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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  G03F
審判 全部申し立て 発明同一  G03F
管理番号 1024791
異議申立番号 異議1997-75969  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-10-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-12-18 
確定日 1999-07-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2621533号「パターン形成方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2621533号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 (1)本件発明
特許第2621533号の請求項1ないし3に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)申立ての理由の概要
申立人 野元賢一は、証拠として、
甲第1号証(特開平1-300250号公報)、
甲第2号証(特開平2-18564号公報)、
甲第3号証(特開平2-19847号公報)、
甲第4号証(特開昭50-765号公報)、
甲第5号証(特開平1-106041号公報)、
甲第6号証(特願昭63-323616号、特開平2-170165号公報参照)及び、
甲第7号証(特願平1-67499号、特開平2-248952号公報参照)を提出して、請求項1ないし3に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、また、甲第6号証あるいは甲第7号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2第1項の規定に違反して特許されたものであるから、さらに、明細書の特許請求の範囲、及び、発明の詳細な説明の記載に不備があり、特許法第36条第3項及び第4項に定める要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。(申立人は、特許法第36条第4項及び第5項の適用を主張しているが、法律改正前にした特許出願については、経過措置により、なお従前の例によるとされるから、適用条項は上記のように認定した。)
(3)第36条第3、4項違反について
まず、特許異議申立人 野元賢一が特許法第36条違反と主張する下記▲1▼〜▲3▼の点につき検討する。
▲1▼特許請求の範囲の請求項1には、パターン形成方法の対象となる基板について「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」と記載されているが、実質的にヘキサメチルジシラザン処理の施されたシリコン系基板のみが対象である。従って、「基板」というだけでは「発明の構成に欠くことができない事項」を記載したものとは認められない。
▲2▼特許請求の範囲の請求項2には、パターン形成方法で使用する共重合体の備える親水基の1つと

が示されているが、この一般式で表わされるのは、置換ベンゼン化合物であって基ではない。従って、本件請求項2に係る発明は実施不能のパターン形成方法を含んでいる。
▲3▼特許請求の範囲には、パターン形成方法の対象となる基板が「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」と規定されるのに対して、明細書の発明の詳細な説明中の実施例には、基板について、ヘキサメチルジシラザン処理の有無による効果の確認のできる例が示されない。従って、明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に発明を実施することができる程度にその構成及び効果が記載されているとは認められない。
▲1▼について
特許請求の範囲の請求項1における当該記載は、高密度半導体デバイス作成のためサブミクロンレベルの微細加工を施す「基板」に係るものであり、当業者であれば自ずからその意味する範囲をシリコン基板や酸化珪素基板等の「シリコン系基板」に限定されるべきものでないことが想起できるから、「基板」とすることが、発明の構成を不明確にするものとはいえない。
▲2▼について
親水性基を有する共重合体の親水基として、特許請求の範囲の請求項2における当該式は、「水酸基、カルボキシル基、スルフオン酸基」と同列に示されているから、実施例の共重合体におけるヒドロキシフェニル基やスルホン酸フェニル基は、当該式でR1が水酸基やスルホン酸基である事例に対応するものであることは、明らかである。
してみると、親水性基として示される当該式は、R1、R2及びR3で置換されたフェニル基を意味するものであることが明らかである。
従って、当該式は、基の表現としては適切でないとしても、当業者において理解し得ないというほどのものではなく、これをもって、本件発明は実施不能のパターン形成方法を示しているとする指摘はあたらない。
▲3▼について
本件請求項1ないし3に係る発明のパターン形成方法が、大前提として「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」を対象にしていることは、特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載から明白であり、実施例中「基板」自体にあらためて説明がなくとも、「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」を意味すると解される。また、ヘキサメチルジシラザン処理の施されない基板での対照実験例は記載されないものの、発明が解決しようとする課題の欄等には、ヘキサメテルジシラザン処理の施されない基板でのパターン形成方法の抱える課題等につき記載されているので、実施例を含む明細書の発明の詳細な説明全俳から効果が確認し得るものである。従って、指捕の点に関して、明細書の発明の詳細な説明における構成及び効果の記載が不十分であるとはいえない。
以上の通りであるから、異議申立人の主張する理由によっては、本件特許明細書に、本件特許を取り消すべき程度の記載不備があるとすることはできない。
(4)第29条第2項違反について
ア.請求項1に係る発明について
甲第1号証には、実施例1として、酸雰囲気下でアルカリ可溶性となる官能基と親水基を有する共重合体であるp-トリメチルシリルオキシスチレン/p-ヒドロキシスチレン共重合体、露光により酸を発生する感光性化合物であるハロゲン化ジフェニルエタン系フォト酸発生剤をシクロヘキサノン溶媒に溶解させてレジスト溶液を調製し、シリコン基板上にスピンコートしパターン形成材料膜を形成する工程、パターン形成材料膜を遠紫外光であるKrFエキシマレーザーによりマスク露光する工程、次いで、パターン形成材料膜を現像液により現像、露光部分を除去して、0.5μmの幅を有するパターンを形成する工程とを備えたパターン形成方法が記載されている。
甲第2号証には、実施例1として、酸雰囲気下でアルカリ可溶性となる官能基と親水基を有する共重合体であるtert-ブトキシカルボニルオキシスチレン/p-ヒドロキシスチレン共重合体、露光により酸を発生する感光性化合物であるトリス-(4-t-ブトキシカルボニルオキシフェニル)-スルホニウムヘキサフルオロアルセナートをメチルプロピレングリコールアセタート溶媒に溶解.させてレジスト溶液を調製し、シリコン基板上にスピンコートし1.0μm厚パターン形成材料膜を形成する工程、パターン形成材料膜を遠紫外光であるKrFエキシマレーザーによりマスク露光する工程、次いで、パターン形成材料膜を現像液により現像、露光部分を除去して、1.0μm膜厚に対して垂直なレリーフ側面を持つ微細なパターンを形成する工程とを備えたパターン形成方法が記載されている。
甲第3号証には、実施例2として、酸雰囲気下でアルカリ可溶性となる官能基と親水基を有する共重合体であるp-2-テトラヒドロピラニルオキシスチレン/p-ヒドロキシスチレン共重合体、露光により酸を発生する感光性化合物であるトリス-(4-t-ブトキシカルボニルオキシフェニル)-スルホニウムヘキサフルオロホスファートをメチルプロピレングリコールアセタート溶媒に溶解させてレジスト溶液を調製し、シリコン基板上にスピンコートし0.99μm厚パターン形成材料膜を形成する工程、パターン形成材料膜を遠紫外光であるKrFエキシマレーザーによりマスク露光する工程、次いで、パターン形成材料膜を現像液により現像、露光部分を除去して、微細なパターンを形成する工程とを備えたパターン形成方法が記載されている。
甲第4号証には、特許請求の範囲に、「固体薄膜表面を分子内に活性な水素原子、ハロゲン原子などをもつ有機化合物で処理することにより感光性有機高分子膜と固体薄膜表面の密着性を制御するホトエッチング法。」が記載され、第2頁上右欄第16行〜同頁下右欄第12行に、「一般に、シリコン、アルミニウムなどの薄膜は、その表面が大気中の酸素、水分などの影響で酸化されており、薄膜表面の性質は、酸化物の性質と同様であると考えられる。したがって、SiO2薄膜の場合を例にして説明する。第1図は、通常のSiO2表面の断面構造をモデル的に図示したものである。表面S-S′は、Si4+イオン11とO2-イオン12の網目構造からなり、表面に露出したSi4+イオン11上には、大気中のH2Oが化学吸着して、表面水酸基13(-OH)を形成している。この表面水酸基は、化学的に活性で反応性に富むので、後述するように、アルコール、シリルアミン誘導体、シラン誘導体など分子内に活性な水素原子、ハロゲン原子、窒素原子などを含む有機化合物で薄膜を表面処理することにより、薄膜表面に有機原子団を形成することができる。…(中略)…本発明による表面処理法により、SiO2表面は、表面水酸基の親水性から、有機原子団の親油性(もしくは、疎水性と呼ぶこともできる。)に改質されるから、SiO2表面は有機物との密着性が向上する。したがって、たとえば、SiO2表面を有機高分子被膜でコーティングする場合などにおいて、被膜とSiO2との密着性を向上させるためには本発明が有効である。」と記載され、第3頁の実施例の表1、及び、表2に、シリルアミン誘導体の表面処理の代表例として、ヘキサメチルジシラザンによりシリコン基板を前処理、次いでフォトレジストをコートしパターン形成材料膜を形成、露光、現像してパターン形成する事例が列記されている。
甲第5号証には、第6頁下右欄第16行〜第7頁上左欄第7行に、「これらの基板は加熱前処理に付すことができ、表面的に粗面化し、エッチングするか又は例えば親水性を高めるような所望の性質を得るために化学薬品で処理することもできる。特殊な1実施態様では感放射線混合物はレジスト中の又はレジストと基板の間の接着性を改良するために定着剤を含んでいてもよい。このためシリコン基板又は二酸化珪素基板の場合アミノシラン型の定着剤例えば3-アミノプロピル-トリエトキシシラン又はヘキサメチルジシラザンが適当である。」と記載され、実施例1〜実施例9にヘキサメチルジシラザン処理したシリコン基板を使用して、光酸発生剤含有ポジ型フォトレジストで線幅0.3μmの微細パターンを形成する事例が列記されている。
本件請求項1に係る発明と、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明とを比較すると、両者は「基板上に、酸雰囲気下でアルカリ可溶性となる官能基と、親水基とを有する共重合体、露光により酸を発生する感光性化合物、前記共重合体及び前記感光性化合物を溶解可能な溶媒とを含むパターン形成材料膜を形成する工程と、遠紫外線により前記パターン形成材料膜を選択的に露光する工程と、前記パターン形成材料膜を現像液により現像し前記パターン形成材料膜の露光された部分を除去して幅0.5μm以下程度の微細なパターンを形成する工程とを備えたパターン形成方法」である点で一致し、本件請求項1に係る発明が、パターン形成の対象の基板を「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」と限定しているのに対し、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明がかかる限定をしていない点で相違する。
異議申立人は、この相違点につき、甲第4号証、甲第5号証を引用して、フォトレジストのパターン形成材料膜を形成するにあたり、レジストと基板との密着性を向上させるために、基板をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理することは周知であるから、甲第1号証ないし甲第3号証に記載され本出願前公知のパターン形成方法に、用いる基板に関する慣用の条件を単に構成要素として付加しただけのものであり、当業者ならば容易に発明することができたものである旨主張している。
しかしながら、基板の疎水化処理手法は様々であり、シラン系薬剤による疎水化処理手法に限っても、種々の薬剤が用いられており、ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理は、それら広範な基板疎水化処理技術のひとつにすぎない。
また、甲第1号証ないし甲第3号証のパターン形成方法には、膜剥がれの問題を回避するためレジストと基板との密着性を向上させるという課題が認識されておらず、甲第4号証、甲第5号証に示されるヘキサメチルジシラザンでの疎水化処理技術を組み合わせる動機が全く無い。
しかも、本件請求項1にかかる発明は、「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」と「親水基をもつ化学増幅型レジスト共重合体」等との組合せにより、サブミクロンレベルの微細なパターン形成も膜剥がれなくできるという甲号各証からは予測されない格別の効果を奏するものである。
してみると、甲第1号証ないし甲第3号証のものに、甲第4号証又は甲5号証のものを適用する根拠が認められない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
イ.請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明は、請求項1の発明のすべての構成を引用して、さらに、パターン形成方法に用いる共重合体の親水基を限定するものであるから、上記請求項1の発明についての判断と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
ウ.請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明は、請求項1の発明のすべての構成を引用して、さらに、パターン形成方法に用いる共重合体のもつ、酸でアルカリ可溶性となる官能基を限定するものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(5)第29条の2違反について
ア.請求項1に係る発明について
甲第6号証の出願当初の明細書(以下、先願明細書1という)、甲第7号証の出願当初の明細書(以下、先願明細書2という)には、それぞれ、基板上に、4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルスチレンとビニルフェノールの共重合体、又は、アルカリ可溶性樹脂のヒドロキシ基をテトラヒドロピラニル基で置換して得られた樹脂、露光により酸を発生する感光性化合物、溶媒とを含むパターン形成材料の膜を形成する工程と、遠紫外線によりその膜を選択的に露光する工程と、現像液により現像して膜の露光された部分を除去して0.5μm以下の幅を有するパターンを形成する工程とを備えたパターン形成方法が記載されている。
本件請求項1に係る発明と、先願明細書1ないし先願明細書2に記載された発明とを対比すると、先願明細書1ないし2における共重合体ないし樹脂は、本件請求項1に係る発明の酸雰囲気下でアルカリ可溶性となる官能基と親水基を有する共重合体に該当するから、本件請求項1に係る発明がパターン形成の対象の基板を「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」と限定しているのに対し、先願明細書1ないし先願明細書2に記載された発明がかかる限定をしていない点でのみ相違する。
異議申立人は、この相違点につき、甲第4号証、甲第5号証(上記(4)ア参照)を引用して、フォトレジストのパターン形成材料膜を形成するにあたり、基板をヘキサメチルジシラザンで疎水化処理することは周知であるから、先願明細書1ないし先願明細書2に記載された発明においても、基板は、「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」であると主張する。
しかしながら、基板の疎水化処理手法は様々であり、シラン系薬剤の疎水化処理手法に限っても、種々の薬剤が用いられており、一方、先願明細書1ないし先願明細書2には、「疎水化処理」や「ヘキサメチルジシラザン」につき何ら記載されていないのであるから、基板がしばしば疎水化処理され、ヘキサメチルジシラザンによる疎水化処理が周知技術であるとしても、「基板」が即「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」と解することには無理がある。
しかも、本件請求項1に係る発明は、「ヘキサメチルジシラザン処理の施された基板」と「親水基をもつ化学増幅型レジスト共重合体」等との組合せにより、サブミクロンレベルの微細なパターン形成も膜剥がれなくできるという格別の効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、先願明細書1ないし先願明細書2に記載された発明であるとはいえない。
イ.請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のすべての構成を引用して、さらに、パターン形成方法に用いる共重合体の親水基を限定するものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、先願明細書1ないし先願明細書2に記載された発明と同一とはいえない。
ウ.請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明のすべての構成を引用して、さらに、パターン形成方法に用いる共重合体のもつ、酸でアルカリ可溶性となる官能基を限定するものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、先願明細書1ないし先願明細書2に記載された発明であるとはいえない。
(6)以上の通りであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-06-28 
出願番号 特願平2-19529
審決分類 P 1 651・ 532- Y (G03F)
P 1 651・ 161- Y (G03F)
P 1 651・ 121- Y (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山鹿 勇次郎  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 六車 江一
伏見 隆夫
登録日 1997-04-04 
登録番号 特許第2621533号(P2621533)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 パターン形成方法  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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