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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04B
管理番号 1026406
審判番号 審判1995-8461  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-09-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1995-04-27 
確定日 2000-10-11 
事件の表示 平成 1年特許願第343200号「木造大スパンパネル工法」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 9月 4日出願公開、特開平 3-202521]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 本願の請求項1に係る発明
本願は、平成1年12月28日の特許出願であって、その請求項1に係る発明は、平成7年5月23日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されているつぎのとおりのものと認める。
「【請求項1】下記の工程から構成されていること特徴とする木造大スパンパネル工法。
第1工程〜基礎(2)は柱部分に大きな支持力を負担させるので、鉄筋で補強すること。
第2工程〜土台(3)は120m/m角材を用い、内部土台には梁(4)を用い、アンカーボルト(5)にて基礎と接合すること。
第3工程〜2階の載らない部分に配設される柱(6)は集成材で構成され、かつ、この柱(6)の所定個所には、先ず、梁受金物(7)をボルトや釘にて取付後、これを土台上に起立させ、当該土台との接合は、柱脚金物(8)にボルト締めをし、また、2階の載る部分に配設される柱は、全て集成材による通柱(6A)とし、この通柱の所定箇所には、先ず、梁受金物(7)をボルトや釘にて取付後、これを土台上に起立させ、当該土台との接合は柱脚金物(8)でボルト締めすること。
第4工程〜2階の根太受金物(10)を取付けた2階床梁(9)を吊上げ、通柱(6A)の梁受金物(7)に連結してボルト、釘にて接合すること。
第5工程〜根太受金物(10)にツーバイフオー部材または木質I型梁でなる根太(11)を組込み釘打ちにて取付けたのち、構造用合板(12)を敷き、建方完了後、釘と接着剤にて根太(11)に止付けて2階床組を構成すること。
第6工程〜小屋梁(13)を吊上げ、柱に取付けた梁受金物(7)にボルト、釘止めにて接合したのち、ツーバイフオー部材、または木質I型梁にて野地タル木組み(14)をし、屋根組みを行なったのち、野地タル木組み(14)の上に野地合板(15)を釘打ちにて止付け小屋組を構成すること。
第7工程〜基礎内における土間の地表面(2A)にはポリエチレンフィルム(2B)を敷き詰め密閉した後、この上面に火山灰あるいは砂(2C)を所定厚さに積層養生させ、更にこの上面に砕石あるいは玉砂利(2D)を敷き詰めること。
第8工程〜土台の上の外側にツーバイフオー部材または木質I型梁でなる側根太(16)を釘打ちにて取付け、側根太(16)、端根太(16A)と同寸法の根太(16B)を所定の個所に釘打ちにて取付け、根太(16B)に断熱材受を取付け、グラスウール等により断熱施工をし、構造用合板(17)を外壁面まで貼り、プラットフォーム床とすること。
第9工程〜ツーバイフオー部材によって製作された外壁パネル(18)を床と梁の間に取付けること。
第10工程〜外部開□部に、塩ビ製,木製またはアルミ製等のサッシ(26)を取付けること。
第11工程〜土台、梁等外壁パネル以外の部分の通気層を連通させるため、透湿性を有する構造用合板とビーズ発泡によって通気性を確保する凹凸が形成されたボード(24)を貼ること。
第12工程〜外壁パネル(18)の内側に、防湿層を貼り、厚さ12m/mのプラスターボード(19)を施工すること。
第13工程〜天井に厚さ12m/mのプラスターボード(21)を先に全て貼ること。
第14工程〜間仕切壁部にあらかじめ工場でツーバイフオー部材によって製作された内壁パネル(22)を床と天井の間に取付け、プラスターボード(22A)を貼ること。」

第2 引用刊行物
1 当審での拒絶の理由
当審での拒絶の理由には、以下の刊行物が引用されている。
刊行物1、「図解ツーバイフオーの詳細」(日本ツーバイフオー研究会著、株式会社彰国社、昭和55年5月10日発行、第12、14、15、16、17、20、24、46、54、59、73、74頁)
刊行物2、特開昭63-35933号公報
刊行物3、特開昭54-60717号公報
刊行物4、特開平1-157475号公報
刊行物5、特開昭61-98845号公報

2 刊行物1
刊行物1には、以下の、(a)〜(k)からなる、木造ツーバイフオー工法の発明が記載されているものと認められる。
(a)、第12頁に、基礎に鉄筋を入れる場合の一例として、基礎の補強に鉄筋を使用した例が、記載又は図示されている。
(b)、第12頁に、土台に404を使用する場合、土台に204、206、208を使用する場合、布基礎のアンカーボルト位置が、さらに、基礎にアンカーボルトを使用したことが、記載又は図示されている。
(c)、第15、20頁に、たて枠が、第16、17頁に、梁受、梁受け金物が、第16、20、24頁に、帯金物が、記載又は図示されている。
(d)、第14、16頁に根太受け金物が、第14、15、17頁に根太、床下張り合板、2階の床が、記載又は図示されている。
(e)、第46頁に、たるき、入母屋屋根小屋伏図、構造用合板、パーテイクルボード、釘、入母屋屋根の釘打ち表が、記載又は図示されている。
(f)、第12頁に、(土間に対して採用した)防湿フイルム、乾燥砂が、記載又は図示されている。
(g)、第14、15頁に、側根太は土台に釘打ち、側根太、端根太、床、床下張りは…構造用合板が、第54頁に、土台、側根太、断熱材受け金具、無機質繊維断熱材、床下張りが、記載又は図示されている。
(h)、第73、74頁に、アルミニウム合金製サッシ、サッシを開口に取付けた例が、記載又は図示されている。
(i)、第24頁に、防水紙、厚12以上の硬質木片セメント板、外壁下張り材が、第59頁に、壁の内装下地材料は、厚さ12mm以上のせっこうボードが、記載又は図示されている。
(j)、第59頁に、天井…の内装下地材料は、厚さ12mm以上のせっこうボード、天井張りに用いるせっこうボードが、記載又は図示されている。
(k)、第24頁に、壁に防水紙、硬質木片セメント板を貼った例が、第59頁に、壁の内装下地材料は、せっこうボードが、記載又は図示されている。

3 刊行物2
刊行物2には、「第4図は本発明の接合方法を用いて柱と梁を接合した状態を示す斜視図であるが、梁の当接板4が柱に設けた傾斜接合面3に当接して密着し、自動結合装置700が柱の傾斜接合面に固着されている係合鋲7に結合し下フランジのボルト孔9が受け板5に設けられた係合鋲8に嵌合し、係合鋲8の頭部に設けたもどり止め装置によって係止されている状態を示している。本発明の接合方法を用いて、3体の梁を2本の柱の間に接合しようとする状況を第7図に示す。第7図は2本の柱100A、100Bを所定位置に立て、各柱にはそれぞれ3箇所の梁接合部を設け、梁200A…を柱…の間に架設接合しようとする状況を示す立面図である。柱…は梁との接合部を第1図に示す形状に製作し、梁…は、その両端を第2図、第3図に示す形状に製作しておく。第7図において柱の梁との接合部に設けられている誘導板6の上部縁60から柱の上部に設けたロープ掛け61にロープ66を張りわたしておく。梁…を第7図に示すようにワイヤロープ86で連結して吊り上げ、…接合部に向かって降下させて行くと、梁の下フランジ21は誘導板6に誘導され、梁の両端面の当接板4は傾斜接合面3にそれぞれ誘導されて梁全体は所定位置に据え付けられる。据え付け直前には自動結合装置700が作動して係合鋲7に結合し、ボルト孔9が係合鋲8に嵌合してもどり止め80に係止され、梁の接合が完了する。」(第2頁下右欄第6行〜第3頁上左欄第17行)が記載されている。

4 刊行物3
刊行物3には、「この小屋組(2)が載設される外壁構造材(7)は柱、及び外壁パネル材で構成されたものであり、その上面には数カ所において第2図に示すようなジヨイント金具(3)が固定される。」(第1頁右欄第5行〜第8行)、「トラス(1)の軒側端部(6)をジヨイント金具(3)の両縦片(5)(5)間のトラス固定片(8)上に載置する。すなわちあらかじめ地上でトラス(1)を接合して小屋組(2)を形成した後、この小屋組(2)をクレーンで吊り上げ、トラス(1)の軒側端部(6)を各ジヨイント金具(3)上に載せるわけである。この時、トラス固定片(8)は両縦片(5)(5)間の低い位置にあるため軒側端部(6)は両縦片(5)(5)間に嵌まり込む。このように仮設して小屋組(2)の位置を調整した後、トラス(1)の水平材(9)にボルト(15)を通してジヨイント金具(3)のトラス固定片(8)に固定する。図中(16)は外壁パネル材の外装側、(17)は内装側を示す。」(第2頁左欄第2行〜第14行)が記載されている。

5 刊行物4
刊行物4には、「コンクリート、モルタル、セメントペースト等の水硬性物質に気泡を混入し…発泡ビーズからなる…高断熱性軽量気泡コンクリート。…建築物の側面、床面、天井等の壁体には…断熱性を有する壁体が採用される。」(第1頁下左欄第5行〜第20行)、「発泡樹脂、或いは発泡ゴム材等からなり、ビーズ状、その他の…形態からなる。」(第2頁上右欄第15行〜第17行)が記載されている。

6 刊行物5
刊行物5には、「有機弾性発泡体ビーズを含有させることを特徴とする建設資材。…本発明は、建設資材、…又は壁材に関するものである。」(第1頁下左欄第5行〜第11行)が記載されている。

第3 対比
1 一致点
本願請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、以下の点において、一致する。
第1工程、刊行物1の(a)は、第1工程の「基礎(2)は、鉄筋で補強すること。」に相当するものと認める。
第2工程、刊行物1の(b)は、第2工程の「土台(3)は、角材を用い、アンカーボルト(5)にて基礎と接合すること。」に相当するものと認める。
第3工程、刊行物1の(c)は、第3工程の「2階の載らない部分に配設される柱(6)を土台状に起立させ、当該土台との接合は柱脚金物(8)で行うこと。」に相当するものと認める。
第5工程、刊行物1の(d)は、第5工程の「根太受金物(10)に、根太(11)を組込み、取付けたのち、構造用合板(12)を敷き、2階床組を構成すること。」に相当するものと認める。
第6工程、刊行物1の(e)は、第6工程の「野地タル木組み(14)をし、屋根組みを行ない、野地タル木組み(14)の上に野地合板(15)を釘打ちにて止付け、小屋組を構成すること。」に相当するものと認める。
第7工程、刊行物1の(f)は、第7工程の「基礎内における土間にはポリエチレンフィルム(2B)を敷き詰め、この上面に砂を所定厚さに積層させること。」に相当するものと認める。
第8工程、刊行物1の(g)は、第8工程の「土台の上に、側根太(16)を釘打ちにて取付け、根太(16B)を所定の個所に取付け、根太(16B)に断熱材受を取付け、グラスウール等により断熱施工をし、構造用合板(17)を貼り、床とすること。」に相当するものと認める。
第10工程、刊行物1の(h)は、第10工程の「外部開□部に、アルミ製のサッシ(26)を取付けること。」に相当するものと認める。
第12工程、刊行物1の(i)は、第12工程の「外壁の内側に防湿層を貼り、厚さ12m/mのプラスターボード(19)を施工すること。」に相当するものと認める。
第13工程、刊行物1の(j)は、第13工程の「天井に厚さ12m/mのプラスターボード(21)を、貼ること。」に相当するものと認める。
第14工程、刊行物1の(k)は、第14工程の「壁部に、プラスターボード(22A)を貼ること。」に相当するものと認める。

以上からみて、本願請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明とは、次の点で一致していると認められる。

「下記の工程から構成されている木造工法。
第1工程〜基礎は鉄筋で補強すること。
第2工程〜土台は角材を用い、アンカーボルトにて基礎と接合すること。
第3工程〜2階の載らない部分に配設される柱を土台状に起立させ、当該土台との接合は柱脚金物で行うこと。
第5工程〜根太受金物に根太を組込み、取付けたのち、構造用合板を敷き、2階床組を構成すること。
第6工程〜野地タル木組みをし、屋根組みを行い、野地タル木組みの上に野地合板を釘打ちにて止付け小屋組を構成すること。
第7工程〜基礎内における土間にはポリエチレンフィルムを敷き詰め、この上面に砂を所定厚さに積層させること。
第8工程〜土台の上に、側根太を釘打ちにて取付け、根太を所定の個所に取付け、根太に断熱材受を取付け、グラスウール等により断熱施工をし、構造用合板を貼り、床とすること。
第10工程〜外部開□部に、アルミ製のサッシを取付けること。
第12工程〜外壁の内側に、防湿層を貼り、厚さ12m/mのプラスターボードを施工すること。
第13工程〜天井に厚さ12m/mのプラスターボードを、貼ること。
第14工程〜壁部に、プラスターボードを貼ること。」

2 相違点
両者を対比すると、本願請求項1に係る発明の以下の相違点1〜15における「 」内の記載の点が、刊行物1に記載された発明中に明確な開示がなく、この点において、両者は相違する。
相違点1
本願請求項1に係る発明の対象が木造「大スパンパネル」工法である点。
相違点2
第1工程の、基礎は「柱部分に大きな支持力を負担させるので」、鉄筋で補強すること。
相違点3
第2工程の、土台は「120m/m」角材を用い、「内部土台には梁(4)を用い」、アンカーボルトにて基礎と接合すること。
相違点4
第3工程の、2階の載らない部分に配設される柱(6)は「集成材で構成され、かつ、この柱(6)の所定個所には、先ず、梁受金物(7)をボルトや釘にて取付後」、これを土台上に起立させ、当該土台との接合は、柱脚金物(8)に「ボルト締めをし、また、2階の載る部分に配設される柱は、全て集成材による通柱(6A)とし、この通柱の所定箇所には、先ず、梁受金物(7)をボルトや釘にて取付後、これを土台上に起立させ、当該土台との接合は柱脚金物(8)でボルト締めすること。」
相違点5
第4工程の、「2階の根太受金物(10)を取付けた2階床梁(9)を吊上げ、通柱(6A)の梁受金物(7)に連結してボルト、釘にて接合すること。」
相違点6
第5工程の、「ツーバイフオー部材または木質I型梁でなる」根太(11)を組込み「釘打ちにて」取付けたのち、「建方完了後、釘と接着剤にて根太(11)に止付けて」2階床組を構成すること。
相違点7
第6工程の、「小屋梁(13)を吊上げ、柱に取付けた梁受金物(7)にボルト、釘止めにて接合したのち、ツーバイフオー部材、または木質I型梁にて」野地タル木組み(14)をし、屋根組みを「行なったのち」、野地タル木組み(14)の上に野地合板(15)を釘打ちにて止付け小屋組を構成すること。
相違点8
第7工程の、土間の「地表面(2A)には」ポリエチレンフィルム(2B)を敷き詰め「密閉した後」、この上面に「火山灰あるいは」砂(2C)を所定厚さに積層「養生させ、更にこの上面に砕石あるいは玉砂利(2D)を敷き詰めること。」
相違点9
第8工程の、土台の上の「外側にツーバイフオー部材または木質I型梁でなる」側根太(16)を釘打ちにて取付け、「側根太(16)、端根太(16A)と同寸法の」根太(16B)を所定の個所に「釘打ちにて」取付け、構造用合板を「外壁面まで」貼り、「プラットフォーム」床とすること。
相違点10
第9工程の、「ツーバイフオー部材によって製作された外壁パネル(18)を床と梁の間に取付けること。」
相違点11
第10工程の、外部開口部に、「塩ビ製,木製等の」サッシを取付けること。
相違点12
第11工程の、「土台、梁等外壁パネル以外の部分の通気層を連通させるため、透湿性を有する構造用合板とビーズ発泡によって通気性を確保する凹凸が形成されたボード(24)を貼ること。」
相違点13
第12工程の、外壁「パネル(18)」の内側に防湿層を貼り、プラスターボードを施工すること。
相違点14
第13工程の、天井に、プラスターボードを、「先に全て」貼ること。
相違点15
第14工程の、壁部が「間仕切壁部」であって、「間仕切壁部にあらかじめ工場でツーバイフオー部材によって製作された内壁パネル(22)を床と天井の間に取付け」、プラスターボードを貼ること。

第4 相違点に対する検討
1 相違点1について
刊行物1のツーバイフオー工法も木造工法に関するものであり、通常、ツーバイフオー工法においてパネルは多数採用されており、又、在来の木造建築工法としての軸組工法においても、パネルを用いることがあることは広く知られている周知の技術手段(必要ならば、特開昭57-201442号公報、実願昭54-116215号(実開昭56-32718号)のマイクロフイルム、実願昭60-197147号(実開昭62-103909号)のマイクロフイルムを参照のこと)である。このような木造工法を採用する中で、大スパンパネルを採用するようなことは、建築物の設計において適宜に選択することのできる事項に過ぎず、必要に応じて容易になし得た程度のことである。

2 相違点2について
柱を用いた構造では柱部分の基礎に大きな支持力がかかることは当然のことで、刊行物1に開示されている、基礎を鉄筋で補強するのに際し、「柱部分に大きな支持力を負担させる」べく行うことは、建築物の構造上極めて当然なことに過ぎず、格別の困難性は見いだし得ない。

3 相違点3について
土台(3)として「120m/m」角材を用いること、さらに「内部土台には梁(4)を用い」てアンカーボルトにて基礎と接合するようなことは、建物の強度等を考慮して検討すべき事項に過ぎず、120m/m角材は建築物の材料として極めて普通なものであること、さらにアンカーボルトにて基礎と接合する点が刊行物1に記載があることからすると、当業者が必要に応じて容易になし得た程度のことにすぎない。

4 相違点4について
刊行物1の第15、20頁に、「2階の載らない部分に配設される柱(6)」に対応する構成としてのたて枠が、刊行物2に、「2階の載る部分に配設される通柱(6A)」に対応する構成としての柱100が開示されている。又、柱を集成材で構成することは、広く行われている周知の技術手段(必要ならば、特開昭49-41510号公報、特開昭54-2308号公報、実願昭53-110281号(実開昭55-27395号)のマイクロフイルムを参照のこと)である。さらに、「梁受金物(7)」について、刊行物1の第16、17頁に梁受、梁受け金物が開示され、又、刊行物2に受け板5と誘導板6として、「通柱の所定個所に、梁受金物(7)を取付ける点」が開示されている。そして、刊行物1の第16、20、24頁に、「柱脚金物」に対応する構成としての帯金物が開示されている。
これらの「2階の載らない部分に配設される柱」、「2階の載る部分に配設される通柱」、「梁受金物」、そして「柱脚金物」に対して、柱及び通柱を集成材で構成するとともに、「柱(6)の所定箇所には、先ず、梁受金物(7)をボルトや釘にて取付後」、柱を土台上に起立させ、当該土台との接合は、柱脚金物(8)に「ボルト締めをし、(2階の載る部分に配設される)通柱(6A)の所定箇所には、先ず、梁受金物(7)をボルトや釘にて取付後、通柱を土台上に起立させ、当該土台との接合は、柱脚金物(8)でボルト締めをすること」のようなことは、上記柱や各種金具を利用して柱を土台上に起立させて接合するにあたり、当業者であれば当然に考慮すべき事項であり、このようなことは、刊行物1及び2に記載されたもの、さらに上記周知の技術手段に基いて当業者が容易になし得た程度のことに過ぎない。

5 相違点5について
「2階の根太受金物(10)」は、刊行物1の第14、16頁に根太受け金物又は根太-端根太金物として、「2階床梁(9)」は、同第14、15頁に大引又は合せ梁として開示されている。又、刊行物2において、梁200…をワイヤロープ86で連結して吊り上げ、…接合部に向かって降下させて…梁の両端面の当接板4は傾斜接合面3にそれぞれ誘導されて梁全体は所定位置に据え付けられるとの記載がある。又、ボルト、釘にて接合するようなことは慣用手段にすぎない。
刊行物1に開示された「2階の根太受金物を取付けた2階床梁」に対して、刊行物2に開示されているような吊上げ手段を採用して、第4工程におけるように構成することは、当業者であれば格別の困難性を伴うことなくなし得た程度のことであり、このようなことは、刊行物1及び2に記載されたもの、さらに上記慣用手段に基いて当業者が容易になし得た程度のことである。

6 相違点6について
刊行物1の第14、15、16頁には根太と2階の床が記載されており、又、「ツーバイフオー部材または木質I型梁」は、この種建築物の材料として極めて普通のものであり、これらを根太に用いることに格別の困難性はない。又、「釘と接着剤」も固着手段として広く用いられているものであり、さらに根太を組み込み取付けたのち、合板を敷き、建方完了後、2階床組を構成することも建築工事の作業順序としては当然に考慮すべき事項に過ぎない。
これらからみて、「ツーバイフオー部材または木質I型梁でなる」根太(11)を組込み「釘打ちにて」取り付けたのち、構造用合板を敷き、「建方完了後、釘と接着剤にて根太(11)に止付けて」2階床組を構成することは、容易になし得た程度のことにすぎない。

7 相違点7について
「小屋梁(13)」は、刊行物3に小屋組2として開示されており、「梁受金物(7)」については、刊行物1の第16、17頁に梁受、梁受け金物が開示され、さらに、刊行物3においてもジヨイント金具3が開示されている。又、「ツーバイフオー部材または木質I型梁」は、この種建築物の材料として極めて普通のものであり、これらで野地タル木組みをすることに格別の困難性はない。
そして、小屋梁を吊上げ、柱に取付けた金物にボルト、釘止めにて接合したのち、野地タル木組みをし、屋根組みを「行なったのち」、野地タル木組みの上に野地合板を釘打ちにて止付け小屋組を構成することは、建築の技術からみて、作業順序としては当然に考慮すべき事項である。
相違点7の点は、刊行物1及び3に記載されたものに基いて当業者が容易になし得た程度のことである。

8 相違点8について
火山灰、砂、砕石、玉砂利等は、建築物の材料として普通に利用されている材料であり、防湿効果や費用等により適宜選択して採用されるものにすぎず、又、刊行物1の第12頁には、防湿フィルム、砂利、乾燥砂が記載されており、「土間の地表面にポリエチレンフィルムを敷き詰め密閉した」こと、「火山灰あるいは砂を所定厚さに積層養生させた」こと、「この上面に砕石あるいは玉砂利を敷き詰めた」ようなことは、いずれも、刊行物1に記載されたものに基いて当業者が容易になし得た程度のことに過ぎない。

9 相違点9について
「ツーバイフオー部材または木質I型梁でなる」との点は、この種建築物の材料として極めて普通なものであり、これらで側根太(16)を形成し、土台の上の「外側に釘打ちにて取付ける」こと、「側根太(16)、端根太(16A)と同寸法の根太(16B)を所定の個所に釘打ちにて」取付け、構造用合板を「外壁面まで」貼り、「プラットフォーム」床とすることは、刊行物1の第14、15頁の根太及び床の記載に基いて当業者が容易になし得たことにすぎない。

10 相違点10について
第9工程の、「外壁パネル(18)をツーバイフオー部材によって製作したこと。」、及びこの「外壁パネル(18)を床と梁の間に取付けること。」はいずれも、周知の技術手段であり(必要ならば、「相違点1について」の項を参照のこと)、その周知の技術手段を刊行物1に記載されたものに適用することに格別の困難性は見いだし得ない。

11 相違点11について
「塩ビ製,木製等のサッシ」は、建築物の材料として、広く用いられているものにすぎない。又、先に取付けた外壁パネルの「外部」開口部に、(塩ビ製,木製またはアルミ製等の)サッシを取付けることは、この種建築物の施工の作業順序からみて当然に考慮すべき事項に過ぎない。

12 相違点12について
「透湿性を有する構造用合板」はこの種建築物の材料として極めて普通なものであって広く知られた周知の技術手段であり、又、「ビーズ発泡させたボード」は刊行物4及び5において公知の技術手段である。そして、木造建築物では腐食を防ぐため通気層を設けることは極めて当然なことであることを考慮すると、刊行物1に記載されたものに刊行物4及び5に記載されたもの、更に周知の技術手段を適用して、第11工程におけるように構成するようなことは当業者であれば容易になし得た程度のことに過ぎない。

13 相違点13について
外壁をパネルとすることは、この種建築物の材料として極めて普通なものであって広く知られた周知の技術手段である。刊行物1に記載されたものに周知の技術手段を適用して、第12工程におけるように構成するようなことは当業者であれば容易になし得た程度のことに過ぎない。

14 相違点14について
第13工程の、天井に、プラスターボード(21)を、「先に全て」貼ることは、刊行物1の第24頁のセメント板、又は、同第59頁のせっこうボードを貼るという技術からみて、作業順序を単に限定したにすぎず、しかもこのような作業順序は工事の進行状況や経済面等をも考慮して採用されるものであり、このような限定は当業者であれば格別の困難性を伴うことなくなし得た程度のことに過ぎない。

15 相違点15について
「あらかじめ工場でツーバイフオー部材によって製作された内壁パネル」は、この種建築物の材料として極めて普通なものであって広く知られた周知の技術手段であり、このようなパネルを間仕切として、壁部に「床と天井の間に取付け」、プラスターボード(22A)を貼るようなことは、刊行物1の第24頁、又は、同第59頁に、壁部にセメント板、せっこうボードを貼るという点が開示されていることを考慮すると、このようなことは刊行物1に記載されたもの及び上記周知の技術手段に基いて当業者が容易になし得た程度のことに過ぎない。

16 まとめ
本願請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、断片的には相違点1〜15があるものの、それら相違点に対する検討は上記のとおりであり、そして、全体として、本願請求項1に係る発明の効果も、刊行物1、2、3、4、5に記載された発明、及び、上記検討における周知の技術手段から当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別顕著のものとは認められない。

第5 むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1、2、3、4、5に記載された発明及び上記周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-07-14 
結審通知日 2000-07-28 
審決日 2000-08-10 
出願番号 特願平1-343200
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 憲子
藤枝 洋
発明の名称 木造大スパンパネル工法  
代理人 川成 靖夫  

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