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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1026125
審判番号 審判1999-15758  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-06-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-09-30 
確定日 2000-09-06 
事件の表示 平成 2年特許願第286514号「半導体集積回路」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 6月 3日出願公開、特開平 4-160487]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成2年10月23日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という)
「 チップの内部メモリと、外部メモリまたは外部入出力回路とにアクセスするメモリ拡張機能を有するプログラム実行マシンを構成する半導体集積回路において、
前記外部メモリまたは前記外部入出力回路へのアクセス時のみ前記メモリ拡張機能を能動状態にする手段と、
前記外部メモリおよび前記外部入出力回路がアクセスされないときに、前記外部メモリまたは前記外部入出力回路に接続される外部接続システムバスに供給する信号の電位を、所定の変化幅における高電位側の電位とする手段と、
を備えることを特徴とする半導体集積回路。」

これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成1年5月15日に頒布された特開平01-121957号公報(以下、「引用刊行物」という)には次の事項が記載されている。

(1)「第1図は本発明に係るマイクロコンピュータの構成を示すものである。すなわち、コンピュータ1は、全体の制御を司る制御部(CPU)2、この制御部2の制御に必要な制御プログラムが格納されているプログラム格納メモリ(ROM)3、ワーキング用メモリ(RAM)4、・・・・・・・、内部バスからのアクセス信号、アドレスデータおよびデータ信号を外部バスに供給したり、あるいは外部バスからのアクセス信号、アドレスデータおよびデータ信号を内部バスに供給する双方向バッファ7,8,9、この双方向バッファ7,8,9の制御を行なうバッファ制御部10、・・・・、これらは例えば同一の半導体基板上に形成されている。
なお、21,22,23はそれぞれ内部バスで、・・・・また、31,32,33,34はそれぞれ内部バス21,22,23に対応する外部バス、・・・・送る外部バスである。」(第3頁左上欄第6行から同頁右上欄第19行)
(2)「本発明は、たとえばICカードに内蔵されて用いられるマイクロコンピュータに係り、特にプログラムROMおよびワーキング用RAMなどを内蔵し、これらと外部メモリとを同一のアクセスバス(アドレスバス、データバス)で接続しているマイクロコンピュータに関する。
(従来技術)
最近、実用化されているマイクロコンピュータにおいては、プログラムROMおよびワーキング用RAMなどを内蔵し、これらと外部メモリとを同一メモリ空間としているものがある。たとえば、マイクロコンピュータとして64キロバイトのメモリ空間をアクセスでき、内蔵するROM(16キロバイト)およびRAM(1キロバイト)、そして外部メモリ(32キロバイト)のアクセス空間を持つものとすると、この64キロバイトのメモリ空間にROMアクセス用として16キロバイト、およびRAMアクセス用として1キロバイト、そして外部メモリアクセス用として32キロバイトをそれぞれ重ならないように空間割付けを行なう。この場合、それぞれの空間へのアクセスは共有するアドレスバスあるいはデータバスなどによって行なわれる」(第2頁左上欄第4行から同頁右上欄第6行)
(3)「制御部2によるプログラム格納用メモリ3およびワーキング用メモリ4へのアクセス(内部アクセス)が生じた場合、・・・・バッファ制御部10は・・・・内部アクセスであると判定し、双方向バッファ7,8,9をそれぞれ非導通状態に制御する。・・・・、すなわち外部メモリ40には出力されない。
また、制御部2による前記外部メモリ40へのアクセス(外部アクセス)が生じた場合、・・・・バッファ制御部10は・・・・外部アクセスであると判定し、双方向バッファ7,8の方向を外向きに制御するとともに、読出しアクセスであった場合には加えて双方向バッファ9の方向を内向きに制御し、書込みアクセスであった場合には双方向バッファ9の方向を外向きに制御する。これにより制御部2は外部メモリ40へのアクセス(外部アクセス)が可能となる。」(第5ページ左上欄第5行から同ページ右上欄第19行)

この記載事項から、上記引用刊行物には、
「同一の半導体基板上に形成された制御部2とプログラム格納メモリ3とワーキング用メモリ4とを含み、上記プログラム格納メモリ3およびワーキング用メモリ4とは重ならないように空間割り付けされ、前記半導体基板とは別の半導体基板上に形成された外部メモリ40にアクセスするマイクロコンピュータ1を構成する半導体集積回路において、
前記プログラム格納メモリ3およびワーキング用メモリ4へのアクセスが生じた場合、非導通状態に制御され、外部メモリ40へのアクセス時には制御部2が外部メモリ40へアクセス可能とするバッファ制御部10および双方向バッファ7,8,9を備えることを特徴とする半導体集積回路」の発明(以下、引用刊行物記載の発明という)が記載されていると認められる。

本願発明と上記引用刊行物記載の発明とを対比する。
a、上記プログラム格納メモリ3,ワーキング用メモリ4は、制御部2と同一の半導体基板上に形成され、マイクロコンピュータ1の一部となっているので、本願発明の「チップの内部メモリ」に相当する。

b、外部メモリ40は、前記プログラム格納メモリ3,ワーキング用メモリ4とは別の半導体基板上に形成され、マイクロコンピュータ1の外部にあり、外部バスに接続され、双方向バッファを介して内部バスに接続されているので、本願発明の「前記外部メモリまたは前記外部入出力回路」に相当する。

c、上記マイクロコンピュータは「プログラム実行マシン」であり、そして半導体基板で形成されているので「半導体集積回路」である。

d、外部アクセス用のメモリ40は、プログラム格納メモリ3およびワーキング用メモリと同一のメモリ空間に重ならないように空間割り付けされ、外部バスは双方向バッファを介して内部バスに接続されて制御部2が外部アクセス用のメモリ40にアクセスできるようになるものであるので、このマイクロコンピュータを構成する半導体集積回路は「メモリ拡張機能」を有している。

e、双方向バッファ7,8,9およびバッファ制御部10は「前記プログラム格納メモリ3およびワーキング用メモリ4へのアクセスが生じた場合、非導通状態に制御され、外部用のメモリ40へのアクセス時には制御部2が外部メモリ40へアクセス可能とする」ものであるので、本願発明の「外部メモリまたは前記外部入出力回路へのアクセス時のみ前記メモリ拡張機能を能動状態にする手段」に相当する。

したがって、 本願発明と上記引用刊行物記載の発明とを対比すると、両者は
「チップの内部メモリと、外部メモリまたは外部入出力回路とにアクセスするメモリ拡張機能を有するプログラム実行マシンを構成する半導体集積回路において、
前記外部メモリまたは前記外部入出力回路へのアクセス時のみ前記メモリ拡張機能を能動状態にする手段を備えることを特徴とする半導体集積回路」である点で一致し、引用刊行物には
「前記外部メモリおよび前記外部入出力回路がアクセスされないときに、前記外部メモリまたは前記外部入出力回路に接続される外部接続システムバスに供給する信号の電位が、所定の変化幅における高電位側の電位とする手段」について記載がない点
で相違する。

上記相違点について検討する。
バスラインの電圧の安定化、耐ノイズ対策のために、多くの場合論理振幅の高電位側にプルアップすることは、例えば、猪飼國夫「インターフェース回路の設計」、CQ出版株式会社、昭和55年8月10日、150頁に「3ステートゲートは、コントロールが加わっていないときには、出力はOFFですから、バスラインは安定していません.これはあまりよくないので、多くの場合+5Vプルアップしておきます.」と記載されているように慣用手段にすぎない。

したがって、本願発明の外部接続バスに相当する、引用刊行物記載の発明外部バス31,32,33,34においても外部アクセス用メモリ40がアクセスされない時は双方向バッファは非導通状態になるのであるから、論理振幅の高電位側にプルアップして高電位とすることは当業者が必要に応じてなしえる慣用手段の付加にすぎない。

また、本願発明と同一の情報処理技術分野に属する情報処理機器(パーソナルコンピュータ等)と拡張ユニットなどの外部装置を接続するケーブルにアドレス、データ、クロック等の高速パルス列信号が伝送されるとき、不要輻射が発生し、他の電子機器に雑音を発生しうる(電磁波妨害)ことはよく知られており、そして、その解決手段として、拡張ユニットと電子機器をバス接続する際に出力バッファを介して接続し、拡張ユニットなどの外部装置をアクセスしないときは、その出力バッファを不動作とし、バスの信号を遮断し、不要輻射を防止することは、例えば実願昭60-174372号(実開昭62-84845号)のマイクロフィルムに記載されているように周知であり、上記引用刊行物記載の構成においても、本願発明の「電磁波妨害を防止する」という効果は、当業者が当然期待し得る自明の効果にすぎない。

以上のとおりであるので、本願発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-04-28 
結審通知日 2000-05-16 
審決日 2000-07-04 
出願番号 特願平2-286514
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 恭信  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 村上 友幸
斎藤 操
発明の名称 半導体集積回路  
代理人 高田 守  
代理人 葛野 信一  
代理人 谷田 拓男  
代理人 高橋 英樹  

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