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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E04B
管理番号 1027334
審判番号 審判1999-35731  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-11-09 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-07 
確定日 2000-12-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第2841144号発明「電波暗室及びシールドルームの施工方法及び電波吸収体ユニット」の請求項1ないし2に係る特許の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2841144号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 (一)手続きの経緯
出願:平成4年4月22日(特願平4-129434号)
特許登録:平成10年10月23日(特許第2841144号)請求項2
特許無効審判請求:平成11年12月7日
答弁書:平成12年4月12日
弁駁書:平成12年7月17日
書面審理通知:平成12年9月13日
(二)請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は、平成11年12月7日付け審判請求書において、「特許第2841144号の請求項1ないし2に係る発明の特許を無効とする。」との審決を求めている。
その理由として、本件の請求項1ないし2に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、又、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきものであると主張している。
そして、請求人は、平成11年12月7日付け審判請求書と同時に次の証拠方法を提出している。
甲第1号証:「日刊工業新聞」(30)1992年2月26日発行、電磁ノイズ対策「グリッド型広帯域フェライト電波吸収体」に関する記事。
甲第2号証:特開平3-263904号公報。
甲第3号証:特開平4-42999号公報。
甲第4号証:特開平4-53299号公報。
甲第5号証の(1):実開昭62-146806号公報。
甲第5号証の(2):実開平3-20714号公報
甲第5号証の(3):実開平4-42906号公報。
甲第6号証:「研究社新英和大辞典」第5版22刷1991年発行、1383頁、「mount1」の項。
甲第7号証:日経産業新聞1991年8月8日、第1面の「厚さ1/50の電波吸収体」の記事。
甲第8号証:本件特許の出願経緯資料。
また、請求人は、平成12年7月17日付け弁駁書と同時に次の証拠方法を提出している。
甲第9号証:「写真用語事典」初版第1刷、株式会社日本カメラ社1991年10月15日発行、第56頁、「スクリューマウント」の項。
甲第10号証:「建築金物ハンドブック」有限会社金竜堂昭和49年1月30日発行、第50頁。
甲第11号証:「建築と環境の音響設計」丸善株式会社、昭和49年2月20日発行、第31頁5.1.1プレハブ吸音ユニットの項。
甲第12号証:」「hebel technical HANDBOOK」旭化成建材株式会社、1982年1月初版発行、第253頁、第252頁、第163頁、第270頁。
甲第13号証:「東工大テクノロジー」VOL.1、東京工業大学1999年6月、超広帯域電波吸収体。
(三)被請求人の主張
被請求人は、平成12年4月12日付け答弁書において、「本件審判請求は成り立たない。審判請求の費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。
(四)当審の判断
1.本件特許発明
本件の請求項1ないし2に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】多数の四角状の孔を穿設したグリッド状の複数の電波吸収体を、ベース板上に接着剤で固定すると共に、電波吸収体の孔の対応位置でベース板に複数の取付孔を穿設したことを特徴とする電波吸収体ユニット。
【請求項2】電波暗室及びシールドルームの内壁面に遮蔽板を取付けると共に、該遮蔽板の所定位置に複数の螺子孔を設け、予め製作された請求項1の電波吸収体ユニットのベース板の取付孔と遮蔽板の螺子孔を螺子で固定したことを特徴とする請求項1の電波暗室及びシールドルームの施工方法。
2.引用文献
甲第1号証:「日刊工業新聞(30)」1992年2月26日発行、電磁ノイズ対策「グリッド型広帯域フェライト電波吸収体」に関する記事(以下、「引用例」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(1)「電波暗室の大きさや性能は内部に取り付ける電波吸収体の性能に左右される。この電波吸収体は従来はウレタンフォームなどの発泡性樹脂にカーボンなどの導電性材料を含浸させピラミッド状に加工した抵抗体タイプのものが一般的であったが、FCCなどで要求される三十〜一千MHzの周波数帯域全般にわたり、良好な吸収性能を維持するためには、吸収体の厚みが3m以上必要になり非常に大型のものとなってしまう欠点があった。最近はこうした抵抗体タイプだけのものに代わり、磁性損失を有するフェライトタイルと抵抗体タイプのピラミッド型吸収体を組み合わせた、いわゆる複合型吸収体が一般化してきているが、それでもなお、フェライトの上に取り付けるピラミッド型吸収体の厚さは、一から一.五mが必要であった。」
(2)「開発された電波暗室のポイントと新型のフェライト電波吸収体(以下、FFG-1000と記す=写真1)は既存の高透磁率を持つフェライトを格子型に成形することにより大幅に吸収特性の改善に成功したもので、メーカと東工大・内藤喜之教授との共同開発。」
(3)「短工期 FFG-1000をあらかじめ三十cm×三十cmの鉄板に接着剤で張り付けておき、パネルを作っておく(写真3)。工事に際しては、このパネルをシールド壁にボルトどめしていくスクリュウーマウント方式をとっているため、工事が簡単で工期が短縮できる。また、フェライトを直接、壁に張っていく工法と比較して、個々のフェライト同士の間にギャップが生じる心配がなく、従ってギャップによる磁気的特性の悪化を懸念する必要もない。」
前記(1)〜(3)の記載事項と写真からみて、引用例には、多数の四角状の孔を形成した格子状の複数のフェライト製の電波吸収体を、鉄板に接着剤で固定した電波吸収パネルと、前記電波吸収パネルを電波暗室のシールド壁にボルトどめしていくスクリューマウント方式で固定する電波暗室の施工方法が記載されている。
3.対比
先ず、本件請求項1に係る発明と引用例に記載の発明を対比する。
引用例に記載の発明における、「格子状」、「フェライト製電波吸収体」、「鉄板」及び「電波吸収パネル」は、本件請求項1に係る発明における、「グリッド状」、「電波吸収体」、「ベース板」及び「電波吸収ユニット」にそれぞれ対応するものであるから、本件請求項1に係る発明と引用例に記載された発明は、次の一致点において両者の構成は一致し、次の相違点1において両者の構成は一応相違する。
一致点:多数の四角状の孔を穿設したグリッド状の複数の電波吸収体を、ベース板上に接着剤で固定した電波吸収体ユニット。
相違点1:本件請求項1に係る発明においては、電波吸収体の孔の対応位置でベース板に複数の取付孔を穿設したのに対して、引用例に記載された発明においては、前記構成に関する直接の記載がない点。
次に、本件請求項2に係る発明と引用例に記載された発明を対比する。
引用例に記載された発明における、「電波暗室」、「シールド壁」及び「ボルトどめしていくスクリュウーマウント方式で固定する。」は、本件請求項2に係る発明における、「電波暗室及びシールドルーム」、「遮蔽板」及び「螺子で固定する」に対応するものであるから、本件請求項2に係る発明と引用例に記載された発明は、次の一致点において両者の構成は一致し、次の相違点2において両者の構成は一応相違する。
一致点:電波暗室及びシールドルームの内壁面に遮蔽板を取付け、予め製作された電波吸収体ユニットのベース板を遮蔽板に螺子で固定した電波暗室及びシールドルーム。
相違点2:本件請求項2に係る発明においては、遮蔽板の所定位置に複数の螺子孔を設け、予め製作された電波吸収体ユニットのベース板の取付孔と遮蔽板の螺子孔を螺子で固定するとしたのに対して、引用例に記載された発明においては、電波吸収パネルを電波暗室のシールド壁にボルトどめしていくスクリューマウント方式で固定すると言う記載しかなく、ベース板の取付孔と遮蔽板の螺子孔に関する直接の記載がない点。
4.判断
前記相違点について検討する。
先ず、相違点1について検討する。
建築物の内壁等に固定されるパネルユニットに予め取付孔を形成することは、例を出すまでもなく周知の事項であり、グリッド状の電波吸収体をベース板に接着剤で固定した電波吸収ユニットであれば、取付孔を形成する位置は、電波吸収体の孔に対応するベース板の位置にすることは当然のことであり、引用例に記載された発明から、前記周知事項を考慮して、前記相違点1にあげた本件請求項1に係る発明の構成のようにすることは当業者が容易になしえる程度のものである。
次に、相違点2について検討する。
建築物の内壁等にパネルユニットを取付固定する際、建築物の内壁等に螺子孔を形成し、パネルユニットに設けた取付孔と前記螺子孔を一致させ、螺子で固定するようなことは、周知の事項であり、引用例に記載された発明から、前記周知事項を考慮して、前記相違点2にあげた本件請求項2に係る発明の構成のようにすることは当業者が容易になしえる程度のものである。
(五)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-10-10 
結審通知日 2000-10-20 
審決日 2000-10-31 
出願番号 特願平4-129434
審決分類 P 1 112・ 121- Z (E04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西村 綾子山田 忠夫  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 斎藤 利久
鈴木 憲子
登録日 1998-10-23 
登録番号 特許第2841144号(P2841144)
発明の名称 電波暗室及びシールドルームの施工方法及び電波吸収体ユニット  
代理人 西山 聞一  
代理人 野口 忠夫  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 西山 聞一  

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