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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  H01M
管理番号 1024290
異議申立番号 異議1999-73026  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-06 
確定日 2000-08-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2856344号「ベータアルミナ固体電解質及びその製造方法」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2856344号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2856344号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成6年3月29日に出願され、平成10年11月27日にその特許権の設定登録がなされ、平成11年2月10日に特許掲載公報が発行されところ、平成11年8月6日に日本特殊陶業株式会社(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、その後、当審より取消の理由の通知がなされ、その指定期間内である平成12年7月10日に訂正請求がなされた。

II.訂正の内容
平成12年7月10日付けの訂正請求書における訂正の要旨は次のとおりである。
1.訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質」(特許公報1欄2〜3行)とあるのを、「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質(リチウム化合物を構成成分とするベータアルミナを除く)」に訂正する。
2.訂正事項b
特許明細書の段落【0007】に「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質」(同公報4欄6〜7行)とあるのを、「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質(リチウム化合物を構成成分とするベータアルミナを除く)」に訂正する。

III.訂正の適否に対する判断
1.訂正の目的、新規事項、拡張・変更
1.1 訂正事項aについて
上記訂正事項aは、ナトリウム硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質につき特定の成分を含有するものを除く旨の限定を加えたものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
1.2 訂正事項bについて
上記訂正事項bは、上記訂正事項aで請求項1が訂正されたことに伴い、発明の詳細な説明の記載をそれに整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
2.独立特許要件
2.1 訂正明細書に記載された発明
訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は次のとおりである。
【請求項1】ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質(リチウム化合物を構成成分とするベータアルミナを除く)であって、該ベータアルミナ固体電解質を構成するベータアルミナ結晶のC軸結晶配向率が0.2〜0.4で、ベータアルミナ結晶のアスペクト比が4.0以下であることを特徴とするベータアルミナ固体電解質。
【請求項2】電気抵抗が4.0Ω・cm以下、内水圧強度が150MPa以上、および密度が3.20g/cm3以上である請求項1記載のベータアルミナ固体電解質。
(以下、「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」という。)
2.2 取消理由の概要
当審における取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許明細書の請求項1及び2に係る発明は、申立人が提示した甲第2号証の記載を参照すると、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された下記 1 の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件請求項1及び2に係る発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。

1.特願平5-225017号
(特開平7-61859号公報(甲第1号証に該当)参照)
2.3 引用例の記載
2.3.1 先願明細書
上記出願の願書に最初に添付した明細書及び図面には、「ベータアルミナセラミックスの製造方法」に関し、
(1-1)「【産業上の利用分野】本発明は、βおよびβ”-アルミナ焼結体(及びその複合体)の製造方法に係り、更に詳しくは、Na/S電池、・・・・等に好適な、初期値が低く安定なNa+イオン伝導抵抗を有しかつ緻密で高密度のβおよびβ”-アルミナ焼結体を安価に製造し得る製造方法に関する。」(段落【0001】、公開公報1欄14〜20行)、
(1-2)「(実施例1)まず、出発原料として純度99.9%のα-アルミナ、試薬特級の炭酸ナトリウム、安定化剤として試薬特級炭酸リチウムを用い、アルミナ、酸化ナトリウム、酸化リチウム換算でそれぞれ90.4%、8.85%、0.75%となるよう出発原料の秤量を行った。次いで、上記所定量のαアルミナ原料と炭酸ナトリウム、炭酸リチウムの粉末(粉末合計10kg)に、水(粉末に対し50内%)、バインダー(粉末に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉末に対し3外%)を添加し、ミキサー1で混合と同時に粉砕を行った。・・・・そして取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした。
またミキサー1に代えてミキサー2を用いて同様の噴霧乾燥用スラリーを作製した。・・・・
一方、従来例として上記と同様に、所定量のαアルミナ原料と炭酸ナトリウム、炭酸リチウムの粉末計10kgをバッチ式振動ミルにて乾式で10h混合粉砕後、振動ミルに、水(粉砕素地に対し50内%)、バインダー(粉砕素地に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉砕素地に対し3外%)を投入し、1h混合して、取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした(従来例A)。
さらに、上記実施例a〜h、従来例Aともに、同1条件でスプレードライ造粒、成形、焼成、評価を行った。」(段落【0036】〜【0039】、同公報5欄12行〜6欄24行)、
(1-3)「(実施例2)実施例1と同様に、出発原料として純度99.9%のα?アルミナ、試薬特級の炭酸ナトリウム、安定化剤として試薬特級炭酸リチウムを用い、まず、上記所定量のαアルミナ原料と炭酸ナトリウムを乾式混合機(ロッキングミキサー)で10h混合し、その粉末を1300℃で10h仮焼した。さらに、仮焼品10kgと所定量の炭酸リチウムをバッチ式振動ミルにて乾式で10h混合粉砕した。次いで、粉砕粉末10kgと水(粉砕素地に対し50内%)、バインダー(粉末に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉末に対し3外%)を添加し、ミキサー1で混合を行った。・・・・そして取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした。
また、上記と同様にして、所定量のαアルミナ原料と炭酸ナトリウムを乾式混合機(ロッキングミキサー)で10h混合し、その粉末を1300℃で10h仮焼した。仮焼品10kgに所定量の炭酸リチウム、水(粉末に対し50内%)、バインダー(粉末に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉末に対し3外%)を加え、ミキサー1で混合と同時に粉砕を行った。・・・・そして取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした。
一方、従来例として、まず所定量のαアルミナ原料と炭酸ナトリウムを乾式混合機(ロッキングミキサー)で10h混合し、その粉末を1300℃で10h仮焼後、仮焼品10kgと所定量の炭酸リチウムをバッチ式振動ミルにて乾式で10h混合粉砕した。さらに、粉砕が終了した振動ミルに、水(粉砕素地に対し50内%)、バインダー(粉砕素地に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉砕素地に対し3外%)を投入し、1h混合して、取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした(従来例B)。
表5に実施例i〜q、従来例Bにおける混合、粉砕、スラリー化条件の一覧を、表6に実施例1と同様の条件で評価を行った際の結果を示す。」(段落【0049】〜【0052】、同公報8欄46行〜10欄16行)、
(1-4)「(実施例3)実施例2と同様に、所定量のαアルミナ原料と炭酸ナトリウムを乾式混合機(ロッキングミキサー)で10h混合し、その粉末を1300℃で10h仮焼した。仮焼品100kgを連続式振動ミルにて粉砕した。・・・・粉砕粉末100kgに所定量の炭酸リチウム、水(粉末に対し50内%)、バインダー(粉末に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉末に対し3外%)を加え、ミキサー3で混合を行った。・・・・そして取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした。
また、所定量のαアルミナ原料と炭酸ナトリウムを乾式混合機(ロッキングミキサー)で10h混合し、その粉末を1300℃で10h仮焼し、仮焼品100kgに所定量の炭酸リチウムと、水(粉末に対し50内%)、バインダー(粉末に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉末に対し3外%)を添加し、ミキサー3で混合と同時に粉砕を行った。・・・・そして取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした。
一方、従来例として、まず所定量のαアルミナ原料と炭酸ナトリウムを乾式混合機(ロッキングミキサー)で10h混合し、その粉末を1300℃で10h仮焼した。次いで、100kgの仮焼品を連続式振動ミルにて粉砕し、その粉砕品を10kgの小ロットに小分けし、それぞれをバッチ式振動ミルにて、所定量の炭酸リチウム、水(粉砕素地に対し50内%)、バインダー(粉砕素地に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉砕素地に対し3外%)を添加し、1h混合し、取り出した。これを10回繰り返し仮焼品での合計100kgの噴霧乾燥用スラリーを作製した(従来例C)。
表7に実施例r〜y、従来例Cにおける混合、粉砕、スラリー化条件の一覧を、表8に実施例1と同様の条件で評価を行った際の結果を示す。」(段落【0058】〜【0061】、同公報11欄49行〜14欄5行)、
(1-5)「(実施例4)最終的に上記実施例1〜3と同様の組成になるように、αアルミナ原料と炭酸ナトリウム、αアルミナ原料と炭酸リチウムをそれぞれ所定量秤量した後、乾式混合機(ロッキングミキサー)で10h混合し、それぞれの粉末を1300℃で10h仮焼した。次いで両仮焼品を合計10kgとなるよう所定量秤量し、水(粉砕素地に対し50内%)、バインダー(粉砕素地に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉砕素地に対し3外%)を添加し、ミキサー1で混合と同時に粉砕を行った。・・・・そして取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした。
また、上記工程において、ミキサー1に代えてミキサー4を用いて混合と同時に粉砕を行ない、噴霧乾燥用スラリーを得た。・・・・
また、上記工程において、ミキサー1(またはミキサー4)に代えてミキサー 5を用いて噴霧乾燥用スラリー(実施例ケ〜シ)を得た。
一方、従来例として、まずαアルミナ原料と炭酸ナトリウム、αアルミナ原料と炭酸リチウムをそれぞれ所定量秤量した後、乾式混合機(ロッキングミキサー)で10h混合し、それぞれの粉末を1300℃で10h仮焼した。次いで、両仮焼品を合計10kgとなるよう所定量秤量しバッチ式振動ミルにて乾式で10h混合粉砕した。さらに、粉砕素地10kgと水(粉砕素地に対し50内%)、バインダー(粉砕素地に対し0.5外%)、アンモニウム塩系の分散剤(粉砕素地に対し3外%)を振動ミルに投入し1h混合して取り出した泥漿を噴霧乾燥用スラリーとした(従来例D)。
表9に実施例ア〜シ、従来例Dにおける混合、粉砕、スラリー化条件の一覧を、表10に実施例1と同様の条件で評価を行った際の結果を示す。」(段落【0067】〜【0071】、同公報15欄13行〜16欄22行)、
との記載がある。
2.3.2 甲第2号証
申立人が提示した甲第2号証(日本特殊陶業株式会社総合研究所所属の杉浦宏紀が作製したと認められる1999年6月23日付けの「実験成績証明書」)には、
(2-1)上記先願明細書の実施例1及び4の記載に基いて、その一部の例についてトレース試験を行った結果が示されている。
2.4 対比・判断
上記先願明細書には、ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質が記載されているが、そのベータアルミナ固体電解質の製造原料の一部として、上記「(1-2)」〜「(1-5)」に示したように、「炭酸リチウム」が用いられており、この「炭酸リチウム」は焼成過程で分解し、酸化物としてベータアルミナ中に残存することは自明であるから、上記先願明細書に記載されているベータアルミナ固体電解質は「リチウム化合物を構成成分とする」ものであることは明らかである。
してみれば、上記先願明細書には、
『リチウム化合物を構成成分とするナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質』
の発明が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と上記先願明細書に記載の発明とを対比すると、両者は、共に、「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質」である点では一致するが、本件訂正発明1は「リチウム化合物を構成成分とするベータアルミナを除く」ものであるのに対し、上記先願明細書に記載の発明では「リチウム化合物を構成成分とする」ものであるので、少なくともかかる点で両者は別異のものである。
そして、上記甲第2号証は、「リチウム化合物を構成成分とする」ものを前提とした実験成績証明書であるから、この実験成績証明書により、先願明細書に記載されたベータアルミナ結晶のc軸結晶配向率及びアスペクト比が証明されたとしても、両者を同一発明であるとすることはできない。
また、本件訂正発明2は、本件訂正発明1につき更に限定した発明であるから、本件訂正発明1について述べたと同様の理由で、上記先願明細書に記載された発明とは別異のものである。
3.訂正の認否
したがって、上記「III.1.」及び「III.2.4」に述べたように、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

IV.特許異議の申立についての判断
1.本件発明
上記「III.3.」で述べたように、上記訂正を認めるので、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、上記「III.2.1」に摘記した請求項1及び2に記載されたとおりのもの(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)である。
2.申立ての理由の概要
申立人は、証拠として甲第1〜3号証を提出し、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第2及び3号証の記載を参照すると、本件特許の出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件請求項1及び2に係る発明の発明者がその出願前の出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、本件特許の出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである旨の主張をしている。
3.対比・判断
甲第1号証(特開平7-61859号公報)は、当審の取消理由で引用した先願(特願平5-225017号)に対応する公開公報であり、既に上記「(1-1)」〜「(1-5)」に摘記したとおりのことが記載されており、甲第2号証には上記「(2-1)」に摘記したとおりのことが示されている。
また、甲第3号証(特許庁審査基準室編「解説 平成6年改正特許法の運用」社団法人発明協会、1995年10月26日発行、161〜167頁)には、「特許法第29条の2に係る判断」についての運用指針が記載されているにすぎない。
してみると、甲第3号証の記載を参照しても、甲第1号証に記載されている発明の認定に何らの影響はないから、既に上記「III.2.4」で述べたと同様の理由で、本件発明1及び2は上記甲第1号証に係る先願の発明とは別異のものである。

VI.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、平成6年改正法附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ベータアルミナ固体電解質及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
[請求項1] ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質(リチウム化合物を構成成分とするベータアルミナを除く)であって、該ベータアルミナ固体電解質を構成するベータアルミナ結晶のC軸結晶配向率が0.2〜0.4で、ベータアルミナ結晶のアスペクト比が4.0以下であることを特徴とするベータアルミナ固体電解質。
[請求項2] 電気抵抗が4.0Ω・cm以下、内水圧強度が150MPa以上、および密度が3.20g/cm3以上である請求項1記載のベータアルミナ固体電解質。
[請求項3] アルミナ源、マグネシウム源及びナトリウム源の各原料を用いてベータアルミナ固体電解質を製造する方法において、該マグネシウム源としてマグネシウム-アルミニウムスピネルを用い、各原料を混合、造粒した後成形し、次いで焼成することにより、原料の仮焼を行なうことなくベータアルミナ固体電解質を得ることを特徴とするベータアルミナ固体電解質の製造方法。
[請求項4] マグネシウム-アルミニウムスピネルのマグネシア-アルミナのモル比(MgO/Al2O3)が1以上である請求項3記載の製造方法。
[請求項5] ナトリウム源として少なくともNaHCO3、シュウ酸ナトリウムのうちいずれか一つを含むNa化合物を用いる請求項3または4記載の製造方法。
[請求項6] 焼成が、▲1▼1400〜1550℃の範囲における一定温度で1〜5時間保持する工程、あるいは当該温度範囲において50℃/hr 以下で昇温する昇温工程、▲2▼1580〜1650℃の最高温度で0.1〜3.0時間保持する工程、および▲3▼1400〜1550℃の範囲における一定温度で1〜5時間保持する工程、あるいは当該温度範囲において50℃/hr 以下で降温する降温工程、の各工程よりなるヒートカーブで行なわれる請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
[0001]
[産業上の利用分野]本発明は、電気抵抗が低く、強度が大きいなどの特性に優れたベータアルミナ固体電解質とその製造方法に係り、更に詳しくは、特性に優れたベータアルミナ固体電解質を従来のように仮焼を行なうことなく製造することができるベータアルミナ固体電解質の製造方法に関するものである。
[0002]
[従来の技術]ベータアルミナ固体電解質は、ナトリウムイオンのイオン伝導率が極めて高い(即ち、電気抵抗が低い)ため、ナトリウム-硫黄電池の隔膜など、固体電解質としての用途が注目されている。
このようなベータアルミナ固体電解質のうち、MgO安定化ベータアルミナ固体電解質は、従来から次の方法で製造されている。即ち、MgO、Na化合物、α-Al2O3の各原料を適切な比率で混合した後、仮焼してベータアルミナ化を行ない粉砕する。次に、得られた粉砕原料を造粒した後、所定形状に成形し、焼成することによりベータアルミナ固体電解質を得る。
[0003]従来において、原料を予め仮焼してベータアルミナ化を行なっているのは、これを行なわないで直接焼成によりベータアルミナを製造しようとすると、α-Al2O3からベータアルミナに相転移するに当って、大きく体積膨張し、均質で強度の高いベータアルミナ固体電解質を得ることが困難であるという理由に基づくものである。
[0004]
[発明が解決しようとする課題]しかし、上記した従来の製造方法は、各原料を混合した後仮焼して予めベータアルミナ化を行なっているため、工程が煩雑となり、またコスト高となることは否めず、ナトリウム-硫黄電池などの具体的な製品化に際して、全体の製造工程の短縮を図り、より効率的にベータアルミナ固体電解質を製造することが強く要請されている。
[0005]さらに、上記の従来方法で得られたベータアルミナ固体電解質においては、予め仮焼によりベータアルミナ化をした後粉砕、造粒、成形および焼成してベータアルミナ固体電解質を製造しているため、得られるベータアルミナ固体電解質を構成する結晶は、配向性が高いという傾向があるほか、仮焼によるベータアルミナを核として結晶が成長するため、粗大結晶が生成するという問題が生じている。また、粗大結晶の形状も、アスペクト比の大きい、即ち細長い結晶が多い。
[0006]
[課題を解決するための手段]そこで本発明者は、上記従来の問題、特に製造工程の短縮を達成すべく鋭意検討を行なったところ、ベータアルミナの安定化剤であるマグネシウム源たるMgOを、マグネシア-アルミナスピネルの形態で供給すると極めて効果的であり、原料の仮焼工程を省略できることを見出し、本発明に到達したのである。
[0007]本発明によれば、ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質(リチウム化合物を構成成分とするベータアルミナを除く)であって、該ベータアルミナ固体電解質を構成するベータアルミナ結晶のC軸結晶配向率が0.2〜0.4で、ベータアルミナ結晶のアスペクト比が4.0以下であることを特徴とするベータアルミナ固体電解質が提供される。
本発明のベータアルミナ固体電解質では、その特性として、電気抵抗が4.0Ω・cm以下、内水圧強度が150MPa以上、および密度が3.20g/cm3以上であることが好ましい。
[0008]また本発明によれば、アルミナ源、マグネシウム源及びナトリウム源の各原料を用いてベータアルミナ固体電解質を製造する方法において、該マグネシウム源としてマグネシア-アルミナスピネルを用い、各原料を混合、造粒した後成形し、次いで焼成することにより、原料の仮焼を行なうことなくベータアルミナ固体電解質を得ることを特徴とするベータアルミナ固体電解質の製造方法が提供される。
[0009]本発明の製造方法では、マグネシア-アルミナスピネルのマグネシア-アルミナのモル比(MgO/Al2O3)が1以上であること、さらに、ナトリウム源として少なくともNaHCO3、シュウ酸ナトリウムのうちいずれか一つを含むNa化合物を用いることが好ましい。
また、本発明の製造方法においては、▲1▼1400〜1550℃の範囲における一定温度で1〜5時間保持する工程、あるいは当該温度範囲において50℃/hr 以下で昇温する昇温工程、▲2▼1580〜1650℃の最高温度で0.1〜3.0時間保持する工程、および▲3▼1400〜1550℃の範囲における一定温度で1〜5時間保持する工程、あるいは当該温度範囲において50℃/hr 以下で降温する降温工程、の各工程よりなるヒートカーブで焼成が行なわれることが、電気抵抗、強度等の特性がより良くなり、好ましい。
[0010]なお、本発明において、ベータアルミナとは、β-Al2O3(Na2O・11Al2O3)、β”-Al2O3(Na2O・5Al2O3)、β”’-Al2O3などの総称であり、特にβ”-Al2O3の含有量の多い、いわゆるβ”化率が95%以上のものを指すものである。
[0011]以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、第一に、ベータアルミナ固体電解質を製造するに際して、ベータアルミナの安定化剤であるMgO等のマグネシウム源として、マグネシア-アルミナスピネルを用いることに大きな特徴があり、これにより各原料を混合後、仮焼を行なうことなく造粒し、成形した後焼成することにより、固体電解質として極めて特性のよいベータアルミナを得たものである。
[0012]本発明者は、従来の製造工程の短縮を図るべく種々の角度から検討を重ねた結果、マグネシウム源として、通常のMgOの代わりにマグネシウム-アルミニウムスピネルを用いると、マグネシウム-アルミニウムスピネルが焼成の際のベータアルミナ結晶生成の種結晶として作用すると考えられ、仮焼して予めベータアルミナ化を行なう必要がなくなることを見出した。
[0013]用いるマグネシア-アルミナスピネルとしては、マグネシア-アルミナのモル比(MgO/Al2O3)が1以上とMgOリッチのものが好ましく、1.0〜1.5の範囲が更に好ましい。この理由は定かではないが、上記範囲外の場合、焼成して得られるベータアルミナの電気抵抗や強度などの特性が多少劣る傾向がある。
また、マグネシア-アルミナスピネルは微細なものが好ましく、具体的にはその平均粒径が1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。さらに、90%粒径は10μm以下、特に5μm以下が好ましい。更に、マグネシア-アルミナスピネルの比表面積は、5m2/g以上が好ましい。マグネシア-アルミナスピネルの粒度、比表面積が上記範囲内であると、得られるベータアルミナ焼結体の結晶配向が小さくなり、しかも結晶のアスペクト比が小さくなり、より特性の良いものが得られ、好ましい。
[0014]次に、ナトリウム源たるNa化合物としては、Na2CO3などの従来公知のものも使用できるが、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)またはシュウ酸ナトリウムを用いることが、造粒物中においてNa化合物の偏析がなくて均一分散が達成できるため好ましい。すなわち、これらのNaHCO3、シュウ酸ナトリウムは、Na2CO3よりも水等の溶媒への溶解度が低いため、造粒時の乾燥の際、析出速度が早く、この結果、造粒物中における均一分散が達成される。また、各原料を混合してスラリーとした場合にスラリーpHを10程度にコントロールできるため、有機バインダーの選択幅が大きくなることから好ましい。
[0015]NaHCO3、シュウ酸ナトリウムはそれぞれ単独で用いても良いが、Na2CO3との混合物として用いることもできる。
用いるNaHCO3、シュウ酸ナトリウムの粒度は、平均粒径が5μm以下であることが好ましい。
[0016]原料としてのアルミナ源はα-Al2O3を用いることが好ましい。その粒度は微細なものが好ましく、平均粒径が1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。またα-Al2O3の比表面積は5m2/g以上であることが好ましく、10m2/g以上であることがさらに好ましい。α-Al2O3の粒度が上記範囲内であると、得られるベータアルミナ焼結体中に粗大結晶が生成し難く、繊密で低抵抗なものが得られ易い。
[0017]上記したような粒度など所定の物性を備えたアルミナ源、マグネシウム源及びナトリウム源の各原料は、ベータアルミナが生成し得る所定の比率でそれぞれ添加混合される。添加混合は、各原料を水中にて粉砕混合することにより行なわれ、スラリーが作製される。ここで、できるだけ均一な混合がなされることが、焼成工程において焼結性が向上するため好ましい。
[0018]次に、原料スラリーをスプレードライヤーなどで造粒する。ここで、造粒工程は各原料の混合を均質ならしめ、かつ後続の成形工程での成形性を向上させるために設けられている。造粒工程は、通常平均粒径が50〜100μmとなるよう造粒物を作製する。
原料スラリーを造粒した後所定形状に成形する。
本発明のベータアルミナ固体電解質は、ナトリウム-硫黄電池の隔壁として好適に用いることを主要な用途とするため、チューブ状に成形することが多い。
成形は1.5 ton/cm2以上、好ましくは2.0 ton/cm2以上の圧力で行ない、1.9 g/cm3以上の密度を有する成形体を作製する。
[0019]次いで、成形体を所定条件で焼成する。
焼成により、ベータアルミナ結晶を生成し、均質な結晶成長を促進させるのであるが、この場合、焼成条件、特に焼成ヒートカーブを下記のように設定することが好ましい。本発明では、マグネシア-アルミナスピネルがベータアルミナ化の種結晶として作用するため、α-Al2O3からべータアルミナヘの相転移による体積膨張の影響はそれほど大きくないが、焼成ヒートカーブを適切に制御することは均質で強度が大きく電気抵抗の低いベータアルミナ固体電解質を得る上で好ましい。
[0020]ここで焼成は、最高温度を1580〜1650℃の範囲に設定することが特性の良いβ”化率が高いベータアルミナを得るために重要であるが、さらに好ましくは、焼成ヒートカーブが、▲1▼β-Al2O3からβ”-Al2O3へ相変化する1400〜1550℃の範囲における一定温度で1〜5時間保持する工程、あるいは当該温度範囲において50℃/hr 以下で昇温する昇温工程、▲2▼1580〜1650℃の最高温度で0.1〜3.0時間保持する工程、および▲3▼1400〜1550℃の範囲における一定温度で1〜5時間保持する工程、あるいは当該温度範囲において50℃/hr 以下で降温する降温工程、の少なくとも3工程からなることが好ましい。
このような焼成ヒートカーブは、ベータアルミナ中のβ”化率を95%以上と高くする上で良好に作用する。
[0021]本発明の製造方法により得られるベータアルミナ固体電解質は、その固有で特異な特性としては、ベータアルミナ結晶の配向が小さく、しかも当該結晶のアスペクト比が小さいものである。
具体的には、ベータアルミナ固体電解質を構成するベータアルミナ結晶のC軸結晶配向率が0.2〜0.4、好ましくは0.25〜0.35であり、ベータアルミナ結晶のアスペクト比が4.0以下、好ましくは3.0以下である。
[0022]ベータアルミナ結晶は結晶形態が六方晶系に属し、図1のベータアルミナ固体電解質の単結晶の概要図に示す如く、単一の結晶ではA軸とB軸で形成される面内(AB面)にNaイオン導電面を有し、その垂直方向であるC軸方向には全く導電性を示さない。また、結晶はNaイオン導電面(AB面)で壁開性があるため、C軸方向の引張りに対して機械的強度が低いという特性を有している。従って、ベータアルミナ結晶の配向性は低い方が好ましいといえるが、従来のように、原料の仮焼を経て予めベータアルミナ結晶を作製する製造方法では、配向性の低いものは製造が困難であった。
[0023]なお、多結晶構造体であるベータアルミナ固体電解質のC軸結晶配向率は、以下の方法で測定した。
所定の製造方法で得られたベータアルミナ焼結体から図2に示すように幅1mm、長さ40mmの試験片を取り出し、外面の凹凸の影響を除去するため外表面を研磨した。X線解析装置を用いて試験片の外表面の回折パターンを測定することにより同軸円筒体の径方向に向いた各結晶面の相対量を算出した。
具体的な測定はゴニオメーター式X線解析装置を用いた。CuKα1の特性X線を使用し、加速電圧35KV、陰極電流20mAで回折パターンをチャートに記録した。測定結果はベータアルミナ結晶のC軸と一定角度(0゜,33.3゜,60゜,90゜)をなす結晶面についてそれぞれのピーク高さを実測し各結晶面の占める割合を相対値で表わした。ベータアルミナ結晶の各結晶面の相対量を表1に示す
[0024]
[表1]

[0025]本発明においては、C軸結晶配向率とは、表1におけるC軸と結晶面の角度が0゜となりC軸に一致するH1の全ピーク高さに占める相対高さ(H1/H1+H2+H3+H4)をいう。即ち、C軸配向率が高いことは、ベータアルミナ管のNaイオン導電方向に対して、ベータアルミナ結晶の非導電面が向くために、ベータアルミナ管としての抵抗が高いことを示している。
[0026]また本発明において、ベータアルミナ結晶のアスペクト比は次のようにして測定される。
ベータアルミナ焼結体から小片を切り出し、断面研磨、エッチングを行なった後、粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、個々の粒子が観察できる倍率で写真撮影した。この粒子写真から個々の粒子の長軸、短軸を測定し、その比の平均値をアスペクト比とした。
[0027]ベータアルミナ結晶のC軸結晶配向率が0.2より小さい場合には、電気抵抗は低くなるものの内水圧強度などの機械的強度が小さくなり、ナトリウム-硫黄電池用の隔壁として用いるには好ましくない。また、ベータアルミナ結晶のC軸結晶配向率が0.4より大きいと、逆に機械的強度は大きくなるものの電気抵抗が大きくなり過ぎる。
さらに、ベータアルミナ結晶のアスペクト比が上記範囲を逸脱する場合には、結晶の形状が細長くなり過ぎ、電気抵抗、強度などの特性をバランス良く向上させることができず、好ましくない。
[0028]さらにまた、本発明においては、ベータアルミナ固体電解質を構成するベータアルミナ結晶の平均粒径は3μm以下で、粒径5μm以下のベータアルミナ結晶は90%以上であり、しかもその最大粒子径が300μm以下、好ましくは200μm以下という粒径分布を有しており、ベータアルミナ固体電解質中に存在する粗大結晶が小さく、しかも存在量も少ない。
[0029]上記のように、本発明のベータアルミナ固体電解質は特定の結晶構造を有するものであり、このようなベータアルミナ固体電解質は、ナトリウム-硫黄電池用の隔壁として極めて優れた特性を有している。
具体的にいえば、電気抵抗が4.0Ω・cm以下、内水圧強度が150MPa以上、および密度が3.20g/cm3以上であり、さらに好ましくは、電気抵抗が3.5Ω・cm以下で、内水圧強度が180MPa以上、および密度が3.22g/cm3以上である。
[0030]
[実施例]以下、本発明を実施例に基づき更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
[0031]
(実施例1、比較例1)
平均粒径1.5μm、BET比表面積3.5m2/gのα-Al2O3粉末原料と、平均粒径が1μmのNa2CO3と、表2に示す平均粒径、90%粒径、MgO/Al2O3のモル比を有するマグネシアーアルミナスピネルの各原料を、ベータアルミナが生成し得る比率、すなわちAl2O371%、スピネル14%、Na化合物15%の比率となるように調合し、水中においてボールミルを用いて均一に混合してスラリーを作製した。
[0032]次に、得られたスラリーをスプレードライヤーで平均粒径60μmの穎粒状の造粒物を作製した後、静水圧プレスにより2 ton/cm2の圧力で、φ25mm、長さ230mm、厚さ1.3mmの寸法のチューブ状の成形体を成形し
た。
次いで、成形体をMgO製サヤ内に収容した状態で、最高温度1600℃で30分焼成し、ベータアルミナ焼結体を得た。得られたベータアルミナ焼結体の結晶構造および特性を表2に示す。
[0033]尚、比較のために、原料を混合後、1250℃で120分仮焼し、次いで粉砕する工程を付加した以外は実施例1と同一の条件により、ベータアルミナ焼結体を得た(比較例1の試料No.1〜3)。また、マグネシア-アルミナスピネルを用いないこと以外は実施例1と同一の条件により、ベータアルミナ焼結体を得た(比較例1の試料No.4〜6)。得られたベータアルミナ焼結体の結晶構造および特性を表2に示す。
[0034]尚、表2において、電気抵抗および内水圧強度は次のように測定した。
(電気抵抗の測定方法)
電気抵抗は図3に示すNa/Na通電試験装置を作製して350℃における値として求めた。図3において、Na/Na通電試験装置は、測定すべきチューブ状のベータアルミナ焼結体(ベータアルミナ管)1とα-Al2O3からなる絶縁支持体2,3と、ステンレス製の電極4と、電極取り出し口5,6とから構成され、容器7及びベータアルミナ管1中に350℃の溶融ナトリウム8を供給して、電極取り出し口5,6間に一定の電流を通電することにより、測定すべきベータアルミナ管1の電気抵抗率を比抵抗として求めた。
(内水圧強度の測定方法)
チューブ状のベータアルミナ焼結体(ベータアルミナ管)の内壁にゴムチューブを介して水圧を加え、ベータアルミナ管が破壊した水圧値とベータアルミナ管の寸法から内水圧強度を測定した。
[0035]
[表2]

[0036]
(実施例2)
Na化合物の添加効果を確認するために、表3に示すようにNa化合物の種類を変えて、実施例1と同一の工程、条件でベータアルミナ焼結体を得た。得られたベータアルミナ焼結体の結晶構造および特性を表3に示す。
[0037]
[表3]

[0038]
(実施例3)
アルミナ原料の効果を確認するために、表4に示すようにα-Al2O3原料の平均粒径、BET比表面積を変えて、実施例1と同一の工程、条件でベータアルミナ焼結体を得た。得られたベータアルミナ焼結体の結晶構造および特性を表4に示す。
[0039]
[表4]

[0040]
(実施例4)
焼成条件の効果を確認するために、表5に示すように焼成ヒートカーブを変え、その他は実施例1と同一の工程、条件でベータアルミナ焼結体を得た。得られたベータアルミナ焼結体の結晶構造および特性を表5に示す。
[0041]
[表5]

[0042]
以上の結果から明らかなように、本発明の範囲内において製造されたベータアルミナ焼結体は、電気抵抗、内水圧強度等の特性が良好であり、また、上記において説明したより好ましい条件で製造されたベータアルミナ焼結体は、さらに電気抵抗、内水圧強度等の特性が良好であることがわかる。
[0043]
[発明の効果]以上説明したように、本発明によれば、マグネシウム源をマグネシア-アルミナスピネルの形態で供給しているので、原料の仮焼を行なうことなく、ベータアルミナ固体電解質を効率的に製造することができる。
また、本発明方法で得られたベータアルミナ固体電解質は、ベータアルミナ結晶の配向が小さく且つ結晶のアスペクト比が小さいという特異な結晶構造を有するので、電気抵抗、内水圧強度等の特性面からナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ管として極めて優れたものである。
【図面の簡単な説明】
[図1] ベータアルミナ固体電解質の単結晶の概要図である。
[図2] ベータアルミナ焼結体の長手方向切断の試験片を示す斜視図である。
[図3] 電気抵抗を求めるためのNa/Na通電試験装置の例を示す構成図である。
[符号の説明]
1・・ベータアルミナ管、2,3・・絶縁支持体、4・・電極、
5,6・・電極取り出し口、7・・容器、8・・溶融ナトリウム。
 
訂正の要旨 平成12年7月10日付けの訂正請求書における訂正の要旨は次のとおりである。
1.訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質」(特許公報1欄2〜3行)とあるのを、「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質(リチウム化合物を構成成分とするベータアルミナを除く)」に訂正する。
2.訂正事項b
明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0007】に「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質」(同公報4欄6〜7行)とあるのを、「ナトリウム-硫黄電池用のベータアルミナ固体電解質(リチウム化合物を構成成分とするベータアルミナを除く)」に訂正する。
異議決定日 2000-07-25 
出願番号 特願平6-58972
審決分類 P 1 652・ 161- YA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 種村 慈樹吉水 純子  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 山岸 勝喜
能美 知康
登録日 1998-11-27 
登録番号 特許第2856344号(P2856344)
権利者 日本碍子株式会社
発明の名称 ベータアルミナ固体電解質及びその製造方法  
代理人 渡邉 一平  
代理人 樋口 武  
代理人 田中 敏博  
代理人 足立 勉  
代理人 渡邉 一平  

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