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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1026166
審判番号 審判1998-18670  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-30 
確定日 2000-09-21 
事件の表示 平成 1年特許願第510190号「熱インクジェットプリンター用顔料含有インクジェットインクを製造する方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 3月27日出願公告、特公平 8- 30158、平成 2年 4月19日国際公開、WO90/04005、平成 4年 2月27日国内公開、特表平 4-501128]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の要旨

本願は、1989年9月28日(優先権主張1988年10月12日,米国)を国際出願日とする出願であって、その発明の要旨は、出願公告後の平成9年8月4日付け手続補正書及び平成10年12月28日付け手続補正書により補正された、出願公告された明細書及び図面の記載よりみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものであると認める。
「a) 少なくとも1種の顔料と少なくとも1種の分散剤とを水または水と少なくとも1種の水溶性有機溶剤との混合物からなる媒体中で混合して、混合物の全重量基準で0.1〜30重量%の顔料を含有する顔料含有インク混合物を生成させ、そして
b) このインク混合物を、少なくとも1,000psiの液体圧で、液体ジェット相互作用室内にある複数のノズルを介して通過させることにより、インク混合物中の凝集した顔料粒子を解膠させて、媒体中の実質的に均一な顔料の分散物を生成させることからなり、ここで前記ノズルはインク混合物の流体流を加圧下に複数の薄いシートの形で放出してそれらのシートの前面に沿って乱流ジェット作用を生起するように配置されている、
熱インクジェットプリンター用に好適な顔料含有インクジェットインクの製造方法。」

2.引用例

これに対して、原査定の拒絶の理由である特許異議の決定の理由に引用された特開昭62-74974号公報(以下、「引用例1」という。)及びEPC公開第284034号明細書(1988年9月28日公開。以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

2-1 引用例1(特開昭62-74974号公報)

(1) 「赤色顔料を着色剤とするインキにおいて,480〜600nmの吸光度積分値と,340〜740nmの吸光度積分値との比が69%以上である顔料と水とから少なくともなる記録用インキ。」(1頁特許請求の範囲)
(2) 「本発明は,マゼンタ色の記録用インキ特に,記録ヘッドのオリフィスから液滴を飛翔させて記録を行なうインキジェット方式に好適なマゼンタ色のインキジェット記録用インキに関する。」(1頁左下欄下から7〜4行)
(3) 「また,圧力振動子の振動や熱により発生する圧力や,高電圧印加による静電引力によりヘッド内のインキを微細なノズルから吐出させて記録を行う所謂インキジェット記録方式においても各種の染料,顔料を水またはその他の有機溶剤に溶解または分散させたものが使用されている。」(1頁右下欄3〜9行)
(4) 「すなわち,インキジェット記録用インキは, (中略) 2. 長期間の保存に対して安定であり,また,ノズル近傍に固形物等が付着しないこと。 (中略) 等の条件を満足することが必要である。」(1頁右下欄下から6行〜2頁左上欄6行)
(5) 「本発明に使用する顔料としては,C.I.Pigment Red No57等を用いることができ,より良好な色調及びより適正な透明性を得る為に,インキ中の顔料粒子径は0.2μm以下である事が好ましい。」(2頁右上欄下から6〜2行)
(6) 「その他のインキを構成する成分としては,分散剤・水溶性有機溶剤がある。
分散剤としては,一般に用いられる高分子化合物や界面活性剤等顔料の分散剤として使用されているもの全てが使用可能である。」(2頁右上欄下から2行〜左下欄3行)
(7) 「水溶性有機溶剤は保湿効果を有するものであれば特に限定する事なく用いることができる。」(2頁右下欄9〜11行)
(8) 「又,本発明の記録用インキの製造方法としては各種の方法が採用できるが,その一例を挙げると上記各成分を配合し,これをボールミル,ホモミキサー,サンドグラインダー,スピードラインミル,ロールミル等の従来より公知の分散機により混合摩砕することにより得られる。」(3頁右上欄2〜7行)
(9) 「実施例1
Light Rubine Lake (C.I.Pigment Red 57 :2,サンケミカルコーポレーション製) 12.0部
スチレン-マレイン酸のアミン塩(分散剤) 5.0部
エチレングリコール 10.0部
エチレングリモノメチルエーテル 1.0部
尿素 8.0部
プロクセルXL-2(防腐,防カビ剤,1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンI.C.I. ジャパン(株)製 0.3部
イオン交換水 63.7部
以上の各成分をボールミルで分散処理し,得られた分散液を遠心分離機にかけた後,メンブランフィルターで粗大粒子を除去して,マゼンタ色のインキジェット記録用インキを得た。本インキの吸光度積分値の比は72%,顔料の最大粒子径は0.2μm,平均粒子径は0.08μmであった。
実施例2 Rubrey Red (C.I.Pigment Red 57 : 1,CIBA-GEIGY製) 12.0部
スチレン-アクリル酸のアミン塩(分散剤) 8.0部
グリセリン 8.0部
エチレングリコールモノメチルエーテル 1.5部
エチレン尿素 10.0部
イオン交換水 60.5部
以上の各成分をサンドミルで分散処理し,遠心分離処理し,マゼンタ色のインキジェット記録用インキを得た。本インキの吸光度積分値の比は69%,顔料の最大粒子径は0.75μm,平均粒子径は0.12μmであった。」(3頁左下欄5行〜右下欄下から3行)

2-2 引用例2(EPC公開第284034号明細書)

(1) 「A.熱可塑性樹脂と非極性液体とを、樹脂が可塑化しそして液化するには充分で、かつ非極性液体が沸騰しそして樹脂が分解する点以下の温度において混合し、
B.非極性液体中で樹脂の粒子が形成されるまでこの混合物を冷却し、そして、
C.この樹脂粒子と非極性液体との混合物を、少なくとも1000p.s.iの液体圧力で、少なくとも1つの液体ジェット相互作用室を通過させることにより、樹脂粒子のサイズを約30μm以下に減少させる、
ことからなる液体静電画像化用のトナー粒子の製造方法。」(13頁13〜19行のクレーム1)
(2) 「液体静電現像液を作るために多くの方法が知られている。 (中略)
液体静電現像液を製造するためのこれらおよびその他の方法は、粒子サイズを小さくするのに本質的に長期の冷間破砕法によっているため、比較的長い製造時間を要する不利なものである。
そこで、従前の方法によって作られたものと同等またはより良い性質を有する液体静電現像液が、より短い時間で新らしい方法により作られることがのぞまれる。」(2頁26〜41行)
(3) 「本発明の工程Cに有用な、液体ジェット相互作用室を有する装置は、マイクロフライディクス,ニュートン,MA製のマイクロフライダイザ(登録商標)である。この型式の装置はクック氏他の米国特許第4,533,254号中に説明されており、ここに参考としてこれを記載する。」(2頁54行〜3頁1行)
(4) 「この装置の液体ジェット相互作用室は、
(a)熱可塑性樹脂と非極性液体との混合物の、複数の薄いシート状のものを圧力のもとに噴出するように配置された、伸長したオリフィスを備えた液中に浸漬された複数のノズルで、該ノズルは共通の液体ジェット相互作用前線に沿ってこのシートの攪乱されたジェット作用をひき起こすように配置され、そしてこのシートは液体で満たされている低圧区域中に該ノズルにより噴出され、この低圧区域中の液体と低圧区域中に噴出されたシートとによって、本質的に画定されかつ形成される共通の境界に沿って攪乱されたジェット相互作用域を創成し;
(b)攪乱されたジェット相互作用が行われる、液体系の低圧区域を与えるように配置された、ジェット相互作用室区域手段;
(c)ノズルに対して圧力の下で混合物を運ぶための供給チャンネル手段;そして
(d)低圧区域から分散物の形の樹脂粒子と非極性液体との混合物をとり出す手段、とで構成されている。」(3頁11行〜22行)
(5) 「続いて、樹脂粒子のサイズが減少させられる。例えば、この方法の1実施例においては、工程Aの混合と樹脂粒子のサイズの減少とは、前述の形式の少なくとも1つの液体ジェット相互作用室を有する装置中で行われる。第2の実施例においては、工程Aの混合プロセスは摩砕機または二重遊星型混合機中で行われ、そして工程Cは少なくとも1つの液体ジェット相互作用室を有する装置中で行われる。この樹脂粒子のサイズの減少は、液体静電現像液を作るための既知の方法よりもはるかに迅速に、可成り短い時間で達成できることが認められた。少なくとも1つの液体ジェット相互作用室を有する既知の装置は、例えば好ましく2台直列にして、50ガロン(190l)/分までの能力を持っている。液体静電現像液を作るための平均的時間は利用する装置の大きさに応じて変化し、これは装置の通過当たり0.1ガロン(0.38l)/分から50ガロン(190l)/分までの範囲で作られる。もちろん、装置に繰り返し通すことにより、より長い減少時間をかけることもできるが、一般には不要のことである。
工程Cで樹脂粒子のサイズを減少した後、トナー粒子は約30μmより小さな平均粒子サイズをもち、好ましくは、後にさらに詳しく説明するマルベルン3600E粒子サイズ計を用いて測って、約15μmより小さい。」(3頁56行〜4頁13行)
(6) 「本発明の方法で液体静電現像液が作られる。この現像液は、よくコントロールされた粒子サイズをもつトナー粒子を含み、液体静電現像液を作るための、以前に知られた方法よりもはるかに迅速に製造されることができる。」(7頁33〜35行)
(7) 7頁以下の実施例では、製造例として、対照例1、実施例1〜9、対照例2が記載されている。ここで実施例1〜9では、工程Cで「マイクロフライダイザ(登録商標)」を用い、他方、対照例では、炭素鋼球とともに230rpmないし330rpmのロータ速度で摩砕されている。その結果は12頁のTABLE1にまとめられており、これによれば、粒子サイズ減少時間は、対照例では9時間(対照例1)ないし6時間(対照例2)であるのに対して、実施例では、20分(実施例1〜4、8)ないし2時間40分(実施例6)であることが示されている。

3.対比・判断

本願発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比する。
引用例1には顔料と水とからなるインクジェット記録用インクが記載されており(上記2-1(1)〜(5)参照)、さらに分散剤、水溶性有機溶剤がインクの構成成分となることも記載されている(同2-1(6)、(7))。そして、その製造方法として、原料各成分を公知の分散機により混合摩砕する方法が記載されており(同2-1(8))、実施例では顔料の含有量が12重量%であるインクの製造例が記載されている(同2-1(9))。
そうすると、引用例1には、少なくとも1種の顔料と少なくとも1種の分散剤とを水または水と少なくとも1種の水溶性有機溶剤との混合物からなる媒体中で混合して、混合物の全重量基準で0.1〜30重量%の範囲内の顔料を含有顔料含有インク混合物を生成させ、このインク混合物を分散処理に付することからなる顔料含有インクジェットインクの製造方法が記載されているといえるから、この点で、本願発明と引用発明1とは一致するものと認められる。
一方、本願発明と引用発明1とは、次の点で相違する。
(イ) 本願発明では、顔料含有インクジェットインクは「熱インクジェットプリンター用に好適な」ものであるとしているのに対して、引用例1には、その旨の記載がない点、
(ロ) 分散物を生成するための処理を、本願発明では、「インク混合物を、少なくとも1,000psiの液体圧で、液体ジェット相互作用室内にある複数のノズルを介して通過させることにより、インク混合物中の凝集した顔料粒子を解膠させて、媒体中の実質的に均一な顔料の分散物を生成させることからなり、ここで前記ノズルはインク混合物の流体流を加圧下に複数の薄いシートの形で放出してそれらのシートの前面に沿って乱流ジェット作用を生起するように配置されている」ことにより行うのに対して、引用発明1では、「各成分を配合し、これをボールミル、ホモミキサー、サンドグラインダー、スピードラインミル、ロールミル等の従来より公知の分散機により混合摩砕する」ことにより行うとしている点。
上記相違点(イ)、(ロ)につき検討する。
(1) 相違点(イ)について
引用例1には、「熱インクジェットプリンター用に好適」である旨の記載はないが、他方、熱インクジェット方式以外の特定の方式のインクジェット記録用インクを意図したものである旨の記載もない。なお、実施例ではピエゾインクジェットプリンターによる評価を行っているが、このことから直ちに、引用例1記載のインクはピエゾインクジェットプリンター用のみに用いられるものあると制限的に解することはできない。むしろインクジェット記録方式として「圧力振動子の振動や熱により発生する圧力や、高電圧印可による静電引力によりヘッド内のインキを微細なノズルから吐出させて記録を行う」(上記2-1(3)参照)方式を挙げていることを考慮すると、引用例1記載のインクジェットプリンター用インクは、熱インクジェット方式を含む各種のインクジェット方式に用いることができるものと理解される。そうすると、引用例1に「熱インクジェットプリンター用に好適」である旨の記載がないからといって、このことをもって実質的な相違点とすることはできない。
(2) 相違点(ロ)について
相違点(ロ)の検討に先立って、本願発明において、特許請求の範囲で規定する液体ジェット作用室を備えた装置(以下、「液体ジェット相互作用装置」という。)を用いたことによる作用効果につき検討しておく。
本願明細書では、
「本発明は高解像性の顔料含有インクジェットインクを迅速に製造する方法に関する」(平成10年12月28日付け訂正明細書1頁[発明の分野]の項)
ものであること、
「顔料ベースのインクジェットインクを製造する一般的な方法は、インクジェット用の各成分を互いに混合し、次いでボールミル、ホモミキサー、サンドミルまたはロールミルのような、既知の分散装置によって混合しかつ磨砕することである」
(同訂正明細書3頁15〜18行)こと、
「顔料を含むインク混合物の解膠は、既知の顔料を含むインクジェット用インクの製造法におけるよりも、はるかに速やかに比較的短時間に達成できることが認められた」(同訂正明細書12頁2〜5行)
ことが記載されており、また、実施例によれば、分散処理において「液体ジェット相互作用装置」であるマイクロフライダイザー(登録商標)を用いた場合には、対照例(ステンレス鋼のボールとともにローター内で磨砕処理したもの)との比較で、短時間で良好なインクを調製できることが示されている。
これらの記載によれば、本願発明では、「液体ジェット相互作用装置」を用いることにより、ボールミル等の分散装置を用いた場合に比して短時間の分散物生成操作で、良好な分散物を生成できるという作用効果を奏するものと認められる。
そこで相違点(ロ)につき検討する。
引用例2に記載された発明(以下、「引用発明2」という。)は、トナー粒子の製造法に関するものであり、トナー粒子の分散物生成工程を含んでいる。そして、引用発明2では、この分散物生成工程を「少なくとも1000p.s.iの液体圧力で、少なくとも1つの液体ジェット相互作用室を通過させることにより」行っている(上記2-2(1))。
ところで、引用例2には、引用発明2で用いる「液体ジェット相互作用室」を備えた装置はそれ自体公知の装置であることが記載され(上記2-2(3)参照)、また、該装置に関する説明(同2-2(4))からも明らかなように、前記「液体ジェット相互作用室」を備えた装置は、本願発明で用いる「液体ジェット相互作用装置」と同一のものである。そして、引用発明2では、この装置をトナー粒子の製造に用いることにより、短時間で良好な分散物を生成できるという作用効果を奏している(同2-2(2)、(5)、(6)、(7))。
以上を要するに、引用発明2は、公知の装置である「液体ジェット相互作用装置」をトナー粒子の製造における分散物生成工程に転用し、これに混合物を1,000psi以上の液体圧で注入することにより、短時間で良好な分散物を生成できるという効果を得ているものであると認められる。
引用発明2は、トナー粒子の製造に関するものではあるが、そこに記載された分散処理操作は、分散質粒子の微細化、分散化という物理的操作に他ならないから、トナー粒子の製造にとどまらず、他の同様の固-液分散系の分散物生成処理にも応用可能であることは、当業者であれば容易に推察できることである。
そうすると、このような引用例2の記載を踏まえて引用例1の記載をみれば、引用例1に記載される顔料含有インクジェット記録用インクの製造工程において、分散物生成に用いる公知の分散機として「液体ジェット相互作用装置」を転用し、これに混合物を1,000psi以上の液体圧で注入することにより、短時間で良好な分散物を得ようとすることは、当業者であれば容易に想到できたことといわざるを得ない。

4.むすび

したがって、本願発明は、その特許出願前に頒布された刊行物である引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-04-04 
結審通知日 2000-04-18 
審決日 2000-05-01 
出願番号 特願平1-510190
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松井 佳章中島 庸子井上 千弥子  
特許庁審判長 花田 吉秋
特許庁審判官 胡田 尚則
星野 浩一
発明の名称 熱インクジェットプリンター用顔料含有インクジェットインクを製造する方法  
代理人 高木 千嘉  
代理人 西村 公佑  
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