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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1026094
審判番号 審判1998-7136  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-05-06 
確定日 2000-08-30 
事件の表示 平成9年特許願第217198号「スピンドルモータ」拒絶査定に対する審判事件[平成10年3月17日出願公開、特開平10-75553号]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願発明
本願は、平成2年7月28日に出願した特願平2-199836号の一部を平成9年7月28日に新たな特許出願としたものであって、その発明を特定するために必要な事項は、平成10年1月5日付、平成10年6月5日付及び平成12年4月10日付の各手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された「スピンドルモータ」にあるものと認められるところ、当該請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】円板形状の記録媒体を固定するハブ及び回転軸が一体に結合されたスピンドルモータにおいて、
上記ハブは、上記回転軸を結合する上端部を閉塞した円筒形状でなり、上記円筒形状部の内周面が上記スピンドルモータの回転駆動部に対向し、上記円筒形状部の上記閉塞された上端部側の外周角部に切り欠き部を形成することにより上記円筒形状部の外周面に上記記録媒体を載せる台座面部を形成してなり、
上記円筒形状の閉塞した上記上端部側から上記記録媒体をその中心部に形成された開口部を嵌めることにより上記台座面部に上記記録媒体を載せると共に、上記台座面部に載せられた上記記録媒体の上面と上記ハブの上端面と上記回転軸の上端面とがほぼ同一面となるように上記回転軸及び上記ハブの配置位置と上記台座面部の形成位置とが決められており、
上記同一面となつた上記回転軸の上端面と上記ハブの上端面と上記台座面部に載せられた上記記録媒体の上面とに亘つて平板状の固定部材を固定することにより上記記録媒体を保持固定する
ことを特徴とするスピンドルモータ。」
【2】引用刊行物
当審において、平成12年1月13日付で通知した拒絶の理由に引用した刊行物は、以下のとおりである。
刊行物1 特開昭63-161856号公報
刊行物2 特開平1-290163号公報
刊行物3 特開昭62-287465号公報
(刊行物記載の発明)
(1)上記刊行物1(特開昭63-161856号公報)には、「ディスク用スピンドルモータ」に係る発明が記載され、その実施例と共に図面の第1図乃至第5図を参酌すると、次の記載が認められる。
「1.磁気ディスク22を取付けるための磁気ディスク取付盤10を有するディスク用スピンドルモータに於て、
ロータマグネット16とロータ本体部17とからなるロータ11が、上記磁気ディスク取付盤10に連設されていることを特徴とするとするディスク用スピンドルモータ。」(第1頁左下欄第5〜11行、特許請求の範囲の欄)
「第1図に於て、1は本発明に係るディスク用スピンドルモータであって、………(中略)………。23はディスク22取付用のクランパである。」(第2頁左上欄第9行〜同左下欄第3行)
「他の実施例として、第2図に示すように、ロータ11を取付盤10の外周面24において連設してもよい。」(第2頁左下欄第10〜12行)
「第4図は、取付盤10とロータ本体部17とをアルミ合金等を用いて鋳造等により一体成形した場合を示す。26はロータマグネット16とロータ本体部17との間に介装された鉄製ヨークである。次に、第5図は取付盤10とロータ本体部17を何れも鉄製とし一体成形したものである。」(第2頁左下欄第15〜20行)
(2)上記刊行物2(引用省略)
(3)上記刊行物3(特開昭62-287465号公報)には、図面の第2図及び第4図とこれに係わる記載を参酌すると、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。
スピンドルモータであって、主軸(15)とスピンドルハブ(16)とステータ(17)とマグネット(18)との関連構成において、
(i)スピンドルハブ(16)は、主軸(15)の上端に固定され、上端部が閉塞された円筒形状に形成されている。
(ii)前記スピンドルハブ(16)の内周面にはマグネット(17)が設けられ、またこの内周面はスピンドルモータの回転駆動部(ステータ(17))に対向させて形成されている。
(iii)前記スピンドルハブ(16)の円筒形状部の外周面には記録媒体(磁気ディスク(31))を載せる台座面部が形成されている。
【3】対比・判断
(対比)
本願発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記刊行物1におけるディスク用スピンドルモータは回転シャフト(6)の上端に取付けられた磁気ディスク取付盤(10)を備えもので、この取付盤(10)及び磁気ディスク(22)は、本願発明におけるハブ及び記録媒体に対応するものと認められる。
なお、刊行物1における磁気ディスク取付盤(10)及び磁気ディスク(22)は、その形状が明示されていないものの、回転されるものであること及び図面の記載からみて、通常「円筒形状」及び「円板形状」であるとするのが技術常識に適うものと認められる。
したがって、両者は、以下の一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「円板形状の記録媒体を固定するハブ及び回転軸が一体に結合されたスピンドルモータにおいて、
上記ハブは、上記回転軸を結合する上端部を閉塞した円筒形状でなり、上記円筒形状部の上記閉塞された上端部側の外周角部に切り欠き部を形成することにより上記円筒形状部に上記記録媒体を載せる台座面部を形成してなり、
上記円筒形状の閉塞した上記上端部側から上記記録媒体をその中心部に形成された開口部を嵌めることにより上記台座面部に上記記録媒体を載せられており、
上記ハブの上端面と上記記録媒体の上面とに亘つて固定部材を固定することにより上記記録媒体を保持固定するスピンドルモータ。」
(相違点)
(1)ハブが、本願発明にあっては、円筒形状部の内周面が上記スピンドルモータの回転駆動部に対向し、上記円筒形状部の外周面に上記記録媒体を載せる台座面部を形成してなるものであるのに対し、上記刊行物1に記載された発明にあっては、この点の構成が明確でない点。
(2)記録媒体を保持固定する際、本願発明にあっては、台座面部に載せられた上記記録媒体の上面と上記ハブの上端面と上記回転軸の上端面とがほぼ同一面となるように上記回転軸及び上記ハブの配置位置と上記台座面部の形成位置とが決められており、上記同一面となつた上記回転軸の上端面と上記ハブの上端面と上記台座面部に載せられた上記記録媒体の上面とに亘つて平板状の固定部材を固定するものであるのに対し、上記刊行物1に記載された発明にあっては、単に取付盤(10)の上端部側と磁気ディスク(22)の上面とが(図面上)段差を有し両者間に亘つてクランパ(23)を固定するものである点。
(判断)
以下、相違点について検討する。
相違点(1)について、
本願発明における相違点(1)に係る構成、すなわちハブの具体的構成において、「円筒形状部の内周面がスピンドルモータの回転駆動部に対向し、上記円筒形状部の外周面に記録媒体を載せる台座面部を形成」する構成は、例えば当審における拒絶の理由に引用した上記刊行物3の図面第2図及び第4図(主軸(15)とスピンドルハブ(16)とステータ(17)とマグネット(18)との関連構成)にも開示されているように、従来より周知の技術的事項である。
そして、刊行物1に記載された発明においても、その第4図及び第5図に係る具体的実施例から「取付盤10とロータ本体部17とをアルミ合金等を用いて鋳造等により一体成形した場合」として明示されているように、円筒形状部は回転駆動部と関連させて適宜に構成することができるものであるから、刊行物1においてハブの具体的構成を円筒形状部の内周面がスピンドルモータの回転駆動部に対向し、また円筒形状部の外周面に記録媒体を載せる台座面部を形成するようになすことは、前記周知の技術的事項を適用することにより達成することができるものであり、また刊行物1に記載された発明には前記周知の技術的事項を適用することができない構成であるとする理由は見当たらない。
したがって、本願発明のようにハブを構成することは、上記刊行物1、3に記載された発明乃至周知の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得るものと認められる。
相違点(2)について、
通常、ハブと記録媒体との固定に係わる構成は、刊行物1においても記録媒体(磁気ディスク22)をその上面から固定する構成として開示されているように、従来から当業者が適宜になし得る設計上の事項であり、その具体的構成において「記録媒体の上面とハブの上端面と回転軸の上端面とがほぼ同一面となるように上記回転軸及び上記ハブの配置位置と台座面部の形成位置とが決められ、上記同一面となつた上記回転軸の上端面と上記ハブの上端面と上記記録媒体の上面とに亘つて平板状の固定部材を固定する」ことにより上記記録媒体を保持固定することは、従来より周知の技術的事項(必要であれば、実願昭58-104180号(実開昭60-14674号)のマイクロフィルム[特に、第2図押え板(17)等の構成]、実願昭58-183224号(実開昭60-89756号)のマイクロフィルム[特に第1図及び第3図の押え板(23)等の構成]参照)である。
そして、このような具体的構成を採ることによる作用効果は、当該周知の技術的事項においても、当然に奏するものであって格別のものとは認められない。
したがって、刊行物1におけるクランパ(23)に代えて記録媒体を保持固定する周知の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得ることと認められる。
また、相違点(1)乃至(2)に係わる本願発明の作用効果も、上記刊行物1及び3に記載された発明乃至周知の技術的事項から当業者が容易に予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。
【4】審判請求人の主張について
審判請求人は、当審における拒絶の理由に応答して手続補正書とともに提出した意見書において、概要以下のとおり主張している。
(1)「第1引用例(特開昭63-161856 号公報)には、『ディスク22をクランパ23により取付盤10に固定する』構成が開示されており、この限りにおいて本願発明の構成と軌を一にする構成が第1引用例に開示されていると言い得る。
しかしながら第1引用例の場合は、『シャフト6の上端9と取付盤10の中心部分がクランパ23の厚み分だけ突出した形状』となっており、従ってクランパ23の中心部分に取付盤10の突出した中心部分を嵌合するための中心孔を設けている。これに対して本願発明では、記録媒体11の上面とハブ23の上面と回転軸22の上面とが同一面にあることにより、第1引用例のように固定部材を嵌合するために回転軸の上面及びハブの中心部分を固定部材の厚み分だけ突出させる必要がない。この点について、第1引用例では、製造時にクランパの中心孔や取付盤の中心部分の厚み・その外周の大きさ等の細かい精度出しが必要となるのに対して、本願発明ではこれらの工程が不要になる。
従って、第1引用例にディスクをクランパにより取付盤に固定する旨の記載があるからといつて、これが本願発明の上記特徴点を教示しているとは言い得ない。」旨、主張している。
(検討)
しかしながら、本願発明において、記録媒体11の上面とハブ23の上面と回転軸22の上端面とが同一面にあることは、相違点(2)として摘記し、前記のとおり当業者が容易になし得るものと判断しているところである。
そして、該同一面であることによる製造時の精度等に係わる作用効果は、相違点(2)における判断でした周知の技術的事項においても当然に奏する作用効果であって、格別のものとは認められないから、当該作用効果に係る主張は採用することができない。
(2)「第3引用例(特開昭62-287465 号公報)には、『磁気ディスク21を固定部材によりスピンドルハブ20に固定する』構成が開示されており、この限りにおいて本願発明の構成と軌を一にする構成が第3引用例に開示されていると言い得る。
しかしながら第3引用例の場合は、『主軸5の上端とスピンドルハブ20の上端の中心部分が固定部材の厚み分だけ突出した形状』となつており、従つて固定部材の中心部分にスピンドルハブ20の突出した中心部分を嵌合するための中心孔を設けている。これに対して本願発明では、記録媒体11の上面とハブ23の上面と回転軸22の上面とが同一面にあることにより、第3引用例のように固定部材を嵌合するために回転軸の上面及びハブの中心部分を固定部材の厚み分だけ突出させる必要がない。この点について、第3引用例では、製造時に固定部材の中心孔やスピンドルハブの中心部分の厚み・その外周の大きさ等の細かい精度出しが必要となるのに対して、本願発明ではこれらの工程が不要になる。
従つて、第3引用例に磁気ディスクを固定部材によりスピンドルハブに固定する旨の記載があるからといつて、これが本願発明の上記特徴点を教示しているとは言い得ない。」旨、主張している。
(検討)
しかしながら、刊行物3を引用した趣旨は、前記相違点(1)の判断において記載したように、「円筒形状部の内周面がスピンドルモータの回転駆動部に対向し、上記円筒形状部の外周面に記録媒体を載せる台座面部を形成」する構成であり、「磁気ディスク21を固定部材によりスピンドルハブ20に固定する」構成ではないのであるから、審判請求人の当該主張は当を得ないものであって採用することができない。
また、製造時の精度等に係わる作用効果における主張については、上記(1)に記載したとおりである。
(まとめ)
以上のとおりであって、審判請求人の主張はいずれも採用することができない。
【5】まとめ
以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に記載された発明)は、刊行物1及び3に記載された発明乃至周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-06-02 
結審通知日 2000-06-16 
審決日 2000-06-27 
出願番号 特願平9-217198
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀本 孝米山 毅  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 西川 一
川端 修
発明の名称 スピンドルモータ  
代理人 田辺 恵基  

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