• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1026201
審判番号 審判1998-17666  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-05 
確定日 2000-10-06 
事件の表示 平成 4年特許願第146132号「無線装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年12月24日出願公開、特開平 5-344021]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明の要旨
本願は、平成4年6月8日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成10年12月2日付け及び平成12年4月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 増幅素子としてトランジスタを用い、前記トランジスタを飽和領域で動作させるCクラス送信用高出力増幅器と、受信用低雑音増幅器と、前記送信用高出力増幅器出力と前記受信用低雑音増幅器入力とを合成・分波する送受分波器と、この送受分波器の出力に接続されたアンテナとを有する無線装置において、前記受信用低雑音増幅器出力側に備えられた受信レベル検波回路とこの受信レベル検波回路の受信レベルの増減に対応した制御信号を出力する制御回路と、前記制御信号により直流出力電圧を増減する直流電圧変換器とを有し、前記直流電圧変換器の出力電圧を前記送信用高出力増幅器の電源に印加して前記アンテナから送信される実行放射電力を増減させ対向局に到達する実行放射電力を常に一定とするよう送信出力制御することを特徴とする無線装置。」
2.引用刊行物記載の発明
これに対して、当審における平成12年1月31日付けの拒絶の理由で引用した特開平2-241234号公報(以下「刊行物1」という)には、
「前記地球局に設けられた送信制御装置は、前記地球局より送信された一波のパイロット信号の通信衛星の折返し信号を自局のパイロット信号受信装置で受信し、該パイロット信号受信装置から出力されるパイロット信号の受信電力の検出信号より、前記衛星から地球局までの降雨減衰量を検出し、前記地球局から前記衛星までの降雨減衰量を予測し、該予測値を送信電力制御装置の制御信号として与える。それによって、前記送信電力制御装置は、前記地球局より送信さした信号の衛星実効放射電力が降雨減衰にかかわらず一定になるよう動作する。・・・4は、該合成装置より出力された合成信号の電力を制御し、通信衛星上での衛星実効放射電力が降雨減衰にかかわらず一定となるようにするための送信電力制御装置である。5は、該送信電力制御装置より出力された信号を前記通信衛星に送信するために周波数変換及び電力増幅をするための送信装置である。6は、送受共用のアンテナである。7は、前記通信衛星から出力される信号を受信し、信号処理が容易にできるために周波数変換及び電力増幅をするための受信装置である。8は、該受信装置から出力される信号からパイロット信号と信号を分配するための分配装置である。9は、該分配装置より出力されるパイロット信号から該パイロット信号の受信電力を検出するためのパイロット受信装置である。10は、前記分配装置より出力された信号を変調するための信号受信装置である。11は、前記パイロット信号受信装置で検出された前記パイロット信号の受信電力の信号より、前記通信衛星から地球局までの降雨減衰量を検出し、自局から前記通信衛星までの降雨減衰量を予測し、該予測値を送信電力制御装置の制御信号として出力する送信制御装置である。」(公報第2頁左下欄第2行〜第3頁左上欄第4行)と記載されており、上記記載によれば、送信装置及び送信電力制御装置と、受信装置と、送受共用のアンテナとを有する地球局において、前記受信装置側に備えられたパイロット信号の受信電力を検出するパイロット受信装置とこのパイロット信号受信装置の受信電力の検出信号の増減に対応する制御信号を出力する送信制御装置と、該制御信号に応じて送信電力制御装置を制御し、前記アンテナから送信される衛星実効放射電力を増減させ通信衛星に到達する衛星実効放射電力を常に一定となるように送信出力制御することを特徴とする地球局が記載されている。
また、同じく引用した特開平3-256402号公報(以下「刊行物2」という)には、無線送信機の電力増幅器における電力制御に関して、「出力伝送線路5から結合伝送線路あるいは結合コンデンサ等により一部の電力を取り出し、これを検波ダイオード7により検波して、出力点10に出力モニタ電圧が得られる。この出力モニタ電圧は、抵抗分割器8に接続された後に、直流増幅段14で増幅され、比較器9に接続される。・・・前述した抵抗分割器8において、6〜8段階に分圧比を変化させれば、これに応じてVcont端子の電圧が変化して出力電力が変化する。一般に、従来の自動車電話送信器用電力増幅器は、電力効率の観点から出力段にC級増幅器が採用されている。すなわち、ドライバ段2(複数段で構成の場合もある。)は、AB級にバイアスされていて、その電源端子がVcont端子となっている制御段3、C級バイアスされている出力段4(複数段で構成の場合もある。)の3つの部分で構成されている。そして、出力段4の電源電圧Vccは一定である。ここで、このようなC級電力増幅器をリニア・アンプとして応用しようとする場合、電力効率の観点から増幅素子(例えば、GaAsFET、MOSFET、トランジスタ等)を飽和状態で使用することが重要である・・・この場合、電力制御のためのフィードバックを施すVcont端子は、第3図のようにC級の出力段とする場合がある。すなわち、従来Vcont端子としていたAB級制御段3は一定電圧Vccとなる。この方式の動作の場合、出力電力を絞るときにはC級段の電源電圧が低くなるので電源効率があがる。」(公報第1頁右下欄第4行〜第2頁右上欄第3行)と記載されており、この記載によれば、電力効率の観点から、出力段にトランジスタを飽和領域で動作するC級増幅器を用い、かつ電力制御信号(出力電力レベルに応じた電圧)に対応した直流電圧(Vcont端子の電圧)に変換する手段を設け、該電圧を該増幅器の電源に印加する送信用電力増幅手段が記載されている。
3.対比
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「アンテナ」、「地球局」、「パイロット受信装置」、「パイロット信号の受信電力の検出信号」、「衛星実効放射電力」、「通信衛星」は、それぞれ本願発明の「アンテナ」、「無線装置」、「受信レベル検波回路」、「受信レベル」、「実効放射電力」、「対向局」に相当し、また、刊行物1に記載された発明において、アンテナは送受共用であることから、送信用出力と受信用入力とを合成・分波する送受分波器がアンテナに接続されていることは当業者にとって自明の事項である。そして、本願発明の「Cクラス送信用高出力増幅器」と刊行物1に記載された発明の「送信装置及び送信電力制御装置」とは、「送信用高出力増幅手段」である点で差異がなく、また、本願発明の「この受信レベル検波回路の受信レベルの増減に対応した制御信号を出力する制御回路と、前記制御信号により直流出力電圧を増減する直流電圧変換器とを有し、前記直流電圧変換器の出力電圧を前記送信用高出力増幅器の電源に印加して前記アンテナから送信される実行放射電力を増減させ対向局に到達する実行放射電力を常に一定とするよう送信出力制御する」構成と刊行物1に記載された発明の「送信制御装置」とは、「この受信レベル検出回路の受信レベルの増減に対応した出力信号を送信用高出力増幅手段に印加して前記アンテナから送信される実行放射電力を増減させ対向局に到達する実行放射電力を常に一定とするよう送信出力制御する」構成である点で差異がなく、更に、本願発明の「受信用低雑音増幅器」と刊行物1に記載された発明の「受信装置」とは、「受信用増幅手段」である点で差異がない。したがって、両者は、「送信用高出力増幅手段と、受信用増幅手段と、前記送信用高出力増幅手段と前記受信用増幅手段入力とを合成・分波する送受分波器と、この送受分波器の出力に接続されたアンテナとを有する無線装置において、前記受信用増幅手段出力側に備えられた受信レベル検波回路とこの受信レベル検波回路の受信レベルの増減に対応した出力信号を送信用高出力増幅手段に印加して前記アンテナから送信される実行放射電力を増減させ対向局に到達する実行放射電力を常に一定とするよう送信出力制御することを特徴とする無線装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(1)送信用高出力増幅手段及び、受信レベルの増減に対応した出力信号を送信用高出力増幅手段に印加する構成に関して、本願発明では、送信用高出力増幅手段に、トランジスタを飽和領域で動作させるCクラス送信用高出力増幅器を用い、かつ、受信レベルの増減に対応した制御信号を出力する制御回路と、前記制御信号により直流出力電圧を増減する直流電圧変換器とを有し、前記直流電圧変換器の出力電圧をCクラス送信用高出力増幅器の電源に印加するよう構成されるのに対し、刊行物1に記載された発明では、そのような構成となっていない点
(2)受信用増幅手段として、本願発明では、低雑音増幅器を用いるのに対し、刊行物1に記載された発明では、低雑音増幅器を用いる点について記載されていない点
4.当審の判断
上記相違点(1)について検討する。
無線送信機の送信用電力増幅器を構成する際、電力効率を向上させることは、周知の課題であり、刊行物2には、電力効率の観点から、出力段にトランジスタを飽和領域で動作するC級増幅器を用い、かつ電力制御信号に対応した直流電圧に変換する手段を設け、該電圧を該増幅器の電源に印加する送信用電力増幅手段が記載されている。よって、刊行物1に記載された発明において、上記周知の課題に対処するため、送信電力制御に上記送信用電力増幅手段を適用して、本願発明のように構成することは当業者が容易に想到し得たものである。
次に相違点(2)について検討する。
受信信号を低雑音特性の増幅器を用いて増幅することは、この種の無線装置においては周知慣用手段であるから、この相違点は格別のものでない。
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、刊行物1及び2に記載された発明及び周知慣用手段から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明及び周知慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2000-05-25 
結審通知日 2000-06-09 
審決日 2000-08-11 
出願番号 特願平4-146132
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 溝本 安展  
特許庁審判長 松野 高尚
特許庁審判官 近藤 聡
大塚 良平
発明の名称 無線装置  
代理人 京本 直樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ