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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1024737 |
異議申立番号 | 異議2000-70108 |
総通号数 | 15 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-06-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-01-18 |
確定日 | 2000-09-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2920584号「基板洗浄装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2920584号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
一.[手続の経緯] 本件特許第2920584号(請求項の数3、以下、「本件特許」という)は、いずれも平成4年9月25日(以下、「優先日」という)に出願された特願平4-280942号及び特願平4-280946号の各特許出願を先の出願として、特許法第41条第1項に規定する優先権を主張して平成5年6月29日付で出願された、特願平5-187677号の特許出願に係り、平成11年4月30日に設定登録されたが、本件特許に対して、表記特許異議申立人より、全請求項に関して特許異議の申立があったので、当審において、当該申立の理由を検討の上、特許取消理由を通知したところ、その通知書で指定した期間内の平成12年6月23日に、特許異議意見書の提出と共に訂正請求があったものである。 二.[訂正請求について] 1.訂正の要旨 上記平成12年6月23日付訂正請求における訂正の要旨は、次のイ〜ニのとおりである。 イ 特許明細書における特許請求の範囲の請求項1について、 「複数の基板を一括して洗浄する洗浄処理部と、」とある記載を、 「昇温した酸を使用し、複数の基板を一括して酸洗浄する酸洗浄処理部と、複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能で複数の基板に対して複数種の洗浄処理を行うオーバーフロー型洗浄処理部とを有する洗浄処理部と、」に訂正すると共に、 「搬入搬出部、基板移載部、基板乾燥部、洗浄処理部を順に配置したことを特徴とする」とある記載を、 「搬入搬出部、基板移載部、基板乾燥部、洗浄処理部を順に配置し、 さらに洗浄処理部は基板乾燥部に続いてオーバーフロー型洗浄処理部と酸洗浄処理部とを順に配置して有することを特徴とする」に訂正する。 ロ 同請求項2について、 「上記洗浄処理部は、複数のオーバーフロー型洗浄処理部より構成され」とある記載を、 「上記洗浄処理部は、複数のオーバーフロー型洗浄処理部を有し」に訂正すると共に、 「基板を洗浄してから排液管に排出するように構成したことを特徴とする」とある記載を、 「基板を洗浄してから排液管に排出するように構成されており、 さらに上記洗浄処理部が有する酸洗浄処理部は、前記複数のオーバーフロー型洗浄処理部が有するオーバーフロー型洗浄槽に対して共通化された1つの酸洗浄槽を有することを特徴とする」に訂正する。 ハ 同請求項3について 「前記搬入搬出部の近傍にカセット洗浄部を配置したことを特徴とする」とある記載を、 前記搬入搬出部の近傍にオーバーフロー型のカセット洗浄槽を有するカセット洗浄部を配置したことを特徴とする」に訂正する。 ニ 特許明細書における発明の詳細な説明について、上記イ〜ハの訂正事項に対応する箇所(【0004】、【0005】、【0007】、【0008】、【0009】、【0049】、【0050】)について、当該各訂正事項と同趣旨の訂正をする。 2.訂正請求の適否 (1)訂正の目的 上記イ〜ハの訂正は、本件特許に係る発明の必須の構成をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮とみることができるし、また、ニの訂正は、イ〜ハの訂正に伴って生じる、明細書の前後における記載内容の齟齬の解消を図るもので、明瞭でない記載の釈明に該当する。 (2)新規事項の有無 本件特許に係る、願書に添付した明細書(特に、【0027】、【0028】)及び図面(図1、図2、図7)の記載からみて、上記各訂正の内容は、当該明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものといえる。 (3)拡張、変更の有無 上記各訂正の内容は、登録時における特許請求の範囲を実質的に拡張したり、変更するものとはいえない。 3.訂正の認容 上記2.で検討したところによれば、上記訂正は、特許法第120条の4第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであって、特許法第120条の4第3項で準用され、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により適用される、同法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び同条第2項に規定するところに適合しているので、上記訂正の請求は認容される。 三.[特許異議申立について] 1.特許異議申立の理由 特許異議申立人は、後述する甲第1〜3号証を提出すると共に、本件特許に係る各請求項の発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に基づいて拒絶査定をするべき出願に対してされたことになり、取り消すべきものである旨を主張している。 2.当審の判断 (1)<特許異議申立に係る本件特許発明> 上記二.3.で指摘したとおり、上記訂正請求が認容されることにより、上記平成12年6月23日付で提出された訂正明細書を本件特許明細書として、特許異議申立に係る本件特許発明は、当該特許明細書における、特許請求の範囲の請求項1〜3のそれぞれに記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 【請求項1】 「 基板を収容したカセットの搬入搬出部と、 カセットから.基板を取り出し又はカセット内へ基板を装墳する基板移載部と、 上記カセットの搬入搬出部と基板移載部との間でカセットを移載するカセット移載ロボットと、 昇温した酸を使用し、複数の基板を一括して酸洗浄する酸洗浄処理部と、複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能で複数の基板に対して複数種の洗浄処理を行うオーバーフロー型洗浄処理部とを有する洗浄処理部と、 複数の基板を一括して乾燥する基板乾燥部と、 基板移載部でカセットから取り出した複数の基板を一括保持して上記洗浄処理部及び基板乾燥部に搬送する基板搬送ロボットとを具備するとともに、 搬入搬出部、基板移載部、基板乾燥部、洗浄処理部を順に配置し、 さらに洗浄処理部は基板乾燥部に続いてオーバーフロー型洗浄処理部と酸洗浄処理部とを順に配置して有することを特徴とする基板洗浄装置。」(この請求項1に係る発明を、以下、「本件発明」という) 【請求項2】 「請求項1に記載の基板洗浄装置において、 上記洗浄処理部は、複数のオーバーフロー型洗浄処理部を有し、 各オーバーフロー型洗浄処理部は、 オーバーフロー型洗浄糟と、オーバーフロー型洗浄糟の下部より複数種の洗浄液を供給する洗浄液供給部と、オーバーフロー型洗浄糟よりオーバーフローした洗浄液を排液管へ排出する洗浄液排出部とを具備して成り、 当該オーバーフロー型洗浄糟に順次供給される洗浄液により、基板を洗浄してから排液管に排出するように構成されており、 さらに上記洗浄処理部が有する酸洗浄処理部は、前記複数のオーバーフロー型洗浄処理部が有するオーバーフロー型洗浄槽に対して共通化された1つの酸洗浄槽を有することを特徴とする基板洗浄装置。」 【請求項3】 「請求項1に記載の基板洗浄装置において、 前記搬入搬出部の近傍にオーバーフロー型のカセット洗浄槽を有するカセット洗浄部を配置したことを特徴とする基板洗浄装置。」 (2)<引用例とその記載事項の概要> これに対して、特許異議申立人が甲第1〜3号証として提出したものは次のとおりであって、いずれも本件特許に係る上記優先日より前に頒布された刊行物である。 甲第1号証:実願平3-93635号(実開平4-99269号)マイクロフィルム 甲第2号証:特開昭62-291939号公報 甲第3号証:特開昭63-27025号公報 上記の甲第1号証には、「浸漬型基板処理装置」に関して次のア〜ウの記載がある。 ア 「図2は本考案の第1の実施例を示す・・・この浸漬型基板処理装置は、処理液2中に基板Wを浸漬して基板Wの表面処理をなす基板処理槽1と、純水DWの主要通路をなす純水給液管3を介して処理液2を基板処理槽1内へ供給する処理液供給部4と、処理液排出部40とから成る。・・・基板処理槽1は、・・・処理液2を複数種の表面処理毎に、迅速に置換し得るオーバーフロー槽として構成されている。・・・なお、基板処理槽1内の基板Wを収容したカセットCは、仮想線で示すカセット搬送用ロボットRにより挟持搬送される。」(【0009】、【0010】) イ 「本実施例では基板の拡散処理の前段の洗浄処理として、次のようなプログラムに基づいて一連の表面処理を実行することができる。 ステップ1:純水+QA+QE ステップ2:純水 ・・・ ステップ5:純水5+QC+QE ステップ6:純水(終了) ここで、薬液貯溜容器6A〜6E内の薬液は・・・、QC=Hcl、・・・であり、・・・必要に応じて適宜変更することができる。」(【0022】) ウ 「図8は本考案に係る浸漬型基板処理装置を具備してなる基板処理ユニット50の斜視図、図9はその要部の縦断正面図である。 この基板処理ユニット50は、複数種の基板処理槽を併設するのをやめて、単一の基板処理槽1内で複数種の一連の表面処理をなし、装置全体のコンパクト化を意図したものである。 即ち、この基板処理ユニット50は、基板収容カセットCの搬入搬出部51と、カセットCの移載ロボット55と、カセットCから基板Wを取り出し又はカセットC内へ基板Wを装填するローダ・アンローダ装置60と、本考案の第3の実施例に係る浸漬型基板処理装置65と、基板Wの液切り乾燥装置70と、カセットCから取り出した複数の基板Wを保持して搬送する基板搬送ロボット75と、複数種の薬液貯溜容器6A〜6Eとを具備して成り、単一の基板処理槽1内で複数種の一連の表面処理をなし得るように構成されている。」(【0029】) 次に、上記甲第2号証には、「半導体浸漬処理装置」に関して、その第1図及び第2図に、処理槽、遠心脱水機、投入部兼払出し部、の順に配置した例が示されると共に、次のとおりの記載がある。 「第1図、および第2図を参照して投入位置と払出し位置を一致させた場合の実施の一例を説明する。 被処理物のウェーハを入れたキャリアが投入部兼払出し部に置かれるとキャリア確認センサーによって投入キャリアが確認され、ただちに搬送ロボット2によって清浄な雰囲気のキャリア運搬部7に運ばれる。もちろんこの動作中は払出し部としてのコンベアは停止している。 空気清浄部6の下に設けられた清浄な雰囲気のキャリア運搬部7を通して投入キャリアは矢印の方向に運ばれ、昇降機8により指定の位置にセットされる。次にキャリアは搬送ロボット1によって処理槽2に運ばれ、浸漬処理される。このようにキャリアは順次浸漬処理され、遠心脱水機で乾燥されて、投入兼払出し部1まで運ばれる。」(第2頁左上欄第11行〜同右上欄第6行) 更に、甲第3号証には、「半導体ウェーハの洗浄方法」に関して、「ウエーハ取出しポジションP2′ にてウエーハ(1)(1)・・・が取出された空のキャリア(2′)を、キャリア洗浄処理部(5)の洗浄槽に移送し、このキャリア洗浄処理部(5)にて上述したウェーハ洗浄と並行してキャリア(2′)のみを洗浄する。・・・洗浄済みのキャリア(2′)は移送されてウェーハ収納ポジションP2′ に配置され・・・ウエーハ洗浄処理部(4)にて洗浄されたウェーハ(1)(1)を・・・取出して上述した洗浄済みのキャリア(2′)内に整列収納する」という記載がある。(第3頁第3〜16行) (3)<発明の対比> 本件発明と、甲第1号証記載のものとを対比すると、甲第1号証にも、上記ア〜ウのとおり、本件発明と同様の、「カセットの搬入搬出部」と、「カセットから.基板を取り出し又はカセット内へ基板を装墳する基板移載部」と、「上記カセットの搬入搬出部と基板移載部との間でカセットを移載するカセット移載ロボット」と、「複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能で複数の基板に対して複数種の洗浄処理を行うオーバーフロー型洗浄処理部とを有する洗浄処理部」と、「複数の基板を一括して乾燥する基板乾燥部」と、「基板移載部でカセットから取り出した複数の基板を一括保持して上記洗浄処理部及び基板乾燥部に搬送する基板搬送ロボット」とを備える「浸漬型基板処理装置」が記載されているといえるから、この点においては、本件発明と甲第1号証記載の発明とは一致している。 一方、「洗浄処理部」に関して、本件発明では、「昇温した酸を使用し、複数の基板を一括して酸洗浄する酸洗浄処理部」と、「複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能で複数の基板に対して複数種の洗浄処理を行うオーバーフロー型洗浄処理部」とを有するものであって、しかも、「洗浄処理部は基板乾燥部に続いてオーバーフロー型洗浄処理部と酸洗浄処理部とを順に配置」するとされるのに対し、甲第1号証には「オーバーフロー槽として構成されている」「単一の基板処理槽」のみを有する洗浄処理部が開示されているだけで、その他に「酸洗浄処理部」を別途設けることや、その配置構成について全く言及がない点で、本件発明と甲第1号証記載の発明との間に相違するところがある。 (4)<相違点の検討> この相違点に関して、他の刊行物の記載をみると、先ず、甲第2号証には、投入部兼払出し部(搬入搬出部)と複数の処理槽(洗浄処理部)との間に遠心脱水機(基板乾燥部)を配置する構成が示されているものの、この甲第2号証に記載されている複数の洗浄処理槽は、本件発明の先行技術である、「洗浄処理数だけ基板洗浄槽」を配置したものに相当しており、したがって、甲第2号証には、「昇温した酸を使用し、複数の基板を一括して酸洗浄する酸洗浄処理部」と「複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能で複数の基板に対して複数種の洗浄処理を行うオーバーフロー型洗浄処理部」とで洗浄処理部を構成することや、それを示唆するような記載は全くないといえる。 また、甲第3号証には、上記のとおり、基板洗浄装置に関して、基板の搬入搬出部の近傍に、「ウエーハ(1)(1)・・・が取出された空のキャリア(2′)」を洗浄する、「キャリア洗浄処理部(5)」を配置することについての示唆はあるが、基板の洗浄処理部に関する詳細は示されておらず、上記の相違点で指摘した本件発明の構成に関連する言及はない。 そうすると、上記相違点で指摘した本件発明の構成は、いずれの刊行物にも記載されていないし、また、上記刊行物の記載に基づいて、容易に想到しうるものともいえない。 そして、本件発明は当該相違点に係る構成を備えることにより、「酸洗処理部と基板移載部及び搬入搬出部との距離を離すことができ」「酸の蒸気やミストが洗浄、乾燥を終えて基板移載部、搬入搬出部に搬送された基板に付着することを抑制することができる」のみならず、高温の酸と純水とが接触して突沸するという問題や、酸の昇温に時間がかかりスループットが低下するという問題も回避できるという、独自の作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明は、上記各刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 なお、訂正に係る特許請求の範囲の請求項2及び請求項3に記載された発明は、本件発明を引用するものであり、本件発明と同様に、上記相違点で指摘した構成を備えるものであるから、やはり、上記各刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 四.[むすび] 以上のとおりであるから、本件特許は、特許異議申立人の主張する理由およびその提出した証拠によっては、取り消すことはできないし、また、他に取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 基板処理洗浄装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 基板を収容したカセットの搬入搬出部と、カセットから基板を取り出し又はカセット内へ基板を装填する基板移載部と、 上記カセットの搬入搬出部と基板移載部との間でカセットを移載するカセット移載ロボットと、 昇温した酸を使用し、複数の基板を一括して酸洗浄する酸洗浄処理部と、複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能で複数の基板に対して複数種の洗浄処理を行うオーバーフロー型洗浄処理部とを有する洗浄処理部と、 複数の基板を一括して乾燥する基板乾燥部と、 基板移載部でカセットから取り出した複数の基板を一括保持して上記洗浄処理部及び基板乾燥部に搬送する基板搬送ロボットとを具備するとともに、 搬入搬出部、基板移載部、基板乾燥部、洗浄処理部を順に配置し、 さらに洗浄処理部は基板乾燥部に続いてオーバーフロー型洗浄処理部と酸洗浄処理部とを順に配置して有することを特徴とする基板洗浄装置。 【請求項2】 請求項1に記載の基板洗浄装置において、 上記洗浄処理部は、複数のオーバーフロー型洗浄処理部を有し、 各オーバーフロー型洗浄処理部は、 オーバーフロー型洗浄槽と、オーバーフロー型洗浄槽の下部より複数種の洗浄液を供給する洗浄液供給部と、オーバーフロー型洗浄槽よりオーバーフローした洗浄液を排液管へ排出する洗浄液排出部とを具備して成り、 当該オーバーフロー型洗浄槽に順次供給される洗浄液により、基板を洗浄してから排液管に排出するように構成されており、 さらに上記洗浄処理部が有する酸洗浄処理部は、前記複数のオーバーフロー型洗浄処理部が有するオーバーフロー型洗浄槽に対して共通化された1つの酸洗浄槽を有することを特徴とする基板洗浄装置。 【請求項3】 請求項1に記載の基板洗浄装置において、 前記搬入搬出部の近傍にオーバーフロー型のカセット洗浄槽を有するカセット洗浄部を配置したことを特徴とする基板洗浄装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、半導体基板や液晶用ガラス基板等の薄板状の被洗浄基板(以下単に基板と称する)を表面洗浄するのに用いられる浸漬型の基板洗浄装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 一般に、基板製造用クリーンルームは、図8に示すように、中央通路の左右にリソグラフィー工程、洗浄工程、検査工程、拡散工程、CVD工程、メタライズ工程などの各工程の保全用作業域31(図8の斜線部分)がレイアウトされ、中央通路から各保全用作業域31に向けて基板収容カセットCの搬送路33が分岐状にレイアウトされてクリーンルーム作業域30(図8の白地部分)が形成される。上記基板の洗浄工程を実施する従来の基板洗浄装置50は、図9に示すように、分岐搬送路33の前後に分けてアルカリ洗浄、水洗、フッ化水素洗浄、酸洗浄、水洗、最終リンスなどの各種の洗浄処理をするための基板洗浄槽1を多数個直列状に並べ、この基板洗浄槽群に基板を順次浸漬させて、各種洗浄液により複数種の洗浄処理を実施するように構成されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 上記従来技術では、各種の洗浄処理数だけの基板洗浄槽1を配置する必要があるため、基板洗浄装置が占有する作業域が広域化して、クリーンルームの全体を有効に使用することができない。本発明は、上記従来技術を改善して、クリーンルームのスペースの利用効率を向上することを技術的課題とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】 本発明は上記課題を解決するものとして以下のように構成される。即ち、請求項1の発明は、基板を収容したカセットの搬入搬出部と、カセットから基板を取り出し又はカセット内へ基板を装填する基板移載部と、上記カセットの搬入搬出部と基板移載部との間でカセットを移載するカセット移載ロボットと、昇温した酸を使用し、複数の基板を一括して酸洗浄する酸洗浄処理部と、複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能で複数の基板に対して複数種の洗浄処理を行うオーバーフロー型洗浄処理部とを有する洗浄処理部と、複数の基板を一括して乾燥する基板乾燥部と、基板移載部でカセットから取り出した複数の基板を一括保持して上記洗浄処理部及び基板乾燥部に搬送する基板搬送ロボットとを具備するとともに、搬入搬出部、基板移載部、基板乾燥部、洗浄処理部を順に配置し、 さらに洗浄処理部は基板乾燥部に続いてオーバーフロー型洗浄処理部と酸洗浄処理部とを順に配置して有することを特徴とする基板洗浄装置である。 【0005】 また、請求項2の発明は、請求項1に記載の基板洗浄装置において、上記洗浄処理部は、複数のオーバーフロー型洗浄処理部を有し、各オーバーフロー型洗浄処理部は、オーバーフロー型洗浄槽と、オーバーフロー型洗浄槽の下部より複数種の洗浄液を供給する洗浄液供給部と、オーバーフロー型洗浄槽よりオーバーフローした洗浄液を排液管へ排出する洗浄液排出部とを具備して成り、当該オーバーフロー型洗浄槽に順次供給される洗浄液により、基板を洗浄してから排液管に排出するように構成されており、さらに上記洗浄処理部が有する酸洗浄処理部は、前記複数のオーバーフロー型洗浄処理部が有するオーバーフロー型洗浄槽に対して共通化された1つの酸洗浄槽を有することを特徴とする基板洗浄装置である。 【0006】 【0007】 請求項3の発明は、請求項1に記載の基板洗浄装置において、請求項1に記載の基板洗浄装置において、前記搬入搬出部の近傍にオーバーフロー型のカセット洗浄槽を有するカセット洗浄部を配置したことを特徴とする基板洗浄装置である。 【0008】 【作用】 (1)請求項1の発明では、基板を収容したカセットの搬入搬出部、カセットから基板を取り出し又はカセット内へ基板を装填する基板移載部、複数の基板を一括して乾燥する基板乾燥部、複数の基板を一括して洗浄する洗浄処理部を順に配置し、洗浄処理部は基板乾燥部に続いてオーバーフロー型洗浄処理部と酸洗浄処理部とを順に配置して有することから、洗浄処理部が有する前記酸洗浄処理部と基板移載部及び搬入搬出部との距離を離すことができ、洗浄処理部で発生した、洗浄液である酸の蒸気やミストが洗浄、乾燥を終えて基板移載部、搬入搬出部に七搬送された基板に付着することを抑制することができる。 【0009】 (2)請求項2の発明では、洗浄処理部は、複数のオーバーフロー型洗浄処理部より構成され、各オーバーフロー型洗浄処理部は、オーバーフロー型洗浄槽と、オーバーフロー型洗浄槽の下部より複数種の洗浄液を供給する洗浄液供給部と、オーバーフロー型洗浄槽よりオーバーフローした洗浄液を排液管へ排出する洗浄液排出部とを具備して成り、当該オーバーフロー型洗浄槽に順次供給される洗浄液により、基板を洗浄してから排液管に排出するように構成したことから、基板の洗浄処理は複数のオーバーフロー型洗浄処理部で並行して行われる。そして各オーバーフロー型洗浄槽内には複数の洗浄液が順次供給されて一連の洗浄処理が行われる。洗浄処理を終えた基板は洗浄処理部に隣接して配置された基板乾燥部に順次搬送され、乾燥処理される。このとき、乾燥処理に要する時間は洗浄処理に要する時間よりも短いため、複数のオーバーフロー型洗浄処理部に対し基板乾燥部の共通化が可能となる。 また、洗浄処理部は前記複数のオーバーフロー型洗浄処理部が有するオーバーフロー型洗浄槽に対して共通化された1つの酸洗浄槽を有する。 【0010】 【0011】 【0012】 (3)請求項3の発明では、請求項1に記載の基板洗浄装置において、前記搬入搬出部の近傍にカセット洗浄部を配置したことから、カセット洗浄部では、基板を取り出して空になったカセットを、その基板の洗浄処理の間に洗浄する。つまり、基板の洗浄処理とカセットの洗浄処理とが並行して行われる。 【0013】 【実施例】 以下、本発明の実施例を図面に基づいて述べる。図1は本発明に係る浸漬型基板洗浄装置の概略平面図、図2は同基板洗浄装置の概略縦断面図、図3は同基板洗浄装置の概略斜視図、図4は同基板洗浄装置を複数配置したレイアウト図である。この基板洗浄装置50は、複数種の基板処理槽を併設するのをやめて、単一の基板処理槽内で複数種の一連の表面処理をなし、装置全体のコンパクト化を意図したものである。 【0014】 即ち、図1〜図3に示すように、上記基板洗浄装置50は、基板収容カセットCの搬入搬出部51と、カセットCから基板Wを取り出し又はカセットC内へ基板Wを装填する基板移載部60と、カセットCの搬入搬出部51と基板移載部60との間でカセットCを移載するカセット移載ロボット55と、複数の基板を一括して洗浄する洗浄処理部65と、基板乾燥部70と、基板移載部60でカセットCから取り出した複数の基板Wを一括保持して上記洗浄処理部65及び基板乾燥部70に搬送する基板搬送ロボット75と、基板Wを取り出して空になったカセットCを洗浄するカセット洗浄部80とから構成される。 【0015】 上記基板洗浄装置50のレイアウトは、図1〜図4に示すように、クリーンルーム作業域30に臨む前方から保全用作業域31に臨む後方に向かって前記カセットCの搬入搬出部51、基板移載部60及びカセット洗浄部80、基板乾燥部70及び洗浄処理部65を順番に配置するとともに、図1に示すように上記基板移載部60・基板乾燥部70・洗浄処理部65の右側に基板搬送ロボット75の移動部77を前後方向に形成し、これらの左側の空間で、上記基板移載部60よりも後方の空間をメンテナンス・スペース90として形成する。尚、当該メンテナンス・スペース90の床部91には複数の配管やバルブ等が敷設される。 【0016】 以下、順次各部の説明をする。なお、図5は図1中のE-E線矢視縦断面図、図6は同図中のF-F線矢視縦断面図である。上記搬入搬出部51は、図1で示すように、カセットCを搬入するローダ部51aと、バッファ部51bと、アンローダ部51cとを有し、未処理基板を収容したカセットCはローダ部51aに搬入され、処理済み基板を収容したカセットCはアンローダ部51cより搬出されるように構成されている。なお、ローダ部51aとアンローダ部51cの下側には、図2で示すように、カセットC内の基板Wのオリエンテーション・フラットを揃えるための整合用ローラ52が設けられている。この実施例で用いるカセットCは、内部に基板整列収容溝を備え、複数の基板Wを起立整列状態で収容できるようになっている。 【0017】 上記搬入搬出部51とその後方の基板移載部60及びカセット洗浄部80との間にカセット移載ロボット55が設けられている。このカセット移載ロボット55は、図1〜図3及び図5で示すように、昇降及び回転自在で、矢印A方向に移動可能に構成され、搬入搬出部51のローダ部51aに搬入されてきたカセットCを基板移載部60のターンテーブル61上に移載し、次いで、基板移載部60で基板Wを取り出して空になったカセットCをカセット洗浄部80に移載し、洗浄を終えたカセットCを再びターンテーブル61上に移載し、洗浄済み基板を収容したカセットCを当該ターンテーブル61から搬入搬出部51へ移載するように構成されている。 【0018】 上記基板移載部60は、図2及び図6で示すように、カセットCを載置する二つのターンテーブル61・61と、各ターンテーブル61を回転する回転駆動モータ63・63と、ターンテーブル61とカセットCとを貫通して昇降自在に設けられた二つのリフター64とを備えている。上記ターンテーブル61は、その上に載置されたカセットCの方向を90°回転させて、基板Wの方向を後述する洗浄処理の方向と一致させるもので、リングギアー62を回転駆動モータ63で回転させるように構成されている。何故なら、カセット移載ロボット55により上記搬入搬出部51からターンテーブル61上に移載されたカセットCは、その方向が80°反転するが、当該カセットC内の基板Wの収容方向は変化せず、後述する洗浄処理部65での基板Wの処理方向に対して平面視で直交する方向になっているため、この基板Wの方向を洗浄処理における基板Wの方向と一致させる必要があるからである。 【0019】 上記二つのリフター64は、これらを上昇させて上記二つのカセットC内の複数の基板Wを起立整列状態のまま保持し、基板搬送ロボット75に引き渡すものであり、以下のように構成されている。このリフター64は、昇降駆動モータ67aにより駆動ネジ67b及び昇降台69を介して昇降自在に設けられ、また、幅寄せ手段68により二つのリフター64を相互に幅寄せするように構成されている。これは、二つのカセットCから取り出した2群の基板を相互に接近させて各 基板Wの配列ピッチを同一にするためである。 【0020】 また、リフター64は、未処理基板WをカセットCから取り出す場合と、処理済み基板Wを洗浄済みカセットCへ収容する場合とで、その上端部の基板載置部64aを適宜切り換えて使い分けるようにしてある。上記構成によれば、未処理基板Wの受け渡しに際しては、常に一方の基板載置部で基板Wを保持し、他方の基板載置部に触れないので、他方の基板載置部が未処理基板Wに付着している汚染物質で汚染されることがない。 【0021】 上記基板搬送ロボット75は、図2、図3及び図6に示すように、矢印B方向に移動可能に設けられ、上記基板移載部60のリフター64から受け取った複数の基板Wを基板チャック76で保持し、移動部77に沿って洗浄処理部65内及び基板乾燥部70内へ順次搬送するように構成されている。 【0022】 この基板搬送ロボット75の一対の基板チャック76は、図2に示すように、一対の対向面同士と、その裏面同士とに、それぞれカセットCが有する基板整列収容溝と同一ピッチの基板整列保持溝76aを有し、アーム回転軸78の回転により、その一対の対向面同士及びその裏面同士がそれぞれ対向する逆ハの字状の基板保持姿勢に切り替え可能に構成してある。 【0023】 即ち、未処理基板Wを搬送する場合には、基板チャック76の一対の対向面同士が対向する姿勢にし、処理済み基板Wを搬送する場合には、基板チャック76の裏面同士が対向する姿勢にする。これにより、未処理基板Wの搬送に際しては一方の対向面同士で基板Wを保持し、処理済み基板Wの搬送に際しては、他方の裏面同士で基板Wを保持するので、処理済み基板Wの汚染が防止される。 【0024】 上記カセット洗浄部80は、図5及び図6で示すように、オーバーフロー型のカセット洗浄槽81と、カセットリフタ82と、カセット洗浄槽81の底部に設けられた超音波洗浄器84と、開閉蓋85と、この開閉蓋85内に付設された乾燥用ヒータ87と、カセット洗浄槽81に純水DWを供給する給水管88及び排水管89とを備える。なお、同図中の符号83はカセットリフタ82の昇降駆動手段、86は開閉蓋85の開閉駆動手段、88aは給水用開閉弁、89aは排水用開閉弁である。 【0025】 上記カセットリフタ82は、図6の仮想線で示す上昇位置で、前記カセット移載ロボット55から空のカセットCを受け取り、カセット洗浄槽81内に所定時間浸漬するとともに、開閉蓋85を閉じてカセットCを洗浄する。当該カセットCの洗浄時間が終了すると排水し、開閉蓋85内に付設された乾燥用ヒータ87を点灯してカセットCを乾燥する。なお、排水後のカセットCの液切りを促進するため、カセットリフタ82のカセット載置台82aは、図5中の仮想線で示すように、前傾姿勢となるように構成されている。 【0026】 カセットCの洗浄処理が終了すると、開閉蓋85を開けてカセットリフタ82を上昇させ、カセットCをカセット移載ロボット55に引き渡す。これにより、基板Wの洗浄処理とカセットCの洗浄処理とを並行して行うことができる。カセット移載ロボット55は、洗浄処理を終えた基板Wを収容するため、当該カセットCを再びターンテーブル61上に移載する。このとき、洗浄済みカセットCの方向は、図6の実線で示す姿勢からターンテーブル61を90°方向転換して、基板搬送ロボット75が保持する方向と合致させておく。 【0027】 上記浸漬型の洗浄処理部65は、図1〜図3及び図7に示すように、オーバーフロー型洗浄処理部65aと、オーバーフローさせないで酸洗浄を行う酸洗浄処理部65bの2つの別系統の処理部から成る。なお、図7は基板洗浄装置50の洗浄処理部65の概略系統図である。オーバーフロー型洗浄処理部65aの2つのオーバーフロー型洗浄槽1a・1a及び酸洗浄処理部65bの酸洗浄槽1bには、それぞれ昇降自在の基板保持具66が設けられ、基板搬送ロボット75から受け取った複数の基板Wを基板保持具66で保持して各洗浄槽1a・1b内に浸漬するように構成されている。以下、上記オーバーフロー型洗浄槽1aと酸洗浄槽1bを総称するときは、基板洗浄槽1という。 【0028】 上記オーバーフロー型洗浄処理部65aは、図7(A)に示すように、洗浄液中に複数の基板Wを一括して浸漬して基板Wの表面洗浄を成す2つのオーバーフロー型洗浄槽1a・1aと、各オーバーフロー型洗浄槽1aの下部より複数種の洗浄液を供給する洗浄液供給部4と、各オーバーフロー型洗浄槽1aよりオーバーフローした洗浄液を排出する洗浄液排出部40とを具備して成る。このオーバーフロー型洗浄槽1aは、図7(A)に示すように、石英ガラス製で側面視略V字状・平面視略矩形状に形成され、その下部に純水供給管3を連結して成り、オーバーフロー型洗浄槽1a内に洗浄液の均一な上昇流を形成して基板Wの表面処理をするとともに、複数種の洗浄処理毎に洗浄液を迅速に置換し得るように構成される。 【0029】 上記オーバーフロー型洗浄槽1aは石英ガラス製に限らず、例えば、洗浄液として石英ガラスを腐食させてしまうフッ酸等を用いる場合には、これに耐食性を有する四フッ化エチレン樹脂等の樹脂製材料で形成したものでも良い。また、上記オーバーフロー型洗浄槽1aには洗浄液排出部40を構成するオーバーフロー液回収部41が付設され、オーバーフローした洗浄液は排液管42を介して排液ドレン43へ流下するように構成される。 【0030】 上記酸洗浄処理部65bは、図7(B)に示すように、複数の基板Wを一括して酸洗浄する1つの酸洗浄槽1bと、酸洗浄槽1bの下部より酸洗浄液を供給する酸洗浄液供給部4bと、酸洗浄槽1bより酸洗浄液を回収する酸洗浄液回収部40bとを具備して成る。但し、オーバーフロー型洗浄処理部65aのオーバーフロー型洗浄槽1aは2つの洗浄槽を直列状に組み合わせたものに限らず、3つ以上から構成されたものでも良い。酸洗浄処理部65bの酸洗浄槽1bも単槽に限らず、複数槽であっても差し支えない。 【0031】 また、図2及び図3に示すように、当該洗浄処理部65の3つの基板洗浄槽1の下部に洗浄液の給排用配管室20を、この給排用配管室20の下部に洗浄用薬液貯留容器6を上下3段に配置するとともに、図1に示すように上記基板移載部60・基板乾燥部70・洗浄処理部65の右側に基板搬送ロボット75の移動部77を前後方向に形成し、これらの左側の空間で、上記基板移載部60よりも後方の空間をメンテナンス・スペース90として形成する。 【0032】 即ち、本実施例は、基板洗浄装置50のうちの、洗浄処理部65の基板洗浄槽1と、給排用配管室20と、洗浄用薬液貯留容器6とを上下3段に積み上げ、縦方向にレイアウトすることにより、これらの3段積み上げ部の左側に臨んだエリアにメンテナンス・スペース90を確保したものである。換言すると、洗浄処理部65や基板移載部60などの各種作業ブロックを平面視でL字状にまとめ、基板洗浄装置50内の余剰空間をメンテナンス・スペース90にしてある。 【0033】 このため、洗浄液置換方式を採る本実施例(図7参照)は、基板洗浄槽1を直列状に多数配置して各種洗浄を行う従来の基板洗浄装置(図9参照)に比べて基本的に装置全体をコンパクトに改良でき、さらに、主に洗浄処理部65を縦向きに積み上げることにより、クリーンルーム全体の省スペース化を一層有効に達成できる。このことは、基板洗浄装置50の設置数が増えるほど、クリーンルームのスペースの有効利用効率が向上することを意味する。 【0034】 また、上記基板乾燥部70は、例えば本出願人の提案に係る特開平1-255227号公報に開示したように、基板の主平面の中心近傍を回転中心として、回転遠心力で液切り乾燥する乾燥処理槽71で構成される。基板乾燥部70では、搬送されてきた基板Wを図示しないリフターで受け取り、乾燥処理槽71内の基板収容ボート(図示せず)に収容して液切り乾燥処理する。尚、この遠心式の基板乾燥部70に代えて溶剤を用いて乾燥を促進するものや、減圧方式により乾燥を促進するものを採用することもできる。 【0035】 また、洗浄処理部65の基板洗浄槽1及び基板乾燥部70のレイアウトに関しては、図1及び図4に示すように、保全用作業域31に臨む奥側からクリーンルーム作業域30に臨む前側に向かって、1つの酸洗浄槽1bと、2つのオーバーフロー型洗浄槽1a・1aと、基板乾燥部70とを順番に配置して、当該基板乾燥部70を前記基板移載部60に臨ませる。上記配置構成により、洗浄処理部65と基板移載部60及び搬入搬出部51との距離を離すことができるので、洗浄処理部65で発生する洗浄液の蒸気やミストが洗浄、乾燥を終えて基板移載部60、搬入搬出部51にある基板に付着することを抑制することができる。従って、基板の汚染を防止することができる。また、特に酸洗浄槽1bでは昇温した酸を使用するので酸の蒸気やミストが発生し易い。しかしながら、本実施例では基板乾燥部70に続いてオーバーフロー型洗浄処理部65a、酸洗浄処理部65bを配置しているので、酸の蒸気やミストが洗浄、乾燥を終えて基板移載部60、搬入搬出部51にある基板に付着することを抑制することができる。従って、基板の汚染を防止することができる。なお、本実施例では、酸洗浄槽1bをクリーンルーム作業域30から最も遠い奥側に配置するため、クリーンルーム作業域30への悪影響を防止して作業の安全性を確保できる。 【0036】 また、基板乾燥部70が洗浄処理部65と基板移載部60との間に位置するので、洗浄処理された基板Wを可能な限り速く乾燥させ、カセットCに戻して搬入搬出部51から効率良く搬出できる。その反面、当該基板乾燥工程はカセットCへの戻しに対する時間的制約をそれほど強くは受けず、乾燥処理の完了から基板移載部60への戻しの間に待機時間を取れるので、隣接して設けられた基板乾燥部70は基板移載部60に対して作業工程の上でバッファ的な役目をも果すことができる。 【0037】 一方、酸洗浄を除く洗浄処理に関しては、処理に比較的長い時間を要することより、2つのオーバーフロー型洗浄槽1a・1aで分担して複数種の洗浄処理を行うので、前記従来技術の直列型の洗浄処理に比べても、処理速度は低下しない。しかも、酸洗浄処理では、1つの酸洗浄槽1bを共通化するので、基板乾燥部70の共通化と合わせて洗浄処理効率と省スペース化が一層向上する。 【0038】 他方、オーバーフロー型洗浄処理部65aでは、洗浄液をオーバーフロー型洗浄槽1aの上部からオーバーフローさせるように構成するので、オーバーフロー型洗浄槽1a内の洗浄液を全部排出せずとも複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能であり、一連の洗浄処理が完了するまで基板Wは空気に触れない。このため、基板表面に酸化皮膜が形成されたり、空気中の不純物が付着したりする虞れはない。また、オーバーフロー型洗浄槽1a内の洗浄液を全部排出せずとも基板Wの装填や取り出しができる。 【0039】 上記オーバーフロー型洗浄処理部65aの洗浄液供給部4は、図7Aに示すように、各オーバーフロー型洗浄槽1aの下部に夫々連結した純水供給管3と、各純水供給管3に夫々導入弁連結管16を介して連結した複数の薬液導入弁8と、各薬液導入弁8に夫々薬液圧送手段25を介して連結した複数の薬液貯留容器6とを備え、各薬液導入弁8を選択的に開閉制御して所定の薬液を純水供給管3に導入するように構成される。 【0040】 上記純水供給管3は、オーバーフロー型洗浄槽1aより上流側に向けて順次、給排液切換弁13、スタティックミキサー14、導入弁連結管16及び開閉弁27などを付設配置して成り、常温の又は所定温度に加熱した純水DWを供給する純水の主要通路として構成されている。なお、純水DWは基板の表面酸化を防ぐうえで、脱酸素処理を施したものを用いる方がより好ましい。上記給排液切換弁13は常時純水DWや処理液をオーバーフロー型洗浄槽1aへ供給し、必要に応じてオーバーフロー型洗浄槽1a内の処理液を排液管42を介して排液ドレン43へ排出するように構成される。上記スタティックミキサー14は、ミキサー管路内に孔あきねじり板(図示省略)を固定し、純水DWと薬液QA〜QEとを均一に混合するように構成される。尚、このスタティックミキサーに代えて他の混合器を用いても良く、管路が十分に長ければかかる混合器を省くことも出来る。 【0041】 上記薬液導入弁8A〜8Eは、図7(C)に示すように、スタティックミキサー14の上流側に配置した導入弁連結管16に固定され、この導入弁連結管16を介して純水供給管3と連通連結される。この薬液導入弁8は、本出願人が実願平3-93634号で提案したものであり、弁本体8a内に薬液導入室8bと弁駆動室(図示省略)を区画形成し、薬液導入室8bと弁駆動室に亘り弁軸8cを貫通し、薬液導入室8bに前記薬液圧送手段25の薬液供給管7を接続するとともに、薬液導入室8b内では弁軸8cの先端部に弁体8dを固定して、1弁体8dを導入弁連結管16に形成した弁座8eで受け止め、弁駆動室内に送られる圧縮エアと圧縮バネとの組み合わせで弁体8dを弁座8eに対して開閉操作し、薬液Qを所定量だけ純水供給管3内へ圧送するように構成される。 【0042】 本実施例では、弁体8dを導入弁連結管16に形成した弁座8eで受け止めて、弁体8dと純水供給管3との間の空間がなくなるように構成した(即ち、弁座8eから純水通路までの距離を接近させて、実質的に死水域がなくなるようにした)。このため、各薬液導入弁8A〜8Eを閉じた場合、薬液Qの液切れが良くなり、純水供給管3に不要な薬液が長時間混入することはなくなり、純水DWの供給量に対する各薬液QA〜QEの供給量を正確に制御して所定の薬液濃度に調合することができる。また、薬液供給後に引き続いて純水を供給する場合に、純水の純度低下の問題がなくなり、基板Wの表面洗浄品質が向上する。しかも、純水が停留してバクテリヤが発生することもなくなる。但し、薬液導入弁8A〜8Eは圧縮エアで作動するものに限らず、適宜電磁開閉弁等を用いることもできる。 【0043】 前記オーバーフロー型洗浄処理部65aの洗浄液供給部4における各薬液圧送手段25は、図7(A)に示すように、一種類の薬液貯留容器6Aから導出した薬液供給管7Aに薬液の圧送ポンプ15を1個設け、圧送ポンプ15の吐出側の薬液供給管7Aを分岐し、分岐した各薬液供給管7A・7Aの下流部を夫々前記薬液導入弁8Aを介して上記複数のオーバーフロー型洗浄槽1a・1aに接続し、上記圧送ポンプ15の吐出側で薬液供給管7Aの分岐部18の上流側に圧力検出器26(具体的には、圧力計)を設けるとともに、この圧力検出器26からの検出信号に基づいて圧送ポンプ15の回転数を増減制御する薬液圧送制御手段12を設け、所定の設定圧に対する過不足を圧力検出器26で検出し、当該制御手段12を介して圧送ポンプ15の駆動源19を駆動制御することにより、複数の各オーバーフロー型洗浄槽1aに所定の設定圧力で薬液を圧送するように構成される。 【0044】 即ち、圧力検出器26の検出圧力を受けた制御手段12が予め設定入力された搬送圧力に対応して圧送ポンプ15の回転数を増減制御する。これにより、2つのオーバーフロー型洗浄槽1a・1aの両方に薬液を供給する場合と、いずれか一方のみに薬液を供給する場合のいずれの場合であっても、単一の圧送ポンプ15により、常に一定流量の薬液を所定の設定量供給できる。なお、図7(A)で示した実施例では、薬液導入弁8Aより導入される一種類の薬液QAに係る薬液圧送手段25について説明したが、他の種類の薬液QB、QC、QD、QEに係る薬液圧送手段についても同様に構成されている。これにより、複数個のオーバーフロー型洗浄槽1a・1aについて複数種の薬液貯留容器を1セット配置すれば足り、重複配置する必要はない。 【0045】 以下、本実施例装置の動作を説明する。先ず、複数の未処理基板Wを収納した2個のカセットCを、搬入搬出部51のローダ部51aへ置く。カセット移載ロボット55が上記2個のカセットCを基板移載部60のターンテーブル61上に移載する。ターンテーブル61が90°回転した後、リフター64が上昇してカセットCから基板Wを取り出す。このとき、前記のようにリフター上端部の基板載置部64aを未処理基板と処理済み基板とで使い分け、処理済み基板の汚染を防止する。 【0046】 基板搬送ロボット75はカセットCから取り出された未処理基板Wを受け取り洗浄処理部65に搬送する。このとき、処理済み基板の汚染を防止するため、基板搬送ロボット75の基板チャック76を前記のように未処理基板と処理済み基板とで使い分ける。なお、本発明に係る基板洗浄装置は、酸化拡散工程の前処理洗浄装置として適用することも可能であり、その場合には、既に洗浄された基板を洗浄することになるので、基板はある程度きれいで、クロスコンタミネーションもないから、汚染の防止というよりも、洗浄処理の前後、つまり乾いた基板の保持と濡れた基板の保持とで基板チャック76を使い分けることもできる。 【0047】 洗浄処理部65では、基板搬送ロボット75で搬送されてきた基板Wを基板保持具66で受け取り、所定の基板洗浄槽1に順次浸漬して表面処理をする。即ち、先ず酸洗浄処理部65bで酸洗浄処理が行われ、次いで隣接配置したオーバーフロー型洗浄処理部65aで洗浄処理が行われる。なお、酸洗浄処理部65bはクリーンルーム作業域30より隔離されているため、これがクリーンルーム作業域に悪影響を及ぼすことはない。洗浄処理された基板Wは、基板搬送ロボット75により基板乾燥部70に搬送される。基板乾燥部70では、搬送されてきた基板Wを図示しないリフターで受け取り、乾燥処理槽71内の基板収容ボートに収容して乾燥処理する。 【0048】 一方では基板を洗浄処理する間に、カセット移載ロボット55は空になった2個のカセットCをカセット洗浄部80に搬送する。カセット洗浄部80では、搬送されてきた2個のカセットCをカセットリフタ82で受け取り、カセット洗浄槽81内に浸漬して洗浄処理をするとともに、洗浄終了後は排水してヒータ87で乾燥する。つまり、基板Wの洗浄処理とカセットCの洗浄処理とを並行して行うことにより、全体として洗浄効率を高めるのである。カセット移載ロボット55は、乾燥を終えたカセットCを再び基板移載部60のターンテーブル61上に移載する。乾燥を終えた基板Wは搬送ロボット75により基板移載部60に搬送されてくる。基板移載部60ではりフター64を介して洗浄済み基板Wを洗浄済みカセットC内に収容する。カセット移載ロボット55は基板Wを収容した2個のカセットCを搬入搬出部51のアンローダ部51cに搬送する。以上で一連の動作が終了する。 【0049】 【発明の効果】 (1)請求項1に記載の発明の効果は次の通りである。搬入搬出部、基板移載部、基板乾燥部、洗浄処理部を順に配置し、洗浄処理部は基板乾燥部に続いてオーバーフロー型洗浄処理部と酸洗浄処理部とを順に配置して有するので、洗浄処理部が有する前記酸洗浄処理部と基板移載部及び搬入搬出部との距離を離すことができる。よって、洗浄処理部で発生した、洗浄液である酸の蒸気やミストが洗浄、乾燥を終えて基板移載部、搬入搬出部に搬送された基板に付着することを抑制することができる。 【0050】 (2)請求項2に記載の発明の効果は次の通りである。複数のオーバーフロー型洗浄処理部に対して基板乾燥部を共通して使用でき、また複数のオーバーフロー型洗浄処理部が有するオーバーフロー型洗浄槽に対して1つの酸洗浄槽を共通して使用できるので、装置を小型化でき、クリーンルームのスペースの利用効率を向上させることができる。 【0051】 【0052】 【0053】 (3)請求項3に記載の発明の効果は次の通りである。基板の洗浄処理とカセットの洗浄処理とを並行して行えるので、全体として洗浄効率が高まり、また、洗浄処理後の基板をカセットに再度収納する場合に、カセットから基板への汚染物の再付着を防止することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る浸漬型基板洗浄装置の概略平面図である。 【図2】 同基板洗浄装置の概略縦断面図である。 【図3】 同基板洗浄装置の概略斜視図である。 【図4】 同基板洗浄装置を複数配置したレイアウト図である。 【図5】 図1中のE-E線矢視縦断面図である。 【図6】 図1中のF-F線矢視縦断面図である。 【図7】 同基板洗浄装置の基板洗浄処理部の概略系統図である。 【図8】 クリーンルームのレイアウト図である。 【図9】 従来技術を示す図4の相当図である。 【符号の説明】 1a…オーバーフロー型洗浄槽、1b…酸洗浄槽、4…洗浄液供給部、4b…酸洗浄液供給部、40…洗浄液排出部、40b…酸洗浄液回収部、42…排液管、51…搬入搬出部、55…カセット移載ロボット、60…基板移載部、65…洗浄処理部、65a…オーバーフロー型洗浄処理部、65b…酸洗浄処理部、70…基板乾燥部、75…基板搬送ロボット、77…基板搬送ロボットの移動部、80…カセット洗浄部、W…基板、C…カセット。 |
訂正の要旨 |
訂正請求における訂正内容の要旨は、次のイ〜ニのとおりである。 イ 特許明細書における特許請求の範囲の請求項1について、 「複数の基板を一括して洗浄する洗浄処理部と、」とある記載を、 「昇温した酸を使用し、複数の基板を一括して酸洗浄する酸洗浄処理部と、複数種の洗浄処理毎に洗浄液の置換が可能で複数の基板に対して複数種の洗浄処理を行うオーバーフロー型洗浄処理部とを有する洗浄処理部と、」に訂正すると共に、 「搬入搬出部、基板移載部、基板乾燥部、洗浄処理部を順に配置したことを特徴とする」とある記載を、 「搬入搬出部、基板移載部、基板乾燥部、洗浄処理部を順に配置し、 さらに洗浄処理部は基板乾燥部に続いてオーバーフロー型洗浄処理部と酸洗浄処理部とを順に配置して有することを特徴とする」に訂正する。 ロ 同請求項2について、 「上記洗浄処理部は、複数のオーバーフロー型洗浄処理部より構成され」とある記載を、 「上記洗浄処理部は、複数のオーバーフロー型洗浄処理部を有し」に訂正すると共に、 「基板を洗浄してから排液管に排出するように構成したことを特徴とする」とある記載を、 「基板を洗浄してから排液管に排出するように構成されており、 さらに上記洗浄処理部が有する酸洗浄処理部は、前記複数のオーバーフロー型洗浄処理部が有するオーバーフロー型洗浄槽に対して共通化された1つの酸洗浄槽を有することを特徴とする」に訂正する。 ハ 同請求項3について 「前記搬入搬出部の近傍にカセット洗浄部を配置したことを特徴とする」とある記載を、 前記搬入搬出部の近傍にオーバーフロー型のカセット洗浄槽を有するカセット洗浄部を配置したことを特徴とする」に訂正する。 ニ 特許明細書における発明の詳細な説明について、上記イ〜ハの訂正事項に対応する箇所(【0004】、【0005】、【0007】、【0008】、【0009】、【0049】、【0050】)について、当該各訂正事項と同趣旨の訂正をする。 |
異議決定日 | 2000-09-08 |
出願番号 | 特願平5-187677 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H01L)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡 和久 |
特許庁審判長 |
神崎 潔 |
特許庁審判官 |
鈴木 法明 大島 祥吾 |
登録日 | 1999-04-30 |
登録番号 | 特許第2920584号(P2920584) |
権利者 | 大日本スクリーン製造株式会社 |
発明の名称 | 基板処理洗浄装置 |