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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1024685
異議申立番号 異議1999-73042  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-09 
確定日 2000-08-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第2856998号「超音波洗浄装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2856998号の特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第2856998号については、平成4年10月13日に特
許出願され、同10年11月27日に設定の登録がされ、その後、同1
1年8月9日に特許異議申立人松井勉より特許異議の申立てがされ、同
11年12月14日付で取消しの理由の通知がされ、その指定期間内で
ある同12年3月13日に明細書の訂正の請求がされ、同12年3月2
4日付で訂正の拒絶の理由の通知がされ、その指定期間内である同12
年5月26日に訂正の請求に対して補正がされた。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の請求に対する補正について
(1) 補正の内容
上記補正の内容は、次の補正事項a及び補正事項bのとおりである。
ア 補正事項a
平成12年3月13日付訂正請求書の(3)訂正の要旨の訂正事項に
おける
「【特許請求の範囲】の【請求項1】を特許請求の範囲の減縮を目的
として以下の通り訂正する。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端にノズル孔が形成された筒状の装置本体と、こ
の装置本体の他端側の開口部全面を覆うように設けられた振動板に超
音波発振器を取着し、この超音波発振器を作動させることで上記本体
内の洗浄液に超音波を印加するノズル式の超音波洗浄装置において、
上記洗浄液が接触する上記装置本体と振動板のうち、少なくとも上記
振動板を単結晶のサファイヤ(Al2O3)で形成したことを特徴とす
る超音波洗浄装置。」
これに伴い、【特許請求の範囲】の記載と【発明の詳細な説明】の
記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、段落
番号【0011】を以下の通り訂正する。
「【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、一端にノズル孔が形成された筒状の装置本
体と、この装置本体の他端側の開口部全面を覆うように設けられた振
動板に超音波発振器を取着し、この超音波発振器を作動させることで
上記本体内の洗浄液に超音波を印加するノズル式の超音波洗浄装置に
おいて、上記洗浄液が接触する上記装置本体と振動板のうち、少なく
とも上記振動板を単結晶のサファイヤ(Al2O3)で形成したことを
特徴とする。」」を、
「【特許請求の範囲】の【請求項1】を特許請求の範囲の減縮を目的
として以下の通り訂正する。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端にノズル孔が形成された筒状の装置本体と、こ
の装置本体の他端側の開口部全面を覆うように設けられた振動板に超
音波発振器を取着し、この超音波発振器を作動させることで上記本体
内の洗浄液に超音波を印加するノズル式の超音波洗浄装置において、
上記振動板及び上記装置本体のうちの少なくとも超音波が照射される
部位を単結晶のサファイヤ(Al2O3)で形成したことを特徴とする
超音波洗浄装置。」
これに伴い、【特許請求の範囲】の記載と【発明の詳細な説明】の
記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、段落
番号【0011】を以下の通り訂正する。
「【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、一端にノズル孔が形成された筒状の装置本
体と、この装置本体の他端側の開口部全面を覆うように設けられた振
動板に超音波発振器を取着し、この超音波発振器を作動させることで
上記本体内の洗浄液に超音波を印加するノズル式の超音波洗浄装置に
おいて、上記振動板及び上記装置本体のうちの少なくとも超音波が照
射される部位を単結晶のサファイヤ(Al2O3)で形成したことを特
徴とする。」」と補正する。
イ 補正事項b
同上訂正請求書の(4)請求の原因における
「上記訂正事項については、特許明細書の特許請求の範囲に記載され
た超音波洗浄処理装置を、実施例に対応させて、一端側にノズル孔を
有し、他端側に開口部全面を覆うように振動板を設けたノズル式の超
音波洗浄装置に限定しようとするものであり、当該限定要素は、特許
明細書の段落番号【0004】、【0016】及び図面に記載されて
いたものである。」を、
「上記訂正事項については、特許明細書の特許請求の範囲に記載され
た超音波洗浄処理装置を、実施例に対応させて、一端側にノズル孔を
有し、他端側に開口部全面を覆うように振動板を設けたノズル式の超
音波洗浄装置において、その振動板及び装置本体のうちの少なくとも
超音波が照射される部位を単結晶のサファイヤにて構成したことを限
定しようとするものであり、当該限定要素は、特許明細書の段落番号
【0004】、【0008】、【0016】及び図面に記載されてい
たものである。」と補正する。
(2) 補正の適否
補正事項aは、ノズル式の超音波洗浄装置における単結晶のサファイ
ヤで形成される部材を、「少なくとも振動板」から「少なくとも超音波
が照射される部位」へと変更するものであり、また、訂正事項bは、ノ
ズル式の超音波洗浄装置において「少なくとも超音波が照射される部位
を単結晶のサファイヤにて構成したこと」を追加限定するものであって
、いずれも訂正請求書の要旨を変更するものである。
したがって、上記補正は特許法第120条の4第3項において準用す
る同法第131条第2項の規定に違反するものであって採用できない。
2 訂正の内容
特許権者は、訂正請求書において、本件特許明細書を以下のように訂
正しようとするものである。
(1) 訂正事項a
【特許請求の範囲】の【請求項1】を以下のとおり訂正する。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端にノズル孔が形成された筒状の装置本体と、この
装置本体の他端側の開口部全面を覆うように設けられた振動板に超音波
発振器を取着し、この超音波発振器を作動させることで上記本体内の洗
浄液に超音波を印加するノズル式の超音波洗浄装置において、上記洗浄
液が接触する上記装置本体と振動板のうち、少なくとも上記振動板を単
結晶のサファイヤ(Al2O3)で形成したことを特徴とする超音波洗浄
装置。」
(2) 訂正事項b
段落番号【0011】を以下のとおり訂正する。
「【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、一端にノズル孔が形成された筒状の装置本体
と、この装置本体の他端側の開口部全面を覆うように設けられた振動板
に超音波発振器を取着し、この超音波発振器を作動させることで上記本
体内の洗浄液に超音波を印加するノズル式の超音波洗浄装置において、
上記洗浄液が接触する上記装置本体と振動板のうち、少なくとも上記振
動板を単結晶のサファイヤ(Al2O3)で形成したことを特徴とする。

3 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否
(1) 訂正事項aについて
訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲に記載された超音波洗浄
装置を、特許明細書の段落番号【0004】、【0016】及び図面に
示される実施例に対応させて、一端にノズル孔を有し、他端側に開口部
全面を覆うように振動板を設けたノズル式の超音波洗浄装置に限定しよ
うとするものであり、特許請求の範囲の減縮に相当し、且つ、願書に添
付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質的
に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2) 訂正事項bについて
訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮に対応してなされた発明の詳細
な説明の欄における【課題を解決するための手段】の項の訂正であり、
明りょうでない記載の釈明に相当し、且つ、願書に添付した明細書又は
図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質的に特許請求の範囲
を拡張又は変更するものではない。
4 独立特許要件の判断
(1) 訂正発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下「訂正発明」という。)は、
上記2(1)に示すとおりの「超音波洗浄装置」と認める。
(2) 引用刊行物
これに対して、当審が通知した訂正の拒絶の理由で引用した本件特許
の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平3-475
78号公報(以下「刊行物A」という。)には、以下の発明が記載され
ていると認める。
一端に噴射口2が形成された筒状の装置本体1と、この装置本体1の
他端側の開口部全面を覆うように設けられた振動板3にリード線5を通
して超音波発振器に接続される振動子4を取着し、この超音波発振器に
接続される振動子4を作動させることで上記本体1内の洗浄液に超音波
を印加するノズル式の超音波洗浄装置。(第3図及びその説明参照)
また、同じく訂正の拒絶の理由で引用した本件特許の出願前に日本国
内において頒布された刊行物である米国特許第4,804,007号明
細書(以下「刊行物B」という。)には、以下の発明が記載されている
と認める。
容器10に設けられた剛性のプレート36にメガソニックエネルギ源
に接続されるトランスデューサ42,44を取着し、このメガソニック
エネルギ源に接続されるトランスデューサ42,44を作動させること
で上記容器10内の洗浄液にメガソニックエネルギを印加するメガソニ
ック洗浄装置において、上記洗浄液が接触する上記プレート36をサフ
ァイヤで形成したメガソニック洗浄装置。
(3) 対比
訂正発明と刊行物A記載の発明とを対比すると、刊行物A記載の発明
の「噴射口2」は、訂正発明の「ノズル孔」に相当することが明らかで
ある。また、刊行物A記載の発明では、「振動子4」と「超音波発振器
」とが別個のものとして表現されているものの、これらは、ひとまとめ
にして「超音波発振器」として表現できるものである。
したがって、両者は、
「一端にノズル孔が形成された筒状の装置本体と、この装置本体の他端
側の開口部全面を覆うように設けられた振動板に超音波発振器を取着し
、この超音波発振器を作動させることで上記本体内の洗浄液に超音波を
印加するノズル式の超音波洗浄装置。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。
相違点:
訂正発明では、洗浄液が接触する装置本体と振動板のうち、少なくと
も上記振動板を単結晶のサファイヤ(Al2O3)で形成しているのに対
して、刊行物A記載の発明では、洗浄液が接触する装置本体と振動板と
がいかなるもので形成されているのか明らかでない点。
(4) 判断
そこで、上記相違点について検討する。
先に認定した刊行物B記載の発明における「容器10」、「剛性のプ
レート36」、「メガソニックエネルギ源に接続されるトランスデュー
サ42,44」及び「メガソニック洗浄装置」は、それぞれ訂正発明の
「装置本体」、「振動板」、「超音波発振器」及び「超音波洗浄装置」
に相当することが技術常識に照らしてみて明らかである。
そうしてみると、結局、刊行物Bには、超音波洗浄装置において、洗
浄液が接触する振動板をサファイヤで形成することが記載されている。
また、当審が通知した取消しの理由で引用した刊行物2(日本電子材
料技術協会編「最新 電子材料活用辞典」1992年5月28日株式会
社工業調査会発行 第69頁「サファイア」の項)及び刊行物3(財団
法人国際科学振興財団編「科学大事典」昭和60年3月5日丸善株式会
社発行 第1276頁「ベルヌーイほう」の項)に示されているように
単結晶のサファイヤ自体は本件特許の出願前に周知である。
したがって、刊行物B記載の上記事項及び上記周知の事項を刊行物A
記載の発明に適用して、その振動板を単結晶のサファイヤで形成するこ
とにより訂正発明のように構成する点に格別の困難性は見当たらない。
また、訂正発明により齎される効果も刊行物A及び刊行物B記載の発
明及び上記周知の事項から当然予期しうる程度のものであって格別のも
のではない。
よって、訂正発明は、刊行物A及び刊行物B記載の発明及び上記周知
の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受ける
ことができないものである。
5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4
3項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定は満たす
ものの、同条第4項の規定に違反するので当該訂正は認められない。
第3 特許異議の申立てについての判断
1 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、本件特許の出願前に日本国内において頒布された
刊行物である甲第1号証(上記刊行物B)、甲第2号証(同刊行物2)
、甲第3号証(同刊行物3)及び甲第4号証(特開昭62-28623
1号公報)を提出して、本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」
という。)は、甲第1号証記載の発明と実質的に同一であるか、もしく
は、甲第1号証乃至甲第4号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に
発明をすることができたものであるから、本件の請求項1に係る特許(
以下「本件特許」という。)は、特許法第29条の規定に違反してされ
たものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
2 特許異議申立人の主張の検討
(1) 本件発明
本件発明は、明細書及び図面の記載からみて特許請求の範囲の請求項
1に記載された事項によって特定されるとおりの以下のものと認める。
「装置本体に設けられた振動板に超音波発振器を取着し、この超音波発
振器を作動させることで上記本体内の洗浄液に超音波を印加する超音波
洗浄装置において、上記洗浄液が接触する上記装置本体と振動板のうち
、少なくとも上記振動板を単結晶のサファイヤ(Al2O3)で形成した
ことを特徴とする超音波洗浄装置。」
(2) 甲各号証の記載内容
甲第1号証には、第2の4(2)に示すように以下の発明が記載されて
いる。
容器10に設けられた剛性のプレート36にメガソニックエネルギ源
に接続されるトランスデューサ42,44を取着し、このメガソニック
エネルギ源に接続されるトランスデューサ42,44を作動させること
で上記容器10内の洗浄液にメガソニックエネルギを印加するメガソニ
ック洗浄装置において、上記洗浄液が接触する上記プレート36をサフ
ァイヤで形成したメガソニック洗浄装置。
また、甲第2号証及び甲第3号証によって、単結晶のサファイヤは本
件特許の出願前に周知であることが示される。
甲第4号証には、装置本体である洗浄漕3に設けられた振動板である
タンタル製振動板6に超音波発振器である振動子10が取着された洗浄
装置が記載されている。
(3) 対比・判断
本件発明と甲1号証記載の発明とを対比すると、甲1号証記載の発明
の「容器10」、「剛性のプレート36」、「メガソニックエネルギ源
に接続されるトランスデューサ42,44」及び「メガソニック洗浄装
置」は、それぞれ本件発明の「装置本体」、「振動板」、「超音波発振
器」及び「超音波洗浄装置」に相当する。
したがって、両者は、「装置本体に設けられた振動板に超音波発振器
を取着し、この超音波発振器を作動させることで上記本体内の洗浄液に
超音波を印加する超音波洗浄装置において、上記洗浄液が接触する上記
振動板をサファイヤで形成した超音波洗浄装置。」である点で一致して
いるものの、振動板を形成するサファイヤが、本件発明では、単結晶の
サファイヤであるのに対して、甲第1号証記載の発明では、どのような
サファイヤであるのか明らかでない点で相違している。
しかしながら、上記の如く甲第2号証及び甲第3号証に示されている
ように、単結晶のサファイヤは本件特許の出願前に周知であり、甲1号
証記載の発明の剛性のプレート36、すなわち、振動板を形成するサフ
ァイヤを単結晶のサファイヤとして本件発明のように構成する点に格別
の困難性は見当たらない。
また、本件発明により齎される効果も甲第1号証記載の発明及び上記
周知の事項から当然予期しうる程度のものであって格別のものではない

したがって、本件発明は、甲第1号証記載の発明及び上記周知の事項
に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件
特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第113条第2号に該
当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-06-27 
出願番号 特願平4-274189
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岡 和久  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 中村 達之
宮崎 侑久
登録日 1998-11-27 
登録番号 特許第2856998号(P2856998)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 超音波洗浄装置  
代理人 外川 英明  

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