• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B42D
管理番号 1024725
異議申立番号 異議1999-74678  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1988-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-10 
確定日 2000-09-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2904785号「カ-ド内蔵用ICモジユ-ル」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2904785号の特許を維持する。 
理由 一.[手続の経緯]
本件特許第2904785号(以下、「本件特許」という)は、昭和62年1月26日に出願された特願昭62-14178号の特許出願に係り、平成11年3月26日に設定登録されたが、本件特許に対して、表記特許異議申立人より特許異議の申立があったので、当審において、当該申立の理由を検討の上、特許取消理由を通知したところ、その通知書で指定した期間内の平成12年6月13日に、特許異議意見書の提出と共に訂正請求があったが、当該訂正請求に係る訂正明細書及び特許明細書の記載では、発明の詳細な説明と特許請求の範囲の記載との間の対応関係が明確ではなく、当審より、その旨を指摘した特許取消理由を通知し、これに対して特許権者は先の平成12年6月13日付の訂正請求を取下げると共に、あらためて、平成12年7月25日付で訂正請求をしたものである。

二.[訂正請求について]
1.訂正の要旨
上記平成12年7月25日付訂正請求における訂正の要旨は、次のイ〜ニのとおりである。
イ 特許明細書の特許請求の範囲における、「ボンディング用貫通孔が設けられた絶縁性材料からなる支持体層と」という記載を、「ボンディング用貫通孔が設けられた絶縁性材料からなり、前記貫通孔を除いて均一な厚みをもつ平板状の支持体層と」に訂正する。
ロ 同じく特許請求の範囲における、「前記支持体の全面に設けられたパターニングされた導電性材料からなる端子層と、前記支持体層上に固着されたICチップとからなり」という記載を、「前記支持体層の一方の面の全面に設けられたパターニングされた導電性材料からなる端子層と、前記支持体層の前記端子層とは反対側の面上に固着されたICチップとからなり」と訂正する。
ハ 同じく特許請求の範囲における、「前記ICチップ配置部分に前記支持体層および前記端子層が形成された構造を有するICモジュールであって」という記載を、「前記ICチップ配置部分に前記支持体層および前記端子層が積層して形成された構造を有するICモジュールであって、前記支持体層は、ガラス布に樹脂を含浸させた絶縁性フィルム層と、熱硬化性接着層とからなり」と訂正する。
ニ 同じく特許請求の範囲における、「前記支持体層に設けられたボンディング用貫通孔を介して」という記載を、「前記平板状の支持体層に設けられたボンディング用貫通孔を介して」と訂正する。
3.訂正請求の適否
(1)訂正の目的
上記イ、ハ、ニの訂正は、本件特許に係る発明の必須の構成をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮とみることができるし、また、ロの訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当する。
(2)新規事項の有無
本件特許に係る、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、上記各訂正の内容は、当該明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものといえる。
(3)拡張、変更の有無
上記ロの、「前記支持体の全面に設けられた・・・端子層」を「前記支持体層の一方の面の全面に設けられた・・・端子層」とする訂正では、端子層を設ける部位が変更されるかのようであるが、端子層が一方の面のみに設けられることは、本件発明の技術内容からみて当然の前提事項であって、明細書や図面に明確に示されており、上記ロを含む各訂正の内容は、訂正前の特許請求の範囲を実質的に拡張したり、変更したりするものとはいえない。
(4)独立特許要件の適否
上記訂正に係る特許請求の範囲に記載された発明について、本件特許に係る出願の際、独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。
(4-1)<訂正に係る発明>
上記訂正に係る発明の要旨は、平成12年7月25日付で提出された全文訂正明細書の特許請求の範囲の第1項に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「ボンディング用貫通孔が設けられた絶縁性材料からなり、前記貫通孔を除いて均一な厚みをもつ平板状の支持体層と、前記支持体層の一方の面の全面に設けられたパターニングされた導電性材料からなる端子層と、前記支持体層の前記端子層とは反対側の面上に固着されたICチップとからなり、前記ICチップ配置部分に前記支持体層および前記端子層が積層して形成された構造を有するICモジュールであって、前記支持体層は、ガラス布に樹脂を含浸させた絶縁性フィルム層と、熱硬化性接着層とからなり、前記平板状の支持体層に設けられたボンディング用貫通孔を介して、露出した前記端子層と前記ICチップとを直接ワイヤボンディングすることにより前記端子と前記ICチップとの配線が行われていることを特徴とする、カード内蔵用ICモジュール。」(この第1項に係る発明を、以下、「本件発明」という)
なお、同じく特許請求の範囲に記載された第2項(実施態様項)は、次のとおりである。
「少なくともICチップならびに配線部が樹脂封止されてなる、第1項記載のICモジュール。」
(4-2)<引用例とその記載事項の概要>
これに対して、引用例となるものは、いずれも本件特許に係る出願日より前に頒布された次の1〜4の刊行物である。
刊行物1 特開昭61-198698号公報
(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2 特開昭60-68488号公報
(同じく甲第2号証)
刊行物3 特開昭61-232629号公報
(同じく甲第3号証)
刊行物4 特開昭61-291194号公報
(同じく甲第4号証)
上記刊行物1には、ハイブリッド用多層配線基板における、絶縁膜を介して設けられる、ICチップと導体パターンとの間をボンディングワイヤーにより電気的に接続する構成が示されている他に、「上層導体(5)と下層導体(2)をコンタクトする部分には絶縁膜(2)(4)に写真製版にてホール(9)を作っておく」という記載(第2頁右上欄最下行〜同左下欄第2行)がある。
次に、上記刊行物2は「メモリカードとその製造方法」に関する発明を開示するものであるが、その第8頁右上欄第3行〜第9頁左上欄第10行及び第6〜10図には、「第3実施例」について次の記載がある。
「第6〜10図はこの発明の第3の実施例を示す一連の工程図である。
第6図によれば、絶縁材料からなる細長ストリップ部材110の一部が示されている。・・・望ましくは可撓性の絶縁材料・・・例えば、・・・エポキシで覆ったグラスファイバ繊維を用いる。
このストリップ部材110中に、第6図に示すように一群の窓部を設ける。・・・正方形の中央窓部112と周辺窓部114とを備え・・・電子モジュールを形成するものである。・・・
次に、第7図に示すように、絶縁基板110の一面を・・・金属膜116で覆う。・・・窓部の大きさは、集積回路を受け入れることができるように、集積回路の大きさより大きい。集積回路118は導電性の接着層120によって金属膜116上に接着する。・・・
次に第9図に示すように、導電線122を接続する。
導電線122の一端は集積回路118の端子1182の一つにハンダ付し、導電線122の他端は周辺窓部114の一つに挿入し、・・・金属膜の露出面上に接続する。・・・
このような実施例によれば、・・・電子モジュールの厚み減少させることができる。」
また、上記刊行物3には、「マイクロ回路カード用の電子モジュール」に関して、ペレット6上に集積回路チップ12を接着して、ペレット裏面側に位置するグリッド1(リードフレーム)の舌3(リード部)と、ウインドウ9を介してワイヤボンディングする構成が開示(第7頁右下欄最下行〜第8頁左上欄最下行、第1〜7図参照)されており、この刊行物2記載のペレット6については、第6頁右下欄第7〜17行に記載されているように、「カードのボディの製造に用いられるものと、おおよそ類似の弾性特性を持つ」「良好な電気絶縁物」により形成されていると共に、第7頁右上欄第8〜10行に記載されているように、「中央に、集積回路チップを保持することを意図したキャビティ10がある」ものである。
更に、刊行物4には、「埋込みコンタクトを備えたマイクロモジュール」に関して、保護樹脂層12で超小型回路1と接続導線5、6を樹脂封止する周知技術が開示されている。
(4-3)<発明の対比>
本件発明と、本件発明と共通の基本構成を開示している刊行物2記載のものとを対比すると、刊行物2の記載中における「絶縁基板110」は、本件発明の「支持体層」に、同様に「窓部114」は「ボンディング用貫通孔」に、「金属膜116」は「端子層」に、「集積回路118」は「ICチップ」に、「導電線122を接続」は「ワイヤボンディング」に、「エポキシで覆ったグラスファイバ繊維」は「ガラス布に樹脂を含浸させた絶縁性フィルム層」に、「電子モジュール」は「カード内蔵用ICモジュール」に、それぞれ相当している。
したがって、上記刊行物2には、「ボンディング用貫通孔が設けられた絶縁性材料からなる支持体層と、前記支持体の全面に設けられたパターニングされた導電性材料からなる端子層と、ICチップとからなり、前記ICチップ配置部分に前記端子層が形成された構造を有するICモジュールであって、前記支持体層は、ガラス布に樹脂を含浸させた絶縁性フィルム層からなり、前記支持体層に設けられたボンディング用貫通孔を介して、露出した前記端子層と前記ICチップとを直接ワイヤボンディングすることにより前記端子と前記ICチップとの配線が行われている、カード内蔵用ICモジュール」が記載されているといえ、この点において、本件発明と一致している。
一方、支持体層の構成に関して、本件発明では、支持体層がボンディング用貫通孔を除いて「均一な厚みをもつ」とされると共に、絶縁性フィルム層の他に「熱硬化性接着層」を備えるのに対し、刊行物2記載のものでは、ボンディング用貫通孔の他にも、ICチップを収容するための貫通孔(中央窓部)が設けられると共に、絶縁性フィルム層の他に「熱硬化性接着層」を備えることについては言及がなく、
また、上記支持体層の構成の相違に伴い、ICチップの配置構造に関して、本件発明では、ICチップが支持体層の「面上に固着され」て、「ICチップ配置部分に前記支持体層及び端子層が形成された構造」となるのに対し、刊行物2記載のものでは、「集積回路118(ICチップ)は導電性の接着層120によって金属膜116(端子層)上に接着」されており、ICチップ配置部分には、支持体層は存在せず、実質上、端子層のみが形成された構造となる点で相違している。
(4-4)<相違点の検討>
この相違点に関して、他の刊行物の記載をみると、先ず、刊行物1(特開昭61-198698号公報)には、ICカード用のモジュールを形成することについて全く言及がないばかりでなく、同刊行物記載の「ホール」はいわゆるスルーホール(バイアホール)を意味するものであり、同刊行物には、ICと導体パターンとをボンディングワイヤーで接続する構成も示されてはいるが、当該接続を貫通孔を介して行うことが示されているとはいえず、結局、刊行物1には、ICカード用のモジュールに関する基本的な構成の開示がなく、したがって、上記相違点に係る言及もない。
次に刊行物3(特開昭61-232629号公報)についてみると、同刊行物記載の「ペレット6」は、上記のとおり、「カードのボディの製造に用いられるものと、おおよそ類似の弾性特性を持つ」「良好な電気絶縁物」で形成されるころから、「絶縁基板」あるいは「支持体層」に相当するものといえ、しかも、ワイヤボンディング用の「ウインドウ9」(貫通孔)を備えるものであるが、当該ペレットには、「中央に、集積回路チップを保持することを意図したキャビティ10」(凹部)が設けられている。したがって、刊行物3には「貫通孔を除いて均一な厚みをもつ平板状の支持体層」が開示されているとはいえないし、また、「ICチップ配置部分」に「端子層が形成された構造」も開示されていない。
更に、刊行物4(特開昭61-291194号公報)の、従来技術を示すとされる第1図には、ボンディング用の「孔10」が示されているが、同刊行物記載の「超小型回路」(ICチップ)は、導電部上に配置されることが前提となっているから、同刊行物にも「貫通孔を除いて均一な厚みをもつ平板状の支持体層」や、「ICチップ配置部分に前記支持体層及び端子層が形成された構造」についての言及は全くないといえる。
そうすると、上記相違点で指摘した本件発明の構成は、いずれの刊行物にも記載されていないし、また、上記刊行物の記載に基づいて、容易に想到しうるものともいえない。
そして、本件発明は当該相違点に係る構成を備えることにより、「ICモジュールとしての機能の信頼性が向上し、更に歩留まりの向上を図ることができる」と共に、「カードの曲げに対する強度ならびに柔軟性においてもすぐれる」というばかりでなく、「基材中に埋設できるICチップサイズ」の制限がなくなるという、独自の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、上記各刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、訂正に係る特許請求の範囲の第2項に記載された、本件発明の実施態様項は、本件発明を引用するものであり、本件発明と同様に、上記相違点で指摘した構成を備えるものであるから、やはり、上記各刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4-5)<その他の理由について>
更に、本件発明については、当審よりの2回目の特許取消理由通知で指摘した、明細書の記載不備に係るものをはじめとして、本件特許の出願の際、独立して特許を受けることができないとする他の理由も発見しない。
(5)訂正の認容
上記(1)〜(4)で検討したところによれば、上記訂正は、特許法第120条の4第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであって、平成11年法律第41号附則第2条第13項の規定により適用される、同法律第41号による改正前の特許法第120条の4第3項で準用され、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により適用される、同法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、同条第2項及び第3項の規定に適合しているといえるので、上記訂正の請求は認容される。

三.[特許異議申立について]
1.特許異議申立の理由
特許異議申立人は、甲第1〜4号証(上記二.3.(4-2)で指摘した刊行物1〜4)を提出すると共に、本件特許に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明、あるいは当該甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第1項あるいは同第2項の規定に基づいて拒絶査定をするべき出願に対してされたことになり、取り消すべきものである旨を主張している。
2.当審の判断
上記二.3.(5)に示されるように、上記訂正請求が認容されることにより、上記平成12年7月25日付で提出された訂正明細書を本件特許明細書として、本件特許発明は、当該特許明細書の特許請求の範囲の第1項に記載された、上記二.3.(4-1)で「本件発明」としたとおりのものと認める。
そして、当該本件発明について、上記1.の特許異議申立理由が採用できないものであることは、上記二.3.(4-2)〜(4-4)における、本件発明と上記各刊行物記載のものとの対比の検討結果から明らかである。

四.[むすび]
以上のとおりであるから、本件特許は、特許異議申立人の主張する理由およびその提出した証拠によっては、取り消すことはできないし、また、他に取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
カード内蔵用ICモジュール
(57)【特許請求の範囲】
1. ボンディング用貫通孔が設けられた絶縁性材料からなり、前記貫通孔を除いて均一な厚みをもつ平板状の支持体層と、前記支持体層の一方の面の全面に設けられたパターニングされた導電性材料からなる端子層と、前記支持体層の前記端子層とは反対側の面上に固着されたICチップとからなり、前記ICチップ配置部分に前記支持体層および前記端子層が積層して形成された構造を有するICモジュールであって、前記支持体層は、ガラス布に樹脂を含浸させた絶縁性フィルム層と、熱硬化性接着層とからなり、前記平板状の支持体層に設けられたボンディング用貫通孔を介して、露出した前記端子層と前記ICチップとを直接ワイヤボンディングすることにより前記端子と前記ICチップとの配線が行われていることを特徴とする、カード内蔵用ICモジュール。
2. 少なくともICチップならびに配線部が樹脂封止されてなる、第1項記載のICモジュール。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、ICモジュールに関し、特に、ICカードに内蔵されるカード内蔵用ICモジュールに関する。
〔従来の技術〕
近年、マイクロコンピュータ、メモリなどのICチップを装備したチップカード、メモリカード、マイコンカードあるいは電子カードと呼ばれるカード(以下、単にICカードという)に関する研究が種々進められている。
このようなICカードは、従来の磁気カードに比べて、その記憶容量が大きいことから、銀行関係では預金通帳に代わり預貯金の履歴をそしてクレジット関係では買物などの取引履歴を記憶させようと考えられている。
かかるICカードは、通常、ICモジュールが埋設されるカード状のセンターコアと、カードの機械的強度を上げるためのオーバーシートがセンターコアの両面または片面に積層されて構成されている。
第3図は、このようなICカードに埋設される従来のICモジュールの断面図である。すなわち、従来一般的に使用されているカード内蔵用ICモジュールは、本図に示すように、たとえばパターニングされた端子21を有するコンタクト基板22とボンディング基板23との積層体中にICチップ24が配設され、更に回路パターン層25を介してダム26が設けられ、モジュール内は封止樹脂27により封止されている。そして、ICチップ24からの配線は、回路パターン層25にボンディングされて、さらに基板中に設けられたスルーホール28を介して端子21とICチップ25との導通がとられている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、上記のような従来のICモジュールには、以下のような問題点がある。
(イ) モジュールを構成する基材の層構成が複雑であり、またスルーホールを介して端子部とICチップとの導通がとられているので、製造工程が繁雑化し、更に製造コストも増大化する。
(ロ) スルーホールを有しているので、封止樹脂を充填する際に樹脂が端子面側にしみだし、導通不良をおこしやすくなり、歩留りならびに信頼性が低下するという問題がある。
(ハ) 構造上、基材中に埋設出来るICチップサイズは制限され、また従来のICモジュールは、カードの曲げやねじりに対する強度ないし柔軟性においても未だ充分満足のいくものではない。本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、製造工程が簡易であり、しかも信頼性の向上が図られたカード内蔵用ICモジュールを提供することを目的としている。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明に係るカード内蔵用ICモジュールは、パターニングされた導電性材料からなる端子層とボンディング用貫通孔が設けられた絶縁性材料からなる支持体層とが積層されてなるICモジュール基材と、このICモジュール基材の支持体層上に搭載されたICチップとからなるICモジュールであって、前記支持体層に設けられた貫通孔を介して露出した端子層と前記ICチップとを直接ワイヤボンディングすることにより端子とICチップとの配線が行われていることを特徴としている。
また、本発明のICモジュールにおいては、少なくともICチップならびに配線部が更に樹脂封止されていてもよい。
〔実施例〕
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例について説明する。
第1図の断面図に示すように、本発明に係るカード内蔵用ICモジュールは、パターニングされた導電性材料からなる端子層1とボンディング用貫通孔2aが設けられた絶縁性材料からなる支持体層2とが積層されてなるICモジュール基材3と、このICモジュール基材3の支持体層2上に搭載されたICチップ4とから主としてなり、更に、前記支持体層2に設けられた貫通孔2aを介して露出した端子層1の裏面側と前記ICチップ4とが、直接、ワイヤボンディングされることにより端子とICチップとの配線が行われている。また、この例の場合、ICチップ4が搭載された側は、配線部ならびにICチップが充分被覆され保護されるように樹脂5により樹脂封止されている。また、端子層1は、銅箔層1aとニッケルメッキ層1b,金メッキ層ICとの積層体によって構成されている。
また、この場合、金メッキ層ICは、表面側を硬質金メッキで形成し、内部側を軟質金メッキで形成するのが好ましい。支持体層2の材料としては、絶縁性、機械的強度ならびに柔軟性にすぐれた材料が適宜用いられ得るが、例えば、この支持体層は樹脂フィルムと接着シートとの積層体によって構成されていてもよい。
本発明においては、この支持体層2が、ICチップ4を支持するとともに端子層1とICチップ4との間の絶縁体としても機能する。また、このような支持体層を設けることによって、ICチップのサイズに制約がなくなり、更に内蔵された場合のカードの曲げに対するすぐれた補強効果が得られる。更にまた、本発明においては、支持体層2に設けられたボンディング用貫通孔2aを介してICチップ4と端子層1とを直接配線することができるので、スルーホールを用いた場合に比べて配線の信頼性にすぐれ、また従来のように端子面側への封止樹脂のしみだしを防止することができる点でも有利であり、歩留りの向上と製造工程の簡略化の双方においてすぐれている。
次に、本発明のICモジュールの製造方法の一例について説明する。
第2図は、本発明のICモジュールの製造工程を示す説明図である。本図に示すように、たとえば、厚さ0.1mm程度のガラスエポキシフイルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ビスマレイド-トリアジン樹脂フィルムなどのフィルム(ガラス布に樹脂を含浸させたフィルム)2cと熱硬化性接着シート2dとを仮接着し(第2図(a))、更に第2図(b)に示すように所望の部位にボンディング用貫通孔2aを形成する。次に、第2図(c)の断面図に示すように、得られた支持体層2の一方の面に銅箔1aをヒートプレスにより接着して一体化する。次いで、銅箔1aの端子側表面にレジストを塗布して端子パターンにフォトエッチングしパターニングを行う(第2図(d))。更に、第2図(e)の断面図に示すように、銅箔1aの表面にNiメッキ1b、Auメッキ1cを形成する。
次いで、このようにして得られたICモジュール基材3に、第1図に示すように、エポキシダイ接着剤によってICチップ4を固着したのち、ワイヤボンディングによってチップ4と端子層1とを結線し、更に、トランスファーモールディング法、キャスティング等の方法により樹脂5で封止成形し、更に必要に応じて裏面側を研磨して厚みを整えて、ICカード内臓用のICモジュールが得られる。
〔発明の効果〕
本発明に係るカード内臓用ICモジュールは、以下のような効果を有している。
(1) 構造が簡単でありスルーホールを設ける必要がないので、従来のものに比べて製造工程が著しく簡略になり、更に封止樹脂のしみ出しを防止でき、またコストも低減化することができる。
(2) ICモジュールとしての機能の信頼性が向上し、更に歩留りの向上を図ることができる。
(3) 本発明のICモジュールは、カード中に埋設した場合、カードの曲げに対する強度ならびに柔軟性においてもすぐれている。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のICモジュールの断面図、第2図はICモジュールの製造工程を示す説明図、第3図は従来のICモジュールの断面図である。1…端子層、2…支持体層、3…ICモジュール基材、4…ICチップ、5…樹脂。
 
訂正の要旨 上記訂正の要旨は、次のイ〜ニのとおりである。
イ 特許明細書の特許請求の範囲における、「ボンディング用貫通孔が設けられた絶縁性材料からなる支持体層と」という記載を、「ボンディング用貫通孔が設けられた絶縁性材料からなり、前記貫通孔を除いて均一な厚みをもつ平板状の支持体層と」に訂正する。
ロ 同じく特許請求の範囲における、「前記支持体の全面に設けられたパターニングされた導電性材料からなる端子層と、前記支持体層上に固着されたICチップとからなり」という記載を、「前記支持体層の一方の面の全面に設けられたパターニングされた導電性材料からなる端子層と、前記支持体層の前記端子層とは反対側の面上に固着されたICチップとからなり」と訂正する。
ハ 同じく特許請求の範囲における、「前記ICチップ配置部分に前記支持体層および前記端子層が形成された構造を有するICモジュールであって」という記載を、「前記ICチップ配置部分に前記支持体層および前記端子層が積層して形成された構造を有するICモジュールであって、前記支持体層は、ガラス布に樹脂を含浸させた絶縁性フィルム層と、熱硬化性接着層とからなり」と訂正する。
ニ 同じく特許請求の範囲における、「前記支持体層に設けられたボンディング用貫通孔を介して」という記載を、「前記平板状の支持体層に設けられたボンディング用貫通孔を介して」と訂正する。
異議決定日 2000-08-09 
出願番号 特願昭62-14178
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B42D)
最終処分 維持  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 清水 英雄
大島 祥吾
登録日 1999-03-26 
登録番号 特許第2904785号(P2904785)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 カ-ド内蔵用ICモジユ-ル  
代理人 永井 浩之  
代理人 黒瀬 雅志  
代理人 岡田 淳平  
代理人 永井 浩之  
代理人 黒瀬 雅志  
代理人 岡田 淳平  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 佐藤 一雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ