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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A61F
審判 一部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1024605
異議申立番号 異議1999-74802  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-21 
確定日 2000-09-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2909877号「吸収性物品」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2909877号の請求項1ないし7、11ないし12、27ないし28に係る特許を維持する。 
理由 1.経緯
本件特許第2909877号は、平成7年2月2日の出願に係り、平成11年4月9日に設定登録されたものであって、特許異議の申立ての後 、取消理由通知に対して、平成12年7月19日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正請求について、
本件訂正請求に係る訂正事項は以下のとおりである。
(1)特許明細書の特許請求の範囲の請求項1における「該弾性片の各々は、少なくとも部分的に、機械加工を加えることによって非平面形状に変形せしめられたウェブから形成されている、」なる記載を、
「該弾性片の各々は、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられたウェブから形成されている、」に訂正する。
(2)同特許請求の範囲の請求項27における「該トップシートと該バックシートとのいずれか一方を形成するための第一のウェブに、該一対の弾性片を形成するための、弾性的に伸張せしめられた一対の第二のウェブを所定部位において連結し、」なる記載を、
「該トップシートと該バックシートとのいずれか一方を形成するための第一のウェブに、該一対の弾性片を形成するための、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられ、且つ弾性的に伸張せしめられた一対の第二のウェブを所定部位において連結し、」に訂正する。
(3)特許明細書の段落番号[0014]における「少なくとも部分的に、・・・・変形せしめられたウェブ」なる記載を、「少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられたウェブ」に訂正する。
(4)同明細書の段落番号[0015]における「該弾性片の各々は、・・・形成されている、」なる記載を、「該弾性片の各々は、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられたウェブから形成されている、」 に訂正する。
(5)同明細書の段落番号[0024]における「一対の弾性片・・・材料ウェブ」なる記載を、「一対の弾性片を形成するための、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられ、且つ弾性的に伸張せしめられた状態の一対の材料ウェブ」に訂正する。
(6)同明細書の段落番号[0025]における「該一対の弾性片・・・において連結し、」なる記載を、「該一対の弾性片を形成するための、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられ、且つ弾性的に伸張せしめられた一対の第二のウェブを所定部位において連結し、」に訂正する。
(7)同明細書の段落番号[0027]における「少なくとも部分的に、・・・ウェブから形成されており」なる記載を、「少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられたウェブから形成されており」に訂正する。
(8)同明細書の段落番号[0029]における「一対の弾性片・・・・状態のウェブ」なる記載を、「一対の弾性片を形成するための、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられ、且つ弾性的に伸張せしめられた状態のウェブ」に訂正する。
(9)同明細書の段落番号[0038]における「少なくとも部分的に、・・・ウエブから形成されている」なるを、「少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられたウェブから形成されている」に訂正する。
(1 0)同明細書の段落番号[0041]における「の関係、材料ウエブ34における・・・」なる記載を、「の関係は、材料ウエブ34における・・・」に訂正する。
(11)同明細書の段落番号[0046]における「長手方向両端緑の規定する凸円弧」なる記載を、「長手方向両端縁を規定する凸円弧」に訂正する。
(12)同明細書の段落番号[0066]における「着用感を充分に良好である。」なる記載を、「着用感は充分に良好である。」に訂正する。
そこで、これらの訂正について以下検討する。
(1)の訂正は、特許明細書の請求項1における吸収物品において、該吸収部品に具備せしめた弾性片が、他の部片との接合に依存することなく、それ自体で非平面形状に変形されている旨の限定を加えるものであり、また(2)の訂正は、同明細書の請求項27における吸収物品の製造方法において、該吸収部品に具備せしめた弾性片が、他の部片との接合に依存することなく、それ自体が機械加工によって非平面形状に変形されている旨の限定を加えるものであるから、これらの訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、吸収部品に具備せしめる弾性片が、他の部片との接合に依存することなく、それ自体で非平面形状に変形されていることは、特許明細書の第5及び6図、並びにこれらの図についての説明において示されており、また、これらの訂正は、取消理由通知において指摘した先行技術文献の発明との同一性を回避するためになされたものであるから、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
(3)〜(9)の訂正は、上記(1)及び(2)の訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合するためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、上記したことから明らかなように、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
(10)〜(12)の訂正は、明らかな誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であることはいうまでもないことである。
さらに、これら(1)〜(12)の訂正は、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもない。また、後記することから明らかなように、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項によって特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものともいえないものである。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法第126条2-4項の規定に適合するので当該訂正を認める。
3.異議申立てについて、
本件異議申立人の主張の概要は、以下のとおりである。
(1)本件請求項1〜4の発明は甲第1号証(実願平4-34001号のマイクロフィルム(実開平5-86323号公報))に記載された発明であるから、これら請求項に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
(2)本件請求項1〜7の発明は甲第1号証及び甲第2号証(特開平6-184897号公報)に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、これら請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(3)本件請求項11及び12の発明は甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、これら請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(4)本件請求項27及び28項の発明は、甲第3号証(特開平1-162808号公報)に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、これら請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
これに対して、上記訂正後の本件特許請求の範囲における請求項1〜7、11、12、27及び28項の各発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、該請求項1〜7、11、12、27及び28項に記載した事項により特定されるとおりのものであり、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「[請求項1] 液体透過性トップシートと、液体不透過性バックシートと、該トップシートと該バックシートとの間に配設された吸収性コアと、両側部に配置され且つ長手方向に弾性的に伸長せしめた状態で該トップシートと該バックシートとの少なくとも一方に連結された一対の帯状弾性片とを具備し、該弾性片の収縮作用に起因して、長手方向両端部の各々において該トップシート、該バックシート及び該コアが長手方向端に向かって上方に傾斜して延びる状態にせしめられると共に、長手方向中央部の両側部において該弾性片が上方に延びる状態にせしめられる吸収性物品において、該弾性片の各々は、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられたウェブから形成されている、ことを特徴とする吸収性物品。
[請求項2] 該ウェブは熱可塑性合成樹脂フィルムから成る、請求項1記載の吸収性物品。
[請求項3] 該弾性片の各々は機械加工を加えることによって非平面形状に変形せしめられた変形部と実質上平面形状に残留せしめられている非変形部とを含有する、請求項1又は2記載の吸収性物品。
[請求項4] 該弾性片の各々の該非変形部は長手方向に延在せしめられており、該弾性片の各々の収縮作用は主として該非変形部によって生成される、請求項3記載の吸収性物品。
[請求項5] 該弾性片の各々における該非変形部の、該弾性片が非伸長状態で且つ該変形部を平面形状と仮定して算出した面積率は1乃至30%である、請求項4記載の吸収性物品。
[請求頃6] 該弾性片の各々における該非変形部の、該弾性片が非伸長状態で且つ該変形部を平面形状と仮定して算出した面積率は3乃至20%である、請求項5記載の吸収性物品。
[請求項7] 該弾性片の各々における該非変形部の、該弾性片が非伸長状で且つ該変形部を平面形状と仮定して算出した面積率は5乃至12%である、請求項6記載の吸収性物品。
[請求項8] 該弾性片の各々は長手方向に延びる折り返し線に沿って折り返して二層形態にせしめられており、長手方向中央部の両側部において該折り返し線が上端緑を規定する、請求項1から7までのいずれかに記載の吸収性物品。
[請求項9] 該弾性片の各々の該変形部と該非変形部は幅方向に並列せしめられて長手方向に連続して延び、該折り返し線は該非変形部に位置する、請求項8記載の吸収性物品。
[請求項10] 該弾性片の各々の該変形部と該非変形部は幅方向に並列せしめられて長手方向に連続して延び、該折り返し線は該変形部に位置する、請求項8記載の吸収性物品。
[請求項11] 該弾性片の各々の少なくとも一部は該トップシートの上方に配置されており、該コアは該トップシートよりも小さく、該コアの長手方向両端は該トップシートの長手方向両端よりも内側に位置せしめられており、該コアの長手方向両端が位置する領域において該弾性片の各々の少なくとも該非変形部が該トップシートに連結されている、請求項4記載の吸収性物品。
[請求項12] 該コアの長手方向両端が位置する領域において該弾性片の各々は少なくとも該非変形部が間隔をおいて位置する複数の部位で該トップシートに加熱融着されている、請求項11記載の吸収性物品。
[請求項13] 該弾性片の各々は折り返し線が幅方向内側縁を規定するように該トップシートの上方に配置されており、該弾性片の各々の幅方向外側緑及び長手方向両端において該弾性片の各々が該トップシートに連結されており、該弾性片の収縮作用に起因して、長手方向中央部において該弾性片が幅方向内側に向かって上方に傾斜して延びる状態にせしめられる、請求項8から10までのいずれかに記載の吸収性物品。
[請求項14] 弾性的に伸長せしめられた形状において該弾性片の各々は、長手方向中央部において、該トップシートに連結されている幅方向外側縁から更に幅方向外側に延び、次いで折り返されて幅方向内側に延びる付加部を含み、該弾性片の収縮作用に起因して、該弾性片の該付加部も幅方向外側に向かって上方に傾斜して延びる状態にせしめられる、請求項13記載の吸収性物品。
[請求項15] 弾性的に伸長せしめられた形状において該弾性片の各々は、長手方向中央部において、該トップシートに連結されている幅方向外側縁から更に幅方向外側に延び、次いで折り返されて幅方向内側に延びる付加部を含み、該弾性片の各々の該付加部の幅方向外側領域は、ショーツの外面に折り返されるウイングを構成する、請求項13記載の吸収性物品。
[請求項16] 該弾性片の各々は折り返し線が幅方向外側縁を規定するように配置されており、弾性的に伸長せしめられた形状において該弾性片の各々は、長手方向中央部において該トップシートの両側縁を越えて幅方向外側に延出せしめられており、該トップシートと該バックシートとの少なくとも一方の幅方向外側縁及び長手方向両端において該弾性片の各々が該トップシートと該バックシートとの少なくとも一方に連結されており、該弾性片の収縮作用に起因して、長手方向中央部において該弾性片が幅方向外側に向かって上方に傾斜して延びる状態にせしめられる、請求項8から10までのいずれかに記載の吸収性物品。
[請求項17] 液体透過性トップシートと、液体不透過性バックシートと、該トップシートと該バックシートとの間に配設された吸収性コアと、両側部に配置され且つ長手方向に弾性的に伸長せしめた状態で該トップシートと該バックシートとの少なくとも一方に連結された一対の帯状弾性片とを具備し、該弾性片の収縮作用に起因して、長手方向両端部の各々において該トップシート、該バックシート及び該コアが長手方向端に向かって上方に傾斜して延びる状態にせしめられると共に、長手方向中央部の両側部において該トップシートの幅方向外側部が上方に向かって延びる状態にせしめられる吸収性物品において、 該弾性片の各々は該バックシートの下方に配置されており、長手方向中央部において該トップシートの幅方向外側部は該弾性片に連結されていない、ことを特徴とする吸収性物品。
[請求項18] 少なくとも長手方向中央部の両側において、該トップシートは幅方向外側縁を規定する折り返し線に沿って折り返されており、二層形態にせしめられている、該トップシートの幅方向外側部が幅方向外側に向かって上方に傾斜して延びている、請求項17記載の吸収性物品。
[請求項19] 該弾性片の各々は、長手方向中央部において該トップシートを越えて幅方向外側に延出せしめられ、ショーツの外面に折り返されるウイングを構成する部分を有する、請求項17又は18記載の吸収性物品。
[請求頃20] 該弾性片の各々は、少なくとも部分的に、機械加工を加えることによって非平面形状に変形せしめられたウェブから形成されている、請求項17から19までのいずれかに記載の吸収性物品。
[請求項21]該ウェブは熱可塑性合成樹脂フィルムから成る、請求項20記載の吸収性物品
[請求項22] 該弾性片の各々は機械加工を加えることによって非平面形状に変形せしめられた変形部と実質上平面形状に残留せしめられている非変形部とを含有する、請求項20又は21記載の吸収性物品。
[請求項23] 該弾性片の各々の該非変形部は長手方向に延在せしめられており、該弾性片の各々の収縮作用は主として該非変形部によって生成される、請求項22記載の吸収性物品。
[請求項24] 該弾性片の各々における該非変形部の、該弾性片が非伸長状態で且つ該変形部を平面形状と仮定して算出した面積率は1乃至30%である、請求項23記載の吸収性物品。
[請求項25] 該弾性片の各々における該非変形部の、該弾性片が非伸長状態で且つ該変形部を平面形状と仮定して算出した面積率は3乃至20%である、請求項24記載の吸収性物品。
[請求項26] 該弾性片の各々における該非変形部の、該弾性片が非伸長状態で且つ該変形部を平面形状と仮定して算出した面積率は5乃至12%である、請求項25記載の吸収性物品。
[請求項27] 液体透過性トップシートと、液体不透過性バックシートと、該トップシートと該バックシートとの間に配設された吸収性コアと、両側部に配置され且つ長手方向に弾性的に伸長せしめた状態で該トップシートと該バックシートとの少なくとも一方に連結された一対の帯状弾性片とを具備し、該弾性片の収縮作用に起因して、長手方向両端部の各々において該トップシート、該バックシート及び該コアが長手方向端に向かって上方に傾斜して延びる状態にせしめられると共に、長手方向中央部の両側部において該弾性片と該トップシートの幅方向外側部との一方が上方に延びる状態にせしめられる吸収性物品を製造するための製造方法にして、該トップシートと該バックシートとのいずれか一方を形成するための第一のウエブに、該一対の弾性片を形成するための、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられ、且つ弾性的に伸長せしめられた一対の第二のウェブを所定部位において連結し、しかる後に、該トップシートと該バックシートとの該一方を形成するための該第一のウェブに、該トップシートと該バックシートとの他方を形成するための第三のウェブと該コアとを所定部位において連結する、ことを含むことを特徴とする製造方法。
[請求頃28] 該第一のウェブ、該第二のウェブ及び該第三のウェブは熱可塑性合成樹脂フィルムから構成されており、該第一のウェブへの該第二のウェブ及び該第三のウェブの連結は共に加熱融着によって遂行される、請求項27記載の製造方法。
そこで、上記異議申立人の主張について以下検討する。
(1)の主張について、
まず、本件訂正後の請求項1の発明(以下、本件発明という。)についていうと、
甲第1号証においては、生理用ナプキンについて記載され、該ナプキンに使用する熱可塑性弾性帯は、外面が不織布で被覆固定される旨及びこの被覆固定においては、伸張状態の熱可塑性弾性帯に不織布を、該弾性体の収縮が妨げられないように、一定間隔に塗布したホットメルトで固定する旨記載されている。そして、この収縮状態を示す図7によれば、熱可塑性弾性帯の外面を被覆する不織布は、熱可塑性弾性体の収縮により、その表面に凹凸が生じ、非平面形状になっているものとすることができるが、この凹凸は伸張状態の熱可塑性弾性帯が収縮するのに対し、その外面に被覆固定された不織布が収縮しないことにより生じたものであり、この図7の上記不織布は、他の部片との接合に依存して、非平面形状に変形せしめられたものであるから、図7における不織布は、本件発明のように、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられたものでないことは明らかであり、本件発明と甲第1号証に記載された発明とはこの点で構成上異なる。
してみれば、本件発明と甲第1号証に記載された発明とはいえない。
また、本件訂正後の請求項2〜4の各発明は、本件発明をさらに限定したものであるから本件発明と甲第1号証に記載された発明とはいえない以上、これら請求項の各発明も甲第1号証に記載された発明とはいえない。
(2)の主張について、
甲第1号証の記載は上記のとおりであり、甲第1号証の生理用ナプキンは、本件発明における、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられた弾性片を具備したものではないことは明らかである。また、甲第2号証においては、伸縮性シートとこれに接合した不織布等の首付け材料とからなる複合伸縮性材料について記載され、この接合は、該首付け材料は複数のピンを備えた溝付カレンダーロールと平滑なアンビロールを用いた熱融着により行う旨記載されてはいるが、この複合伸縮性材料も甲第1号証と同様に、伸縮性シートの収縮により、首付け材料の表面に凹凸が生じ、非平面形状になるものであり、この非平面形状は、本件発明のように、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられたものでないことは明らかである。してみると、この甲第2号証も甲第1号証との相違点に係る構成を示していないのであるから、甲第1号証及び甲第2号証の記載を組み合わせても本件発明を導き出せないとするほかなく、本件発明は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとはいえない。
また、本件訂正後の請求項2〜7の各発明は、本件発明をさらに限定したものであるから本件発明が甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとはいえない以上、これら請求項の各発明も甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(3)の主張について、
本件訂正後の請求項11及び12の発明は、本件発明をさらに限定したものであり、一方、上記したように、甲第1号証と本件発明とは構成において異なることは明白であって、この相違点に係る本件発明の構成が当業者において想到できるとする理由を見いだせない。してみれば、本件発明自体甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできないから、当然、本件発明をさらに限定した本件訂正後の請求項11及び12の各発明も甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
(4)の主張について、
甲第3号証においては、透液性トップシート、不透液性バックシート、吸収性コア及び第1のサイドフラップ、及び第2のサイドフラップを有する使い捨ておむつの製造方法が記載されており、この製造方法は、トップシートをバックシートに重ねる前に第2のサイドフラップをトップシートに接合することに特徴を有する旨、また、この第2のサイドフラップは弾性バンドを被包する旨記載されている。しかし、本件訂正後の請求項27の発明の製造方法において取り付けられる弾性片は、少なくとも部分的に、それ自体に機械加工を加えることによって、他の部片との接合に依存することなく、非平面形状に変形せしめられ、且つ弾性的に伸長せしめられたものであって、このような弾性片は、甲第3号証において全く記載されていない。してみると、両者の製造方法は取付けられる部材において相違し、本件訂正後の請求項27の発明は甲第3号証に記載された発明ではない。
また、本件訂正後の請求項28の発明は、本件訂正後の請求項27の発明をさらに限定したものであるから、当然甲第3号証に記載された発明ではない。
4.以上のとおりであるから、本件訂正請求は認めることができ、本件請求項1〜7、11、12、27及び28に係る各特許は、本件異議申立の理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-09-07 
出願番号 特願平7-35921
審決分類 P 1 652・ 113- YA (A61F)
P 1 652・ 121- YA (A61F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 齋藤 恵  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 深津 弘
内藤 伸一
登録日 1999-04-09 
登録番号 特許第2909877号(P2909877)
権利者 ザ、プロクター、エンド、ギャンブル、カンパニー
発明の名称 吸収性物品  
代理人 小野 尚純  

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