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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1026280
審判番号 審判1996-12327  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-04-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-07-22 
確定日 2000-09-21 
事件の表示 平成 5年特許願第509619号「二重結合コンデンサを持つ多効用吸収冷凍装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 9月16日国際公開、WO93/18355、平成 6年 4月14日国内公開、特表平 6-503413]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、1992年8月27日(優先権主張1992年3月11日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1乃至18に係る発明は、平成8年8月21日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至18に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「1.二重結合コンデンサを持つ多効用吸収冷凍装置であって、第1、第2および第3発生装置、第1、第2および第3コンデンサ装置、蒸発装置、並びに吸収装置であって、それらが互いに作動するように結合され、前記第1、第2および第3コンデンサ装置が、それぞれ、前記第1、第2および第3発生装置から蒸発した冷却剤を受け取って該蒸発した冷却剤を凝縮するようにされた第1、第2および第3発生装置、第1、第2および第3コンデンサ装置、蒸発装置、並びに吸収装置と、前記第3発生装置にある含有冷却剤吸収溶液を第1冷却剤蒸発温度まで加熱する装置と、前記第3コンデンサ装置および第2発生装置と共に作動するように組合わされて、前記第2発生装置にある含有冷却剤吸収溶液を前記第1温度より低い第2冷却剤蒸発温度まで加熱する第1熱交換装置と、前記第2コンデンサ装置および第1発生装置と共に作動するように組合わされて、前記第1発生装置にある含有冷却剤吸収溶液に熱を供給する第2熱交換装置と、前記第3コンデンサ装置で凝縮された冷却剤からの熱を、前記第2熱交換装置により前記第1発生装置内の含有冷却剤溶液に供給された熱と組合わせて、該第1発生装置内の含有冷却剤溶液を前記第2温度よりも低い第3冷却剤温度まで加熱する熱移動手段であって、前記第3コンデンサ装置からの凝縮された冷却剤を、前記第2コンデンサ装置によって受けとられる前に前記第2発生装置からの蒸発冷却剤と組み合わせる手段を備える熱移動手段とを含む、ことを特徴とする多効用吸収冷凍装置。」
原査定の拒絶の理由において引用された特開昭60-162166号(昭和60年(1985)8月23日出願公開、以下、「引用例1」という。)には、「外部熱源を加熱源とする高温の高温再生器と、その高温再生器で発生した冷媒蒸気を後段の低温の再生器の溶液の加熱源として、それぞれ冷媒蒸気を発生させる低温および中温の複数の再生器と、凝縮器、蒸発器、吸収器、溶液熱交換器、溶液循環ポンプなどの機器と、これら吸収サイクルの作動機器を連結する配管とからなる多重効用吸収式冷凍装置において、熱媒を加熱する補助ボイラーを、前記低温および中温の複数の再生器の下方に配設し、当該補助ボイラーでの発生熱媒蒸気を前記低温および中温の複数の再生器の補助加熱源となしうるように、前記補助ボイラーと前記低温および中温の複数の再生器の少なくとも一つとを配管で接続したことを特徴とする多重効用吸収式冷凍装置。」(特許請求の範囲1.に記載された事項)に関して、
「水を冷媒とし、臭化リチウム水溶液等の塩類溶液を吸収剤とする吸収式冷凍剤置は、従来、配管等の流路内での吸収剤溶液(以下溶液という)の結晶析出を防止するため、運転を停止するときは、希釈運転を行って、雰囲気温度におれる結晶析出温度よりも薄い状態で停止している。そのため、起動時には、希釈した分の冷媒を発生させる必要がある。」(第2頁上段左欄第18行〜同右欄第4行)こと、
吸収式冷凍装置の成績係数COPは、「二重効用吸収式冷凍装置ではCOP2≒1.2 三重効用吸収式冷凍装置ではCOP3≒1.5〜1.8程度である。」(第2頁上段右欄第13行〜同第16行)こと、
「一般的な三重効用吸収式冷温水機の主要構成機器から説明を進める。第1図において、1は外部熱源に係る主加熱源14で加熱され冷媒蒸気を発生する高温再生器、2は高温再生器1の発生冷媒蒸気で加熱される中温再生器、3はその中温再生器2の発生冷媒蒸気で加熱される低温再生器であり、29,31はそれぞれ中温再生器2、低温再生器3の加熱蒸気導管、30,32はそれぞれ前記の中温再生器2、低温再生器3の凝縮水導管である。19,20は減圧用オリフィスである。」(第3頁下段左欄第第14行〜同右欄第4行)こと、
「4は凝縮器で、低温再生器で発生した冷媒蒸気を導管33で凝縮器4に導き、その冷媒蒸気を冷却水16で冷却して凝縮液化させている。」(第3頁下段右欄第5行〜同第7行)こと、
「5は蒸発器で、凝縮器4における液冷媒を導管34で蒸発器5に導き、管内を冷水15が流れる伝熱管群上に冷媒スプレポンプ10で前記液冷媒を散布し、冷媒を蒸発させるとともに冷水15を冷却して冷凍能力を提供するものである。」(第3頁下段右欄第8行〜同第12行)こと、
「6は吸収器で、蒸発器5で蒸発した冷媒蒸気を、前記3個の各再生器で濃縮された溶液に吸収させるものである。吸収器6の伝熱管内を冷却水16が流通して、前記濃溶液を冷却するとともに、冷媒蒸気吸収の際の吸収熱を奪う。」(第3頁下段右欄第13行〜同第17行)こと、
「吸収器6で冷却され、希釈された溶液は、溶液循環ポンプ11により、高温再生器1、中温再生器2、低温再生器3へ、それぞれ溶液供給管23,24,25で供給され、それぞれ濃縮されて溶液排出管26,27,28で排出された吸収器6に戻される。」(第3頁下段右欄第18行〜第4頁上段左欄第3行)こと、
「なお、各再生器の加熱熱量を節約するため、溶液交換器7,8,9が配設されている。」(第4頁上段左欄第4行〜同第5行)こと、
「以上のような三重効用吸収式冷温水機において、本実施例の装置では、中温再生器2および低温再生器3よりも下方に、補助ボイラーに係る真空蒸気ボイラー12を配設し、中温再生器2および低温再生器3にそれぞれ熱交換器35,36の入口側を前記真空蒸気ボイラー(以下補助ボイラーという)12の蒸気相部とそれぞれ熱媒蒸気導管37,38で連通し、前記熱交換器35,36の出口側を前記補助ボイラー12の液相部にそれぞれ凝縮水導管39,40によって連通している。」(第4頁上段左欄第6行〜同第16行)こと、
「補助加熱源13には、灯油、燃料ガスなどの燃焼熱を用いる。補助ボイラー12の熱媒としては、水が望ましい。」(第4頁上段左欄第20行〜同右欄第2行)こと、
「このような構成の三重効用吸収式冷温水機の動作を、まず冷房運転について説明する。起動時の立上げに際して、冷水15が蒸発器5の伝熱管内に通水され、冷却水16が凝縮器4、吸収器6のそれぞれの伝熱管内に通水される。主加熱熱源14、補助加熱熱源13の燃焼器に点火されて、高温再生器1の溶液および補助ボイラー12の熱媒(水)が加熱される。補助ボイラー12内の熱媒は沸騰して蒸発し、中温再生器2の溶液中に浸漬した熱交換器35、および低温再生器3の溶液に浸漬した熱交換器36へ、それぞれ熱媒蒸気導管37,38を介して導かれ、熱交換して凝縮液化する。その際の凝縮潜熱により、中温再生器2および低温再生器3の溶液が加熱される。なお、中温再生器2の溶液は高温再生器1で発生した冷媒の凝縮潜熱でも並列的に加熱されるので、溶液が沸点に立する時間が短縮される。」(第4頁上段右欄第3行〜同第19行)こと、
「定常運転に達していることが、サイクル内の温度、圧力のいずれかを検知することによって確認されると、補助ボイラー12の補助加熱源13の燃焼を停止させ、本実施例の装置は高いCOPを実現する三重効用吸収式冷凍サイクルとして動作する。」(第4頁下段左欄第12行〜同第17行)こと、
「このように本実施例によれば、冷房運転における起動立上げ時に、低温再生器3および中温再生器2を並列的に補助ボイラー12で加熱できるので、立上げ時間が短縮される。」(第4頁下段左欄第18行〜同第右欄第1行)こと、
が記載されている。
そして、図面の第1図には、三重効用吸収式冷温水機の冷房運転時のサイクル構成図が示されており、そこには、主加熱源14に加熱される高温再生器1の冷媒蒸気を加熱蒸気導管29を介して中温再生器2に導き、中温再生器2の溶液を高温再生器1で発生した冷媒蒸気の凝縮潜熱と補助加熱源13を燃焼させて補助ボイラー12内で発生する熱媒蒸気の凝縮潜熱とで加熱し、加熱後の凝縮された高温再生器2の冷媒蒸気は、凝縮水導管30、減圧用オリフィス20を経て、中温再生器2で発生した冷媒蒸気と加熱蒸気導管31において混合し、この加熱蒸気導管31で低温再生器3を加熱するとともに、補助加熱源13を燃焼させて補助ボイラー12内で発生した熱媒蒸気にても加熱し、その後、中温再生器2の冷媒蒸気は、凝縮水導管32から三方弁18、減圧用オリフィス19を介して低温再生器3から発生する冷媒蒸気と混合して凝縮器4に導かれものが示されている。
同じく、特開平3-152362号公報(平成3年(1991)6月28日出願公開、以下、「引用例2」という。)には、三重効用吸収冷凍機に関して、図面とともに、「高温発生器4では、外部熱源15により加熱されて溶液の濃縮が行われ、この際発生する冷媒蒸気は、管27から中温発生器5の加熱側に導かれる。一方濃縮された溶液は、管22から高温熱交換器9の加熱側を通って冷やされてから、管23より中温発生器5に導かれる。中温発生器5では、前記した高温発生器4で発生する冷媒蒸気により加熱されて、さらに濃縮されて、管24より中温熱交換器8の加熱側を通り、希溶液を加熱して、管25より低温発生器6に導入される。また、中温発生器5で発生する冷媒蒸気は、高温発生器4で発生し中温発生器5の加熱側を通った冷媒蒸気と一緒になって、低温発生器6の加熱側を通って凝縮器3に導入される。そして、中温熱交換器8の加熱側を通って、低温発生器6に導入された濃溶液は、さらに加熱・濃縮されて濃溶液となって、管26より低温熱交換器7の加熱側を通って希溶液を加熱したのち、吸収器2に入る。吸収器2では、冷却水16により冷却されて冷媒を吸収し希釈されて希溶液となり、吸収ポンプ13により溶液ラインを循環する。低温発生器6で発生した蒸気は凝縮器3に導かれて冷却水17により冷却されて凝縮する。凝縮器3の冷媒は管29より蒸発器1に導かれ、ここで、冷水18から熱を奪い冷凍効果を発揮して、蒸発する。」(第2頁下段右欄第6行〜第3頁上段左欄第12行)ことが記載されている。
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比し、検討する。
上記引用例1には、吸収式冷凍装置において成績係数COPについて、二重効用吸収式冷凍装置ではCOP2≒1.2であるのに対して、三重効用吸収式冷凍装置では、COP3≒1.5〜1.8であるとの記載からして、三重効用式冷凍装置の熱効率が高いことは公知であるといえる。そして、
(イ)引用例1に記載された「多重効用吸収式冷凍装置」という用語自体は、単に表現上に差異があるだけで、本願発明の「多効用吸収冷凍装置」と差異がないものであるし、
(ロ)引用例1に記載された「冷媒」は、蒸発器5に導かれて蒸発し冷水15を冷却するものであるから、本願発明の「冷却剤」に相当し、
(ハ)引用例1に記載された「吸収剤溶液」あるいは「溶液」は、加熱されて冷媒蒸気を発生し、溶液自身は冷媒を吸収する溶液を濃縮し、吸収剤の濃溶液となるものであるから、本願発明の「含有冷却剤吸収溶液」に相当し、
(ニ)引用例1に記載された「再生器」は、臭化リチウム水溶液等の塩類溶液を吸収剤とし、この吸収剤に冷媒としての水を吸収させた吸収剤溶液を加熱して冷媒蒸気を発生させるものであるから、本願発明の「発生装置」に相当し、
(ホ)引用例1に記載された「主加熱源14」は、高温再生器1内の溶液を冷媒蒸発温度まで加熱し、冷媒蒸気の発生と冷媒の吸収剤溶液を濃縮させるものであるから、本願発明の第3発生装置にある含有冷却剤吸収溶液を第1冷却剤蒸発温度まで「加熱する装置」に相当し、
(ヘ)引用例1に記載された「高温再生器1」は、主加熱源14により冷却剤蒸発温度まで加熱されるものであるから、本願発明の含有冷却剤吸収溶液を第1冷却剤蒸発温度まで加熱する装置で加熱される「第3発生装置」に相当し、
(ト)引用例1に記載された「中温再生器2」は、高温再生器1で発生した冷媒蒸気の凝縮潜熱による加熱と、補助加熱源13によって発生した熱媒を熱交換器35に送り、熱媒の凝縮潜熱による加熱とによって冷媒の吸収剤溶液を加熱し、冷媒蒸気の発生と冷媒の吸収剤溶液の濃縮を行うものであるから、本願発明の含有冷却剤吸収溶液を加熱する「第2発生装置」に相当し、
(チ)引用例1に記載された「低温再生器3」は、中温再生器2を経た冷媒蒸気の凝縮潜熱による加熱と中温再生器2の冷媒の凝縮水とによる加熱と、さらに、補助加熱源13によって発生した熱媒を熱交換器36に送り、熱媒の凝縮潜熱による加熱とを利用して、冷媒の吸収剤溶液を加熱し、冷媒蒸気の発生と冷媒の吸収剤溶液の濃縮を行っているものであるから、本願発明の含有冷却剤吸収溶液を加熱する「第1発生装置」に相当し
(リ)引用例1に示された「加熱蒸気導管29と凝縮水導管30とに接続された中温再生器2内の管」は、加熱蒸気導管29からの冷媒蒸気の凝縮潜熱で溶液を加熱し、その冷媒蒸気は凝縮水となって凝縮水導管30から出ていくものであるから、該中温再生器2内の管は、コンデンサを形成しているといえるから、本願発明の「第3コンデンサ装置」に相当し、
(ヌ)引用例1に示された「加熱蒸気導管31と凝縮水導管32とに接続された低温再生器3内の管」も、冷媒蒸気のコンデンサを形成しているものといえるから、本願発明の「第2コンデンサ装置」に相当し、
(ル)引用例1に示された上記「中温再生器2内の管と低温再生器3内の管」は、高温再生器1で発生した冷媒蒸気の凝縮潜熱を利用して溶液を加熱し、その冷媒蒸気は凝縮水となるものであるから、本願発明でいうところの「二重結合コンデンサ」ということができるし、
(オ)引用例1に記載された冷却水16を配管された「凝縮器4」は、本願発明の「第1コンデンサ」に相当し、
(ワ)引用例1に示された上記「中温再生器2内の管」の管内を流れる冷媒蒸気は、中温再生器2の冷媒の吸収剤溶液を加熱し熱交換するものであるから、本願発明の「第1熱交換装置」に相当し、
(カ)引用例1に示された上記「低温再生器3内の管」の管内を流れる冷媒蒸気は、低温再生器3の冷媒の吸収剤溶液を加熱し熱交換するものであるから、本願発明の「第2熱交換装置」に相当し、
(ヨ)引用例1に示されている「中温再生器2から出た凝縮水導管30と減圧オリフィス20を通った冷媒の凝縮水と中温再生器2から発生した冷媒蒸気とを合わせて加熱蒸気導管31から低温再生器3に供給する」構成は、本願発明の「第3コンデンサ装置からの凝縮された冷却剤を、前記第2コンデンサ装置によって受けとられる前に前記第2発生器からの蒸発冷却剤と組み合わせる手段」に相当するものであるし、
(タ)引用例1に記載された「蒸発器5」、「吸収器6」は、それぞれ、表現上に差異があるだけで、本願発明の「蒸発装置」、「吸収装置」に相当するものといえる。
してみると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、
「二重結合コンデンサを持つ多効用吸収冷凍装置であって、第1、第2および第3発生装置、第1、第2および第3コンデンサ装置、蒸発装置、並びに吸収装置であって、それらが互いに作動するように結合され、前記第1、第2および第3コンデンサ装置が、それぞれ、前記第1、第2および第3発生装置から蒸発した冷却剤を受け取って該蒸発した冷却剤を凝縮するようにされた第1、第2および第3発生装置、第1、第2および第3コンデンサ装置、蒸発装置、並びに吸収装置と、前記第3発生装置にある含有冷却剤吸収溶液を第1冷却剤蒸発温度まで加熱する装置と、前記第3コンデンサ装置および第2発生装置と共に作動するように組合わされて、前記第2発生装置にある含有冷却剤吸収溶液を第2冷却剤蒸発温度に加熱する第1熱交換装置と、前記第2コンデンサ装置および第1発生装置と共に作動するように組合わされて、前記第1発生装置にある含有冷却剤吸収溶液に熱を供給する第2熱交換装置と、前記第3コンデンサ装置で凝縮された冷却剤からの熱を、前記第2熱交換装置により前記第1発生装置内の含有冷却剤溶液に供給された熱と組合わせて、該第1発生装置内の含有冷却剤溶液を第3冷却剤蒸発温度に加熱する熱移動手段であって、前記第3コンデンサ装置からの凝縮された冷却剤を、前記第2コンデンサ装置によって受けとられる前に前記第2発生装置からの蒸発冷却剤と組み合わせる手段を備える熱移動手段とを含む、ことを特徴とする多効用吸収冷凍装置。」
において一致しているものと認められる。
しかし、次の点で相違しているものと認められる。
(1)第2発生装置にある含有冷却剤吸収溶液を加熱する第2冷却剤蒸発温度が、本願発明においては、第1熱交換装置によって第1温度より低い第2冷却剤蒸発温度まで加熱した温度であるのに対して、引用例1に記載された発明は、第1熱交換装置による加熱に加えて、補助加熱源13によって発生した熱媒を熱交換器35に送り、その熱媒の凝縮潜熱による加熱をも利用して加熱した温度であって、冷却剤蒸発温度について第1温度との高低が示されていない点。
(2)第1発生装置内の含有冷却剤溶液を加熱する第3冷却剤蒸発温度が、本願発明においては、第2熱交換装置によって第2温度よりも低い第3冷却剤温度まで加熱した温度であるのに対して、引用例1に記載された発明は、第2熱交換装置による加熱に加えて、補助加熱源13によって発生した熱媒を熱交換器36に送り、その熱媒の凝縮潜熱による加熱をも利用して加熱した温度であって、冷却剤蒸発温度について第2温度との高低が示されていない点。
で相違しているものと認める。
そこで、この相違点を検討する。
上記刊行物2に記載されているように、三重効用吸収冷凍機において、高温発生器4によって発生した冷媒蒸気のみにより、中温発生器5の溶液を加熱した後、さらに、低温発生器6にも送り、低温発生器6の溶液をも加熱するようにすることは、公知の技術であるし、この冷媒蒸気の流れから中温発生器5の加熱温度が高温発生器4の加熱温度より低くなること、さらに、低温発生器6の加熱温度が中温発生器5の加熱温度より低くなることは、容易に理解し得るところであるし、各発生器には、その加熱温度に応じた名称が付けられているところでもある。そして、上記引用例1に記載された補助加熱源13における燃焼による加熱は、多重効用式冷凍装置の起動時の立ち上げ時間の短縮を図るためのもであり、定常運転に達した場合には、「補助ボイラー12の補助加熱源13の燃焼を停止させ、本実施例の装置は高いCOPを実現する三重効用式冷凍サイクルとして動作する。」と記載があるように、起動時に短縮動作を必要しない場合には省略し得るものであることは容易に理解し得るところでるから、第2発生装置の含有冷却剤吸収溶液を第1熱交換器によって第2冷却剤蒸発温度まで加熱すること、および第1発生装置の含有冷却剤吸収溶液を第2熱交換器によって第3冷却剤蒸発温度まで加熱することは、上記引用例2に記載された構成を考慮すれば、当業者が容易に設計変更し得る程度のものである。この引用例1においても高温再生器1、中温再生器2、低温再生器3と記載されているように各再生器の名称に応じた温度に加熱されるものであるから、第2冷却剤蒸発温度が第1冷却剤蒸発温度より低いこと、第3冷却剤蒸発温度が第2冷却剤蒸発温度より低いことは明らかである。
したがって、上記相違点(1)および(2)の本願発明の構成は、格別の構成とは認められない。
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用例1および2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-04-06 
結審通知日 2000-04-18 
審決日 2000-05-02 
出願番号 特願平5-509619
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上原 徹  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 櫻井 康平
冨岡 和人
発明の名称 二重コンデンサ結合による三重効果を持つ吸収冷却剤装置  
代理人 木村 博  
代理人 山崎 行造  

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