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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C23C
管理番号 1024502
異議申立番号 異議1998-73073  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-06-17 
確定日 2000-10-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第2692758号「ピストンリング」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2692758号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2692758号の発明は、昭和59年10月5日に出願された特願昭59-207986号の一部を平成7年1月26日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成9年9月5日にその特許の設定登録がなされ、その後、植竹六郎より特許異議の申立てがなされ、特許請求の範囲の請求項1に係る特許に対して通知された取消理由に対応して、平成11年6月21日付けで訂正請求がなされ、その後再度なされた取消理由通知に対して、平成11年6月21日付けの訂正請求が取り下げられるとともに、平成12年8月4日付けで訂正請求がなされた。
2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
a.特許請求の範囲の請求項1に記載の「CrN型窒化クロムを主成分」を「X線回折法で同定されるCrN型窒化クロムのみを主成分」に訂正する。
b.明細書段落【0008】の記載を「【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも一つの摺動面に、X線回折法で同定されるCrN型窒化クロムのみを主成分とし、CrN相の大きさが1000オングストローム以下の超微細組織でなるイオンプレーティング被覆層を形成したことを特徴とするピストンリングに関する。すなわち、本発明のピストンリング(1)の具体例は図1に示すように、ピストリング母材(2)、例えば鋳鉄もしくはばね鋼にCrN型窒化クロムを主成分とする被覆層(3)を形成し、そのCrN相の大きさは1000オングストローム以下である。」と訂正し、また、明細書段落【0022】の「CrN型窒化クロム」を「CrN型窒化クロムのみ」に訂正し、また、明細書段落【0023】の「CrN型窒化クロム」を「CrN型窒化クロムのみ」に訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に記載のイオンプレーティング被覆層を「CrN型窒化クロムのみ」を主成分とするものに限定し、また、該被覆層の主成分のCrN型窒化クロムを「X線回折法で同定される」ものに限定するものであるから、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮に該当し、また、上記訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項1の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、上記訂正事項bは、明りょうでない記載の釈明に該当する。また、上記訂正事項a,bは、特許明細書に記載されたものに基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
ウ.独立特許要件の判断
平成11年3月26日付け取消理由通知で指摘した理由は、本件の特許請求の範囲の請求項1の記載される発明(以下、「本件発明」という。)は、CrN型窒化クロムを主成分とする被覆層としているが、本件特許公報、図5の64°近傍に現れる回折線は、CrN結晶による回折線ではあり得ず、本件特許明細書に記載の被覆層には、CrN型窒化クロム以外のものが相当存在しているから、該被覆層は、CrN型窒化クロムが主成分であるかどうか疑わしく、「CrN型窒化クロムを主成分とする被覆層」について、当業者が本件発明を容易に実施できる程度に、発明の目的、構成、効果が記載されていないというものである。
しかしながら、本件特許公報、図5の64°近傍のピークは誤記であることは次のa〜cから明らかである。
a.訂正前の特許明細書、段落【0023】に記載の「その外周摺動面に前記方法により、CrN型窒化クロムを主成分とした組織でなる表面被覆層(3)を形成した。」、同段落【0025】に記載の「Co管球を使用したX線回折において、ASTMデータと比較を行ないCrNの存在を確認した。」とあることから、本件発明の被覆層はCrNを主成分とすることは明らかである。
b.異議申立人の主張するように、Co管球を用いた時のCrN結晶のX線回折ピーク位置(2θ)は、JCPDSカードとBraggの式より計算されるとおりに、43°、51°、75°、92°、97°であるから、64°近傍のCrN結晶のX線回折ピークは存在しないことは明らかである。
c.本件特許の原出願である特願昭59-207986号(特開昭61-87950号公報)、第5図の試料No.4では、CrNの75°近傍のピークが表されており、また、同第5図の試料No.4及び試料No.5において図示されたCrNの64°及び75°以外のピーク、即ち、43°、51°、92°及び97°のピークは一致しているから、本件特許公報、図5におけるX線回折チャートの模写において、75°近傍のピークを64°近傍に誤って模写したことが十分に考えられる。
また、上記訂正により、特許請求範囲の請求項1において、被覆層がX線回折法で同定されるCrN型窒化クロムのみを主成分する点が訂正された。
以上のことから、上記訂正により、平成11年3月26日付け取消理由通知で指摘した明細書の記載不備は解消したものと認められる。
したがって、訂正明細書の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
エ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについて
ア.申立ての理由の概要
特許異議申立人植竹六郎は、平成10年6月17日付けの特許異議申立書及び当審の審尋に対して提出された平成11年1月21日付けの審尋に対する回答書によれば、異議申立ての理由として、本件発明の被覆層は、CrN型窒化クロムが主成分であるかどうか疑わしく、「CrN型室化クロムを主成分とする被覆層」について、当業者が本件発明を容易に実施できる程度に、発明の目的、構成、効果が記載されていないから、本件発明に係る特許が特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされているので、本件発明に係る特許は取り消すべきである旨主張している。
イ.判断
「2.ウ.独立特許要件の判断」に記載した理由により、本件発明に係る特許が特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものと認めることができない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した証拠及び理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-09-12 
出願番号 特願平7-10452
審決分類 P 1 651・ 531- YA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 城戸 博兒長谷川 吉雄山川 雅也三宅 正之  
特許庁審判長 三浦 悟
特許庁審判官 新居田 知生
唐戸 光雄
登録日 1997-09-05 
登録番号 特許第2692758号(P2692758)
権利者 株式会社リケン
発明の名称 ピストンリング  
代理人 村井 卓雄  

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