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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D06F
管理番号 1024348
異議申立番号 異議2000-71952  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-10 
確定日 2000-09-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第2975734号「脱水兼用洗濯機」の請求項1〜5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2975734号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件は、平成3年9月10日に出願され、平成11年9月3日に設定登録されたものであって、その発明は明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】 洗濯と脱水とを弾性支持した同一槽で行う主体部を収容する外箱に、プラスチック製の台板を結合したものであって、その台板に、外箱から離間させて樋状のホース支持部を一体に形成すると共に、前記槽から機外への排水をする排水ホースの機内途中部位をそのホース支持部上に置いた状態で該ホース支持部に固定する固定バンドを具えたことを特徴とする脱水兼用洗濯機。
【請求項2】 固定バンドは、外箱の作業口から該作業口方向に引いてホース支持部に止められるようにしたことを特徴とする請求項1記載の脱水兼用洗濯機。
【請求項3】 固定バンドは、一方を係止、他方を係合によってホース支持部に止めたことを特徴とする請求項1記載の脱水兼用洗濯機。
【請求項4】 ホース支持部を、外箱の作業口とほゞ平行に設けたことを特徴とする請求項1記載の脱水兼用洗濯機。
【請求項5】 ホース支持部に、ホース止め用の凸部を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱水兼用洗濯機。」
2.申立ての理由の概要
特許異議申立人株式会社日立製作所は、平成12年5月10日付の特許異議申立てにおいて、証拠として甲第1号証実開昭52-87165号公報(に係る出願の明細書及び図面の写し)、甲第2号証実開昭56-32675号公報(同)、甲第3号証特開昭58-118794号公報、甲第4号証実開昭57-176983号公報(同)甲第5号証実開昭56-54087号公報(同)を提出し、
「本件特許発明は甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明から当業者であれば容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」(特許異議申立書第19頁第2〜4行)旨主張する。
3.甲号各証記載の発明
甲第1〜5号証には、以下の事項が記載されている。
(1)甲第1号証には、「洗濯機用等のホース固定装置」に関して、図1〜4と共に以下の点が記載されている。
i)「第1図に於いて、1は支持体としての外箱、2は外箱1の内部に吊り餅機構3を介して弾性支持した外槽、4は外槽2の内部に回転自在に配設した洗濯・脱水兼用の内槽」(第2頁19行〜第3頁第3行)である。
ii)「第2図乃至第4図に於いて、11は上記排水ホース10を固定するためのホース固定装置に於ける例えばプラスチック製の基体で、平坦な背面部に前記外箱1の後面部下部の略中央に形成した上下二個のT字孔12,13と嵌り合う溝14,15を有する突起16,17を突設しており、他方、前面部には排水ホース10の片半部を収容するための半円弧状のホース受け部18を形成していて、更にこのホース受け部18の内面にはその内面形状に沿ったリブ19を突設している。20は上記基体11にこれとの一体成形により上記ホース受け部18と連なる様に且つ全体を薄肉にして弾性変形自在に延設した半円弧状のホース押え片で」ある。(第3頁右下欄9行〜第4頁第1行)
(2)甲第2号証には、「洗濯機等の排出ホース装置」に関して、図1〜5と共に以下の点が記載されている。
i)「1は洗濯機外箱、2は該外箱1の基台をなすプラスチック製台板で、この台板2は例えば射出成形によつて即ちプラスチックの原液を所定の金型内に注入しこの原液の固化後該金型を型抜きすることによつて作製せられており、更に3及び4は該外箱1内に並設した洗濯槽及び脱水槽」である。(第3頁左欄1〜7行)、
ii)「第2図に於いて、前記プラスチツク製台板2の上面には該台板2との一体成形によつてフツク9及びボックス10を形成して(いる)」
(3)甲第3号証には、水受け槽17が外箱1内に弾性吊持機構18を介して吊設された「洗濯機」に関して、図1〜6と共に記載されている。
(4)甲第4号証には、固定部2aと押さえ部2eを有し、種々の用途に適用できる、「棒状物体の固定装置」に関して、第1〜2図と共に以下の点が記載されている。
(5)甲第5号証には、「洗濯機等のホース支持装置」に関して、第1〜13図と共に、排水ホース11の固定装置を備えた脱水兼用の洗濯機1において、排水ホース11を固定する固定バンド17は、一方の抜止め段部18を保持孔20に係止、他方の係止段部19a、19bを導入孔23に係合させることによってホース支持部に止められるようになっている点が記載されている。
4.当審の判断
(1)請求項1に係る発明と甲第1乃至甲第5号証に記載された発明とを比較すると、前記各甲号証に記載の発明はいずれも、「プラスチック製の台板に、外箱から離間させて樋状のホース支持部を一体に形成すると共に、前記槽から機外への排水をする排水ホースの機内途中部位をそのホース支持部上においた状態で該ホース支持部に固定する固定バンドを具えた」点を有していない。
そして、本件請求項1に係る発明は、この点ににより、【発明の詳細な説明】に記載された「排水ホース10の機内途中部位も外箱1から離間して位置し、外箱1との接触が避けられることになる。又、その外箱1に代わってホース支持部20(台板13)に接触するようになるものの、該ホース支持部20(台板13)はプラスチック製であるから、こすられても、排水ホース10に従来のの金属製外箱に対したような破れを生じることがなくなり、かくして、排水ホース10全体として、前述のようにブロー成形しただけのものを使用し得(る)」(明細書段落【0019】)、「加えて、排水ホース10の上記機内途中部位の固定については、ホース支持部20が樋状であることにより、このホース支持部20上に排水ホース10の機内途中部位を置くだけで、排水ホース10はホース支持部20により下から受け支えられるから、一応の固定ができ、そして、固定バンド26により、ホース支持部20上に置いた排水ホース10の機内途中部位の固定ができるので、排水ホース10の機内途中部位の支持固定の作業が容易にできる。」(明細書段落【0020】)という作用効果を奏するものであると認められる。
なお、特許異議申立人は、「甲第2号証には、「洗濯と脱水とを行う主体部を収容する外箱(1)に、プラスチック製の台板(2)を結合したものであって、その台板に、外箱から離間させて樋状のホース支持部(10)を一体に形成すると共に、前記槽から機外への排水をするホース(23)の機内途中部位をそのホース支持部上に置いた状態で該ホース支持部に固定する固定バンド(9)を具えた2槽式洗濯機」が開示されて」(特許異議申立書第15頁第9〜13行)おり、「甲第1号証の基体を台板に置き換えることにつき、当業者であれば格別の困難性は無いと考えられる」(同第17頁第5〜7行)と主張する。
しかしながら、甲第2号証に記載されたものは、ホース出入り口7に通じるボックス10付近で、フック9によってホースを留めるものであり、本件発明のような「機内途中部位の支持固定をした排水ホース10は、その後ホースガイドである突起17やリブ18,ボス19に沿わせ、図1に実線又は二点鎖線で示すように配管して、外箱1の左側又は右側から導出させ(る)」(明細書段落【0018】)構成とはなっていないので、「槽から機外への排出をする排出ホースの機内途中部位をそのホース支持部上に置いた状態で該ホース支持部に固定する固定バンドを具えた」点が開示されているとは認められず、また、甲第2号証に記載のものは2槽式洗濯機であり、脱水兼用洗濯機のような、槽の揺れに伴い排水ホースが揺れ、金属製の外箱にこすられると謂う課題が生じないので、このような甲第2号証の技術を甲第1号証又は甲第3号証のような脱水兼用洗濯機に適用することを、当業者が容易に想到できたとは認められない。
さらに、特許異議申立人は甲第1号証、甲第4号証には「槽から機外への排出をする排出ホースの機内途中部位をそのホース支持部上に置いた状態で該ホース支持部に固定する固定バンドを具えた」点が開示されていると主張するが、これらに記載のものはいずれも一体の部材でホースを挟持するものであり、置くだけの一応の固定の後、バンドで固定するという本件発明の効果(段落【0020】参照)を有するものではなく、当該主張の構成が開示されているとは認められない。
よって、本願請求項1に係る発明は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(2)一方、請求項2乃至5に係る発明は請求項1に係る発明を更に限定したものであるので、その余について判断するまでもなく、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
5.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1乃至5に係る発明の特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-08-23 
出願番号 特願平3-229253
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 梅田 幸秀丸山 英行  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 大里 一幸
熊倉 強
登録日 1999-09-03 
登録番号 特許第2975734号(P2975734)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 脱水兼用洗濯機  
代理人 高田 幸彦  
代理人 竹ノ内 勝  

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