメート被膜に剥離や黒化現象が発生し、耐食性および表面性状が劣化する。従って、クロメート処理亜鉛系めっき鋼板の場合においても、成形加工を施す場合には、その表面上に、潤滑油等を塗布することが必要とされている。 【0005】 上述した問題を解決し、その表面上に潤滑油等を塗布しなくても、優れた潤滑性および成形加工性を有し、且つ、耐食性の良好な表面処理鋼板の開発が従来から要求されており、例えば、次のような表面処理鋼板が提案されている。 ▲1▼ 特開昭61-60886号 鋼板の表面上に形成されたクロメート被膜の上に、潤滑剤として、水分散性潤滑添加物を含有する水系アクリル共重合体よりなる有機複合シリケート被膜が形成された、潤滑性および耐食性にすぐれた表面処理鋼板(以下、先行技術1という)。 【0006】 ▲2▼ 特開昭62-289275号 鋼板の表面上に、潤滑剤として高融点のフッ素系樹脂パウダーが配合された熱硬化性粉体塗料を塗布し、次いで、フッ素系樹脂の融点以下の温度によって焼き付けることにより、その表面上に、フッ素系樹脂パウダーが露出する被膜が形成された表面処理鋼板(以下、先行技術2という)。 【0007】 ▲3▼ 特開平1-l10140号 亜鉛系めっき鋼板の表面上に、予めチタネートカップリング処理が施された、グラファイト、二硫化モリブデン等の無機系固体潤滑剤、および、コロイダルシリカを含有する、水溶性または水分散性のアクリル・エポキシ系樹脂被膜が形成された表面処理鋼板(以下、先行技術3という)。 【0008】 ▲4▼ 特開平2-140294号 亜鉛系めっき鋼板の表面上に、プレス成形加工時の黒化現象を抑制するための、モンタンワックス酸化物の薄い被膜が形成された表面処理鋼板(以下、先行技術4という)。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 上述した先行技術には、次のような問題がある。 ▲1▼ 先行技術1の表面処理鋼板の場合には、水系アクリル共重合体よりなる有機複合シリケート被膜中に含有されている潤滑剤によって、潤滑性および成形加工性の多少の向上は認められる。しかしながら、成形加工条件が厳しい場合には、成形加工時の摩擦熱により、水系アクリル共重合体よりなる有機複合シリケート被膜が劣化して、金型への焼きつきや被膜の黒化が避けらない。従って、表面上に、潤滑油等が塗布された従来の亜鉛系めっき鋼板に比べて、成形後の外観性が劣る場合もある。これは、水系アクリル共重合体と水分散性潤滑剤との組合せによる限界であると考えられる。 【0010】 ▲2▼ 先行技術2の表面処理鋼板の場合には、被膜を構成する樹脂組成として、粉体塗料が使用されているために、均一な厚さの被膜を形成することが困難であり、特に.、数μm以下の薄い被膜を形成することはできない。更に、潤滑剤として添加されるフッ素樹脂パウダーを、1μm以下の微粒子とすることが困難であるために、被膜中および被膜表面に、フッ素樹脂パウダーが露出した状態で存在することになる。その結果、必ずしも、フッ素樹脂パウダーが、成形加工時の潤滑性向上に寄与しないばかりか、逆に、フッ素樹脂パウダーが被膜から脱離して、ピンホールの発生を招く問題が生ずる。 【0011】 ▲3▼ 先行技術3の表面処理鋼板の場合には、グラファイト、二硫化モリブデン等の無機系固体潤滑剤と、樹脂成分との親和性および密着性が多少改良される。しかしながら、成形加工条件が厳しい場合には、先行技術1と同様に、表面上に潤滑油等が塗布された従来の亜鉛系めっき鋼板よりも、潤滑性および成形加工性が劣る。 【0012】 ▲4▼ 先行技術4の表面処理鋼板の場合には、潤滑性を付与するモンタンワックスの軟化点が低い。従って、成形加工時の摩擦熱によって、表面温度が100〜150℃の高温になると、皮膜にべた付きや脱落が生じ、良好な耐食性が得られない。 【0013】 上述した先行技術のほかにも、特定の樹脂に任意の潤滑剤が添加された潤滑性被膜を有する表面処理鋼板が提案されている。しかしながら、このような表面処理鋼板は、ベースとなる樹脂の性質(例えば、水系、粉体、熱可塑性、熱硬化性等)、および、被膜の形成方法(例えば、常温乾燥、高温焼き付け等)により、潤滑性向上効果が制約される。即ち、どのような潤滑剤を使用しても潤滑性向上効果が得られるものでなく、ベースとなる樹脂の性能に適する特定の潤滑剤を組み合わせることによって、初めて満足し得る潤滑性および成形加工性の向上効果が得られるものであり、その性能は限定される。 【0014】 従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、表面に潤滑油等を塗布することなく、優れた潤滑性および成形加工性が発揮され、摩擦熱が発生する厳しい条件で成形加工が施されても、被膜に損傷や黒化が生じない、優れた潤滑性、成形加工性、および成形後外観性を有し、且つ、耐食性の良好な亜鉛系めっき鋼板を提供することにある。 【0015】 【課題を解決するための手段】 本発明者等は、上述した問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、特定の構造および物性を有するウレタンプレポリマーと、ポリイソシアネート化合物またはアミノ化合物との架橋構造体が、被膜用ベース樹脂として優れた性能を有していることから、このような溶剤系熱硬化型樹脂と、固形潤滑剤と、そして、防錆顔料とが所定の割合で配合された塗料を、亜鉛系めっき鋼板の亜鉛系めっき層の少なくとも1つの表面上に塗布し、これを加熱し硬化させて樹脂被膜を形成させれば、優れた潤滑性および成形加工性を有し、且つ、耐食性の良好な亜鉛系めっき鋼板が得られることを知見した。 【0016】 この発明は、上記知見に基づいてなされたもので、亜鉛めっき鋼板または亜鉛系合金めっき鋼板の少なくとも1つの亜鉛系めっき層の上に、クロメート被膜が形成され、そして、前記クロメート被膜の上に、塗料の塗布そしてその加熱硬化による樹脂被膜が形成されている亜鉛系めっき鋼板であって、 前記クロメート被膜の量は、金属クロム換算で、鋼板の片面当たり5〜200mg/m2の範囲内であり、 前記樹脂被膜の厚さは、鋼板の片面当たり、0.3〜3.0μmの範囲内であり、 前記樹脂被膜は、固形分換算で、 (A)溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂 :100重量部、 (B)固形潤滑剤としての90〜130℃の融点を有するポリエチレン樹脂 :10〜30重量部、および、 (C)防錆顔料 :3〜30重量部、 からなっており、そして、 前記溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂は、 (A)下記からなる水酸基含有ウレタンプレポリマー、 (a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールからなる群がら選ばれた少なくとも1種のポリオール、 (b)イソシアネート化合物、および、 (c)2価のアルコール、 および、 (B)硬化剤としてのブロックポリイソシアネートプレポリマーおよびアミノ樹脂の少なくとも1種、 からなる架橋構造体であることに特徴を有するものである。 【0017】 【作用】 この発明において、亜鉛系めっき層の表面上に形成される樹脂被膜のための塗料中に、ベース樹脂として溶剤系熱硬化型樹脂を使用する理由は、次ぎの通りである。 ▲1▼ 溶剤系樹脂は、水系樹脂に比較して、樹脂中に添加される潤滑剤および防錆剤等の添加剤との相容性、および、塗料としての長期安定性に優れている。 ▲2▼ 熱可塑型樹脂と異なり、熱硬化型樹脂には融点が存在しないので、高温時の機械的強度が高い。従って、このような樹脂からなる塗料によって被膜を形成すれば、プレス成形加工時の摩擦熱により鋼板の温度が上昇しても、被膜の剥離や変形が生じにくい。 【0018】 溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂としては、前述したように、 (A)下記からなる水酸基含有ウレタンプレポリマー、 (a)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリエステルポリオールからなる群がら選ばれた少なくとも1種のポリオール、 (b)イソシアネート化合物、および、 (c)2価のアルコール、 (B)硬化剤としてのブロックポリイソシアネートプレポリマーおよびアミノ樹脂の少なくとも1種、 からなる架橋構造体であることが必要である。以下にその具体的な組成について説明する。 【0019】 ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物の如き直鎖状ポリアルキレンポリオール等が使用される。 【0020】 ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸と低分子ポリオールとを反応させて得られる分子鎖中にOH基を有する線状ポリエステルが使用される。前記塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカンニ酸、ダイマー酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸の如き二塩基酸またはそのエステル類が挙げられる。 【0021】 ポリエーテルポリエステルポリオールとしては、前記塩基酸と前記ポリエーテルポリオール、または、これと前記低分子ポリオールとの混合物をエステル化反応させて得られる分子鎖中にOH基を有する線状ポリエステル、並びに、末端にカルボキシル基、および/または、水酸基を有するポリエステルに、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)を付加反応させて得たポリエーテルが使用される。 【0022】 イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、o-,m-,またはP-フェニレンジイソシァネート、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート、芳香環が水素添加された2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’ジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1.4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン等の、芳香族環を有するイソシアネート化合物が挙げられ、これらを、単独または混合して使用する。 【0023】 2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、水添ビスフェノールAの如きジオール類が使用される。 【0024】 硬化剤としてのブロックポリイソシアネートプレポリマーの代表的なものを挙げれば、いわゆるポリイソシアネートを公知のブロック剤を使用してブロック化せしめたプロックポリイソシアネートプレポリマーであって、例えば、「バーノックD-550」、「バーノックD-500」、「バーノックB7-887」(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、「タケネート N-815-N」(武田薬品工業株式会社製)、「アヂイトール(ADDITOL)VXL-80」(ヘキスト合成株式会社製)等である。 【0025】 硬化剤としてのアミノ樹脂としては、メラミン尿素アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ステログアナミンまたはスピログアナミンの如きアミノ成分と、ホルムアルデヒド、パラホルム、アセトアルデヒド、グリオキサールの如きアルデヒド成分と、そして、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノールの如きアルコール成分とを反応させて得られる樹脂が使用される。 【0026】 塗料中に添加される固形潤滑剤としては、ポリエチレン樹脂を使用する。ポリエチレン樹脂は、連続ブレス成形加工等によって生ずる、かじり、鋼板の破断等を防止して、鋼板に対し、摺動、変形および摩耗に対する抵抗を付与し、鋼板および金型の損傷を防止する作用を有している。 【0027】 ポリエチレンは、一般に、平均分子量が数百から数百万である結晶性熱可塑性樹脂であり、そのガラス転移点は約-100℃であって常温よりも低く、その融点は90〜140℃であって、常温では柔軟な性質を有している。更に、その臨界表面張力は約30dyne/cmであり、表面エネルギーが低いので、濡れ性および付着性が低いことから、潤滑作用を有している。しかしながら、本発明のように、亜鉛系めっき層の表面上に形成される樹脂被膜のための塗料中に、潤滑剤として含有させる場合には、塗料の分散性および薄膜形成性の観点から、その粒径が、20μm以下好ましくは10μm以下、より好ましくは約5μmの微粉末であることが必要であり、このような微粉末でないポリエチレンでは、所期の効果が得られない。 【0028】 ポリエチレン樹脂の融点は、潤滑性に影響を与える。即ち、その融点が高いほど、常温近傍における力学的強度即ち変形抵抗が高く、ポリエチレン樹脂を含有する樹脂被膜の潤滑性(摺動性)が低下する。従って、この発明において使用する、潤滑剤としてのポリエチレン樹脂の融点は、130℃以下、好ましくは、90〜130℃の範囲内であることが必要である。また、成膜性の観点から、ポリエチレン樹脂の平均分子量は、5,000以下であることが好ましい。なお、上述した範囲内の融点、平均分子量および粒径を有する2種以上のポリエチレン樹脂を使用してもよい。 【0029】 潤滑剤としてのポリエチレン樹脂の含有量は、溶剤系熱硬化性樹脂の固形分100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内とすべきである。ポリエチレン樹脂の含有量が、溶剤系熱硬化性樹脂の固形分100重量部に対して1重量部未満では、潤滑性の向上効果が得られない。一方、30重量部を超えると、樹脂被膜自体の凝集力および強度が低下する結果、成形加工時に樹脂被膜の剥離が増加する問題が生ずる。ポリエチレン樹脂のより好ましい含有量は、溶剤系熱硬化性樹脂の固形分100重量部に対して、5〜20重量部の範囲内である。 【0030】 塗料中に潤滑剤と共に添加される防錆顔料としては、クロム酸塩系化合物およびシリカの少なくとも1種が使用される。クロム酸塩系化合物およびシリカは、防錆剤として、亜鉛系めっき鋼板の耐食性を、より向上させる作用を有している。このように、樹脂被膜中にクロム酸塩系化合物およびシリカの少なくとも1種からなる防錆顔料が含有されていることにより、成形加工が施されていない平板状の場合の耐食性が向上することは勿論、成形加工によって、樹脂被膜に変形等のダメージが発生した場合でも、耐食性の劣化を防止することができる。 【0031】 クロム酸塩系化合物としては、クロム酸カルシウム、クロム酸ストロンチウム、クロム酸バリウム、クロム酸鉛、クロム酸亜鉛、クロム酸亜鉛カリウム、クロム酸銀等が使用される。また、シリカとしては、疏水性シリカ、親水性シリカ等が使用される。 【0032】 防錆顔料の含有量は、溶剤系熱硬化性樹脂の固形分100重量部に対して、3〜30重量部の範囲内とすべきである。防錆顔料の含有量が、溶剤系熱硬化性樹脂の固形分100重量部に対して3重量部未満では、耐食性の向上効果が得られない。一方、30重量部を超えても、より以上の耐食性向上効果が得られないのみならず、樹脂被膜の凝集力が低下するため、成形加工時に樹脂被膜の剥離を増長させる問題が生ずる。防錆顔料のより好ましい含有量は、溶剤系熱硬化性樹脂の固形分100重量部に対して、5〜20重量部の範囲内である。 【0033】 塗料中には、上述した溶剤系熱硬化型樹脂、固形潤滑剤および防錆顔料のほかに、必要に応じて、他の成分、例えば、顔料、染料などの着色剤、溶剤、界面活性剤、安定剤等を含有させてもよい。 【0034】 上述した溶剤系熱硬化型樹脂、固形潤滑剤および防錆顔料からなる、所定の溶剤によって希釈した塗料を、亜鉛系めっき鋼板の表面上に塗布しそして加熱して架橋硬化させることにより、樹脂被膜が形成される。 【0035】 上述のようにして形成される樹脂被膜は、亜鉛系めっき鋼板の亜鉛系めっき層の上に形成されたクロメート被膜の上に形成することが必要である。このように、クロメート被膜の上に樹脂被膜を形成することにより、クロメート被膜中に含まれるCr6+のクロム酸イオンによる不動態化効果、および、クロム酸イオンの還元生成物であるCr3+のクロム水和酸化物被膜が表面を被覆することによる、アノード面積が減少化したり、Cr3+のクロム水和酸化物被膜が水や酸素の拡散障壁となる効果が生ずる。このような効果によって、優れた耐食性が得られ、且つ、樹脂被膜の形成も良好になる。なお、クロメート被膜の形成は、塗布、電解処理、反応処理等、既知のどのような手段で行ってもよい。 【0036】 クロメート被膜の付着量は、金属クロム換算で、鋼板片面当たり5〜200mg/m2の範囲内とすることが必要である。クロメート被膜の量が、金属クロム換算で、鋼板片面当たり5mg/m2未満では、優れた耐食性向上効果が得られない。一方、クロメート被膜の量が、金属クロム換算で、鋼板片面当たり200mg/m2を超えると、その量に見合った耐食性向上効果が得られないのみならず、鋼板の変形を伴う曲げ加工やプレス成形加工が施された場合に、クロメート被膜の凝集破壊が発生する。クロメート被膜の、より好ましい量は、金属クロム換算で、鋼板片面当たり10〜150mg/m2の範囲内である。 【0037】 亜鉛系合金めっき層と、潤滑のための最上層の樹脂被膜との間に、上述したクロメート被膜のほか、潤滑剤を含まない他の樹脂被膜が形成されていてもよい。この場合、最上層の樹脂被膜との合計量が5μm好ましくは3μmを超えない範囲内であることが必要である。最上層の樹脂被膜との合計量が5μmを超えると、溶接による接合が困難になる。 【0038】 この発明において、潤滑のための樹脂被膜が形成されるべき鋼板は、その少なくとも1つの表面上に亜鉛めっき層を有する亜鉛めっき鋼板、亜鉛の外に、ニッケル、鉄、マンガン、モリブデン、コバルト、アルミニウム、クロム、シリコン等のうちの少なくとも1つの成分を含有する亜鉛合金めっき層を有する亜鉛合金めっき鋼板、または、上述した亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層の複数層を有する複層亜鉛系めっき鋼板であってもよい。 【0039】 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも1つの表面に対する樹脂被膜の形成は、次のようにして行われる。即ち、亜鉛系めっき層の少なくとも1つの表面上、または、亜鉛系めっき層の上に形成されたクロメート被膜の少なくとも1つの表面上に、ロールコー夕ー、カーテンフローコー夕ーまたはスプレー塗装等の既知の方法によって、上述した組成の塗料を塗布し、または、上述した組成の塗料中に亜鉛系めっき鋼板を浸漬した後、ロールや空気の吹きつけにより所定量に絞って、所定量の被膜を形成する。次いで、これを熱風炉や誘導加熱装置により、150〜250℃の温度に加熱することによって、溶剤を飛ばし、樹脂の架橋硬化を施す。かくして、亜鉛系めっき鋼板の少なくとも1つの表面上に、樹脂被膜が形成される。 【0040】 亜鉛系めっき鋼板の少なくとも1つの表面上に形成された樹脂被膜の厚さは、鋼板片面当たり、0.3〜3.0μmの範囲内とすべきである。樹脂被膜の厚さが、鋼板片面当たり0.3μm未満では、成形加工時に、亜鉛系めっき層が受ける損傷を防止することができない。一方、樹脂被膜の厚さが、鋼板片面当たり3.0μmを超えると、溶接性が劣化し、且つ、成形加工条件が特に厳しい場合には、樹脂皮膜の剥離量が増加して、金型への付着や、焼き付け等の問題が生ずる。 【0041】 なお、この発明において、潤滑性、成形加工性および耐食性に優れた亜鉛系めっき層を、その上に形成すべき鋼板としては、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス系鋼板等が使用されるほか、鋼以外の例えばアルミニウム等の金属板を使用してもよい。 【0042】 次ぎに、この発明を、実施例により、比較例と対比しながら説明する。 【実施例1】 この発明の範囲内の亜鉛系めっき鋼板およびこの発明の範囲外の亜鉛系めっき鋼板を製造するための塗料の材料として、表1に示す成分組成の溶剤系熱硬化型樹脂No.1〜8、および、表2に示す成分組成の固形潤滑剤A〜Fを準備した。 【0043】 【表1】 【0044】 【表2】 【0045】 以下に、表1のNo.1熱硬化型樹脂である水酸基含有ウレタンプレポリマーの製造例について述べる。 加熱装置、攪拌機、水分離器および温度計を備えた反応装置に、ポリエステルポリオールとしての芳香族ポリエステルポリオール(AR):915重量部および脂肪族ポリエステルポリオール(AL):915重量部を、不活性ガス存在下において仕込み加熱した。上記原料が融解した後、加熱しながら攪拌を開始した。融解した原料が100℃まで昇温した後、その温度で30〜60分間保温し次いで脱水した。 【0046】 次いで、融解した原料の温度を70℃まで下げ、その温度下において、2価のアルコールとしての1,4-ブタンジオール:28重量部、イソシアネート化合物としてのジフェニルメタン-4,4」ジイソシアネート:313重量部、反応触媒としてのジブチルチンラウリレート:0.55重量部および溶剤としてのシクロヘキサノン:940重量部を仕込み、5〜10時間反応を継続し、所定の粘度に達したところで、2価のアルコールとしての1,3-ブタンジオール:10重量部を加えて反応を終了させた。更に、溶剤としてのシクロヘキサノン:4,150重量部を加え、かくして、不揮発分:30%、粘度:1,400cpsの水酸基含有ウレタンプレポリマーが調製された。 【0047】 更に、上記と同じ方法により、表1のNo.2〜8の各種の異なる成分組成、不揮発分および粘度を有する水酸基含有ウレタンプレポリマーを調製した。 【0048】 板厚0.8mm、めっき量20g/m2の電気亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層の両面を、アルカリで脱脂し、次いで、亜鉛めっき層の上に、クロメート処理液をロールコーティング法により塗布した後、加熱、乾燥して、亜鉛めっき層の上に、金属クロム換算で50mg/m2の量のクロメート被膜を形成した。 【0049】 表1に示した樹脂No.1〜8、表2に示した潤滑剤A、および、防錆顔料であるクロム酸塩系化合物としてのクロム酸ストロンチウムからなる塗料を、上記電気亜鉛めっき鋼板の両面に形成されたクロメート被膜の上に、ロールコーティング法により塗布した。次いで、これを、誘導加熱装置により200℃の温度まで加熱して、クロメート被膜の上に、厚さ約1.5μmの樹脂被膜を形成した。このようにして、表3に示す、この発明の範囲内の亜鉛系めっき鋼板(以下、「本発明鋼板」という)No.1〜8を調製した。 【0050】 比較のために、この発明の範囲外の樹脂を使用した塗料により、上記と同じように、クロメート被膜の上に厚さ約1.5μmの樹脂被膜を形成し、この発明の範囲外の亜鉛系めっき鋼板(以下、「比較用鋼板」という)No.1〜3、および、樹脂被膜を有せず、クロメート被膜の上にプレス油を2g/m2塗布した比較用鋼板No.4.を、表3に併せて示すように調製した。 【0051】 上述した本発明鋼板および比較用鋼板の各々について、潤滑性、ブレス成形性、ブレス成形後外観性、平板耐食性および加工後耐食性を、以下に述べる性能試験によって評価した。評価結果を表4に示す。 【0052】 (1)潤滑性 図1に概略正面図で示す試験機を使用した。試験機は、図1に示すように、箱状の枠2の一側2aに固定されたフラット面を有するビード1と、ビード1と向き合った、先端に幅10mm、長さ1mmの突条3を有するビード4と、ビード4を支持し、そして、ビード4をビード1に向けて水平移動させるための、枠2の他側2bに固定された油圧シリンダ5とからなっている。ビード4は、油圧シリンダ5のロッド5aに、ロードセル6を介して固定されている。 【0053】 本発明鋼板および比較用鋼板から切り出された試験片を、ビード1とビード4との間の間隙に垂直に挿入し、油圧シリンダ5を作動させて、ビード1とビード4とにより試験片7を50Kgf(500Kgf/cm2)の圧力で押しつけた。次いで、試験片7を矢印に示すように、100mm/分の速度で上方に引き抜き、そのときの動摩擦係数を調べ、これによって潤滑性を評価した。なお、試験は、常温(20℃)の試験片のほか、実際のプレス作業時の板温上昇を考慮して、120℃の温度の高温試験片についても行った。 【0054】 (2)プレス成形性 円板状の試験片を、ポンチ径:50mm、ダイス径:51.91mm、しわ押さえ力:1トンの条件で、カップ状に成形したときの限界絞り比を調べ、これによって、プレス成形性を評価した。 【0055】 (3)成形後外観性 試験片に対し、成形高さ50mmの角筒2m段絞り成形を、実際のプレス成形機により連続して行い、30個目の成形品の外観を目視によって調べ、傷つき程度および黒化程度を評価した。評価基準は、次ぎの通りである。 ◎:全面にわたって殆ど変化なく、外観が均一、 ○:傷つきおよび黒化が少し発生し、外観が多少不均一、 △:局部的に傷つきおよび黒化が発生し、外観が明らかに不均一、 ×:コーナー部を中心に傷つきおよび黒化が激しく発生。 【0056】 (4)平板耐食性 試験片に対し、JIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験を施し、白錆の発生するまでの時間を調べ、これによって評価した。 【0057】 (5)加工後耐食性 円板状の試験片を、ブランク径:100mm、ポンチ径:50mm、ダイス径:51.91mm、しわ押さえ力:1トンの条件でカップ状に成形し、次いで、その端縁部を、タールエポキシ塗料によってシールした後、JIS Z 2371に基づく塩水噴霧試験を120時間施して白錆の発生率を調べ、これによって加工後耐食性を評価した。評価基準は、次ぎの通りである。 ◎:白錆発生率 5%未満、 ○:白錆発生率 5〜20%未満 △:白錆発生率 20〜40%未満 ×:白錆発生率 40%以上 【0058】 【表4】 【0059】 第3表および第4表から明らかなように、本発明以外の樹脂からなる塗料を使用した比較用鋼板No.1〜3は、何れも、プレス成形性、成形後外観性および加工後耐食性が悪かった。また、プレス油を塗布した比較用鋼板No.4は、プレス成形性、成形後外観性、平板耐食性および加工後耐食性のすべてが悪かった。 これに対して、本発明鋼板No.1〜8は、ブレス成形性、成形後外観性、平板耐食性および加工後耐食性のすべてについて優れていた。 【0060】 【実施例2】 実施例1と同様のクロメート被膜がその両面に形成された鋼板の、前記クロメート被膜の上に、前述した樹脂No.1の固形分100重量部に対して、潤滑剤AまたはBおよび防錆顔料としてのクロム酸ストロンチウムをこの発明の範囲の割合で含有する塗料を、実施例1と同様の方法により塗布し次いで加熱して、クロメート被膜の上に樹脂被膜を形成した。このようにして、第5表に示す本発明鋼板No.9〜18を調製した。 【0061】 比較のために、本発明の範囲外の潤滑剤を使用した比較用鋼板No.5〜8、潤滑剤の含有量が本発明の範囲を外れて少ない塗料を使用した比較用鋼板No.9、潤滑剤の含有量が本発明の範囲を外れて多い塗料を使用した比較用鋼板No.10、防錆顔料の含有量が本発明の範囲を外れて少ない塗料を使用した比較用鋼板No.11、防錆顔料の含有量が本発明の範囲を外れて多い塗料を使用した比較用鋼板No.12、クロメート被膜の量が本発明の範囲を外れて多い比較用鋼板No.13、および、樹脂被膜の量が本発明の範囲を外れて少ない比較用鋼板No.14を調製した。 【0062】 上述した本発明鋼板No.9〜18および比較用鋼板No.5〜14の各々について、潤滑性、プレス成形性、成形後外観性、平板耐食性および加工後耐食性を、前述した性能試験によって評価した。評価結果を表6に示す。 【0063】 【表6】 【0064】 表5および表6から明らかなように、本発明の範囲外の潤滑剤を使用した比較用鋼板No.5〜8は、潤滑性、ブレス成形性、成形後外観性、平板耐食性および加工後耐食性のうちの何れかが悪かった。潤滑剤の含有量が本発明の範囲を外れて少ない塗料を使用した比較用鋼板No.9は、潤滑性、プレス成形性、成形後外観性および加工後耐食性が悪かった。潤滑剤の含有量が本発明の範囲を外れて多い塗料を使用した比較用鋼板No.10は、被膜の凝集力の低下に基づく剥離量の増加のために、加工後耐食性が悪かった。 【0065】 防錆顔料の含有量が本発明の範囲を外れて少ない塗料を使用した比較用鋼板No.11は、平板耐食性および加工後耐食性が悪かった。防錆顔料の含有量が本発明の範囲を外れて多い塗料を使用した比較用鋼板No.12は、潤滑性、プレス成形性、成形後外観性および加工後耐食性が悪かった。クロメート被膜の量が本発明の範囲を外れて多い比較用鋼板No.13は、ブレス成形性、成形後外観性および加工後耐食性が悪かった。そして、樹脂被膜の量が本発明の範囲を外れて少ない比較用鋼板No.14は、潤滑性、プレス成形性、成形後外観性、平板耐食性および加工後耐食性のすべてが悪かった。 【0066】 これに対して、本発明鋼板No.9〜18は、潤滑性、ブレス成形性、プレス成形後外観性、平板耐食性および加工後耐食性のすべてについて優れていた。 【0067】 【発明の効果】 以上述べたように、この発明の亜鉛系めっき鋼板によれば、表面に潤滑油等を塗布することなく、優れた潤滑性および成形加工性を有し、摩擦熱が発生する厳しい条件で成形加工が施されても被膜に損傷や黒化が生ぜず、優れた成形後外観性および耐食性が得られる、工業上有用な効果が発揮される。 【図面の簡単な説明】 【図1】 試験片の潤滑性を評価するための試験機の概略正面図である。 【符号の説明】 1 ビード 2 枠 3 突条 4 油圧シリンダ 6 ロードセル 7 試験片 【表3】 【表5】 |
訂正の要旨 |
a.特許請求の範囲の訂正 (a-1)【請求項1】第9行及び第14行(特許公報第1頁左下欄第6行及び第10行)に「溶剤系熱硬化型樹脂」とあるのを、「溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂」に訂正する。 (a-2)【請求項1】第24行(特許公報第1頁右下欄第14行)に「からなっていること」とあるのを、「からなる架橋構造体であること」に訂正する。 b.発明の詳細な説明の訂正 (b-1)【0016】段落第9行及び第14行、【0018】段落第1行(特許公報第3頁左欄第31行及び第35行、第3頁右欄第42行)の「溶剤系熱硬化型樹脂」とあるのを、「溶剤系熱硬化型ウレタン樹脂」に訂正する。 (b-2)【0016】段落最終行及び【0018】段落第10行(特許公報第3頁左欄第43〜44行及び第3頁右欄第50行〜第4頁左欄第1行)の「からなっていること」とあるのを、「からなる架橋構造体であること」に訂正する。 |
異議決定日 | 2000-01-27 |
出願番号 | 特願平3-351632 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(B05D)
P 1 651・ 543- YA (B05D) P 1 651・ 121- YA (B05D) P 1 651・ 541- YA (B05D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鴨野 研一 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
林 晴男 清水 信行 |
登録日 | 1998-09-18 |
登録番号 | 特許第2827644号(P2827644) |
権利者 | 日本鋼管株式会社 |
発明の名称 | 潤滑性、成形加工性、成形後外観性および耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板 |
代理人 | 石川 泰男 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 石川 泰男 |
代理人 | 吉田 維夫 |
代理人 | 西山 雅也 |