• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1027443
異議申立番号 異議1998-74626  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-09-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-18 
確定日 2000-06-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第2729624号「有機性汚泥の処理方法」の請求項1乃至5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2729624号の請求項1乃至5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2729624号発明は、昭和63年3月3日に特許出願され、平成9年12月19日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、その後特許異議申立人鈴木敏より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月23日付けで訂正請求がなされたが、この訂正請求に対し訂正拒絶理由通知がなされ、特許権者からは何らの応答もなかったものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
特許権者が求めている訂正事項は、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりであるところ、特許請求の範囲に係る訂正事項は、その減縮を目的として、請求項3、4及び5を削除すると共に、請求項1及び2を次のとおり訂正するものである。
「【請求項1】有機性汚泥を嫌気性消化する有機性汚泥の処理方法であって、前記汚泥を6〜10日間嫌気性消化させてガスを発生させると共に易分解性有機分の反応をほほ終了させる第1の嫌気性処理工程と、この第1の嫌気性処理工程において嫌気性消化された汚泥を100〜180℃にて可溶化処理する可溶化処理工程と、この可溶化処理工程で可溶化処理された汚泥をさらに6〜10日間嫌気性消化させてガスを発生させる第2の嫌気性処理工程と、この第2の嫌気性処理工程で嫌気性消化された汚泥を沈降槽においてガスを発生させると共に消化汚泥と脱離液とに沈降分離する沈降分離工程とからなる有機性汚泥の処理方法。
【請求項2】有機性汚泥を嫌気性消化する有機性汚泥の処理方法であって、前記汚泥を6〜10日間嫌気性消化させてガスを発生させると共に易分解性有機分の反応をほぼ終了させる第1の嫌気性処理工程と、この第1の嫌気性処理工程において嫌気性消化された汚泥を固液分離する固液分離工程と、固液分離して減量化された汚泥を100〜180℃にて可溶化処理する可溶化処理工程と、この可溶化処理工程で可溶化処理された汚泥をさらに6〜10日間嫌気性消化させてガスを発生させる第2の嫌気性処理工程とからなる有機性汚泥の処理方法。」
(2)独立特許要件について
(2-1)本件訂正発明
本件訂正発明は、平成11年7月23日付けで訂正された訂正明細書の上記(1)で示す請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、「本件訂正発明1、2」という)。
(2-2)引用刊行物
当審が訂正拒絶理由通知において引用した刊行物には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:「JOURNAL OF THE ENVIRONMENTAL ENGINEERING DIVISION」Vol.108、No.EE3、JUNE1982、第437頁乃至第454頁
(イ)「都市ゴミの嫌気的消化性を高めるための前処理プロセスとして、アルカリ熱処理を評価した。目標は、ゴミのリグノセルロースからのメタン収量を増加させることである。固形分濃度(0.79〜10.0%)、水酸化ナトリウム濃度(75〜300meq/L)、および温度(25〜250℃)が、ゴミからのメタン収量に及ぼす影響を個々に確認するために、消化性についてのバッチ式分析を採用した。添加したアルカリの消費を観察し、ゴミ固形分の単位重量当たりでは比較的一定であることを見出した。半連続式反応装置の種々の配置について評価した。これらの研究から、2段階消化システムの調査がなされた。この2段階消化システムでは、アルカリ熱処理(180meq/LNaOH、200℃、固形分2.1%、1時間)された第1段目消化装置からの流出物が第2段目消化装置へ供給された。・・・単一消化装置によるメタン収量に比べて80%の収量増加が可能であった。」(第437頁)
(ロ)「2段階リグノセルロース消化の評価
短期間の分析と半連続式消化の結果に基づいて、リグノセルロースから高いメタン収量を得るために2段階消化方式が提案された(Fig.12)。この方式においては、易分解性有機分が第1段目の消化装置でメタンに分解され、流出物に熱化学的処理を施して、残りの有機分をより分解され易くする。熱化学的に処理された流出物は次いで、第2段目の消化装置へ供給され、追加的なメタン生成がなされる。この配置は、熱化学的処理により処理しにくい物質に変換される分解可能な有機分の量を最少にすることが要求され、都市ゴミからのメタン生成を従来の消化よりも73%も多量にすると評価された。」(第449頁)
引用例2:特開昭54-123246号公報
(イ)「1.下水汚泥、し尿、産業廃水汚泥、厨芥類を主とする都市ごみなどのメタン発酵可能な有機性廃棄物を、嫌気性消化槽で嫌気性消化処理したのち、該消化汚泥を熱交換機を経て熱処理反応器にて100℃以上で加熱処理し、この熱処理汚泥を前記熱交換機を介して前記消化汚泥の加温に供すると共に脱水工程にて脱水処理し、その分離液の少なくとも一部を前記嫌気性消化槽に返送することを特徴とする有機性廃棄物の熱処理方法。
2.前記嫌気性消化処理が二つ以上の別個の嫌気性消化槽で行なわれるものであって、脱水工程での脱水分離液の残部を前記嫌気性消化槽とは別個に設けた第2嫌気性消化槽に導いて処理する特許請求の範囲第1項記載の熱処理方法。」(第1頁左欄)
(ロ)「第2図の具体例については、嫌気性消化処理がメタン発酵処理であって、メタン発酵槽を複数用いて処分する例で、厨芥類を主とするゴミに下水汚泥、し尿などを水分増加、栄養塩類添加のために加えるか、もしくはそのままで第1のメタン発酵槽1(嫌気性消化槽)に流入させ、所定日数メタン発酵させたのち、発酵残渣を含む汚泥を温度100℃以上、好ましくは150〜210℃に維持された熱処理反応器3に熱交換器4を介して流入させ、熱処理を行なったのち、該熱処理反応器3から排出する熱処理汚泥(熱処理を受けた発酵残渣のこと)の所有する熱量を熱処理反応器3に流入する発酵残渣の加熱源として前記熱交換器4で回収し、引き続き、熱処理汚泥を脱水機5で脱水し、脱水分離液の一部を前記第1メタン発酵槽1に返送するとともに第2メタン発酵槽2に流入させて処理し、しかも前記第1メタン発酵槽1から発生するメタンを含む消化ガスの一部を前記発酵残渣加熱処理用のボイラ6、即ち熱処理反応器3へ蒸気を給送するボイラ6の熱源として使用するようにしてある。」(第4頁上段)
(ハ)「次に第2図例での実施例を示す。
実施例-1
厨芥を主としたゴミ100kgを・・・消化日数10日、温度55℃のメタン発酵槽に流入させた。・・・熱処理スラッジは無薬注で容易に遠心分離機で脱水でき、含水率50%の脱水ケーキ20kgを得た。脱水分離液の発生量は270l(温度60℃)であり、そのうち150lを第1メタン発酵槽に返送し、残りの120lを第2メタン発酵槽(消化温度55℃、消化日数10日)に流入させた。」(第4頁下段右欄乃至第5頁上段左欄)
引用例3:特開昭55-81794号公報
(イ)「(1)主として天然有機物からなる物質を嫌気性メタン発酵により処理した後、酸素を含む気体と接触せしめ、さらに嫌気性メタン発酵により処理することを特徴とするメタンガスの回収方法。
(2)150〜300℃および20〜200kg/cm2の範囲内の温度圧力にて酸素を含む気体と接触せしめることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の方法。」(第1頁左欄)
(ロ)「〔実施例1〕
下水処理場で発生した初沈澱槽汚泥および曝気槽余剰汚泥の混合物を第1図に示す装置により処理した。ライン1から汚泥を・・・初段消化槽21に供給し、ライン3から発生ガスを取出し、消化液中のスラッジの一部は分離器26で分離し消化槽に返送して、初段消化槽21内の微生物濃度を充分高く維持する。・・・酸化液は減圧し冷却器29、ライン5を経て分離器23に送入され含有する固型分を濾過・脱水してケーキはライン7から取出し、分離液はライン8を経て温度55℃に保った有効容積180lの後段消化槽24に送入される。」(第3頁上段)
引用例4:「下水道施設設計指針と解説-1984年版-」(社)日本下水道協会発行、昭和59年、第444頁乃至第448頁
(イ)「汚泥消化タンクの主な機能は、複雑な有機物を嫌気性細菌によって分解し、単純なものに転換する点にあるが、一般的には固液分離も期待する場合が多い。この場合には、生物反応タンクと固液分離タンクとを分離して設置する2段消化が望ましい。・・・消化方式は、一般に2段消化が多く使用され、1次タンクで加温及びかくはんを行い、次に2次タンクに移して、比較的静止した環境で消化汚泥と脱離液との分離を行う。2段消化には、タンク2基を直列使用する方式と2重タンク方式とがある。2重タンクは、同心円上の内側のタンクを、1次タンクとして使用するため,熱放散が少なく、熱経済上有効であるが、2次タンクの形状から消化汚泥の引き抜きに難がある。」(第445頁)
引用例5:「廃棄物のメタン醗酵-理論と実用化技術」(株)サイエンティスト社、1980年、第160頁乃至第163頁
図7の「生物可溶化を前処理とした都市ゴミメタン化プロセス」(第162頁)には、「可溶化槽」-「メタン発酵槽」-「沈殿槽」などの工程が図示されている。
引用例6:特開昭57-84798号公報
(イ)「難分解性の余剰汚泥(6)を濃縮タンク(7)で濃縮した後熱処理装置(A)で、例えば、170℃で30分加熱することにより、複雑な有機化合物が低分子化し、水溶性物質が増加し、また、嫌気性菌による分解が容易になる。この熱処理後の汚泥と、嫌気性菌により分解を受け易い生汚泥(5)とを混合して、消化タンク(37)内に投入すると、消化速度が速くなって、より短い時間で、より多くのメタンが発生することになる。」(第2頁上段左欄)
(ロ)「濃縮タンク(7)下部の濃縮汚泥(8)はポンプ(9)により引抜かれ、遠心分離器で濃縮されて・・・濃縮汚泥タンク(11)に入る。」(第3頁上段左欄)
(2-3)当審の判断
(i)本件訂正発明1について
上記引用例1には、「都市ゴミの嫌気性消化処理の2段階消化システム」に関し、「アルカリ熱処理(180meq/LNaOH、200℃、固形分2.1%、1時間)された第1段目消化装置からの流出物が第2段目消化装置へ供給された。」と記載されている他、「流出物に熱化学的処理を施して、残りの有機分をより分解され易くする。熱化学的に処理された流出物は次いで、第2段目の消化装置へ供給され、追加的なメタン生成がなされる。」と記載されている。
引用例1に記載の「都市ゴミ」は「有機性汚泥」に相当し、「熱化学的処理」は本件特許明細書の記載に照らせば「可溶化処理」に相当するから、上記引用例1には、「有機性汚泥を嫌気性消化する有機性汚泥の処理方法であって、前記汚泥を嫌気性消化させてガスを発生させると共に易分解性有機分の反応をほほ終了させる第1の嫌気性処理工程と、この第1の嫌気性処理工程において嫌気性消化された汚泥を200℃にて可溶化処理する可溶化処理工程と、この可溶化処理工程で可溶化処理された汚泥をさらに嫌気性消化させてガスを発生させる第2の嫌気性処理工程とからなる有機性汚泥の処理方法。」の発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明1と上記引用例1発明とを対比すると、両者は、次の点で相違している。
(a)本件訂正発明1は6〜10日間第1及び第2の嫌気性消化処理を行う点
(b)本件訂正発明1は100〜180℃で可溶化処理する点
(c)本件訂正発明1は沈降分離工程を有する点
次に、これら相違点について検討すると、上記(a)及び(b)の点は、上記引用例2及び3にみられるように、有機汚泥の嫌気性消化処理において周知の事項であり、また上記(c)の点も上記引用例4乃至6にみられるように、周知・慣用手段である。
してみると、本件訂正発明1は、上記引用例1乃至6に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(ii)本件訂正発明2について
この発明は、第1の嫌気性処理工程後に固液分離工程を行うものであるが、このような固液分離処理も上記引用例2、4及び6にみられるように、必要に応じて適宜行われている周知・慣用手段であるから、可溶化処理工程前に固液分離処理を行うことも当業者であれば容易に想到することができると云うべきである。
してみると、本件訂正発明2も、上記引用例1乃至6に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)むすび
以上のとおり、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3.特許異議申立てについて
(1)本件発明
特許権者が求める上記訂正請求は認めることができないから、本件請求項1乃至5に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】有機性汚泥を嫌気性消化する有機性汚泥の処理方法であって、前記汚泥を6〜l0日間嫌気性消化させて易分解性有機分の反応をほぼ終了させる第1の嫌気性処理工程と、この第1の嫌気性処理工程において嫌気性消化された汚泥をl00〜180℃にて可溶化処理する可溶化処理工程と、この可溶化処理工程で可溶化処理された汚泥をさらに6〜10日間嫌気性消化させる第2の嫌気性処理工程とからなる有機性汚泥の処理方法。
【請求項2】前記第1の嫌気性処理工程において嫌気性消化された汚泥を固液分離することを特徴とする請求項1記載の有機性汚泥の処理方法。
【請求項3】有機性汚泥を嫌気性消化する有機性汚泥の処理方法であって、一次タンクに供給汚泥を投入して6〜10日間嫌気性消化を行ない、易分解性有機分の反応をほぼ終了させた後に、可溶化槽内に導入して可溶化処理を行ない、さらに、二次タンクに供給して嫌気性消化を行ない、次いで、沈降槽内において消化汚泥と脱離液とに沈降分離することを特徴とする有機性汚泥の処理方法。
【請求項4】前記一次タンクにて嫌気性消化された汚泥を固液分離機によって濃縮し減量化した後に前記可溶化槽内に導入することを特徴とする請求項3記載の有機性汚泥の処理方法。
【請求項5】有機性汚泥を嫌気性消化する有機性汚泥の処理方法であって、消化タンクに供給汚泥を投入して嫌気性消化を行なった後に、沈降槽内に導入して消化汚泥と脱離液とに沈降分離し、さらに、この消化汚泥を可溶化槽内に供給して可溶化処理を行ない、次いで、この可溶化処理された汚泥を前記消化タンク内に戻すことを特徴とする有機性汚泥の処理方法。」
(2)引用刊行物
当審が平成11年4月21日付け取消理由通知において引用した刊行物には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:上記2.(2-2)の引用例2と同じ
引用例2:上記2.(2-2)の引用例3と同じ
引用例3:特開昭55-142594号公報
「消化処理の終えたガス化処理スラリー9(第1図)及び液化ガス化処理スラリー7A(第2図)は固液分離槽12に送られ、消化汚泥13と脱離水14に分離される。」(第5頁上段左欄)
引用例4:特開昭54-124555号公報
「まず下水初沈汚泥と活性汚泥の余剰汚泥からなる混合生汚泥をシックナー、遠心濃縮機などで予備的に濃縮したのち、濃縮生汚泥として嫌気性消化槽1へ流入させる。・・・生汚泥容量が1/2〜1/3に減量化した消化汚泥と消化脱離液を排出する。」(第4頁下段)
引用例5:特開昭59-115798号公報
(イ)「これらの処理方法は、まず下水処理工程1から排出される有機汚泥を濃縮槽2にて濃縮し、ついで嫌気性消化槽3に導入して消化処理する。つぎに、消化汚泥を沈降槽等の濃縮工程4に導入して分離し、分離液を下水処理工程1に返送し、沈降汚泥を湿式酸化処理装置または熱処理装置5に送る。湿式酸化処理装置または熱処理装置5にて処理された処理物は、脱離液Lと固形分Sとに固液分離され、脱離液Lの一部または全量が前記嫌気性消化槽3に返送されるものである。」(第2頁上段右欄)
(ロ)「下水処理工程20から排出される有機汚泥は汚泥凝縮工程10で濃縮され、嫌気性消化処理工程14に導入され、嫌気性処理される。・・・消化汚泥は、消化汚泥濃縮工程21を経て熱処理工程19に送られる。ここで温度170〜210℃、圧力10〜16kg/cm2Gで熱処理された処理物は凝集処理工程12に送られ、第3図に示すと同様にまず固液分離される。・・・一方、上記固液分離された熱処理汚泥は嫌気性消化処理工程14に返送される。」(第6頁下段右欄乃至第7頁上段左欄)
引用例6:上記2.(2-2)の引用例1と同じ
(3)当審の判断
(i)請求項1に係る発明について
上記引用例6は、上記2.(2-2)の引用例1と同じものであるから、上記引用例6には、上記2.(2-3)(i)で摘示したとおりの「有機性汚泥を嫌気性消化する有機性汚泥の処理方法であって、前記汚泥を嫌気性消化させてガスを発生させると共に易分解性有機分の反応をほほ終了させる第1の嫌気性処理工程と、この第1の嫌気性処理工程において嫌気性消化された汚泥を200℃にて可溶化処理する可溶化処理工程と、この可溶化処理工程で可溶化処理された汚泥をさらに嫌気性消化させてガスを発生させる第2の嫌気性処理工程とからなる有機性汚泥の処理方法。」の発明(以下「引用例6発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明と上記引用例6発明とを対比すると、両者は、次の点で相違している。
(a)本件発明は6〜10日間第1及び第2の嫌気性消化処理を行う点
(b)本件発明は100〜180℃で可溶化処理する点
しかしながら、これら相違点は、いずれも上記引用例1及び2にみられるように、有機汚泥の嫌気性消化処理において周知の事項であるから、本件発明は、上記引用例6と引用例1及び2に記載の発明や周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(ii)請求項2に係る発明について
この発明は、上記請求項1に係る発明に、「第1の嫌気性処理工程後に固液分離処理する」点を追加するものであるが、このような固液分離処理も上記引用例1乃至5にみられるように、必要に応じて適宜行われている周知・慣用手段であるから、可溶化処理工程前に固液分離処理を行うことも当業者であれば容易に想到することができると云うべきである。
してみると、本件発明は上記引用例6と引用例1乃至5に記載の発明や周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(iii)請求項3に係る発明について
この発明は、請求項1に係る発明に「沈降分離処理」を最終工程として追加すると共に、「一次タンク」、「二次タンク」、「可溶化槽」及び「沈降槽」という装置的な構成を追加するものである。
しかしながら、「沈降分離処理」は上記引用例3、5や上記2.(2-2)の引用例5などにもみられるように、有機汚泥の嫌気性消化処理において周知・慣用手段である。
また、「一次タンク」、「二次タンク」、「可溶化槽」及び「沈降槽」の構成について検討すると、請求項3に記載の「有機性汚泥の処理方法」が上記「沈降分離処理」の点の除けば、これら構成の追加によっても請求項1の「有機性汚泥の処理方法」と実質的な差異がないから、これら構成は単に装置的に表現されただけのものであり、しかも、「有機性汚泥の処理」において「タンク」や「槽」も常套手段である。
してみると、本件発明は、上記引用例6と引用例1、2、3及び5に記載の発明や周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(iv)請求項4に係る発明について
この発明は、請求項3に係る発明に「固液分離機による減量化処理」を追加するものであるが、上記(ii)の請求項2に係る発明についてのところで述べたとおり、「固液分離処理」は周知・慣用手段である。
してみると、本件発明は、上記引用例6と引用例1乃至5に記載の発明や周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
(v)請求項5に係る発明について
上記引用例5には、「有機性汚泥の処理方法」に関し、「下水処理工程20から排出される有機汚泥は汚泥凝縮工程10で濃縮され、嫌気性消化処理工程14に導入され、嫌気性処理される。」と記載されている他に、「消化汚泥は、消化汚泥濃縮工程21を経て熱処理工程19に送られる。」「熱処理された処理物は凝集処理工程12に送られ、第3図に示すと同様にまず固液分離される。」「一方、上記固液分離された熱処理汚泥は嫌気性消化処理工程14に返送される。」と記載されている。
そうであるならば、上記引用例5には、「有機性汚泥を嫌気性消化する有機性汚泥の処理方法であって、消化タンクに供給汚泥を投入して嫌気性消化を行なった後に、消化汚泥濃縮工程を経てこの消化汚泥を熱処理工程に送り、熱処理された処理物を凝集処理工程でまず固液分離し、次いで、この固液分離された熱処理汚泥を嫌気性消化処理工程に返送することを特徴とする有機性汚泥の処理方法。」の発明(以下、「引用例5発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明と上記引用例5発明とを対比すると、上記引用例5発明の「熱処理」は「可溶化処理」に相当し、また引用例5発明でも嫌気性消化処理工程を「消化タンク」で行うものとみるのが相当であるから、両者は、次の点で相違しているだけである。
(a)本件発明は「沈降槽内で消化汚泥と脱離液に沈降分離する」のに対し、引用例5発明は「消化汚泥濃縮工程」を行う点
(b)本件発明は「可溶化処理された汚泥を消化タンク内に戻す」のに対し、引用例5発明は「固液分離された熱処理汚泥を消化タンク内に戻す」点
そこで、これら相違点について検討すると、上記(a)の点については、汚泥の濃縮工程を周知・慣用手段である「沈降分離」とするだけのことであり、当業者であれば容易に想到することができると云える。また、上記(b)の点も、固液分離の減量化処理をして戻すかそのまま戻すかの差異であって、その取捨選択は当業者であれば適宜容易になしうる程度のことである。
してみると、本件発明は、上記引用例5に記載の発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきものである。
4.むすび
以上のとおり、本件請求項1乃至5に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-04-20 
出願番号 特願昭63-50386
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (C02F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中村 敬子  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 野田 直人
山田 充
登録日 1997-12-19 
登録番号 特許第2729624号(P2729624)
権利者 月島機械株式会社 建設省土木研究所長
発明の名称 有機性汚泥の処理方法  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ