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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29B
管理番号 1024477
異議申立番号 異議1998-74481  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-06-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-11 
確定日 2000-08-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第2725505号「廃棄物の処理方法及びその装置」の請求項1乃至14に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2725505号の請求項1乃至14に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許2725505号は、平成3年12月2日に特許出願され、平成9年12月5日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、その後香山俊雄、北野拓郎、堀田雄次、株式会社富士通ゼネラル、松下冷機株式会社、高島雄二より本件請求項1乃至14に係る発明について特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成11年2月8日に訂正請求がなされたが、この訂正請求に対し訂正拒絶理由通知がなされ、平成11年10月18日付けで手続補正がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否
平成11年10月18日付け手続補正書の補正の内容は、特許請求の範囲の減縮やその減縮に伴う明りょうでない記載の釈明を目的として、平成11年2月8日付け訂正請求書の訂正事項に、請求項1、3、7及び9を減縮する補正及び訂正明細書の段落【0010】、【0012】、【0016】及び【0018】の明りょうでない記載を釈明する補正に係る訂正事項を追加することを求めるものである。
しかしながら、上記補正は、訂正請求書に新たな訂正事項を付加するものであるから訂正請求書の要旨を変更するものである。
したがって、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであるから、上記手続補正は採用することができない。
(2)訂正事項
特許権者が求める上記手続補正は採用することができないから、平成11年2月8日付け訂正請求書において求める訂正事項は、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的とするものであるところ、特許請求の範囲に係る訂正事項は、請求項1、請求項3、請求項5乃至7、請求項9、請求項11及び請求項13を訂正して特許請求の範囲全体の請求項1乃至14を次のとおりに訂正するものである。
「【請求項1】鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置と、この破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置。
【請求項2】請求項1において、前記プラスチック選別装置は、前記金属以外の廃棄物を冷却し、破砕し、篩い分けするプラスチックの脆化特性の差を利用して選別する手段を含むものである廃棄物処理装置。
【請求項3】鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置による破砕工程と、この破砕された廃棄物を風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別工程と、この発泡成形材以外の廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置による金属選別工程と、この金属以外の廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置によるプラスチック選別工程とを含む廃棄物処理方法。
【請求項4】請求項3において、前記プラスチック選別工程は、前記金属以外の廃棄物を冷却する工程と、破砕する工程と、篩い分けする工程を有し、プラスチックの脆化特性の差を利用して選別する手段を含むものである廃棄物処理方法。
【請求項5】鉄系金属、非鉄系金属,プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する第1の破砕装置と、この第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕装置と、この第2の破砕装置により破砕された発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離装置と、前記発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置。
【請求項6】鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置による第1の破砕工程と、この第1の破砕工程からの廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別工程と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕工程と、この第2の破砕工程からの発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離工程と、前記発泡成形材以外の廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置による金属選別工程と、この金属以外の廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置によるプラスチック選別工程とを含む廃棄物処理方法。
【請求項7】鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離装置と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する第1の破砕装置と、前記金属塊を破砕する第2の破砕装置と、前記第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この風力選別機により選別された発泡成形材以外の廃棄物及び前記第2の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置。
【請求項8】請求項7において、前記第2の破砕装置は、前記金属塊を冷却して金属の低温脆化特性を利用して破砕するものである廃棄物処理装置。
【請求項9】鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離工程と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置による第1の破砕工程と、前記金属塊を破砕する第2の破砕工程と、前記第1の破砕工程により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別工程と、この風力選別工程により選別された発泡成形材以外の廃棄物及び前記第2の破砕工程により破砕された廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置による金属選別工程と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置によるプラスチック選別工程とを含む廃棄物処理方法。
【請求項10】請求項9において、前記第2の破砕工程は、前記金属塊を冷却して金属の低温脆化特性を利用して破砕するものである廃棄物処理方法。
【請求項11】鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離装置と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する第1の破砕装置と、この第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕装置と、この第2の破砕装置により破砕された発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離装置と、前記金属塊を破砕する第3の破砕装置と、この第3の破砕装置により破砕された廃棄物及び前記発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置。
【請求項12】請求項11において、廃棄物から硝子を取り出す硝子取出装置を備え、前記第1の破砕装置に投入される廃棄物は、この硝子取出装置によって硝子が取り出された廃棄物である廃棄物処理装置。
【請求項13】鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離工程と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置による第1の破砕工程と、この第1の破砕工程からの廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別工程と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕工程と、この第2の破砕工程からの発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離工程と、前記金属塊を破砕する第3の破砕工程と、この第3の破砕からの廃棄物及び前記発泡成形材以外の廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置による金属選別工程と、この金属以外の廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置によるプラスチック選別工程とを含む廃棄物処理方法。
【請求項14】請求項13において、廃棄物から硝子を取り出す硝子取出工程を備え、前記第1の破砕工程に投入される廃棄物は、この硝子取出工程によって硝子が取り出された廃棄物である廃棄物処理方法。」
(3)独立特許要件について
(3-1)本件訂正発明
本件訂正発明は、上記(2)に示す訂正明細書の請求項1乃至14に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(3-2)引用例
当審が平成11年7月26日付けで通知した訂正拒絶理由の主な内容は、請求項1及び3に係る発明は引用例1と引用例17に記載の発明に基づいて、また請求項2、4乃至14に係る発明は引用例1乃至17に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができるというものであり、そこで引用した引用例1乃至引用例17のうち、引用例1、4、9及び10には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:「平成元年度産業廃棄物の処理処分の実態とその対応に関する調査研究報告書」(社)日本機械工業連合会外1名発行、平成2年5月、第117頁及び第118頁、第120頁及び第121頁
(イ)「家電リサイクルセンターの構成機器を図10-2に示す。このプラントは常温破砕選別と低温破砕選別の2系列からなる。常温系は回収鉄くずの品質を重点に破砕機と磁力選別機を選定、その他は各ホッパーに集められ、後日非鉄金属類とプラスチック類などの選別機が付設できるようにした。低温系では破砕機から難破砕物として跳ね出されたコンプレッサーとモーター類を前処理機より切断し、液体窒素による冷却を容易にした。冷却物は破砕により鉄片と銅線とが容易に分離され、磁選機により高品質の銅線、アルミニウムと鉄片とに選別できた。」(第117頁、(1)プロセスの概要の項参照)
(ロ)「廃冷蔵庫については、コンプレッサー、銅複合部品、アルミニウム部品などを粗分解または除去し、それぞれを別個に破砕、磁力選別し純度をあげる。残部の本体、扉などは鉄板、内壁のプラスチックならびに断熱材の発泡ウレタンと、一部グラスウールなどから構成されており、それらを破砕、磁力選別により鉄類を回収する。さらに非磁性物を風力選別することにより軽量物として発泡ウレタンとグラスウールなどが選別できる。重量物には少量の非鉄金属類があるが、湿式比重選別の媒体として、水、塩水などを用い、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、塩ビ系ならびに非鉄金属類に選別できる。」(第120頁、(i)廃冷蔵庫、洗濯機の処理(昭和51〜60年)の項参照)
引用例4:「第1回廃棄物再利用・再資源化に関する国際会議(講演要旨集)」(財)クリーン・ジャパン・センター発行、1981年11月、第328頁〜第331頁
(イ)「低温粉砕技術は、LNG冷熱利用による空気分離から得られる液化窒素の有効利用のために開発されたものであり、一般に、ゴムのような弾力性に富んだ素材は常温下での粉砕が困難とされているが、液化窒素のような冷媒を用いて、低温処理すると、容易に粉砕することができる。・・・このような脆化温度は物質に固有の値であり、このため複数の素材から構成される複合廃棄物を対象に、この性質を利用すれば容易に各種素材を分別回収できることが予測できる。」(第328頁、「2.低温粉砕について」の項参照)
(ロ)「プラスチック、食品等を対象とした低温微粉砕システムの開発も数多くみられ、外国では、エール・リキッド社、リンデ社、エア・プロダクツ社等のシステムがある。・・・液化窒素の効率的な使用、各装置の組合せによるシステム化が各社のねらいとなっている。」(第330頁、「1)低温粉砕システム」の項参照)
引用例9:独特許公報3941742A1号
(イ)「本発明は、部分的に処理した冷却装置を処理する、特に、フッ化炭化水素含有ポリウレタン・フォームを処理する方法および装置に関する。・・・冷煤および圧縮機オイルは、特殊装置によって吸引し、環境を汚染しないように処理し、圧縮機、モー夕および可動部材は除去する。」(訳文第1頁第15行乃至第30行)
(ロ)「図1に示した操作略図にもとづき、部分的に処理した冷却装置の完全処理は、・・・これと同時のPURフォームに付着した物質(例えば、金属および合成樹脂)の分離、PURフォームおよび残存物質の分離、残存物質を含まないPURフォームの微粉への粉砕および処理操作中に生ずるフッ化炭化水素含有ガスの吸引および再生によって行う。分離された残存物質および粉砕したPURフォームは、処理装置から別個に排出し、吸引したフッ化炭化水素含有ガスは、浄化、凝縮し、液状フッ化炭化水素・水・混合物として捕集する。」(訳文第3頁第3行乃至第9行)
(ハ)「処理すべき冷却装置1は、処理装置15に導入する前に部分的に処理され、即ち、圧縮機、モータおよびガラス部材を除去する。」(訳文第3頁第14行及び第15行)
(ニ)「ゲートダンパを開いた後、冷却装置1を・・・多段破砕装置5に送る。・・・破砕装置5の通過時、被処理対象は、辺長さ約10mmの立方体に分割される。破砕された材料は、図5に示した如く、破砕装置5からまず2つの並列の撹拌・移送ウォームに達し、・・・撹拌・移送ウォーム7、7a、7b、7cは・・・いわゆるパドルを備えている。パドルは、破砕材料の撹拌および混合を行い、かくして、PURフォームから付着物質(例えば、金属、合成樹脂など)を除去するため破砕材料を相互にこすり合わせる。・・・かくして形成された衝撃効果によって、PURフォームに付着した残存物質が完全に分離される。」(訳文第3頁第29行乃至第41行)
(ホ)「このように調整した材料を配量してPURフォーム分離機構8に送る。分離機構8は、上方から破砕材料の供給を受け下方からベンチレータ21で形成された空気流17が吹き込まれる垂直なパイプ20からなる。分離機構8の下降路において、装入材料が分離される。即ち、残存物質は、重力に起因して、空気流17に抗して、旋回自在の排出ウォーム22に降下し、処理装置15からスタンバイしている残存物質コンテナ23に送られ、他方、より軽いPURフォームは、接続された上方の貯蔵サイロ24内に吹込まれる。」(訳文第3頁第42行乃至第4頁第1行)
(ニ)「完全に分離されたPURフォームは、・・・粉砕装置に送られる。粉砕装置9は、ブローミルである。粉砕操作中、PURフォームは、粒径0.1mmの粉体に粉砕される。この場合、すべてのフォーム材セルは、破壊され、フッ化炭化水素含有ガスR11が遊離される。次いで、PUR粉体・フッ化炭化水素・空気・混合物は、通気技術的にサイクロン・貯蔵サイロ27に送られる。」(訳文第4頁第11行乃至第15行)
(ホ)「粉砕したPURフォームは・・・下降パイプ33に導入され、ここで、加熱された新鮮空気19で洗浄される。この場合、残存のR11ガス・空気・混合物を吸引し、管路34を介して捕集器35に送る。次いで、純なPURフォーム粉体は、移送ウォーム36で排出ステーション37に送られる。」(訳文第4頁第27行乃至第31行)
引用例10:独特許公報4004336C1号
(イ)「本発明は、冷却ユニットおよび付属品の除去後にポリウレタンフォーム断熱材を含む処分する方法および対応する装置に関する。」(訳文第1頁第13行乃至第14行)
(ロ)「上記方法を使用すれば、家庭用冷蔵庫、冷凍庫およびアイスボックスをほぼ完全に処理でき、この場合、機器をすべてのコンポーネント(例えば、鉄板、非鉄金属、合成樹脂およびポリウレタンフォーム)に分割し、特に、断熱材のポリウレタンフォームの発泡に使用した発泡剤-危険なフッ化炭化水素-をポリウレタンフォームのセルから各段階でほぼ絶えず除去、分離し、危険のないよう処分する。」(訳文第1頁第39行乃至第43行)
(ハ)「ユニットおよび付属品を除去した裸の冷却装置は、・・・作業室1において、解体した冷却装置14を順次に破砕工具に送る。・・・動力駆動の機械的破砕工具4は、一般にシュレッダと呼ばれるマシンであり、強力モータ(図示してない)によって駆動され平行な縦軸線のまわりに回転され相互にかみ合う2つの切断ロール18を有する。双方の切断ロール18によって、冷却装置15は、コブシ大の破片19に破砕される。上記破片19は、銅板、非鉄金属、場合によってはポリウレタンフォームが付着した合成樹脂、ポリウレタンフォーム部材および各種の残存物質からなる。」(訳文第3頁第13行乃至第21行)
(ニ)「破片19は、フローベルト20によって放射装置5に送られる。放射装置5は、2つの放射ホイル21と、縦軸線22のまわりに揺動し軸受23に懸架され孔24を備えたマンガン鋼製槽25とを有する放射ホイル式放射装置である。槽25に装入された、特にポリウレタンフォームの付着した破片19は、揺動槽25において、強靱な粒状放射材26の作用を受ける。放射材26としては、鋳鋼粒子または鋼ワイヤ粒子を使用する。この放射によって、ポリウレタンフォームは破片19から完全に除去され、閉じたセルが破壊され、セル壁は、ポリウレタンフオーム・フレーク27およびポリウレタンフォーム粉28に粉砕され、放射材6とともに槽25の孔24を介して捕集板29上に落下する。ポリウレタンフォーム、ラッカ、エナメル、錆などが除去された破片19は、放射操作の終了時、槽25を完全に転回してコンベヤネット30上に投射され、次いで、分別装置11の始端に置かれる。」(訳文第3頁第23行乃至第34行)
(ホ)「放射装置5に続く分別装置11は、長いコンベヤベルト50からなる。装入され放射装置5においてポリウレタンフォームが除去された破片19は、コンベヤベルト50によって出口ゲート3を介して作業室から引出され、次いで、その材料組成に対応して分別される。まず、破片19は、磁気分離器12の下方を通過し、この際、鉄板破片が除去され、並置の捕集容器51に送られる。次いで、非鉄金属片および合成樹脂片を手操作で分別して他のコンテナに装入し、他方、残存物質は、家庭用ゴミ集積場に廃棄するため、コンベヤベルト50の終端においてゴミ容器52内に落下する。」(訳文第4頁第24行乃至第30行)
(3-3)当審の判断
本件訂正請求項2に係る発明について
本件訂正請求項2に係る発明(以下、「訂正発明2」という)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、「【請求項2】請求項1において、前記プラスチック選別装置は、前記金属以外の廃棄物を冷却し、破砕し、篩い分けするプラスチックの脆化特性の差を利用して選別する手段を含むものである廃棄物処理装置。」であるから、本件訂正発明2は、請求項1の記載事項を付加すれば、次の事項により特定されるとおりのものである。
「鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置と、この破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置において、前記プラスチック選別装置は、前記金属以外の廃棄物を冷却し、破砕し、篩い分けするプラスチックの脆化特性の差を利用して選別する手段を含むものである廃棄物処理装置。」
引用例10には、例えば家庭用冷蔵庫など鉄板、非鉄金属、合成樹脂及びポリウレタンフォームを含む「廃棄物処理装置」(上記(ロ)参照)に関し、その破砕装置については、「双方の切断ロール18によって冷却装置15はコブシ大の破片19に破砕される。上記破片19は、銅板、非鉄金属、場合によってはポリウレタンフォームが付着した合成樹脂、ポリウレタンフォーム部材および各種の残存物質からなる。」(「鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕する」に相当、上記(ハ)参照)及び、「この放射によって、ポリウレタンフォームは破片19から完全に除去され、」(「発泡成形材を薄板から剥離させる」に相当、上記(ニ)参照)と記載されている。
してみると、上記引用例10には、廃棄物を切断ロールなどの破砕工具で破砕する破砕手段とポリウレタンフォーム(「発泡成形材」に相当)を破片19から除去(「剥離」に相当)する放射装置とからなる破砕装置が記載されていると云えるし、そして、この破砕装置は、本件訂正発明2の「廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能」を有することが明らかであるから、本件訂正発明2の「鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置」と云える。
また、引用例10には、上記(ニ)の「ポリウレタンフォームは破片19から完全に除去され、・・・放射材6とともに槽25の孔24を介して捕集板29上に落下する。ポリウレタンフォーム、ラッカ、エナメル、錆などが除去された破片19は、放射操作の終了時、槽25を完全に転回してコンベヤネット30上に投射され、次いで、分別装置11の始端に置かれる。」という記載に徴すれば、上記破砕装置によって破砕された破片19は、篩い分けなどによって分別されているから「発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する篩い分け等の選別手段」が記載されていると云える。
さらに、引用例10の上記(ホ)の「破片19は・・・その材料組成に対応して分別される。まず、破片19は、磁気分離器12の下方を通過し、この際、鉄板破片が除去され、並置の捕集容器51に送られる。次いで、非鉄金属片および合成樹脂片を手操作で分別して他のコンテナに装入し、」という記載に徴すれば、材料組成に対応して(「種類毎の」に相当)金属と金属以外に磁気分離器12で選別する「金属選別装置」が記載され、加えて非鉄金属片及び合成樹脂片(「プラスチック」に相当)を手操作で分別することが記載されている。
そうであるならば、上記引用例10には、以上の点を総合すると、「鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置と、発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する篩い分け等の選別手段と、この発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置とを備えた廃棄物処理装置」の発明(以下、「引用例10発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明2と上記引用例10発明とを対比すると、両者は、次の(イ)及び(ロ)の点で相違していると云える。
(イ)本件訂正発明2は、発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機を有するのに対し、引用例10発明は、篩い分け等の選別手段である点
(ロ)本件訂正発明2は、プラスチック選別装置が金属以外の廃棄物を冷却し、破砕し、篩い分けするプラスチックの脆化特性の差を利用して選別する手段を含むものであるのに対し、引用例10発明は、非鉄金属とプラスチックとを手操作で分別するものであり、該プラスチック選別装置を有しない点
次に、これら相違点について検討するに、上記(イ)の点については、例えば上記引用例1にみられる如く、軽・重の差を利用して物を選別する風力選別手段自体は周知のものであり、加えて上記引用例9にもみられる如く、本件訂正発明2とその課題等殆どの点で軌を一にする「冷蔵庫等の廃棄物処理装置」においても、破砕装置により破砕された廃棄物を風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物に分離するための「風力選別装置」が既に使用されている(上記引用例9(ホ)参照)から、篩等の篩い分け選別手段に替えてこの「風力選別装置」を利用することは当業者であれば容易に想到することができると云うべきである。
また、上記(ロ)の点についても、例えば上記引用例1及び4にみられる如く、低温粉砕分別は周知の手段であり、また上記引用例4にはプラスチックを対象とした低温粉砕システムが既に実施されていることも記載されている。加えて上記引用例10には、手操作とはいえ、金属以外の廃棄物を「プラスチック、非鉄金属とそれ以外」に分別することも示唆されているから、引用例10発明に周知の上記「プラスチック選別装置」を具備させる程度のことは当業者であれば容易に想到することができると云うべきである。
そして、本件訂正発明2の効果も、自明な効果又は容易に予想しうる程度の効果であって格別の効果と云うほどのものではない。
してみると、本件訂正発明2は、上記引用例10及び引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件訂正発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件訂正請求は認めることができない。
(4)むすび
以上のとおり、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3.特許異議申立てについて
(1)本件発明
特許権者が求める上記訂正請求は認めることができないから、本件請求項1乃至請求項14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1乃至14」という)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕する破砕装置と、この破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置。
【請求項2】請求項1において、前記プラスチック選別装置は、前記金属以外の廃棄物を冷却し、破砕し、篩い分けするプラスチックの脆化特性の差を利用して選別する手段を含むものである廃棄物処理装置。
【請求項3】金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕する破砕工程と、この破砕された廃棄物を風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別工程と、この発泡成形材以外の廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別工程と、この金属以外の廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別工程とを含む廃棄物処理方法。
【請求項4】請求項3において、前記プラスチック選別工程は、前記金属以外の廃棄物を冷却する工程と、破砕する工程と、篩い分けする工程を有し、プラスチックの脆化特性の差を利用して選別する手段を含むものである廃棄物処理方法。
【請求項5】金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物を破砕する第1の破砕装置と、この第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕装置と、この第2の破砕装置により破砕された発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離装置と、前記発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置。
【請求項6】金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物を破砕する第1の破砕工程と、この第1の破砕工程からの廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別工程と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕工程と、この第2の破砕工程からの発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離工程と、前記発泡成形材以外の廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別工程と、この金属以外の廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別工程とを含む廃棄物処理方法。
【請求項7】廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離装置と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕する第1の破砕装置と、前記金属塊を破砕する第2の破砕装置と、前記第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この風力選別機により選別された発泡成形材以外の廃棄物及び前記第2の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置。
【請求項8】請求項7において、前記第2の破砕装置は、前記金属塊を冷却して金属の低温脆化特性を利用して破砕するものである廃棄物処理装置。
【請求項9】廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離工程と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕する第1の破砕工程と、前記金属塊を破砕する第2の破砕工程と、前記第1の破砕工程により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別工程と、この風力選別工程により選別された発泡成形材以外の廃棄物及び前記第2の破砕工程により破砕された廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別工程と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別工程とを含む廃棄物処理方法。
【請求項10】請求項9において、前記第2の破砕工程は、前記金属塊を冷却して金属の低温脆化特性を利用して破砕するものである廃棄物処理方法。
【請求項11】金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離装置と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕する第1の破砕装置と、この第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕装置と、この第2の破砕装置により破砕された発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離装置と、前記金属塊を破砕する第3の破砕装置と、この第3の破砕装置により破砕された廃棄物及び前記発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置とを備えた廃棄物処理装置。
【請求項12】請求項11において、廃棄物から硝子を取り出す硝子取出装置を備え、前記第1の破砕装置に投入される廃棄物は、この硝子取出装置によって硝子が取り出された廃棄物である廃棄物処理装置。
【請求項13】金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離工程と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕する第1の破砕工程と、この第1の破砕工程からの廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別工程と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕工程と、この第2の破砕工程からの発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離工程と、前記金属塊を破砕する第3の破砕工程と、この第3の破砕からの廃棄物及び前記発泡成形材以外の廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置による金属選別工程と、この金属以外の廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別工程とを含む廃棄物処理方法。
【請求項14】請求項13において、廃棄物から硝子を取り出す硝子取出工程を備え、前記第1の破砕工程に投入される廃棄物は、この硝子取出工程によって硝子が取り出された廃棄物である廃棄物処理方法。」
(2)引用例
当審が平成10年12月1日付け取消理由通知において引用した引用例1、4、9及び10は、上記2.(3)(3-2)で示した上記引用例1、4、9及び10とそれぞれ同一であるから、上記2.(3)(3-2)で摘示したとおりの事項が記載されている。
(3)当審の判断
(i)本件発明1について
引用例10は、訂正拒絶理由通知において引用した上記引用例10と同じものであるから、引用例10発明は、上記2.(3)(3-3)で摘示したとおりの「鉄系金属、非鉄系金属、プラスチック及び発泡成形材を含む廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置と、発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する篩い分け等の選別手段と、この発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置とを備えた廃棄物処理装置」である。
ところで、本件発明1は、上記本件訂正発明2と比べて、「鉄系金属、非鉄系金属」が「金属」、「廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置」が「廃棄物を破砕する破砕装置」及び「この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置は、前記金属以外の廃棄物を冷却し、破砕し、篩い分けするプラスチックの脆化特性の差を利用して選別する手段を含むもの」が「この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置」という構成であるから、いわば本件訂正発明2の上位概念の発明であると云える。
そこで、本件発明1と上記引用例10発明とを対比すると、両者は、次の(イ)及び(ロ)の点で相違していると云える。
(イ)本件発明1は、発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機を有するのに対し、引用例10発明は、篩い分け等の選別手段である点
(ロ)本件発明1は、金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置を有するのに対し、引用例10発明は、非鉄金属とプラスチックとを手操作で分別するものであり、該プラスチック選別装置を有しない点
しかしながら、上記(イ)の点については、上記2.(3)(3-3)で述べたとおりである。また、上記(ロ)についても、例えば上記引用例1(ロ)の記載にみられる如く、冷蔵庫等の廃棄物処理装置においても、種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置は周知・慣用の手段であり、加えて上記引用例10には、手操作とはいえ、金属以外の廃棄物を「プラスチック、非鉄金属とそれ以外」に分別することも示唆されているから、引用例10発明に周知の上記「プラスチック選別装置」を具備させる程度のことは当業者であれば容易に想到することができると云うべきである。
そして、本件発明1の効果も、自明な効果又は容易に予想しうる程度の効果であって格別の効果と云うほどのものではない。
してみると、本件発明1は、上記引用例10及び引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。

(ii)本件発明2について
本件発明2は、上記本件訂正発明2と比べて、「鉄系金属、非鉄系金属」が「金属」、「廃棄物を破砕すると共に発泡成形材を薄板から剥離させる機能を有する破砕装置」が「廃棄物を破砕する破砕装置」という構成であり、いわば本件訂正発明2の上位概念の発明であると云えるから、本件発明2は、上記2.(3)(3-3)で述べたとおり、上記引用例10及び引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(iii)本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、「廃棄物処理方法」に関するものであるところ、その構成は、「廃棄物処理装置」に係る本件発明1及び2の各構成要件の末尾表現「装置、機」などを「工程」に置き換えただけのものであり、それぞれ本件発明1及び2と実質的な差異はないから、本件発明3及び4は、上記(i)及び(ii)で述べたと同様、上記引用例10及び引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明3及び4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(iv)本件発明5について
引用例9には、金属、合成樹脂及び発泡剤が封入されたポリウレタンフォームを含む「廃棄物処理装置」(上記(イ)及び(ロ)参照)に関し、その破砕装置については「冷却装置1を・・・多段破砕装置5に送る。・・・破砕装置5の通過時、被処理対象は、辺長さ約10mmの立方体に分割される。」(「金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物を破砕する第1の破砕装置」に相当、上記(ニ)参照)と記載され、また風力選別機については「分離機構8は、上方から破砕材料の供給を受け下方からベンチレータ21で形成された空気流17が吹き込まれる垂直なパイプ20からなる。分離機構8の下降路において、装入材料が分離される。即ち、残存物質は、重力に起因して、空気流17に抗して、旋回自在の排出ウォーム22に降下し、処理装置15からスタンバイしている残存物質コンテナ23に送られ、他方、より軽いPURフォームは、接続された上方の貯蔵サイロ24内に吹込まれる。」(「第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機」に相当、上記(ホ)参照)と記載されている。
また、引用例9の上記(ニ)の「完全に分離されたPURフォームは、・・・粉砕装置に送られる。粉砕装置9は、ブローミルである。粉砕操作中、PURフォームは、粒径0.1mmの粉体に粉砕される。」という記載に徴すれば、「選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕装置」が記載され、さらに、上記(ニ)の「この場合、すべてのフォーム材セルは、破壊され、フッ化炭化水素含有ガスR11が遊離される。次いで、PUR粉体・フッ化炭化水素・空気・混合物は、通気技術的にサイクロン・貯蔵サイロ27に送られる。」と上記(ホ)の「残存のR11ガス・空気・混合物を吸引し、管路34を介して捕集記5に送る。次いで、純なPURフォーム粉体は、移送ウォーム36で排出ステーション37に送られる。」という記載に徴すれば、上記引用例9には、「第2の破砕装置により破砕された発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離装置」が記載されていると云える。
そうであるならば、上記引用例9には、以上の点を総合すると、「金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物を破砕する第1の破砕装置と、この第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕装置と、この第2の破砕装置により破砕された発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離装置とを備えた廃棄物処理装置。」の発明(以下、「引用例9発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明5と上記引用例9発明とを対比すると、本件発明5は、「前記発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置」とを有する点で上記引用例9発明と相違していると云える。
しかしながら、これら「金属選別装置」と「プラスチック選別装置」は、例えば上記引用例1及び引用例10にもみられる如く、「廃棄物処理装置」における周知・慣用手段と云うべきものであるから、引用例9発明にこれら周知の上記「金属選別装置」と「プラスチック選別装置」を具備させる程度のことは当業者であれば容易に想到することができると云うべきである。
そして、本件発明5の効果も、自明な効果又は容易に予想しうる程度の効果であって格別の効果と云うほどのものではない。
してみると、本件発明5は、上記引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明5の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(v)本件発明6について
本件発明6は、「廃棄物処理方法」に関するものであるところ、その構成は、「廃棄物処理装置」に係る本件発明5の各構成要件の末尾表現「装置」を「工程」に置き換えただけのものであり、本件発明5と実質的な差異はないから、本件発明6は、上記(iv)で述べたと同様、上記引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(vi)本件発明7について
引用例9には、上記(ハ)の「処理すべき冷却装置1は、処理装置15に導入する前に部分的に処理され、即ち、圧縮機、モータおよびガラス部材を除去する。」という記載に徴すれば、「廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離装置」が記載されていると云えるから、引用例9には、「廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離装置と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕する第1の破砕装置と、前記第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機とを備えた廃棄物処理装置。」の発明(以下「引用例9第2発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明7とこの引用例9第2発明とを対比すると、両者は、次の(イ)及び(ロ)の点で相違していると云える。
(イ)本件発明7は、「金属塊を破砕する第2の破砕装置」を有する点
(ロ)本件発明7は、「発泡成形材以外の廃棄物及び前記第2の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置」を有する点
しかしながら、上記(イ)の点については、例えば上記引用例1(ロ)の記載にみられる如く、冷蔵庫などの廃棄物処理においても周知・慣用手段である。また上記(ロ)についても、上記(iv)で述べたとおりであり、また金属の選別にあたって金属塊の破砕片をも一緒に投入して金属選別することも当業者であれば適宜容易になしうる程度のことである。
してみると、本件発明7は、上記引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明7の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(vii)本件発明8について
本件発明8は、本件発明7における金属塊の破砕装置を低温脆化特性を利用した低温粉砕装置と特定するものであるが、この低温粉砕装置は、例えば引用例4にみられる如く、金属の粉砕手段として周知・慣用なものである。
してみると、本件発明8は、上記引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明8の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(viii)本件発明9及び10について
本件発明9及び10は、「廃棄物処理方法」に関するものであるところ、その構成は、それぞれ「廃棄物処理装置」に係る本件発明7及び8の各構成要件の末尾表現「装置」を「工程」に置き換えただけのものであり、それぞれ本件発明7及び8と実質的な差異はないから、本件発明9及び10は、上記(vi)と(vii)で述べたと同様、上記引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明9及び10の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(ix)本件発明11について
引用例9には、上記(iv)で摘示したとおりの引用例9発明が記載されており、また上記(vi)で摘示したとおり、廃棄物から金属塊を分離する「金属塊分離装置」を有する引用例9第2発明も記載されているから、引用例9には、「金属、プラスチック及び発泡剤が封入された発泡成形材を含む廃棄物から金属塊を分離する金属塊分離装置と、この金属塊が分離された廃棄物を破砕する第1の破砕装置と、この第1の破砕装置により破砕された廃棄物が投入され、風力によって発泡成形材とそれ以外の廃棄物とに分離する風力選別機と、この選別された発泡成形材を破砕する第2の破砕装置と、この第2の破砕装置により破砕された発泡成形材を固体の樹脂部分と気体の発泡剤とに分離する分離装置とを備えた廃棄物処理装置。」の発明が記載されていると云える。
そこで、本件発明11とこの発明とを対比すると、両者は、次の(イ)及び(ロ)の点で相違していると云える。
(イ)本件発明11は、「金属塊を破砕する第3の破砕装置」を有する点
(ロ)本件発明11は、「この第3の破砕装置により破砕された廃棄物及び発泡成形材以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎の金属と金属以外の廃棄物とに選別する金属選別装置と、この金属以外の廃棄物が投入され、この廃棄物を種類毎のプラスチックに選別するプラスチック選別装置」を有する点
しかしながら、これら相違点は、上記(vi)で摘示したものと同じであるから、上記(vi)で述べたと同様の理由により、本件発明11は、上記引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明11の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(x)本件発明12について
本件発明12は、本件発明11に「廃棄物から硝子を取り出す硝子取出装置」を具備させるものであるが、引用例9の上記(ハ)の記載から明らかな如く、引用例9に記載の廃棄物処理装置においても廃棄物から硝子を予め取り出しているから、この点で差異はない。
してみると、本件発明12は、上記引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明12の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(xi)本件発明13及び14について
本件発明13及び14は、「廃棄物処理方法」に関するものであるところ、その構成は、それぞれ「廃棄物処理装置」に係る本件発明11及び12の各構成要件の末尾表現「装置」を「工程」に置き換えただけのものであり、それぞれ本件発明11及び12と実質的な差異はないから、本件発明13及び14は、上記(ix)と(x)で述べたと同様、上記引用例9に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明13及び14の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
4.むすび
以上のとおり、本件請求項1乃至14に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-05-26 
出願番号 特願平3-317643
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (B29B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 新居田 知生
山田 充
登録日 1997-12-05 
登録番号 特許第2725505号(P2725505)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 廃棄物の処理方法及びその装置  
代理人 古澤 俊明  
代理人 小山 廣毅  
代理人 加納 一男  
代理人 小根田 一郎  
代理人 鵜沼 辰之  
復代理人 吉岡 宏嗣  
代理人 前田 弘  

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