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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1024418
異議申立番号 異議1998-70627  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-02-09 
確定日 2000-07-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第2641575号「グルコース無侵襲計測装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議申立てについてした平成10年12月25日付けの特許取消決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成11年(行ケ)第71号、平成12年2月15日判決言渡)があったので、さらに審理の結果、次のとおり決定する。 
結論 特許第2641575号の特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第2641575号(平成1年12月1日出願、平成9年5月2日設定登録)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「生体組織中のグルコースに特有な吸収波長帯域1600〜1750nmの光線とグルコースの吸収によらない基準波長帯域1200〜1300nmの光線を発生させる手段と、前記吸収波長帯域の光線および前記基準波長帯域の光線を生体に照射させる手段と、前記生体を介した前記吸収波長帯域の光線エネルギーと前記基準波長帯域の光線エネルギーをそれぞれ電気信号に変換する第1第2の光電変換手段と、前記第1第2の光電変換手段の出力の平均値をもとに前記生体を介した前記吸収波長帯域の光線エネルギーと前記基準波長帯域の光線エネルギーの差違を演算処理する手段を具備し、前記演算手段の出力からグルコース濃度を求めることを特徴とするグルコース無侵襲計測装置。」
2.申立の理由の概要
本件発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、本件発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、上記発明に係る特許は同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲第1号証 特開昭60-236631号公報
甲第2号証 JOURNAL OF FOOD SCIENCE Vol.46(1981)p.531〜534
甲第3号証 「化学大事典」(株)東京化学同人発行(1989年)第1254頁
甲第4号証 改訂4版「機器による化学分析」丸善(株)発行(昭和56年)第69頁

2.引用刊行物記載の発明
1) 先の取消理由通知において引用した甲第1号証刊行物(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
「本発明による方法においては、方向性のある光学光源で患者の生体の一部分を照射し、その一部分の皮下における生体組織の測定部位から透過または拡散反射(後方散乱)して来た光エネルギーIを収集するとともに電気信号に変換する。・・・測定および基準スペクトル帯域での吸収量にIG、IRに相当する前記測定および基準信号は演算回路にてグルコース濃度情報に処理されて出力される。本発明は斯る測定方法において、前記測定および基準スペクトル帯域が1000〜2500nmの近赤外線帯域にあり、しかも、λGが1575±15、1765±15、2100±15、2270±15nmのいづれかの波長であり、かつλRも1100〜1300nmの範囲内または、測定スペクトル帯域の両側にあって、グルコースが顕著に吸収する波長域以外にある狭い範囲のいづれかにある波長であることを特徴としている。」(公報第4頁左下欄最下行〜第5頁左上欄第7行)
「モノクロメータ8には、前述の回折格子8c・・・があり、・・・このモノクロメータは、分析を行うに当たって1つまたはそれ以上の測定波長と基準波長を同時に用いるかどうかによって、1つの選ばれた波長から他の1つの波長へと走査ないし繰返しシフトを行うか、または、いくつかの波長へ順次シフトする作用を行う。・・・
9はモノクロメータの出射スリット8bから取出された単色ビーム・・・複合単色ビーム9が検出系2に達するに先立って耳朶13’を通過し、その際に耳朶13’における検査組織により部分的に吸収されたり、拡散されて減衰するようにする。・・・漿液の吸光スペクトルに見られる特徴点は、グルコースの吸光スペクトルに見られるそれとは異なっている。これは、グルコースの赤外線スペクトルを示す第5図と、漿液及び水分の赤外線スペクトルを示す第6図を比較してみてもわかる通りであり、また下記表1にも示される通り異なっている。それ故、グルコースの濃度は、少なくとも3つの異なった波長を用いることにより吸光度特性測定を行えばおおよそ算出することができる。表1・・・明らかである。
検出系2は、・・・集光積分球体13よりなる。・・・この半球内に入り、かつ、その中で幾回も反射をくり返して集められた光は出射口13bから外部へ出るとともに、集光レンズ14により集光されて受光素子15に入射する。・・・かくて、受光素子15は、入射光の強度に応じた出力信号を出す。ところで、光ビーム9は前述のように回転ディスク10によりパルス状に断続されると同時に、光ビーム9を構成する各パルス成分は単一波長、すなわち前段のモノクロメータにより交互に取出された2つかまたはそれ以上の異なった波長である。換言すれば、光ビーム9を構成する各パルス成分は、波長1575nm,1765nm,2100nm、または2700nmを中心とする少なくとも1つの測定信号と、λG波長の両側における狭い波長範囲かまたは広い基準範囲の少なくとも1つの基準信号で構成されている。」」(第6頁左下欄第1〜第8頁右下欄第15行)
「吸収減少についての一般的な物理条件・・・光吸収作用と吸収媒体との基本的な関係はベール・ランベルトの法則・・・は十分成立する。・・・グルコース濃度C2は・・・2つのサンプルにおける吸光度の差ΔDに比例することがわかる。」(公報第10頁右上欄下から2行〜第11頁左上欄下から5行)
さらに、第1図には、透過方式を利用した生体内グルコース濃度測定装置の主要部が描かれており、第5図には、水の赤外線スペクトルを除いた後のグルコースの赤外線スペクトルを示す吸収特性図において、1560〜1780nmを含む1100nmから2500nmの波長範囲の吸収スペクトルが描かれている。

2) また、甲第2号証刊行物(以下、「引用例2」という。)は、「果物及び野菜の非破壊品質評価」に関する論考であって、532頁右欄の中段に表1「リンゴモデル混合物中の様々な濃度における3種類の糖についての、2段微分反射率測定値の線形重回帰分析において選択した線形相関の係数及び波長(nm)」が記載され、その第2図の説明には「log(1/R)対波長としてプロットされた反射率データは、吸収スペクトルに相当するカーブを提供するものである。」(第532頁左欄下から6〜5行)と記載され、第2図には、波長帯域1560〜1780nmを含む950nmから1850nmまでの波長範囲でのグルコース、フラクトース及びショ糖の3種の糖の吸収スペクトルが記載されている。また、表1に関連する説明には「最初に選択された波長は、グルコースでは1688nmであり、ショ糖では1433nmであった。」(第532頁右欄下から14〜13行)と、そして波長選択について、「最良の相関を与える1つの波長を選択した後、標準誤差を低減させるように、残りの各波長を選択する。」(533頁右欄2行ないし4行)と記載されている。

3)甲第3号証刊行物(以下、「引用例3」という。)の「積分強度」の項には、「固体や液体のスペクトル帯は有限の波長範囲に広がりがあり・・・これらのスペクトル強度を理論と対応できる量とするためには、吸収バンド全体にわたった全スペクトル線の合計の強度が必要となる場合があり、これを積分強度という。」と記載されている。
また、甲第4号証刊行物(以下、「引用例4」という)の「4・2・2 吸収スペクトルの図示方法」の項には「一般に縦軸にモル吸光係数・・またはそれらの対数をとり、横軸に波長[mμ]あるいは波数ω[cm-1]をとる。・・・そうしてそのグラフから吸収バンドの面積を求めて、積分吸収強度f(振動子強度ともいう)を算出することができる。」と記載されている。

3.対比・判断
1)本件発明と引用例1に記載の発明とを対比すると、両者は、生体組織中のグルコースに特有な吸収波長帯域の光線とグルコースの吸収によらない基準波長帯域1200〜1300nmの光線を発生させる手段と、前記吸収波長帯域の光線および前記基準波長帯域の光線を生体に照射させる手段と、前記生体を介した前記吸収波長帯域の光線エネルギーと前記基準波長帯域の光線エネルギーをそれぞれ電気信号に変換する第1第2の光電変換手段と、前記第1第2の光電変換手段の出力をもとに前記生体を介した前記吸収波長帯域の光線エネルギーと前記基準波長帯域の光線エネルギーの差違を演算処理する手段を具備し、前記演算手段の出力からグルコース濃度を求めるグルコース無侵襲計測装置である点で一致し、以下の点で両者は相違する。
(相違点1)
グルコースに特有な吸収波長帯域として、本件発明では、1600〜1750nmを使用しているのに対して、引用例1に記載された発明では、1575±15nm、1765±15nm等を使用している点。
(相違点2)
本件発明が、特定の波長帯域の光電変換手段の出力の平均値をもとに光線エネルギーの差異を演算処理しているのに対し、引用例1に記載された発明では光電変換手段の出力の平均値をもとにすることが記載されていない点。

2)上記相違点について検討する。
(1)引用例1の「発明の詳細な説明」に、「光ビーム9を構成する各パルス成分は単一波長、すなわち前段のモノクロメータにより交互に取出された2つかまたはそれ以上の異なった波長である。換言すれば、光ビーム9を構成する各パルス成分は、波長1575nm,1765nm,2100nm、または2700nm(「2270nm」の誤記と考えられる。)を中心とする少なくとも1つの測定信号と、(中略)少なくとも1つの基準信号で構成されている。」(8頁右下欄6行ないし15行)と記載されているのに反して、測定信号として幅を持つ波長帯域を使用することは全く記載されていないことからも十分に裏付けることができるように、引用例1は、グルコースの測光検出に使用する測定信号は幅のない特定の単一波長(±15nm)が望ましいことを開示するものである。
一方、本件発明が1600nmから1750nmまでの幅を持つ波長帯域をグルコースに特有な吸収波長帯城として使用し、得られた数値の平均値をもとにグルコース濃度を求めるものであることはその特許請求の範囲から明らかである。特許異議申立人は、水の赤外線スペクトルを除いた後のグルコースの赤外線スペクトルを示す吸収特性図である引用例1の第5図に、1560〜1780nmを含むブロードな吸収帯が描かれていると主張するが、同図から1600nm〜1750nmをグルコース計測に有意な波長帯域として読み取ることは不可能といわざるを得ない。
したがって、引用例1を論拠として、相違点1に係る本件発明の構成は当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
(2)また、引用例2の表1に関連する説明の「最初に選択された波長は、グルコースでは1688nmであり、ショ糖では1433nmであった。」(第532頁右欄下から14〜13行)、そして波長選択についての「最良の相関を与える1つの波長を選択した後、標準誤差を低減させるように、残りの各波長を選択する。」(533頁右欄2行ないし4行)との記載からして、引用例2には、グルコースの回帰分析において最良の相関を与える波長は1688nmであることを開示するものと解するのが相当である。
そして、引用例2の第2図は、1600〜1750nmの波長帯においてグルコースの吸収があることを示しているものの、同図から、1600nm〜1750nmをグルコース計測に有意な波長帯域として読み取ることは不可能といわざるを得ないし、引用例2には、幅を持つ波長帯域がグルコースの回帰分析において好ましい相関を与えることは全く記載されていないから、引用例2を論拠として、相違点1に係る本件発明の構成は当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(3)そうすると、「積分強度」について記載されている引用例3及び吸収スペクトル図からの積分吸収強度fの算出につき記載されている引用例4をさらに組み合わせても、上記相違点を有する本件発明が、引用例1〜引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しえたとすることはできないものである。

4.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1998-12-25 
出願番号 特願平1-313620
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大橋 賢一  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 志村 博
松本 邦夫
橋場 健治
後藤 千恵子
登録日 1997-05-02 
登録番号 特許第2641575号(P2641575)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 グルコース無侵襲計測装置  
代理人 野口 繁雄  
代理人 滝本 智之  
代理人 岩橋 文雄  

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