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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16F
管理番号 1026412
審判番号 審判1998-5016  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-01-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-04-06 
確定日 2000-09-19 
事件の表示 平成 1年特許願第 45048号「流体充填弾性振動減衰装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 2年 1月17日出願公開、特開平 2- 11945]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成1年2月23日(パリ条約による優先権主張1988年6月28日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成9年10月8日付け、平成10年4月6日付け、平成10年5月6日付け及び平成10年12月24日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「エンジンのような振動発生部材をエンジンの支持フレームのような関連する支持部材から遮断するのに使用することができる環状ブッシングタイプの流体充填弾性振動減衰装置において、
剛性のある内側部材と、
前記内側部材と軸線方向に並行して配置されかつ前記内側部材の大部分を包囲する剛性のある外側ハウジングと、
前記内側部材と前記外側ハウジングとの間に配設され、第1の流体保持室を備えた振動吸収弾性体と、
前記弾性体と前記外側ハウジングとの間に実質上形成され、第1の流路を介して前記第1の流体保持室と連通する第2の流体保持室と、
前記装置の軸線と直交する方向へ動いて前記第1の流体保持室と前記第2の流体保持室との間の流体の流れを制御するように前記第1の流路に可動に取付けられ、かつ、動きの両端位置で前記第1の流体保持室と前記第2の流体保持室との間の実質上すべての流体の流れを遮断する剛性体と、
前記第1の流体保持室からの前記第2の流体保持室と連通しない第2の流路を提供する手段と、
前記第2の流体保持室と流体連通する第1のダイヤフラムとを備え、
前記第2の流路を提供する手段は、前記剛性体が前記第1の流体保持室と前記第2の流体保持室との間の流体の流れを遮断したときに、前記第1の流体保持室と流通連通する第1及び第2の室からなる第3の流体保持室を前記弾性体と前記外側ハウジングとの間に有し、
前記第2の流路を提供する手段は更に、前記弾性体に形成されて前記第1の室と流体連通する第2のダイヤフラムと、前記第1の流体保持室から前記第1の室へ通ずる第1の流体通路と、前記弾性体に形成されて前記第2の室と流体連通する第3のダイヤフラムと、前記第1の流体保持室から前記第2の室へ通ずる第2の流体通路とを有することを特徴とする流体充填弾性振動減衰装置。」
2.先願明細書
前置審査における平成11年2月8日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された実願昭62-123017号(実開昭64-27549号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、
ブッシュ径方向に入力される振動を防振する筒形の流体封入式防振ブシュに関し、
エンジンを含むパワーユニットを車体に対して支持するFF車用円筒形エンジンマウントであって、内筒金具10と、前記内筒金具10と軸線方向に並行して配置されかつ前記内側部材の大部分を包囲する外筒金具12と、前記内筒金具10と前記外筒金具12との間に配設され、受圧室36を備えたゴム弾性体14と、前記ゴム弾性体14と前記外筒金具12との間に実質上形成され、複数の通孔86を介して前記受圧室36と連通する副室76と、前記マウントの軸線と直交する方向へ動いて前記受圧室36と前記副室76との間の流体の流れを制御するように前記受圧室36に可動に取付けられ、かつ、動きの両端位置で前記受圧室36と前記副室76との間の実質上すべての流体の流れを遮断する可動板84と、前記受圧室36からの前記副室76と連通しない第2の流路を提供する手段と、前記副室76と流体連通する弾性薄膜72とを備え、前記第2の流路を提供する手段は、前記可動板84が前記受圧室36と前記副室76との間の流体の流れを遮断したときに、前記受圧室36と流通連通する平衡室38を前記ゴム弾性体14と前記外筒金具12との間に有し、前記第2の流路を提供する手段は更に、前記ゴム弾性体14に形成されて前記平衡室38と流体連通する弾性袋部26と、前記受圧室36から前記平衡室38へ通ずるオリフィス通路44とを有すること(第8頁第1行〜第12頁第17行、第16頁第11行〜第19頁第11行、第1〜3図、7及び8図参照)が記載されている。
3.対比・判断
本願発明と上記先願明細書等に記載された考案とを対比すると、先願明細書等に記載された「パワーユニット」は本願発明の「振動発生部材」に、以下同様に、「車体」は「関連する支持部材」に、「エンジンマウント」は「流体充填弾性振動減衰装置」に、「内筒金具10」は「剛性のある内側部材」に、「外筒金具12」は「剛性のある外側ハウジング」に、「受圧室36」は「第1の流体保持室」に、「ゴム弾性体14」は「振動吸収弾性体」に、「複数の通孔86」は「第1の流路」に、「副室76」は「第2の流体保持室」に、「可動板84」は「剛性体」に、「弾性薄膜72」は「第1のダイヤフラム」にそれぞれ相当すること、また、先願明細書等に記載された「平衡室38」、「弾性袋部26」及び「オリフィス通路44」並びに本願発明の「第1及び第2の室からなる第3の流体保持室」、「第2及び第3のダイヤフラム」及び「第1及び第2の流体通路」は、いずれも上記とは別の「流体保持室」、「ダイヤフラム」及び「流体通路」を構成するものであるから、両者は、エンジンのような振動発生部材をエンジンの支持フレームのような関連する支持部材から遮断するのに使用することができる環状ブッシングタイプの流体充填弾性振動減衰装置において、剛性のある内側部材と、前記内側部材と軸線方向に並行して配置されかつ前記内側部材の大部分を包囲する剛性のある外側ハウジングと、前記内側部材と前記外側ハウジングとの間に配設され、第1の流体保持室を備えた振動吸収弾性体と、前記弾性体と前記外側ハウジングとの間に実質上形成され、第1の流路を介して前記第1の流体保持室と連通する第2の流体保持室と、前記装置の軸線と直交する方向へ動いて前記第1の流体保持室と前記第2の流体保持室との間の流体の流れを制御するように前記第1の流路に可動に取付けられ、かつ、動きの両端位置で前記第1の流体保持室と前記第2の流体保持室との間の実質上すべての流体の流れを遮断する剛性体と、前記第1の流体保持室からの前記第2の流体保持室と連通しない第2の流路を提供する手段と、前記第2の流体保持室と流体連通する第1のダイヤフラムとを備え、前記第2の流路を提供する手段は、前記剛性体が前記第1の流体保持室と前記第2の流体保持室との間の流体の流れを遮断したときに、前記第1の流体保持室と流通連通する別の流体保持室を前記弾性体と前記外側ハウジングとの間に有し、前記第2の流路を提供する手段は更に、前記弾性体に形成されて前記別の流体保持室と流体連通するダイヤフラムと、前記第1の流体保持室から前記別の流体保持室へ通ずる流体通路とを有する点で一致し、
別の流体保持室、ダイヤフラム及び流体通路が、本願発明では、それぞれ2つずつ有するのに対し、先願明細書等に記載された考案では、それぞれ1つずつ有する点で一応相違する。
そこで、上記相違点について検討すると、
環状ブッシングタイプの流体充填弾性振動減衰装置において、流体保持室と流通連通するダイヤフラムを備えた室を2つとすることは、例えば、特開昭63-34339号公報及び実願昭61-100615号(実開昭63-6248号)のマイクロフィルムにも記載されているように周知の手段であること、また、本願発明と先願明細書等に記載された考案とでは、「コンパクトでかつ低コストに構成することができ、しかも周波数が高く、振幅の小さい振動を遮断するとともに、周波数が低く振幅の大きい振動を減衰することができる」という主たる効果において著しい差はないことより、上記相違点は、単なる周知の手段の付加であって、設計上の微差にすぎず、両者には、その構成において実質的な差異があるものではない。
なお、請求人は、平成11年8月19日付け意見書において、「剛性体40の変位によって第1の流体保持室28と第2の流体保持室30との間の流体の流れが遮断した場合において、種々の低周波振動に応じた防振効果を得ることができる」ことは、剛性体40と2つの室72,82とが組み合わされて得られる格別な効果である旨の主張をしているが、上記周知の技術としたものにおいても、2つの室を有することにより種々の周波振動に応じた防振効果を得ることができることは、当業者にとって自明な事項であことから、上記本願発明の効果は、これを単に上記先願明細書等に記載された考案と組み合わせた効果にすぎず、格別なものとは認められない。
さらに、2つの室を有することにより、多少の製造誤差や組立誤差があっても、相互に補完し合うためその影響が僅かですむこと、また、1つののダイヤフラムが破損したとしても他方のダイヤフラムが破損してなければ、ある程度の防振効果を得ることができる旨の主張もしているが、これらの事項は明細書の記載に基づかないものであるばかりでなく、特許請求の範囲に記載された構成から直接生じる自明の効果でもないので、この主張は採用することができない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記先願明細書等に記載された考案と実質的に同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書等に記載された考案の考案者と同一であるとも、また、本願出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-03-23 
結審通知日 2000-04-04 
審決日 2000-04-24 
出願番号 特願平1-45048
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 幸夫幸長 保次郎佐藤 荘助千葉 成就久保 竜一内田 博之窪田 治彦  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 鳥居 稔
和田 雄二
発明の名称 流体充填弾性振動減衰装置  
代理人 西浦 嗣晴  
代理人 松本 英俊  

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